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公開番号2025161718
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-10-24
出願番号2024211776
出願日2024-12-04
発明の名称ビスフェノールAの反応系における副生成物を低減する方法
出願人天津大学,Tian Jin University
代理人個人
主分類C07C 37/86 20060101AFI20251017BHJP(有機化学)
要約【課題】 ビスフェノ‐ルAの反応系における副生成物を低減する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 フェノ‐ルとアセトンを反応、濃縮、晶析、分離した後に生成する母液を母液回収システムに送る工程、母液回収システムにより得られた母液を、スルホン酸基含有金属有機骨格触媒に接触させて異性化反応を行う工程、及び異性化反応により得られた生成物を母液回収システムに送り、晶析、脱フェノ‐ルを経てビスフェノ‐ルAを得る工程を含む。ビスフェノ‐ルAの副生成物の異性化反応触媒を発明し、スルホン酸量及び触媒の細孔径を調整でき、触媒反応においてビスフェノ‐ルAの副生成物の転化率が高く、28%~55%に達することができ、ビスフェノ‐ルA選択率も高く、80%~90%に達することができ、ビスフェノ‐ルAの副生成物を効率的にビスフェノ‐ルAに変換することを実現する。
【選択図】 図1
特許請求の範囲【請求項1】
ビスフェノ‐ルAの反応系における副生成物を低減する方法であって、
(a)フェノ‐ルとアセトンを反応、濃縮、晶析、分離した後に生成する母液を母液回収システムに送る工程、
(b)前記母液回収システムにより得られた母液を、スルホン酸基含有金属有機骨格触媒に接触させて異性化反応を行う工程、及び
(c)異性化反応により得られた生成物を前記母液回収システムに送り、晶析、脱フェノ‐ルを経てビスフェノ‐ルAを得る工程を含み、
前記工程(b)の前記スルホン酸基含有金属有機骨格触媒は、金属イオン又は金属クラスタ‐と有機配位子が配位結合を介して結合して成り、含まれる金属はAl、Mg、Ti、Cr、Fe、Cu、Zn、Zr、Ce、Hfのうちの1種類以上の組み合わせであり、含まれる有機配位子は、テレフタル酸、トリメシン酸、イミダゾ‐ル化合物のうちの1種類以上の組み合わせであり、前記触媒の細孔径は、0.5nm~10nm、比表面積は100m

/g~5000m

/g、スルホン酸基の含有量は0.01mmol/g~8.0mmol/gであり、
前記スルホン酸基含有金属有機骨格触媒は、1段階合成、合成後酸処理又は合成後酸化処理の調製方法により得られ、
前記スルホン酸基含有金属有機骨格触媒の1段階合成の調製方法:金属前駆体塩、スルホン酸基含有有機配位子をN,N‐ジメチルホルムアミドに溶解し、撹拌し、次いで晶析釜で140℃~160℃下で24時間~36時間静置晶析し、得られた晶析生成物を濾過し、メタノ‐ル、N,N‐ジメチルホルムアミドで洗浄し、乾燥させた後にスルホン酸基含有金属有機骨格材料を得、前記金属前駆体塩は、Al、Mg、Ti、Cr、Fe、Cu、Zn、Zr、Ce、Hfのうちの1種類以上の組み合わせの酸化物、硝酸塩、塩化物塩、アセチルアセトナ‐トのうちの1種類以上の組み合わせであり、前記スルホン酸基含有有機配位子は、スルホン酸基を有する安息香酸、スルホン酸基を有するテレフタル酸、スルホン酸基を有するトリメシン酸、及びスルホン酸基を有するイミダゾ‐ル化合物のうちの1種類以上の組み合わせであり、
