TOP特許意匠商標
特許ウォッチ Twitter
公開番号2024108497
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-08-13
出願番号2023012899
出願日2023-01-31
発明の名称プラスチック用のエッチング溶液
出願人キザイ株式会社
代理人個人,個人
主分類C23C 18/24 20060101AFI20240805BHJP(金属質材料への被覆;金属質材料による材料への被覆;化学的表面処理;金属質材料の拡散処理;真空蒸着,スパッタリング,イオン注入法,または化学蒸着による被覆一般;金属質材料の防食または鉱皮の抑制一般)
要約【課題】プラスチックにめっきを施す際のエッチング溶液において、有害な6価クロムを使用しない安定なエッチング溶液を提供する。
【解決手段】エッチング溶液として、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液を使用する。好ましい溶液組成は、硫酸の濃度が7.0~12.5mol/L、リン酸の濃度が1.4~7.5mol/L、Mn(III)イオンの濃度が0.005~0.2mol/Lのものである。Mn(III)イオンは、酸化剤によるMn(II)イオンの酸化によって生成されたもの又はMn(II)イオンの電気分解による酸化によって生成されたものであってもよい。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
プラスチックにめっきを施す工程で使用されるプラスチック用のエッチング溶液であって、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなることを特徴とするプラスチック用のエッチング溶液。
続きを表示(約 940 文字)【請求項2】
プラスチックにめっきを施す工程で使用されるプラスチック用のエッチング溶液であって、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなり、かつ硫酸の濃度が7.0~12.5mol/Lの範囲、リン酸の濃度が1.4~7.5mol/Lの範囲、Mn(III)イオンの濃度が0.005~0.2mol/Lの範囲であることを特徴とするプラスチック用のエッチング溶液。
【請求項3】
プラスチックにめっきを施す工程で使用されるプラスチック用のエッチング溶液であって、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなり、かつ硫酸の濃度が10.3~11.5mol/Lの範囲、リン酸の濃度が1.9~3.0mol/Lの範囲、Mn(III)イオンの濃度が0.01~0.1mol/Lの範囲であることを特徴とするプラスチック用のエッチング溶液。
【請求項4】
Mn(III)イオンが、Mn(II)イオンの電気分解による酸化によって生成されたものであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のプラスチック用のエッチング溶液。
【請求項5】
Mn(III)イオンが、酸化剤によるMn(II)イオンの酸化によって生成されたものであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のプラスチック用のエッチング溶液。
【請求項6】
Mn(III)イオンが、三二酸化マンガン(III)、四三酸化マンガン(II,III)、硫酸マンガン(III)、ピロリン酸第二マンガン(III)、三酢酸マンガン(III)などのMn(III)イオンを含む化合物により供給されたものであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のプラスチック用のエッチング溶液。
【請求項7】
プラスチックにめっきを施す際のエッチング工程において、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなり、かつ硫酸の濃度が7.0~12.5mol/Lの範囲、リン酸の濃度が1.4~7.5mol/Lの範囲、Mn(III)イオンの濃度が0.005~0.2mol/Lの範囲であるエッチング溶液でプラスチックをエッチングする方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック表面に金属めっきを施す工程で使用されるエッチング溶液に関する。
続きを表示(約 4,400 文字)【背景技術】
【0002】
プラスチックに機械的強度や装飾性を与えるために従来から金属めっきが施されており、外装部品など、めっきと素材の密着を必要とされる分野ではクロム酸と硫酸を用いた溶液でプラスチック表面をエッチングする工程が採用される。
その際に使用されるクロム酸は有害性の高い6価クロムの化合物であり、製造に従事する作業者や自然環境に対する有害性が高く、環境規制の対象となり、将来使用が禁止される可能性が高いことからクロムを含まないエッチング溶液の開発の要望が高まっている。
【0003】
そこで、クロムを含まないクロムフリーの処理液として、マンガンを含むエッチング溶液が提案されてきた(特許文献1~3)。
クロムを含まないエッチング溶液として、過マンガン酸塩(Mn(VII)イオン)を用いたエッチング溶液が検討されてきたが、強酸性の液中ではMn(VII)イオンは低い価数のMnイオンに還元されやすく、水溶性のMn(II)イオンや不溶性のMn(IV)イオンの化合物が生成する。
特に蓄積した不溶性のMn(IV)イオンの化合物はプラスチックに吸着することで、外観異常やエッチングを妨害し密着強度を低下させるなど、品質上の問題の原因となるため、不溶性のMn(IV)イオンの化合物を除去する必要がある。
