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公開番号2024066279
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-05-15
出願番号2022175759
出願日2022-11-01
発明の名称インクジェットインクの顔料分散液及びその製造方法
出願人国立大学法人山形大学
代理人弁理士法人 津国
主分類C09D 11/326 20140101AFI20240508BHJP(染料;ペイント;つや出し剤;天然樹脂;接着剤;他に分類されない組成物;他に分類されない材料の応用)
要約【課題】 顔料分散性の良好なインクジェット用有機顔料含有水系インク組成物を得ることを目的として、顔料分散液及び水系インク組成物を創出し、またその製造プロセスを構築する。
【解決手段】 平均の1次粒子径が50~200nmの有機顔料を分散させることができる、沸点が100℃以上の水溶性有機溶媒と水との混合液を、ハンセンの溶解度パラメータに基づくハンセン溶解球法によって決定すること;非イオン性、非反応性で、該有機顔料と吸着性のある有機基を有するモノマー1と、非イオン性、非反応性で、前記混合液と親和性のある有機基を有するモノマー2からブロック共重合体を得ること;及び前記有機顔料と、モノマー1及びモノマー2から得られたブロック共重合体と、該水溶性有機溶媒と水との混合液を混合する工程を含む、顔料分散液の製造方法、並びに同方法により得られる顔料分散液である。
【選択図】 なし
特許請求の範囲【請求項1】
(1)平均の1次粒子径が50~200nmの有機顔料を提供する工程;
(2)該有機顔料を分散させることができる、沸点が100℃以上の水溶性有機溶媒と水との混合液であって、該水溶性有機溶媒と水の質量比が25/75~50/50である混合液を選択する工程であって、該混合液はハンセンの溶解度パラメータに基づくハンセン溶解球法によって決定される、工程;
(3)非反応性かつ該有機顔料と吸着性のある、非イオン性の有機基を有する、モノマー1を提供する工程;
(4)非反応性かつ該水溶性有機溶媒と水との混合液と親和性のある、非イオン性の有機基を有する、モノマー2を提供する工程;
(5)モノマー1及びモノマー2をブロック共重合して、数平均分子量10,000~30,000かつ分散度1.0~1.5のブロック共重合体を得る工程;及び
(6)該有機顔料と、モノマー1及びモノマー2から得られたブロック共重合体と、該水溶性有機溶媒と水との混合液を混合する工程を含む、
顔料分散液の製造方法。
続きを表示(約 1,900 文字)【請求項2】
前記水溶性有機溶媒と水との混合液を選択する工程が、
(i)水と8種類以上の既知のハンセンの溶解度パラメータを有する分子中に少なくとも1つ以上の水酸基を有する水溶性有機溶媒を選択する工程、
(ii)水と該水溶性有機溶媒を、有機顔料を水と該水溶性有機溶媒に分散させたときに、(A)該有機顔料の平均粒子径が平均の1次粒子径の1倍から3倍になるものと、(B)該有機顔料の平均粒子径が平均の1次粒子径の3倍より大きくなるものとに分類する工程、
(iii)ハンセンの溶解度パラメータに基づく分散項δd、極性項δp、水素結合項δh及び半径rで表されるハンセン球であって、前記(A)の溶媒のハンセンの溶解度パラメータが球の内側にあり、かつ前記(B)の溶媒のハンセンの溶解度パラメータが球の外側にあるようなハンセン球を決定する工程、
(iv)沸点が100℃以上の水溶性有機溶媒と水との合計に対して該水溶性有機溶媒の量が10~50質量%であって、前記ハンセン球の内側に入るようなハンセンの溶解度パラメータを有する、該水溶性有機溶媒と水との混合液を選択する工程、を含む、
請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機顔料と吸着性のある有機基、及び/又は前記水溶性有機溶媒と水との混合液と親和性のある有機基を決定する工程であって、該有機基をその構造に含む有機化合物を有機顔料の分散体に添加したときに、該顔料の平均粒子径が1次粒子径の1~7倍の範囲となるものから選択することにより決定する工程を更に含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
