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公開番号
2025007748
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-01-17
出願番号
2023109354
出願日
2023-07-03
発明の名称
遺伝子変異の定量分析方法、定量分析装置、及び定量分析キット
出願人
株式会社日立製作所
代理人
弁理士法人平木国際特許事務所
主分類
C12Q
1/6869 20180101AFI20250109BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】一塩基伸長反応と電気泳動とを組み合わせた遺伝子分析方法において、より定量的に、かつより幅広い濃度範囲(ダイナミックレンジ)のサンプル中で、遺伝子変異を検出するための方法及び手段を提供すること。
【解決手段】一塩基伸長反応の前に、サンプルに対して内部標準となる既知の塩基長の蛍光標識マーカーを混合し、検出対象とする塩基種の分だけサンプルを分割してそれぞれ異なるキャピラリーにて電気泳動を実施し、各キャピラリーで得られる内部標準のピークの蛍光信号強度に対する一塩基伸長反応産物のピークの蛍光信号強度の比率の比較より、遺伝子変異の存在比を定量することを特徴とする、遺伝子変異の定量分析方法。
【選択図】図3
特許請求の範囲
【請求項1】
遺伝子変異の定量分析方法であって、
(a)被検サンプルに対して、第1の蛍光色素で標識された一定濃度の内部標準を添加する工程、
(b)被検サンプルを、検出塩基種の種類の数だけ分割又は準備する工程、
(c)被検サンプルに対して、標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーを添加する工程、
(d)塩基種ごとに分割又は準備された被検サンプルと、標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、第2の蛍光色素で標識された塩基種ごとのターミネーターとを用いて一塩基伸長反応を行う工程、
(e)前記塩基種ごとに前記一塩基伸長反応の産物を電気泳動に供する工程、
(f)前記電気泳動の移動度と前記蛍光色素の蛍光強度を測定し、前記蛍光強度に基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程
を含み、
各塩基種ごとに得られる前記内部標準のピークの第1の蛍光色素の蛍光強度に対する、前記一塩基伸長反応の産物のピークの第2の蛍光色素の蛍光強度の比率を算出し、前記比率から各塩基種の一塩基伸長反応産物の量比を定量することを特徴とする、遺伝子変異の定量分析方法。
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【請求項2】
工程(a)、工程(b)、工程(c)、工程(d)、工程(e)及び工程(f)の順序で各工程を実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)、工程(a)、工程(b)、工程(d)、工程(e)及び工程(f)の順序で各工程を実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(d)において、第2の蛍光色素で標識された塩基種ごとのターミネーターに加えて、蛍光色素で標識されていない、前記塩基種とは異なる塩基種のターミネーターの存在下で一塩基伸長反応を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)において、前記一定濃度の内部標準が、検出塩基種と同じ塩基種の塩基によって伸長した、既知濃度の一塩基伸長反応産物であり、
前記既知濃度の一塩基伸長反応産物のピークの第1の蛍光色素の蛍光強度に対する、前記一塩基伸長反応産物のピークの第2の蛍光色素の蛍光強度の比率を算出し、前記比率から各塩基種の一塩基伸長反応産物の量比を定量する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)及び工程(d)を実施した後、
(g)一塩基伸長反応の鋳型となった被検サンプルを、被検サンプルを捕捉するための固相を用いて捕捉し、前記一塩基伸長反応産物を含む反応溶液を回収する工程
をさらに含み、
工程(c)、工程(d)及び工程(g)を、同じ被検サンプルを用いて検出塩基種の種類の数だけ反復して実施することにより、工程(b)として、前記被検サンプルに対応する、検出塩基種ごとに準備された一塩基伸長反応産物を得、
