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公開番号2025081443
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-05-27
出願番号2025022184,2022190445
出願日2025-02-14,2011-03-30
発明の名称抗原の消失を促進する、FcRnに対するアフィニティーが変更された抗体
出願人中外製薬株式会社
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C07K 16/00 20060101AFI20250520BHJP(有機化学)
要約【課題】抗原の細胞内への取込の促進及び血漿中の抗原濃度の減少を促進する抗原結合分子、前記抗原結合分子を含む医薬組成物、及びそれらの製造方法の提供。
【解決手段】血漿中でのpHにおける抗原結合活性と比較して早期エンドソーム内でのpHにおける抗原結合活性が弱く、かつ血漿中でのpHにおけるヒトFcRn結合活性を有する抗体。抗原結合ドメインとヒトFcRn結合ドメインとを含む抗原結合分子であって、pH中性域においてヒトFcRn結合活性を有し、pH中性域におけるヒトFcRn結合活性がKD 3.2μMより強い、前記抗原結合分子。
【効果】前記抗体は、抗原の細胞内への取込を促進し、1分子の抗体が結合できる抗原の数を増加させることができ、そのような抗体の投与により血漿中の抗原減少を促進することができ、前記抗体の使用により抗体の薬物動態を改善することができる。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
本明細書に記載の発明。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原結合分子による抗原の細胞内への取込を促進させる方法、1分子の抗原結合分子が結合できる抗原の数を増加させる方法、抗原結合分子の投与により血漿中の抗原濃度の減少を促進させる方法、抗原結合分子の薬物動態を改善する方法、血漿中の総抗原濃度または遊離抗原濃度を減少させる方法、抗原の細胞内への取込が改善された抗原結合分子、結合できる抗原の数が増加した抗原結合分子、分子の投与により血漿中の抗原濃度の減少を促進させることができる抗原結合分子、薬物動態が改善された抗原結合分子、当該抗原結合分子を含む医薬組成物、上記分子の製造方法等に関する。
続きを表示(約 3,400 文字)【0002】
優先権
本発明は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、2010年3月30日に提出された日本国特許出願第2010-079667号、および2010年11月9日に提出された日本国特許出願第2010-250830号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
抗体は血漿中での安定性が高く、副作用も少ないことから医薬品として注目されている。中でもIgG型の抗体医薬は多数上市されており、現在も数多くの抗体医薬が開発されている(非特許文献1および非特許文献2)。一方、第2世代の抗体医薬に適用可能な技術として様々な技術が開発されており、エフェクター機能、抗原結合能、薬物動態、安定性を向上させる、あるいは、免疫原性リスクを低減させる技術等が報告されている(非特許文献3)。抗体医薬は一般に投与量が非常に高いため、皮下投与製剤の作製が困難であること、製造コストが高いこと等が課題として考えられる。抗体医薬の投与量を低減させる方法として、抗体の薬物動態を改善する方法と、抗体と抗原のアフィニティーを向上させる方法が考えられる。
【0004】
抗体の薬物動態を改善する方法として、定常領域の人工的なアミノ酸置換が報告されている(非特許文献4および5)。抗原結合能、抗原中和能を増強させる技術として、アフィニティーマチュレーション技術(非特許文献6)が報告されており、可変領域のCDR領域などのアミノ酸に変異を導入することで抗原への結合活性を増強することが可能である。抗原結合能の増強によりインビトロの生物活性を向上させる、あるいは投与量を低減することが可能であり、さらに生体内での薬効を向上させることも可能である(非特許文献7)。
【0005】
一方、抗体1分子あたりが中和できる抗原量はアフィニティーに依存し、アフィニティーを強くすることで少ない抗体量で抗原を中和することが可能であり、様々な方法で抗体のアフィニティーを強くすることが可能である(非特許文献6)。さらに抗原に共有結合的に結合し、アフィニティーを無限大にすることができれば1分子の抗体で1分子の抗原(2価の場合は2抗原)を中和することが可能である。しかし、これまでの方法では1分子の抗体で1分子の抗原(2価の場合は2抗原)の化学量論的な中和反応が限界であり、抗原量以下の抗体量で抗原を完全に中和することは不可能であった。つまり、アフィニティーを強くする効果には限界が存在していた(非特許文献9)。中和抗体の場合、その中和効果を一定期間持続させるためには、その期間に生体内で産生される抗原量以上の抗体量が投与される必要があり、上述の抗体の薬物動態改善、あるいは、アフィニティーマチュレーション技術だけでは、必要抗体投与量の低減には限界が存在していた。そのため、抗原量以下の抗体量で抗原の中和効果を目的期間持続するためには、1つの抗体で複数の抗原を中和する必要がある。これを達成する新しい方法として、最近、抗原に対してpH依存的に結合する抗体が報告された(特許文献1)。抗原に対して血漿中の中性条件下においては強く結合し、エンドソーム内の酸性条件下において抗原から解離するpH依存的抗原結合抗体はエンドソーム内で抗原から解離することが可能である。pH依存的抗原結合抗体は、抗原を解離した後に抗体がFcRnによって血漿中にリサイクルされると再び抗原に結合することが可能であるため、1つのpH依存的抗原結合抗体で複数の抗原に繰り返し結合することが可能となる。