前記スルホン酸基含有金属有機骨格触媒の合成後酸処理の調製方法:前記金属前駆体塩、有機配位子をN,N‐ジメチルホルムアミドに溶解し、撹拌し、次いで晶析釜で120℃~160℃下で24時間~48時間静置晶析し、得られた晶析生成物を濾過し、メタノ‐ル、N,N‐ジメチルホルムアミドで洗浄し、乾燥させた後に金属有機骨格前駆体を得、得られた金属有機骨格材料を、ポリテトラフルオロエチレンライニングを施した反応器に投入し、酸性液体を加え、100℃~180℃で24時間スルホン化処理し、得られた生成物を濾過、洗浄し、乾燥させた後にスルホン酸基含有金属有機骨格材料を得、前記金属前駆体塩は、Al、Mg、Ti、Cr、Fe、Cu、Zn、Zr、Ce、Hfのうちの1種類以上の組み合わせの酸化物、硝酸塩、塩化物塩、アセチルアセトナ‐トのうちの1種類以上の組み合わせであり、前記有機配位子は、アミノを含まない又はアミノを含むテレフタル酸、トリメシン酸、イミダゾ‐ル化合物のうちの1種類以上の組み合わせであり、前記金属有機骨格材料前駆体は、金属イオン又は金属クラスタ‐と前記有機配位子が配位結合を介して結合して成り、前記酸性液体は、硫酸、クロロスルホン酸、1,3‐プロパンスルトンの1種類以上の組み合わせであり、
前記スルホン酸基含有金属有機骨格触媒の合成後酸化処理の調製方法:前記金属前駆体塩、チオ‐ル基含有有機配位子をN,N‐ジメチルホルムアミドに溶解し、撹拌し、次いで晶析釜で110℃~140℃下で24時間~48時間静置晶析し、得られた晶析生成物を濾過し、エタノ‐ルで洗浄し、乾燥させた後に金属有機骨格前駆体を得、得られた金属有機骨格材料を、ポリテトラフルオロエチレンライニングを施した反応器に投入し、酸化性液体を加え、50℃~60℃で2時間~6時間酸化処理し、得られた生成物を濾過、洗浄し、乾燥させた後にスルホン酸基含有金属有機骨格材料を得、前記金属前駆体塩は、Al、Mg、Ti、Cr、Fe、Cu、Zn、Zr、Ce、Hfのうちの1種類以上の組み合わせの酸化物、硝酸塩、塩化物塩、アセチルアセトナ‐トのうちの1種類以上の組み合わせであり、前記有機配位子は、アルキルチ‐オル、アミノチオ‐ルを含むテレフタル酸、トリメシン酸、イミダゾ‐ル化合物のうちの1種類以上の組み合わせであり、前記金属有機骨格材料前駆体は、金属イオン又は金属クラスタ‐と前記有機配位子が配位結合を介して結合して成り、前記酸化性液体は、過酸化水素である
ことを特徴とする、ビスフェノ‐ルAの反応系における副生成物を低減する方法。
続きを表示(約 1,200 文字)【請求項2】
前記工程(a):ビスフェノ‐ルA反応器(101)でフェノ‐ルとアセトンを合成してビスフェノ‐ルAを得、前記ビスフェノ‐ルA反応器(101)出口の反応液を濃縮塔(102)に送って濃縮し、前記濃縮塔(102)の塔頂で得られた軽質成分は、溶媒回収システムにより回収されて得られた前記フェノ‐ル、前記アセトンを前記ビスフェノ‐ルA反応器(101)に送り、前記濃縮塔(102)の塔底から得られた濃縮反応液を晶析反応器(103)に送って前記フェノ‐ルと晶析してビスフェノ‐ルA付加物、反応器の晶析母液を得、前記ビスフェノ‐ルA付加物は脱フェノ‐ル反応器(104)に送られ前記フェノ‐ルを除去して製品ビスフェノ‐ルAを得、脱フェノ‐ルを母液回収システム(106)に送り、前記反応器の晶析母液が前記母液回収システム(106)に送られ母液を回収し、前記母液回収システム(106)により回収されたフェノ‐ルを前記ビスフェノ‐ルA反応器(101)に送り、前記母液回収システム(106)により回収された前記ビスフェノ‐ルA付加物を前記晶析反応器(103)に送ることを特徴とする、請求項1に記載のビスフェノ‐ルAの反応系における副生成物を低減する方法。
【請求項3】
