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公開番号2025093131
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-06-23
出願番号2023208681
出願日2023-12-11
発明の名称無鉛圧電組成物、圧電素子、および装置
出願人日本特殊陶業株式会社
代理人個人,個人
主分類C04B 35/495 20060101AFI20250616BHJP(セメント;コンクリート;人造石;セラミックス;耐火物)
要約【課題】ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物において、低負荷時と高負荷時の間の機械的品質係数Qmの変化率を抑える。
【解決手段】無鉛圧電組成物は、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物からなる主相と、主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物とは異なる金属酸化物を含む副相と、を備え、ヤング率が90GPa以上である。
【選択図】図12
特許請求の範囲【請求項１】
無鉛圧電組成物であって、
ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物からなる主相と、
前記主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物とは異なる金属酸化物を含む副相と、
を備え、
ヤング率が９０ＧＰａ以上であることを特徴とする
無鉛圧電組成物。
続きを表示（約 1,100 文字）【請求項２】
請求項１に記載の無鉛圧電組成物であって、
ヤング率が１００ＧＰａ以上であることを特徴とする
無鉛圧電組成物。
【請求項３】
請求項１に記載の無鉛圧電組成物であって、
ヤング率が１０５ＧＰａ以上であることを特徴とする
無鉛圧電組成物。
【請求項４】
請求項１に記載の無鉛圧電組成物であって、
前記副相を構成する前記金属酸化物が、スピネル型構造を有する金属酸化物、および、タングステンブロンズ型構造を有する金属酸化物のうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする
無鉛圧電組成物。
【請求項５】
請求項１に記載の無鉛圧電組成物であって、
前記主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物は、組成式（Ａ１
ａ
Ｍ１
ｂ
）
ｃ
（Ｎｂ
ｄ１
Ｍ２
ｄ２
Ｍ３
ｄ３
）Ｏ
３＋ｅ
（ただし、元素Ａ１はアルカリ金属のうちの少なくとも１種であり、元素Ｍ１はＢａ、Ｃａ、Ｓｒのうち少なくとも１種であり、元素Ｍ２はＴｉ、Ｚｒ、Ｔａ、Ｈｆ、Ｓｎ、Ｓｂ、Ｓｉのうち少なくとも１種であり、元素Ｍ３はＭｎ、Ｍｇ、Ａｌ、Ｓｃ、Ｆｅ、Ｃｏ、Ｎｉ、Ｚｎ、Ｇａ、Ｙのうち少なくとも１種であり、ａ＋ｂ＝１であり、ｃは０．８０＜ｃ＜１．１０を満たし、０＜ｄ１＜１、ｄ１＋ｄ２＋ｄ３＝１であり、ｅは酸素の欠損あるいは過剰を示す値）で表されるニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物であることを特徴とする
無鉛圧電組成物。
【請求項６】
請求項５に記載の無鉛圧電組成物であって、
前記元素Ａ１は、ＫおよびＮａのうちの少なくとも１種であり、
前記元素Ｍ２は、ＴｉおよびＺｒのうち少なくとも１種であり、
前記元素Ｍ３はＭｎであり、
０＜ａ≦１であることを特徴とする
無鉛圧電組成物。
【請求項７】
請求項１から６までのいずれか一項に記載の無鉛圧電組成物によって形成された圧電体と、
前記圧電体に取り付けられた電極と、
を備えることを特徴とする圧電素子。
【請求項８】
請求項７に記載の圧電素子を備えることを特徴とする装置。
【請求項９】
請求項８に記載の装置であって、
前記装置は、超音波メスと、超音波スケーラと、超音波洗浄機と、超音波加工機と、圧電トランスデューサーと、超音波モータと、圧電ジャイロセンサと、圧電フィルタと、ノックセンサと、のうちのいずれかであることを特徴とする装置。

発明の詳細な説明【技術分野】
【０００１】
本開示は、無鉛圧電組成物、圧電素子、および装置に関する。
続きを表示（約 3,700 文字）【背景技術】
【０００２】
