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公開番号2024100686
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-07-26
出願番号2023186185
出願日2023-10-31
発明の名称植物穿孔性昆虫の同定方法
出願人国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
代理人弁理士法人平木国際特許事務所
主分類G01N 30/88 20060101AFI20240719BHJP(測定;試験)
要約【課題】本発明は、植物体外より得られた微量の木屑状試料から植物穿孔性昆虫による加害の有無を確定すると共に、その寄生種若しくは加害種を早期かつ正確に同定する再現性の高い方法を開発し、提供することである。
【解決手段】フラス中に含まれる炭化水素の成分組成の情報を取得した後、既知植物穿孔性昆虫由来のフラスから得られた種特異的炭化水素成分組成の情報と比較したときに、両成分組成が一致した場合には被験対象の植物穿孔性昆虫が前記既知植物穿孔性昆虫であると同定する。
【選択図】図3
特許請求の範囲【請求項1】
フラスを排出する植物穿孔性昆虫の、前記フラスを用いた同定方法であって、
被験対象のフラス中に含まれる炭化水素を有機溶媒で抽出し、抽出液を得る抽出工程、
前記抽出液からガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)を用いて炭化水素画分を分離し、炭素数に基づく炭化水素の成分組成を分析する分離分析工程、及び
前記炭化水素の成分組成を、同様の方法で既知植物穿孔性昆虫由来のフラスから得られた種特異的炭化水素成分組成と比較し、両成分組成が一致したときに前記被験対象のフラスを排出した植物穿孔性昆虫が前記既知植物穿孔性昆虫であると同定する比較同定工程
を含む前記同定方法。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
前記有機溶媒が無極性有機溶媒である、請求項1に記載の同定方法。
【請求項3】
前記GC-MSで使用するカラムが無極性又は微極性カラムである、請求項1又は2に記載の同定方法。
【請求項4】
前記植物穿孔性昆虫がカミキリムシ科(Cerambycidae)、ゾウムシ上科(Curculionoidea)、スカシバガ科(Sesiidae)、コウモリガ科(Hepialidae)、及びボクトウガ科(Cossidae)のいずれかに属する種である、請求項3に記載の同定方法。
【請求項5】
植物穿孔性昆虫由来のフラスに含まれる種特異的炭化水素成分組成を決定する方法であって、
同定済みの既知植物穿孔性昆虫のフラス中に含まれる炭化水素を有機溶媒で抽出する抽出工程、
前記抽出工程で得られた抽出液をガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)で分離分析する分離分析工程、及び
前記分離分析工程で得られたフラス由来の炭化水素画分における炭素数及び不飽和結合数に基づき前記既知植物穿孔性昆虫の種特異的炭化水素成分組成を決定する炭化水素成分組成決定工程
を含む前記方法。
【請求項6】
特定の植物穿孔性昆虫による植物加害の有無を判定する方法であって、
被験対象の木屑状物質中に含まれる炭化水素を有機溶媒で抽出する抽出工程、
前記抽出工程で得られた抽出液をガスクロマトグラフィー又はGC-MSで分離分析する分離分析工程、及び
前記分離分析工程で得られた木屑状物質の炭化水素画分における炭素数及び不飽和結合数に基づく成分組成を、同様の方法で得られた前記特定の植物穿孔性昆虫の排出したフラス由来の炭化水素画分における前記成分組成と比較し、両成分組成が一致したときに前記被験対象の植物が前記特定の植物穿孔性昆虫に加害されていると判定する比較判定工程
を含む前記方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が無極性有機溶媒である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記GC-MSで使用するカラムが無極性又は微極性カラムである、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記被験対象が生木又は木材である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記植物穿孔性昆虫がカミキリムシ科(Cerambycidae)、ゾウムシ上科(Curculionoidea)、スカシバガ科(Sesiidae)、コウモリガ科(Hepialidae)、及びボクトウガ科(Cossidae)のいずれかに属する種である、請求項6に記載の方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、フラスを排出する植物穿孔性昆虫の同定方法及び同定装置に関する。