平均の1次粒子径が50~200nmの有機顔料、
該有機顔料を分散させることができる、沸点が100℃以上の水溶性有機溶媒と水との混合液であって、該水溶性有機溶媒と水の質量比が25/75~50/50である混合液、及び
非反応性かつ前記有機顔料と吸着性のある、非イオン性の有機基を有するモノマー1と、非反応性かつ前記有機溶媒と水との混合液と親和性のある、非イオン性の有機基を有するモノマー2とを共重合して得られる、数平均分子量10,000~30,000かつ分散度1.0~1.5のブロック共重合体を含む、顔料分散液であって、
前記水溶性有機溶媒と水との混合液は、ハンセンの溶解度パラメータに基づく分散項δd、極性項δp、水素結合項δhを軸にとる三次元座標空間における、該混合液のハンセンの溶解度パラメータの座標が、該有機顔料を分散させたときに分散体中での粒子径が1次粒子径の1~3倍になるような水を含む8種類以上の分子中に少なくとも1つ以上の水酸基を有する水溶性有機溶媒の有するハンセンの溶解度パラメータから求められるハンセン球の内側に存在するような値である、
顔料分散液。
【請求項5】
モノマー1の有する、有機顔料と親和性のある有機基が芳香族基を含むものである、請求項4記載の顔料分散液。
【請求項6】
モノマー2の有する、水と親和性のある有機基がポリアルキレングリコール基である、請求項4記載の顔料分散液。
【請求項7】
ブロック共重合体におけるモノマー1の割合が、1~99mol%である、請求項4記載の顔料分散液。
【請求項8】
ブロック共重合体が、モノマー1に由来する構造を末端に有し、その末端に芳香族基が導入されているブロック共重合体である、請求項4記載の顔料分散液。
【請求項9】
ブロック共重合体が、モノマー2に由来する構造を末端に有し、その末端にポリアルキレングリコール基が導入されているブロック共重合体である、請求項4記載の顔料分散液。
【請求項10】
有機顔料が、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、28、29、36、C.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Red 17、122、144、166、170、177、202、206、207、214、220、254、C.I.Pigment Yellow 1、3、12、13、14、16、17、55、81、83、74、93、94、95、97、109、110、120、128、138、147、154、155、167、185、191の顔料から選択される、請求項4記載の顔料分散液。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインクの顔料分散液及びその製造方法に関する。
続きを表示(約 4,400 文字)【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷方式は、プロセスが単純で小型化、低コスト化に適していること、記録対象に非接触であり記録対象を広範囲に選ぶことができること等から、広範にわたり採用されている印刷方式である。近年のインクジェットプリンターは、画像信号に応じてインク滴を吐出するオンデマンド型が主流であり、極微量のインクの吐出であっても正確に制御できるようになっている。
【0003】
一般的なインクジェット用のインクには、色材としての顔料又は染料、媒体、場合により分散剤、バインダーが含まれる。色材としては薄膜で耐候性かつ高精細な色調を出すために、ナノメートルサイズの有機顔料が使用される。有機顔料は有機化合物であるがゆえに変性によるカスタマイズが可能という利点があるが、有機顔料を用いたインクは粘度が10mPa・s以下と低いため、有機顔料の分散性を長期間安定して保持することが難しい。また、環境対応への要請により、溶剤系インクから水系インクへの転換が求められているが、有機顔料は水への分散性が問題となることが多い。インクジェット用インクの場合は細いノズルを介してインクが吐出されるので、顔料の凝集はノズルの詰まりや印刷の色ムラを生じ得る。これらを防止する吐出安定性がインクジェット用インクには求められる(特許文献1、2、3)。顔料の分散性は溶剤との相性によって影響を受けるため、溶剤の有する特性をパラメータ化して溶剤が設計されている(特許文献4、5)。
