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公開番号
2025003006
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-01-09
出願番号
2023103433
出願日
2023-06-23
発明の名称
常磁性ガーネット型透明セラミックス及び磁気光学デバイス
出願人
信越化学工業株式会社
代理人
個人
,
個人
,
個人
,
個人
主分類
C04B
35/44 20060101AFI20241226BHJP(セメント;コンクリート;人造石;セラミックス;耐火物)
要約
【課題】 Scを意図的に含まない、TYSAGに代わる新しい常磁性ガーネット型透明セラミックス及びそれを用いた磁気光学デバイスを提供する。
【解決手段】 常磁性ガーネット型透明セラミックスは、下記式(1)で表される複合酸化物を99質量パーセント以上含有する焼結体を含み、
Tb
8-x-y-z
Y
x
Lu
y
Al
z
O
12
(1)
(式中、0.10≦x<1.35、0.05≦y<0.30、4.80≦z<5.00、5.00≦y+zである。)
光路長20mmでの波長1,064nmにおける反射を除いた光の挿入損失が0.05dB以下である。磁気光学素子は、上記常磁性ガーネット型透明セラミックスをファラデー回転子110として備え、ファラデー回転子の光軸104上の前後に偏光子120と検光子130を備えた波長帯0.9μm以上、1.1μm以下で利用可能な光アイソレータである。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
下記式(1)で表される複合酸化物を99質量パーセント以上含有する焼結体を含む常磁性ガーネット型透明セラミックスであって、
Tb
8-x-y-z
Y
x
Lu
y
Al
z
O
12
(1)
(式中、0.10≦x<1.35、0.05≦y<0.30、4.80≦z<5.00、5.00≦y+zである。)
光路長20mmでの波長1,064nmにおける反射を除いた光の挿入損失が0.05dB以下である常磁性ガーネット型透明セラミックス。
続きを表示(約 470 文字)
【請求項2】
焼結助剤としてSiO
2
を0.00質量%超、0.10質量%以下含有する請求項1に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
【請求項3】
波長1,064nmでのベルデ定数が30rad/(T・m)以上である請求項1又は2に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
【請求項4】
光路長20mmにおける波長1,070nmのレーザー光を、ビーム径1.6mm、入射パワー100Wで入射した場合の熱レンズによるビーム径変化率の絶対値が15%以下である請求項1又は2に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックス。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の常磁性ガーネット型透明セラミックスを用いて構成される磁気光学デバイス。
【請求項6】
上記常磁性ガーネット型透明セラミックスをファラデー回転子として備え、該ファラデー回転子の光学軸上の前後に偏光材料を備えた波長帯0.9μm以上、1.1μm以下で利用可能な光アイソレータである請求項5記載の磁気光学デバイス。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視及び/又は近赤外域において透光性を有する常磁性ガーネット型透明セラミックス及び磁気光学デバイスに関し、より詳細には、光アイソレータなどの磁気光学デバイスを構成するのに好適なテルビウムを含む常磁性ガーネット型透明セラミックス及びそれを用いた磁気光学デバイスに関する。
続きを表示(約 3,600 文字)
【背景技術】
【0002】
産業用レーザー加工機には反射光などの光の逆戻りを防ぐ目的で光アイソレータが設けられており、その内部はテルビウム添加ガラスやテルビウムガリウムガーネット(TGG)がファラデー回転子として搭載されている(例えば、特開2011-213552号公報(特許文献1))。ファラデー効果の大きさはベルデ定数で定量化され、TGG結晶のベルデ定数は40rad/(T・m)(0.13min/(Oe・cm))、テルビウム添加ガラスでは0.098min/(Oe・cm)であり、TGG結晶のベルデ定数は比較的大きいことから、標準的なファラデー回転子として広く使用されている。その他にアルミニウムを含むガーネットとして、テルビウムスカンジウムアルミニウムガーネット結晶(TSAG結晶)、テルビウムスカンジウムルテチウムアルミニウムガーネット結晶(TSLAG結晶)(例えば、特開2017-137223号公報(特許文献2))、テルビウムアルミニウムガーネット結晶(TAG結晶)があり、特にTAG結晶のベルデ定数はTGG結晶の1.3倍程度であることから、ファラデー回転子の長さを短くできるため、ファイバーレーザーに使用可能かつ良好な結晶である(例えば、特開2002-293693号公報(特許文献3)、国際公開第2004/029339号(特許文献4))。
【0003】
近年、TAGを透明セラミックスで作製する方法が開示されている(例えば、国際公開第2017/033618号(特許文献5)、国際公開第2018/193848号(特許文献6)、国際公開第2022/054596号(特許文献7)、“High Verdet constant of Ti-doped terbium aluminum garnet (TAG) ceramics”(非特許文献1))。またテルビウムの一部をイットリウムで置換したYTAG(Tb
x
Y
1-x
)
3
Al
5
O
12