また、Mn(VII)イオンは低い価数のMnイオンに還元されやすいため濃度が減少しやすく、エッチング力を長期的に維持することが難しいなどの理由により、工業的に安定して使用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許第5830807号
特許第6195857号
特許第5406186号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、上記従来技術の問題点を解決して、エッチング力を長期的に維持することができ、工業的に安定して使用できるようにする技術の提案が期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究の結果、硫酸とリン酸の混酸の溶液にMn(III)イオンを加えたエッチング溶液にプラスチックを浸漬処理することで、クロム酸と同程度の密着力を有するエッチングを行うことに成功した。
硫酸とリン酸の混酸の溶液中ではMn(III)イオンが安定して存在し、プラスチックをこのエッチング溶液で処理した後、触媒付与工程、活性化工程、無電解めっき工程、電気めっき工程を経ることでプラスチック表面を良好に金属化することが可能となった。
すなわち本発明は硫酸とリン酸の混酸の溶液にMn(III)イオンを含有せしめてなることを特徴とする下記のエッチング溶液及びプラスチックをエッチングする方法である。
[1] プラスチックにめっきを施す工程で使用されるプラスチック用のエッチング溶液であって、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなることを特徴とするプラスチック用のエッチング溶液。
[2] プラスチックにめっきを施す工程で使用されるプラスチック用のエッチング溶液であって、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなり、かつ硫酸の濃度が7.0~12.5mol/Lの範囲、リン酸の濃度が1.4~7.5mol/Lの範囲、Mn(III)イオンの濃度が0.005~0.2mol/Lの範囲であることを特徴とするプラスチック用のエッチング溶液。
[3] プラスチックにめっきを施す工程で使用されるプラスチック用のエッチング溶液であって、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなり、かつ硫酸の濃度が10.3~11.5mol/Lの範囲、リン酸の濃度が1.9~3.0mol/Lの範囲、Mn(III)イオンの濃度が0.01~0.1mol/Lの範囲であることを特徴とするプラスチック用のエッチング溶液。
[4] Mn(III)イオンが、Mn(II)イオンの電気分解による酸化によって生成されたものであ
ることを特徴とする[1]~[3]の何れか1項に記載のプラスチック用のエッチング溶液。
[5] Mn(III)イオンが、酸化剤によるMn(II)イオンの酸化によって生成されたものであることを特徴とする[1]~[3]の何れか1項に記載のプラスチック用のエッチング溶液。
[6] Mn(III)イオンが、三二酸化マンガン(III)、四三酸化マンガン(II,III)、硫酸マンガン(III)、ピロリン酸第二マンガン(III)、三酢酸マンガン(III)などのMn(III)イオンを含む化合物により供給されたものであることを特徴とする[1]~[3]の何れか1項に記載のプラスチック用のエッチング溶液。
[7] プラスチックにめっきを施す際のエッチング工程において、Mn(III)イオンを含む硫酸とリン酸との混酸の溶液からなり、かつ硫酸の濃度が7.0~12.5mol/Lの範囲、リン酸の濃度が1.4~7.5mol/Lの範囲、Mn(III)イオンの濃度が0.005~0.2mol/Lの範囲であるエッチング溶液でプラスチックをエッチングする方法。
【発明の効果】
【0007】
プラスチックのエッチング溶液にMn(VII)イオンを使用する液は不溶性のMn(IV)イオンの化合物が生成しやすいため、Mn(IV)イオンの酸化物などの不溶性化合物が、プラスチックの表面に付着して密着強度や外観品質を損なう問題があるが、本発明のエッチング溶液は硫酸とリン酸の混合溶液にMn(III)イオンを含有させたもので、本発明の溶液を使用するとエッチング処理の際にMn(III)イオン濃度が安定し、Mn(IV)イオンの酸化物など
の不溶性化合物が生成することは無く、めっき皮膜の密着強度や外観品質が安定したものとなる。
また、本発明のエッチング溶液は6価クロムおよびクロムイオンを含まず、自然環境および人体や生物にとって有害な6価クロムの発生源が無いため、6価クロムによる自然環境および製造時の作業環境へのリスクを排除することができる。
さらに、本発明のエッチング溶液を用いてプラスチックを処理した後は水洗し、触媒付与工程、活性化工程、無電解めっき工程、電気めっき工程を経ることでプラスチック表面を金属化することが可能であり、触媒工程以降の工程は従来の工程を流用することができる。
さらにまた、本発明のエッチング溶液はMn(III)イオンを使用することで、Mn(VII)イオンを使用する過マンガン酸系のクロムフリーエッチング溶液で課題となる短時間での濃度低下が生じにくい。
そして、本発明のエッチング溶液にて処理した樹脂は、図2、3に示すように表面に微細な孔が形成され、そこにめっき皮膜が析出し充填されることで強い密着強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