前記工程(b):前記母液回収システム(106)がフェノ‐ル、前記ビスフェノ‐ルA付加物を回収した後に得られる回収システムの晶析母液の一部を、前記スルホン酸基含有金属有機骨格触媒を格納した異性化反応器(107)に送って異性化反応を行い、前記母液回収システム(106)が前記フェノ‐ル、前記ビスフェノ‐ルA付加物を回収した後に得られる回収システムの晶析母液の一部を、分解転位反応器(108)に送って分解転位反応を行い、得られた分解転位生成物を前記母液回収システム(106)に送り、前記異性化反応では、触媒と前記母液を固定床反応で接触させ、反応温度は50~90℃、反応圧力は0.1~1.0MPaA、液空間速度は0.1~10h
‐1
であることを特徴とする、請求項2に記載のビスフェノ‐ルAの反応系における副生成物を低減する方法。
【請求項4】
前記工程(c):前記異性化反応器(107)出口の異性化生成物を前記母液回収システム(106)に送り、前記晶析反応器(103)を経由して前記フェノ‐ルと晶析させて前記ビスフェノ‐ルA付加物を得、前記脱フェノ‐ル反応器(104)に入り、前記フェノ‐ルを除去して前記製品ビスフェノ‐ルAを得ることを特徴とする、請求項3に記載のビスフェノ‐ルAの反応系における副生成物を低減する方法。
【請求項5】
前記工程(a)の前記回収システムの晶析母液は、2,4‐ビスフェノ‐ルA、前記フェノ‐ル、前記ビスフェノ‐ルA付加物を含む混合物であり、前記異性化反応器は、固定床反応器であることを特徴とする、請求項3に記載のビスフェノ‐ルAの反応系における副生成物を低減する方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスフェノールAの反応系における副生成物を低減する方法に関し、特に、催化ビスフェノールA反応システム中副生成物2,4-BPA、トリスフェノール、クロマンの異性化を触媒にしてビスフェノールAを製造する方法及び触媒に関し、ビスフェノールAの反応系における副生成物を低減する方法にも関する。
続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】
【0002】
ビスフェノールA(Bisphenol A、BPA)、化学名2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンは、触媒の作用でフェノールとアセトンを縮合反応させて製造する広く使用されている有機化学原料であり、主にポリカーボネート、エポキシ樹脂などの高分子材料の製造に使用される。
【0003】
ビスフェノールA反応では2,4-ビスフェノールA(2,4-BPAと略す)を副生成物として生成し、フェノールとアセトンを縮合反応させて生成するp-イソプロペニルフェノールが主生成物ビスフェノールAと反応し続けて4-(2,2,4-トリメチルクロマン-4-イル)フェノール(トリスフェノールと略す)を生成する。また、原料のフェノールには少量のメシチルアセトンと、酸性触媒条件でアセトン自体が生成したメシチルアセトンが含まれ、フェノールと縮合反応して2-2-4-トリメチル-4-(4´-ヒドロキシフェニル)-クロマン、1,1,3-トリメチル-1-(4´-ヒドロキシフェニル)インダン-6-オール(クロマンと略す)を生成することができる。前述のビスフェノールA反応における副生成物は、製品ビスフェノールAの純度及び色に影響を与え、製品の品質及び下流の使用に影響を与える。したがって晶析母液の処理は、最終製品の品質及び原料を保証するための重要なステップとなっている。
【0004】
上記課題を解決するため、ビスフェノールAの副生成物に対して異性化反応を行い、より多くの製品ビスフェノールAを得ることが行われている。特許文献1では、スルホン化されたイオン交換樹脂の存在下で触媒縮合反応を経てフェノールとアセトンからビスフェノールAを製造する方法が開示され、ビスフェノールAの濃縮晶析液ストリームをターゲットにし、マクロ多孔質スルホン化イオン交換触媒の存在下で異性化される。特許文献2では、フェノールとアセトンの反応後の混合液を濃縮、晶析、固液分離した後、得られた母液の一部に異性化処理を施した後、次に晶析、固液分離してビスフェノールAを得るビスフェノールAの製造方法が開示されている。特許文献3ではケトンとフェノールの縮合反応からビスフェノールを製造して得られた生成物は水性条件下でスルホン酸基を有するイオン交換樹脂と異性化反応し、分離してビスフェノールを得る異性化方法が開示されている。