その後、工程(a)、工程(e)及び工程(f)を実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記固相が磁気ビーズである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)において、被検サンプルを2、3又は4つに分割する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子変異が一塩基多型(SNP)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
電気泳動がキャピラリー電気泳動である、請求項1に記載の方法。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子変異、特に低頻度で存在する遺伝子変異、の定量分析方法、並びにかかる方法に基づく遺伝子変異の定量分析装置及び定量分析用キットに関する。
続きを表示(約 3,600 文字)
【背景技術】
【0002】
遺伝子解析技術の進展によって、種々の疾患と遺伝子変異の関連性が解明されつつある。がん等の疾患に由来する後天的な遺伝子変異である体細胞系列変異は、ゲノム上での変異発生位置が予測できない、個体内や組織内における変異存在比率が予測できない、という特徴がある。例えば、がん患者から切除した腫瘍部位の組織試料にはがん細胞と正常細胞が含まれ、さらにがん細胞間においても遺伝子変異に多様性がある。そのため、ある特定遺伝子のある特定位置に遺伝子変異を有する細胞の試料中存在比率は、非常に低くなっている場合がある。したがって、疾患に由来する後天的な遺伝子変異を検出するために高感度な検出方法が必要になる。また、治療方法や治療薬の選択においては、標的遺伝子のある特定位置の遺伝子変異の有無だけではなく、その存在比率を指標とする場合がある。そのため、遺伝子変異の高感度な検出に加えて、その存在比率の定量化も必要となる。
【0003】
遺伝子変異の1つに、一塩基多型(SNP;Single nucleotide polymorphism)が挙げられる。例えば非特許文献1では、SNP検出の一塩基伸長反応キットであるSNaPshot(登録商標)と、キャピラリー電気泳動装置のフラグメント解析を用いて、ホルマリン固定及びパラフィン包埋組織を対象に標的となる腫瘍由来の遺伝子配列をマルチプレックスのポリメラーゼ連鎖反応(PCR:polymerase chain reaction)で選択的に濃縮後、13のがん遺伝子における120の既知の遺伝子変異が検出できることを示している。ヒト肺がんA427細胞株のKRAS G12D変異、及び肺腺がん細胞株NCI-H1975のEGFR T790M変異の測定において、野生型に対する変異型の検出感度が約3%であることが示されている。なお、SNaPshotの一塩基伸長反応で検出できるアレル頻度は、典型的には5%程度とされている。これは、非特許文献1の中でも述べられているとおり、4種の塩基であるアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)及びチミン(T)に対して作用する、蛍光色素ラベルが付いたジデオキシヌクレオチド三リン酸(ターミネーター)、すなわち、ddATP、ddCTP、ddGTP及びddTTPの蛍光強度ばらつきが大きく、一塩基伸長反応で得られる産物以外の不要なピークによって、検出感度は数%が限界になると考えられる。
【0004】
遺伝子変異の検出感度向上の観点では、特許文献1において、微量に存在する体細胞系列遺伝子多型を検出する際に感度低下の要因になる蛍光信号クロストーク(複数種の蛍光信号が互いに干渉して生じる蛍光信号強度の変化)の影響をなくす工夫が報告されている。核酸試料を分けてそれぞれを塩基種毎で反応させ、塩基種毎にそれぞれ個別の流路で電気泳動し、複数の流路のそれぞれで電気泳動される核酸試料毎に、塩基種毎の標識信号から得られる波形データに基づいて遺伝子変異を検出する方法が提案されている(ただし、具体的にどの程度の検出感度の向上が得られるかは記述されていない)。また、定量精度の向上の観点では、特許文献2において、規格化精度を上げて、標的とする遺伝子領域に存在する微量な遺伝子変異に関する情報を高感度・高精度に取得する方法が提案されている。塩基種毎に標識化された分析対象の核酸試料を電気泳動し、塩基種毎の標識信号を検出して検出強度の波形データを生成し、塩基種毎の波形データの各ピーク位置について他のピーク位置を選択し、各ピーク位置の信号強度の、選択した他ピーク位置の信号強度に対する相対信号強度を算出し、分析対象の核酸試料の相対信号強度と、既知の核酸試料の相対信号強度とを各ピーク位置において比較して核酸試料の塩基配列座標位置における各塩基種の分析を行う。