続きを表示(約 2,100 文字)【背景技術】
【0002】
カミキリムシ科(Cerambycidae)に属する昆虫の多くは、その幼虫が木本植物に穿孔し、樹体内部を摂食する。中でも生木に寄生する種は、食害によってその植物を枯死させてしまうため林業及び果樹害虫として重要である。特に、日本では、昨今、諸外国より侵入した外来種による木本植物の食害が深刻な問題となっている。
【0003】
例えば、中国や朝鮮半島等を原産地とするクビアカツヤカミキリ(Aromia bungii)(図1A)は、国内では2012年に愛知県で初めて確認されて以降、国内で急速にその分布を広げ、枯損被害が拡大している。本種は、バラ科(Rosaceae)植物を宿主とし、特にサクラ属(Prunus)植物に好んで寄生する。本種の幼虫(図1B)に寄生された植物は、樹体内部に坑道状の無数の食痕を開けられる(図1C)ため、樹勢を失い、やがて枯死してしまう。サクラ属の植物種には、サクラ(ソメイヨシノ)のような景観を構成し、歴史的及び文化財的価値の高い重要な種や、ウメ、モモ、スモモ、及びセイヨウミザクラのような果樹として農業上重要な種を多く含む。本種がこのまま分布を拡大し続ければ、国内のサクラや果樹は甚大な被害に見舞われるため、その防除対策には一刻の猶予も許されない。そこで、本種は2018年に国の特定外来生物に指定され、各自治体で本種の防除活動が実施されているが、依然としてその被害拡大は衰えていない。
【0004】
また、近年では他のカミキリムシの外来種による被害も新たに発生している。例えば、サビイロクワカミキリ(Apriona swainsoni)、中国南部を原産地とする種で、国内では2015年に福島県郡山市で初めて確認された。現在では福島県郡山市を中心にイヌエンジュ(Maackia amurensis)をはじめとする街路樹の多くが本種に食害されている。また、被害樹の伐採により街の景観が損なわれる等の被害も発生し、現在、周辺地域への分布拡大が懸念されている。
【0005】
さらに、ツヤハダゴマダラカミキリ(Anoplophora glabripennis)は、中国及び朝鮮半島を原産地とする種で、移入により世界各地に分布を広げ、林業害虫として世界的に被害をもたらしている。国内では2002年に神奈川県横浜市で確認された後、一旦根絶されたものの、2021年に兵庫県神戸市で定着個体が確認されたのを機に、その翌年には国内各地で確認される等、現在、急速に分布を広げている。
【0006】
上記カミキリムシの外来種は、世界的な物流の増加を背景に、幼虫が輸入木材中に紛れて国内に持ち込まれたことが原因と考えられている。今後も新たな種が同様の経路で侵入する可能性があり、国内では従来からは想定できない被害の発生が懸念されている。
【0007】
このような植物穿孔性昆虫による被害を最小限に抑え、効果的に防除するためには、被害が軽微で、薬剤等に対する抵抗性の低い初齢や2齢の幼虫初期の段階で被害樹を早期に発見し、適切な防除を行うことが極めて重要である。しかし、植物穿孔性昆虫は、幼虫が樹体内で生育するため、樹体外部から加害の有無を判断することは容易ではない。
【0008】
植物穿孔性昆虫による寄生を判断する方法としてフラス(図2)の確認がある。フラスとは、植物穿孔性昆虫が樹体内部を食い進む際に樹体外部に排出した糞と粉末状又は顆粒状の植物組織の混合物である。フラスが排出されている植物は、植物穿孔性昆虫に加害されている可能性が高いと判断できる。ところが、フラスは一見すると木屑にしか見えない。また、トビイロケアリ(Lasius japonicus)等の一部の種のアリは、木屑、土、及び自らの糞で構成されたトンネル状の通路(蟻道)を樹皮表面に形成するため、蟻道をフラスと混同する場合もある。
【0009】
さらに、植物穿孔性昆虫の防除法は寄生種によって異なる場合が多く、種の同定は防除対策を講じる上での前提となる。ところが、植物穿孔性昆虫の場合、樹体外から直接寄生種を検することができないため正確な同定は非常に困難である。一般にフラスから寄生種を同定する場合、フラスが排出された樹種とフラスの色や形状等の情報から寄生種を推察することはできる。しかし、この方法は専門知識とフラスを見極めるスキルが必要であり、誰もが同定できる汎用性の高い方法ではない。また、結果は推察に過ぎず、正確な同定まではできないという問題がある。
【0010】
現在、寄生種を正確に同定する方法としては、フラスが排出された被害樹を伐採し、樹体内に潜む幼虫を取り出して成虫まで飼育した後、同定する方法がある(非特許文献1)。しかし、この方法は、被害樹を伐採しなければならず、幼虫の飼育が必要なため、成虫同定までに時間と手間を要する。他にも、フラス中の糞に含まれる遺伝情報から種同定を行う方法も発表されているが、未だ実用化されていない(非特許文献2)。
(【0011】以降は省略されています)

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