また、インクの分散性を向上するために、良好な顔料分散剤の開発が必要となっている。顔料分散剤は一般に、顔料吸着基と媒体に対する相溶基とからなる共重合体が使用される。特に、精密重合を用いた顔料吸着基ブロックと相溶基ブロックとを有するブロック共重合体が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2021-134264号公報
特開2019-189852号公報
特開2021-147600号公報
特開2020-186391号公報
特開2021-123722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の顔料分散剤は、特に相溶基としてイオン性のものが主であるため、顔料を様々な媒体(紙・フィルム)に固着させるバインダーを共存させると、分散安定性が悪化する場合が多い。このため、バインダーに応じて顔料分散剤を変える必要がある。このような事情から、インクの製造には、顔料に適した溶媒系の決定、媒体に応じたバインダーの選択、顔料に応じた顔料分散剤の選択、これらを踏まえての最終インク配合の決定と、顔料・媒体に応じてカスタマイズされた配合をその都度試行錯誤により決定するプロセスが必要であった。
【0006】
このため、顔料分散性の良好なインクジェット用有機顔料含有水系インク組成物を得ることを目的として、顔料分散液及び水系インク組成物を創出すること、その製造プロセスを構築することに対する要求は常に存在する。特に、水の存在まで考慮して最適な溶媒系を選択することについては知られてはいなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような要求を鑑みて、本発明者らは鋭意検討した結果、水溶性の溶媒の選定、顔料吸着基及び相溶基の選定方法を確立し、最適なブロック共重合体を含み分散安定な顔料分散液及び水系インク組成物を得ることを達成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の顔料分散体の製造方法、顔料分散体、及びインクに関する。
[1]以下の工程:
(1)平均の1次粒子径が50~200nmの有機顔料を提供する工程;
(2)該有機顔料を分散させることができる、沸点が100℃以上の水溶性有機溶媒と水との混合液であって、該水溶性有機溶媒と水の質量比が25/75~50/50である混合液を選択する工程であって、該混合液はハンセンの溶解度パラメータに基づくハンセン溶解球法によって決定される、工程;
(3)非反応性かつ該有機顔料と吸着性のある、非イオン性の有機基を有する、モノマー1を提供する工程;
(4)非反応性かつ該水溶性有機溶媒と水との混合液と親和性のある、非イオン性の有機基を有する、モノマー2を提供する工程;
(5)モノマー1及びモノマー2をブロック共重合して、数平均分子量10,000~30,000かつ分散度1.0~1.5のブロック共重合体を得る工程;及び
(6)該有機顔料と、モノマー1及びモノマー2から得られたブロック共重合体と、該水溶性有機溶媒と水との混合液を混合する工程を含む、
顔料分散液の製造方法。
[2]前記水溶性有機溶媒と水との混合液を選択する工程が、
(i)水と8種類以上の既知のハンセンの溶解度パラメータを有する分子中に少なくとも1つ以上の水酸基を有する水溶性有機溶媒を選択する工程、
(ii)水と該水溶性有機溶媒を、有機顔料を水と該水溶性有機溶媒に分散させたときに、(A)該有機顔料の平均粒子径が平均の1次粒子径の1倍から3倍になるものと、(B)該有機顔料の平均粒子径が平均の1次粒子径の3倍より大きくなるものとに分類する工程、
(iii)ハンセンの溶解度パラメータに基づく分散項δd、極性項δp、水素結合項δh及び半径rで表されるハンセン球であって、前記(A)の溶媒のハンセンの溶解度パラメータが球の内側にあり、かつ前記(B)の溶媒のハンセンの溶解度パラメータが球の外側にあるようなハンセン球を決定する工程、
(iv)沸点が100℃以上の水溶性有機溶媒と水との合計に対して該水溶性有機溶媒の量が10~50質量%であって、前記ハンセン球の内側に入るようなハンセンの溶解度パラメータを有する、該水溶性有機溶媒と水との混合液を選択する工程、を含む、前記[1]記載の製造方法。