【0005】
さらに、例えば野生型に対する変異型の存在比が1%未満のような、微量の遺伝子変異を検出する際に、単純にサンプル濃度を上げて検出するアプローチも考えられる。このとき、変異遺伝子を定量するために内部標準法が用いられる。内部標準法では、分析対象及び内部標準の濃度に対してそれぞれの信号強度が比例、すなわち分析対象及び内部標準の濃度に対するそれぞれの信号強度の増加が直線的であることが必要とされる。サンプル濃度を上げたときの信号強度の直線性が保たれていることを前提とし、その特性によって遺伝子変異の定量検出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特許第5723993号(米国特許出願公開2014/0336949号)
特許第5789720号(米国特許第10,274,459号)
【非特許文献】
【0007】
Dias-Santagata, D. et al., EMBO Molecular Medicine 第2巻第146-158頁 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
遺伝子変異検出技術として、キャピラリー電気泳動のフラグメント解析を用いた一塩基伸長反応産物による遺伝子変異(例えばSNP)検出が挙げられる。しかし、その野生型に対する変異型の検出感度は一般に数%が限界である。特に、4種の塩基に対して異なる蛍光色素ラベルを結合させた一塩基伸長反応産物を、各キャピラリーで電気泳動する場合には、蛍光信号クロストークの影響に加えて塩基種同定のための色変換(蛍光信号のアンミキシング)においても信号強度の誤差が生じ、定量性が損なわれてしまう。1%以下の低頻度遺伝子変異を精度良く定量的に検出するためには、蛍光信号の取得方法、データ処理方法の工夫が必要である。加えて、1%以下の感度での遺伝子変異検出に際して、従来よりも幅広い濃度範囲(ダイナミックレンジ)でサンプル中の野生型と変異型に由来する蛍光信号を検出することが必要となる。ところが、実際のキャピラリー電気泳動では、定量検出のために内部標準法を適用しようとすると、低濃度のサンプルは濃度に対する蛍光信号強度の増加は直線的に増加するものの、一定濃度以上のサンプルでは蛍光信号強度が飽和してしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、一塩基伸長反応の前に、サンプルに対して内部標準となる既知の塩基長の蛍光標識マーカーを混合し、検出対象とする塩基種の分だけサンプルを分割してそれぞれ異なるキャピラリーにて電気泳動を実施し、各キャピラリーで得られる内部標準のピークの蛍光信号強度に対する一塩基伸長反応産物のピークの蛍光信号強度の比率の比較より、遺伝子変異の存在比を定量することができるという知見を得た。これは、各キャピラリーで得られる内部標準のピークの蛍光信号強度に対する一塩基伸長反応産物のピークの蛍光信号強度の比率を比較すると、一定濃度以上のサンプルであっても蛍光信号強度が飽和せずに定量できる、という、高ダイナミックレンジのサンプルに対する内部標準法を適用によって実現できる上記課題の解決手段である。
【0010】
したがって、一態様において、本発明は、遺伝子変異の定量分析方法であって、
(a)被検サンプルに対して、第1の蛍光色素で標識された一定濃度の内部標準を添加する工程、
(b)被検サンプルを、検出塩基種の種類の数だけ分割又は準備する工程、
(c)被検サンプルに対して、標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーを添加する工程、
(d)塩基種ごとに分割又は準備された被検サンプルと、標的塩基配列を検出するための一塩基伸長反応用プライマーと、第2の蛍光色素で標識された塩基種ごとのターミネーターとを用いて一塩基伸長反応を行う工程、
(e)前記塩基種ごとに前記一塩基伸長反応の産物を電気泳動に供する工程、
(f)前記電気泳動の移動度と前記蛍光色素の蛍光強度を測定し、前記蛍光強度に基づいて前記標的塩基配列の野生型と変異型を検出する工程
を含み、
各塩基種ごとに得られる前記内部標準のピークの第1の蛍光色素の蛍光強度に対する、前記一塩基伸長反応の産物のピークの第2の蛍光色素の蛍光強度の比率を算出し、前記比率から各塩基種の一塩基伸長反応産物の量比を定量することを特徴とする、遺伝子変異の定量分析方法を提供する。
(【0011】以降は省略されています)
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