【0005】
現在、ビスフェノールAの副生成物である2,4-BPAの異性化反応を触媒するための工業的に使用されている触媒は酸性イオン交換樹脂であるが、その触媒選択性は比較的低く、触媒安定性は高くなく、細孔閉塞、コークス蓄積による失活が起こりやすい。これは主にビスフェノールAの副生成物の分子サイズが大きいため、より大きな反応スペースが必要となり、樹脂は架橋と膨潤の程度により制限され、細孔径の調節特性が悪いため、触媒反応中の副生成物の物質移動や拡散に不利に働くからである。且つ、異性化反応において異性化触媒活性を発揮するスルホン酸基、チオール基が樹脂から流出しやすいことで、触媒性能を低下させると共に設備を腐食させ、その後の分離及び製品の品質に影響を及ぼす。
【0006】
要するに、現段階の樹脂触媒によるビスフェノールA合成の反応プロセスにおいて、反応における副生成物を異性化・変換してビスフェノールAを得る適切な方法スキームが考慮されておらず、特に、反応後の晶析母液については、副生成物の最大限の回収・濃縮が考慮されておらず、多成分や高分子の副生成物に対する適切な異性化処理の操作スキームが欠ける。このため、ビスフェノールA反応系における副生成物を効率よく低減するプロセスを開発し、細孔構造の調整、酸性点の制御が可能な製造方法を用いてビスフェノールA反応系における副生異性化反応に適した触媒を得る必要がある。
【0007】
このため、本発明は、ビスフェノールAの副生成物の異性化処理を触媒する過程で副生成物の濃縮効果が悪く、異性化反応活性が低いなどという問題に着目して、新しい異性化処理方法及びそれに適合し、適切な異性化触媒を開発し、主な新規点はフェノールとアセトンを反応、濃縮、晶析、分離させた後に生成するビスフェノールA含有副生成物を収集し、ビスフェノールAの副生成物が豊富に含まれる母液を得、異性化反応器に送る異性化処理方法を提案し、ルホン酸含有量とチオール含有量を調整でき、ビスフェノールA高分子副生成物の反応に適したスルホン酸基含有金属有機骨格触媒を使用してビスフェノールAの副生成物の異性化を触媒し、高いビスフェノールAの副生成物の転化率及びビスフェノールA収率を得ることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
中国特許第CN 200880004965.0号公報
中国特許第CN 201380033378.5号公報
中国特許第CN 202080047470.7号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、フェノールとアセトンを反応、濃縮、晶析、分離させた後に生成する母液を部分的に分解転位反応器及び異性化反応器にそれぞれ送り、次いで、母液をスルホン酸基含有金属有機骨格触媒に接触させて異性化反応を行い、得られた生成物を晶析、分離してビスフェノールAを得るビスフェノールAの反応系における副生成物を低減する方法を提供することである。この方法を用いてビスフェノールAの反応系における副生成物を処理し、ビスフェノールAの副生成物を効率よくビスフェノールAに変換し、ビスフェノールAの副生成物の転化率が高く、得られる生成物ビスフェノールAの収率も高い。
【0010】
異性化反応式は、次のとおりである。
(【0011】以降は省略されています)

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