[2]前記有機顔料と吸着性のある有機基、及び/又は前記水溶性有機溶媒と水との混合液と親和性のある有機基を決定する工程であって、該有機基をその構造に含む有機化合物を有機顔料の分散体に添加したときに、該顔料の平均粒子径が1次粒子径の1~7倍の範囲となるものから選択することにより決定する工程を更に含む、前記[1]又は[2]の製造方法。
[4]平均の1次粒子径が50~200nmの有機顔料、
該有機顔料を分散させることができる、沸点が100℃以上の水溶性有機溶媒と水との混合液であって、該水溶性有機溶媒と水の質量比が25/75~50/50である混合液、及び
非反応性かつ前記有機顔料と吸着性のある、非イオン性の有機基を有するモノマー1と、非反応性かつ前記有機溶媒と水との混合液と親和性のある、非イオン性の有機基を有するモノマー2とを共重合して得られる、数平均分子量10,000~30,000かつ分散度1.0~1.5のブロック共重合体を含む、顔料分散液であって、
前記水溶性有機溶媒と水との混合液は、ハンセンの溶解度パラメータに基づく分散項δd、極性項δp、水素結合項δhを軸にとる三次元座標空間における、該混合液のハンセンの溶解度パラメータの座標が、該有機顔料を分散させたときに分散体中での粒子径が1次粒子径の1~3倍になるような水を含む8種類以上の分子中に少なくとも1つ以上の水酸基を有する水溶性有機溶媒の有するハンセンの溶解度パラメータから求められるハンセン球の内側に存在するような値である、顔料分散液。
[5]モノマー1の有する、有機顔料と親和性のある有機基が芳香族基を含むものである、前記[4]の顔料分散液。
[6]モノマー2の有する、水と親和性のある有機基がポリアルキレングリコール基である、前記[4]又は[5]の顔料分散液。
[7]ブロック共重合体におけるモノマー1の割合が、1~99mol%である、前記[4]~[6]のいずれかの顔料分散液。
[8]ブロック共重合体が、モノマー1に由来する構造を末端に有し、その末端に芳香族基が導入されているブロック共重合体である、前記[4]~[7]のいずれかの顔料分散液。
[9]ブロック共重合体が、モノマー2に由来する構造を末端に有し、その末端にポリアルキレングリコール基が導入されているブロック共重合体である、前記[4]~[8]のいずれかの顔料分散液。
[10]有機顔料が、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、28、29、36、C.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Red 17、122、144、166、170、177、202、206、207、214、220、254、C.I.Pigment Yellow 1、3、12、13、14、16、17、55、81、83、74、93、94、95、97、109、110、120、128、138、147、154、155、167、185、191の顔料から選択される、前記[4]~[9]のいずれかの顔料分散液。
[11]前記[4]~[10]のいずれか一項記載の顔料分散液を含み、かつ水と水溶性有機溶媒の混合液が、前記[2]記載の方法によって決定されるハンセン球の内側に入るハンセンの溶解度パラメータを有することを特徴とする、インク。
[12]インクジェットインク用の、前記[12]のインク。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、顔料分散性の良好なインクジェット用有機顔料含有水系インク組成物を得ることができる。また、顔料分散剤は媒体に応じて選択されるバインダーに悪影響を与えないため、顔料、顔料分散剤、水溶性溶剤、水からなる顔料分散安定な分散体を得てしまえば、水系インクに必要なその他の成分(バインダー、保湿剤、浸透剤、界面活性剤、水等)を添加しても、良好な顔料分散性とインクジェット吐出性が得られるインク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、上記工程を含む、顔料分散液の製造方法、並びに同方法により製造される顔料分散液に関する。以下、本発明の顔料分散液及びその製造方法について、項目ごとに具体的に説明する。
(【0011】以降は省略されています)

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