【0006】
また、抗原の血漿中滞留性は、FcRnに結合してリサイクルされる抗体と比較して非常に短い。このような血漿中滞留性が長い抗体がその抗原に結合すると、抗体抗原複合体の血漿中滞留性は抗体と同様に長くなる。そのため、抗原は抗体と結合することにより、むしろ血漿中滞留性が長くなり、血漿中抗原濃度は上昇する。
【0007】
IgG抗体はFcRnに結合することで長い血漿中滞留性を有する。IgGとFcRnの結合は酸性条件下(pH6.0)においてのみ認められ、中性条件下(pH7.4)においてはほとんど結合は認められない。IgG抗体は非特異的に細胞に取り込まれるが、エンドソーム内の酸性条件下においてエンドソーム内のFcRnに結合することで細胞表面上に戻り、血漿中の中性条件下においてFcRnから解離する。IgGのFcドメインに変異を導入し、酸性条件下におけるFcRnへの結合を失わせると、エンドソーム内から血漿中にリサイクルされなくなるため、抗体の血漿中滞留性は著しく損なわれる。IgG抗体の血漿中滞留性を改善する方法として、酸性条件下におけるFcRnへの結合を向上させる方法が報告されている。IgG抗体のFcドメインにアミノ酸置換を導入し、酸性条件下のFcRnへの結合を向上させることで、エンドソーム内から血漿中へのリサイクル効率が上昇し、その結果、血漿中滞留性が改善する。アミノ酸置換を導入する際に重要なのは、中性条件下におけるFcRnへの結合を高めないことである。中性条件下においてFcRnに結合してしまうと、エンドソーム内の酸性条件下においてFcRnに結合することで細胞表面上に戻っても、中性条件下の血漿中においてIgG抗体がFcRnから解離しないとIgG抗体が血漿中にリサイクルされないため、逆に血漿中滞留性は損なわれることになる。例えば、J Immunol. 2002;169(9):5171-80.に記載されているように、IgG1に対してアミノ酸置換を導入することによって中性条件下(pH7.4)においてマウスFcRnに対する結合が認められるようになった抗体をマウスに投与した場合、抗体の血漿中滞留性が悪化することが報告されている。また、J Immunol. 2009;182(12):7663-71.やJ Biol Chem. 2007 Jan 19;282(3):1709-17.やJ Immunol. 2002 Nov 1;169(9):5171-80.に記載されているように、IgG1に対してアミノ酸置換を導入することによって酸性条件下(pH6.0)におけるヒトFcRnの結合が向上するが、同時に中性条件下(pH7.4)におけるヒトFcRnに対する結合が認められるようになった抗体をカニクイザルに投与した場合、抗体の血漿中滞留性は改善することは無く、血漿中滞留性に変化が認められなかったことが報告されている。そのため、抗体の機能を向上させる抗体工学技術においては、中性条件下(pH7.4)におけるヒトFcRnに対する結合を増加させることなく酸性条件下におけるヒトFcRnへの結合を増加させることで抗体の血漿中滞留性を改善することにのみ注力されており、これまでにIgG抗体のFcドメインにアミノ酸置換を導入し、中性条件下(pH7.4)におけるヒトFcRnに対する結合を増加させることの利点は報告されていない。抗体の抗原に対するアフィニティーを向上させても抗原の血漿中からの消失を促進することはできない。上述のpH依存的抗原結合抗体は、通常の抗体と比較して抗原の血漿中からの消失を促進する方法としても有効であることが報告されている(特許文献1)。
【0008】
このようにpH依存的抗原結合抗体は1つの抗体で複数の抗原に結合し、通常の抗体と比較して抗原の血漿中からの消失を促進することができるため、通常の抗体では成し得なかった作用を有する。しかしながら、これまでにこのpH依存的抗原結合抗体の抗原に繰り返し結合できる効果、および、抗原の血漿中からの消失を促進する効果をさらに向上させる抗体工学の手法は報告されていない。
【0009】
なお、本発明の先行技術文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
WO 2009/125825, ANTIGEN-BINDING MOLECULE CAPABLE OF BINDING TO TWO OR MORE ANTIGEN MOLECULES REPEATEDLY
【非特許文献】
(【0011】以降は省略されています)

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