実施例1、4、10および比較例1、2について、68℃に加温して保持し、8、16、24時間経過時のMn(III)濃度を分析し、初期濃度との相対比を示したグラフと、比較例5について、68℃に加温して保持し、2、4、8時間経過時のMn(VII)の濃度を分析し、初期濃度との相対比として示したグラフである。
実施例1について68℃に加温して1時間経過した後、68℃、20分浸漬処理したABS樹脂を7500倍で観察したSEM写真
実施例1について68℃に加温して24時間経過した後、68℃、20分浸漬処理したABS樹脂を7500倍で観察したSEM写真
比較例2について68℃に加温して1時間経過した後、68℃、20分浸漬処理したABS樹脂を7500倍で観察したSEM写真
比較例2について68℃に加温して24時間経過した後、68℃、20分浸漬処理したABS樹脂を7500倍で観察したSEM写真
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のエッチング溶液は硫酸と、リン酸と、Mn(III)イオンの3種を必須成分とする溶液であることを特徴とする。
硫酸濃度の範囲は7.0~12.5mol/Lが好ましく、より好ましくは10.3~11.5moL/Lである。
硫酸濃度が7.0mol/L未満の場合はプラスチック表面の粗化が不十分となり、密着強度が弱くなり、Mn(III)イオンの安定性が低下する。また、硫酸濃度が12.5mol/Lを超えるとプラスチックの表面が過剰に粗化され表層が脆くなることで密着強度が弱くなる。
リン酸濃度の範囲は1.4~7.5mol/Lが好ましく、より好ましくは1.9~3.0mol/Lである。
リン酸濃度が1.4mol/L未満の場合はプラスチック表面の粗化が不十分となり、密着強度が弱くなり、Mn(III)イオンの安定性が低下する。また、リン酸濃度が7.5mol
/Lを超えるとプラスチックの表面が過剰に粗化され表層が脆くなることで密着強度が弱くなる。
リン酸の供給源は特に限定されないが、リン酸の他に五酸化二リン、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸などが使用できる。
【0010】
Mn(III)イオン濃度の範囲は0.005~0.2mol/Lが好ましく、より好ましくは0.01~0.1mol/Lである。
Mn(III)イオン濃度が0.005mol/L未満の場合はプラスチック表面の粗化が不十分となり、密着強度が弱くなり、また、Mn(III)イオン濃度が0.2mol/Lを超えるとプラスチックの表面が過剰に粗化され表層が脆くなることで密着強度が弱くなる。
Mn(III)イオンは、薬剤として添加するほかに、硫酸とリン酸を混合した溶液にMn(II)イオンを溶解し、電解酸化あるいは酸化剤の添加によりMn(II)イオンを酸化して生成することができる。
Mn
2+
⇔ Mn
3+
+ e
-
薬剤として添加する場合のMn(III)イオンの供給源は特に限定されないが、三二酸化マンガン(III)、四三酸化マンガン(II,III)、硫酸マンガン(III)、ピロリン酸第二マンガン(III)、三酢酸マンガン(III)などが使用できる。これらの化合物のうち1種または2種以上を混合して使用できる。
(【0011】以降は省略されています)

この特許をJ-PlatPatで参照する
Flag Counter

関連特許

キザイ株式会社
プラスチック用のエッチング溶液
2か月前
大同特殊鋼株式会社
熱処理方法
10日前
個人
マイクロ波プラズマCVD装置
2か月前
芝浦メカトロニクス株式会社
成膜装置
28日前
神東塗料株式会社
鋼構造物の防食方法
18日前
株式会社JCU
無電解めっき方法
1か月前
大阪瓦斯株式会社
成膜装置
25日前
株式会社昭和真空
成膜装置
2か月前
株式会社カネカ
気化装置及び蒸着装置
1か月前
株式会社アルバック
真空蒸着方法
1か月前
東京エレクトロン株式会社
基板処理方法
1か月前
伯東株式会社
冷却水系に設けられた金属の腐食抑制方法
2か月前
株式会社鈴木商店
皮膜および皮膜形成方法
25日前
上村工業株式会社
めっき析出状況の測定装置
2か月前
マクセル株式会社
部分めっき部品の製造方法
2か月前
日本製鉄株式会社
表面処理鋼板
1か月前
北京科技大学
溶融塩電解による高珪素鋼の製造方法
1か月前
ノリタケ株式会社
添加剤および金属の製造方法
2か月前
マシン・テクノロジー株式会社
蒸着フィルム製造装置
1か月前
学校法人関東学院
無電解ニッケルめっき浴の再生方法
1か月前
日揚科技股分有限公司
防着オブジェクト
12日前
サンデン株式会社
摺動部材
1か月前
東京エレクトロン株式会社
成膜装置及び成膜方法
12日前
松田産業株式会社
貴金属蒸着材料
1か月前
キザイ株式会社
プラスチック用のエッチング溶液
2か月前
大陽日酸株式会社
供給方法および供給装置
2か月前
株式会社アルバック
真空蒸着装置用の蒸着源
2か月前
大陽日酸株式会社
半導体材料ガス生成装置
1か月前
株式会社アルバック
真空蒸着装置用の蒸着源
2か月前
株式会社アルバック
真空蒸着装置用の蒸着源
2か月前
キヤノントッキ株式会社
成膜装置
25日前
JFEスチール株式会社
耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼板
24日前
大同特殊鋼株式会社
ターゲットおよび黒化膜
1か月前
株式会社カネカ
基板トレイ及び膜付き基板製造方法
1か月前
信越化学工業株式会社
炭化金属被覆炭素材料
24日前
出光興産株式会社
水溶性防錆剤組成物
20日前
続きを見る