(0.2≦x≦0.8、または0.5≦x≦1.0またはx=0.6)の透明セラミックスの作製方法も報告されている(例えば、“Fabrication and properties of (Tb
x
Y
1-x
)
3
Al
5
O
12
transparent ceramics by hot isostatic pressing”(非特許文献2)、“Development of optical grade (Tb
x
Y
1-x
)
3
Al
5
O
12
ceramics as Faraday rotator material”(非特許文献3)、“Effect of (Tb+Y)/Al ratio on Microstructure Evolution and Densification Process of (Tb
0.6
Y
0.4
)
3
Al
5
O
12
Transparent Ceramics”(非特許文献4))。Tbを含有する希土類アルミニウムガーネットはTGGと比較して高い熱伝導率を示すため、熱レンズ効果が小さいファラデー素子になると期待されている。更に3価イオン置換したTAG透明セラミックスを搭載した光アイソレータついて開示されており、TGGを搭載した光アイソレータと比較して熱レンズ効果が小さい光アイソレータである事が示されている。(例えば、特開2020-067523号公報(特許文献8))
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2011-213552号公報
特開2017-137223号公報
特開2002-293693号公報
国際公開第2004/029339号
国際公開第2017/033618号
国際公開第2018/193848号
国際公開第2022/054596号
特開2020-067523号公報
【非特許文献】
【0005】
“High Verdet constant of Ti-doped terbium aluminum garnet (TAG) ceramics”, Optical Materials Express, Vol.6, No.1, 191-196 (2016)
“Fabrication and properties of (TbxY1-x)3Al5O12 transparent ceramics by hot isostatic pressing”, Optical Materials, 72, 58-62 (2017)
“Development of optical grade (TbxY1-x)3Al5O12 ceramics as Faraday rotator material”, Journal of American Ceramics Society, 100, 4081-4087 (2017)
“Effect of (Tb+Y)/Al ratio on Microstructure Evolution and Densification Process of (Tb0.6Y0.4)3Al5O12Transparent Ceramics”, Materials, 12, 300 (2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テルビウムイットリウムスカンジウムアルミニウムガーネット(TYSAG)系のファラデー回転子用透明セラミックスが発明され、それを搭載した光アイソレータが上市されている(特許文献7、特許文献8)。この特許文献7で開示された材料はScを微量添加することでガーネット相以外の異相の発生を抑制することから製造を安定化させるための必須元素となっている。この効果は、Scがガーネット結晶構造の8配位サイトおよび6配位サイトにそれぞれ入ることができるため、原料秤量時のガーネット組成比率からのずれを緩衝するはたらきがあると考えられている。そのためScは希土類アルミニウムガーネットにおいて母材の材料特性に影響を与えない、いわゆる助剤としてみなされていたが、(直接的か不純物による間接的か)近赤外域で微量の吸収をもつ可能性が示唆されている。また一般にScは価格も高く、高純度な原料を入手するのが困難なため、その使用量を減らすことが課題となっていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みたもので、Scを意図的に含まない、TYSAGに代わる新しい常磁性ガーネット型透明セラミックス及びそれを用いた磁気光学デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが上記課題に対し検討を行った結果、Tb(III)イオンやY(III)イオンのイオン径より小さく、かつAl(III)イオンよりイオン径が大きい中間的なイオン径をもち、希土類アルミニウムガーネットの構成元素となりうる3価の陽イオンかつ近赤外域において吸収を与えない元素としてLu(III)イオンを添加することにより、TYSAGと同等のベルデ定数、かつ同等の挿入損失かつ、同等の熱レンズ効果を示す透明セラミックスが作製できることを見出し、この知見に基づき鋭意検討を行い、本発明をなすに至った。
【0009】
本発明は、その一態様として、常磁性ガーネット型透明セラミックスであって、下記式(1)で表される複合酸化物を99質量パーセント以上含有する焼結体を含み、
Tb
8-x-y-z
Y
x
Lu
y
Al
z
O
12
(1)
(式中、0.10≦x<1.35、0.05≦y<0.30、4.80≦z<5.00、5.00≦y+zである。)
光路長20mmでの波長1,064nmにおける反射を除いた光の挿入損失が0.05dB以下である。
【0010】
本発明に係る常磁性ガーネット型透明セラミックスは、焼結助剤としてSiO
2
を0.00質量%超、0.10質量%以下含有してよい。
(【0011】以降は省略されています)
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