従来、圧電性を示す組成物として、ＰＺＴ系（チタン酸ジルコン酸鉛系）の組成物が広く用いられてきたが、環境負荷低減などのために鉛を使用しない無鉛圧電組成物の開発が望まれている。このような無鉛圧組成物の候補として、例えば、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物が提案されている。具体的には、特許文献１および２においては、Ｋ
ｘ
Ｎａ
（１－ｘ）
ＮｂＯ
３
で表される化合物を主成分として含む圧電材料（ＫＮＮ系圧電材料）の組成を特定することによって、機械的品質係数Ｑｍなどの圧電特性を向上させる構成が開示されている。機械的品質係数Ｑｍは、圧電組成物が固有振動を起こしたときの共振周波数付近における機械的な振動の鋭さ（共振スペクトルの鋭さ）を表すパラメータであり、機械的品質係数Ｑｍが大きいほど低損失であり、圧電組成物を備えるアクチュエータの効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
特許第６３２６１９８号公報
特許第４９２９５２２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
このような無鉛圧電組成物においては、さらなる圧電特性の向上が求められており、機械的品質係数Ｑｍに関しては、低負荷から高負荷（低振動応力から高振動応力）にかけてのＱｍの変化率がより小さいことが望ましい。すなわち、一般的には負荷が大きくなるほどＱｍは低下するため、特に高負荷下での駆動を必要とする用途においては、負荷増大時におけるＱｍの低下をなるべく小さくすることが望まれる。しかしながら、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物において、低負荷時と高負荷時の間の機械的品質係数Ｑｍの変化率を抑える構成については、十分な検討が行われていなかった。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
［１］本開示の一形態によれば、無鉛圧電組成物が提供される。この無鉛圧電組成物は、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物からなる主相と、前記主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物とは異なる金属酸化物を含む副相と、を備え、ヤング率が９０ＧＰａ以上である。
この形態の無鉛圧電組成物によれば、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物からなる主相と、主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物とは異なる金属酸化物を含む副相と、を備える無鉛圧電組成物のヤング率を９０ＧＰａ以上とすることにより、低負荷時と高負荷時（低振動応力時と高振動応力時）の間の機械的品質係数Ｑｍの変化率を抑えることができる。そのため、低負荷から高負荷にかけて圧電特性が安定した圧電素子を得ることが可能になる。
［２］上記形態の無鉛圧電組成物において、ヤング率が１００ＧＰａ以上であることとしてもよい。このような構成とすれば、機械的品質係数Ｑｍの変化率を抑える効果をさらに高めることができる。
［３］上記形態の無鉛圧電組成物において、ヤング率が１０５ＧＰａ以上であることとしてもよい。このような構成とすれば、機械的品質係数Ｑｍの変化率を抑える効果をさらに高めることができる。
［４］上記形態の無鉛圧電組成物において、前記副相を構成する前記金属酸化物が、スピネル型構造を有する金属酸化物、および、タングステンブロンズ型構造を有する金属酸化物のうちの少なくとも一方を含むこととしてもよい。このような構成とすれば、無鉛圧電組成物の焼結性を向上させることができる。
［５］上記形態の無鉛圧電組成物において、前記主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物は、組成式（Ａ１
ａ
Ｍ１
ｂ
）
ｃ
（Ｎｂ
ｄ１
Ｍ２
ｄ２
Ｍ３
ｄ３
）Ｏ
３＋ｅ
（ただし、元素Ａ１はアルカリ金属のうちの少なくとも１種であり、元素Ｍ１はＢａ、Ｃａ、Ｓｒのうち少なくとも１種であり、元素Ｍ２はＴｉ、Ｚｒ、Ｔａ、Ｈｆ、Ｓｎ、Ｓｂ、Ｓｉのうち少なくとも１種であり、元素Ｍ３はＭｎ、Ｍｇ、Ａｌ、Ｓｃ、Ｆｅ、Ｃｏ、Ｎｉ、Ｚｎ、Ｇａ、Ｙのうち少なくとも１種であり、ａ＋ｂ＝１であり、ｃは０．８０＜ｃ＜１．１０を満たし、０＜ｄ１＜１、ｄ１＋ｄ２＋ｄ３＝１であり、ｅは酸素の欠損あるいは過剰を示す値）で表されるニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物であることとしてもよい。このような構成とすれば、無鉛圧電組成物における機械的品質係数Ｑｍを高めることができる。
［６］上記形態の無鉛圧電組成物において、前記元素Ａ１は、ＫおよびＮａのうちの少なくとも１種であり、前記元素Ｍ２は、ＴｉおよびＺｒのうち少なくとも１種であり、前記元素Ｍ３はＭｎであり、０＜ａ≦１であることとしてもよい。このような構成とすれば、無鉛圧電組成物における圧電特性を高めることが容易になる。
［７］本開示の他の一形態によれば、［１］から［６］までのいずれか一項に記載の無鉛圧電組成物によって形成された圧電体と、前記圧電体に取り付けられた電極と、を備える圧電素子が提供される。
この形態の圧電素子によれば、低負荷から高負荷にかけて圧電素子の圧電特性を安定させることができる。これによって、高負荷時の駆動におけるエネルギー損失を低減し、安定した駆動を行うことができる。
［８］本開示のさらに他の一形態によれば、［７］に記載の圧電素子を備える装置が提供される。
この形態の装置によれば、低負荷から高負荷にかけての圧電特性が安定した無鉛圧電組成物を備える圧電素子を備えるため、装置全体の性能を高めることができる。
本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、無鉛圧電組成物、それを用いた圧電素子、圧電素子を備える各種の装置（超音波メス、超音波スケーラ、超音波洗浄機、超音波加工機、圧電トランスデューサー、超音波モータ、圧電ジャイロセンサ、圧電フィルタ、ノックセンサ等）、および、無鉛圧電組成物の製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【０００６】
圧電素子の外観を示す斜視図。
圧電素子の製造方法の一例を示すフローチャート。
装置の一例としての超音波メスを示す模式図。
装置の一例としての超音波スケーラを示す模式図。
装置の一例としての超音波洗浄機を示す模式図。
装置の一例としての超音波加工機を示す模式図。
装置の一例としての圧電トランスデューサーを示す模式図。
装置の一例としての超音波モータを示す模式図。
装置の一例としての圧電ジャイロセンサを示す模式図。
装置の一例としての積層型の圧電フィルタを表す模式図。
装置の一例としてのノックセンサの模式図。
各サンプルの構成と評価結果とをまとめて示す説明図。
各サンプルの主相の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【０００７】
Ａ．無鉛圧電組成物：
本実施形態の無鉛圧電組成物は、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物からなる主相と、上記主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物とは異なる金属酸化物を含む副相と、を備える。そして、本実施形態の無鉛圧電組成物は、ヤング率が９０ＧＰａ以上である。
【０００８】
（Ａ－１）主相について：
主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物は、アルカリ系成分として、アルカリ金属（カリウム（Ｋ）、ナトリウム（Ｎａ）、リチウム（Ｌｉ）等）のうちの少なくとも１種を含むことが好ましく、特に、カリウム（Ｋ）およびナトリウム（Ｎａ）のうちの少なくとも一方を含むことが好ましい。また、主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物は、アルカリ系成分として、アルカリ土類金属（カルシウム（Ｃａ）、ストロンチウム（Ｓｒ）、バリウム（Ｂａ）等の少なくとも１種）を含み得る。
【０００９】
このような主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物は、マンガン（Ｍｎ）を含むこととしてもよい。マンガン（Ｍｎ）がニオブのサイト（ペロブスカイト型結晶構造のＢサイト）にアクセプターとして固溶することで、機械的品質係数Ｑｍが向上すると考えられる。ただし、マンガン（Ｍｎ）は必須ではない。
【００１０】
また、主相を構成するニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト酸化物は、以下の組成式（１）を満たすニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物とすることが好ましい。
（【００１１】以降は省略されています）

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