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公開番号2024176772
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-12-19
出願番号2023095563
出願日2023-06-09
発明の名称鋼床版の残留応力低減方法
出願人国立大学法人大阪大学,エム・エムブリッジ株式会社
代理人弁理士法人酒井国際特許事務所
主分類E01D 19/12 20060101AFI20241212BHJP(道路,鉄道または橋りょうの建設)
要約【課題】施工時間を短縮することが可能な鋼床版の残留応力低減方法を提供する。
【解決手段】デッキプレートと、第1方向に延びる横板と、第1方向に交差する第2方向に延びる縦板と、直線溶接部と回し溶接部とを有し横板と縦板とを溶接する溶接部とを備える鋼床版の残留応力を低減する方法であって、溶接部の回し溶接部の止端部に対応する第1加熱対象領域に対して高周波誘導加熱を行う第1加熱工程と、第1加熱工程の後、溶接部の一方の直線溶接部に沿った第2加熱対象領域に対して高周波誘導加熱を行う第2加熱工程と、第2加熱工程の後、溶接部の他方の直線溶接部に沿った第3加熱対象領域に対して高周波誘導加熱を行う第3加熱工程とを、第1加熱対象領域に圧縮応力が作用し、第1加熱対象領域から溶接部の端部の止端部に沿った方向に離れるにつれて引張応力が強くなるような応力分布を形成するように、横板の一方の加熱対象面に対して行う。
【選択図】図8
特許請求の範囲【請求項1】
デッキプレートと、
前記デッキプレートの下面に接合され、第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向の表裏の第1面と第2面とを貫通するように上端から下方に向けて帯状に形成された切り欠き部を有する横板と、
前記第2方向に延び、前記横板の前記切り欠き部を前記第2方向に貫通するように前記デッキプレートの下面に接合された縦板と、
前記横板の前記第1面及び前記第2面の両方にそれぞれ前記縦板を囲うように配置されて前記横板と前記縦板とを接合し、前記縦板の前記第1方向の表裏のそれぞれの面に沿った直線溶接部と前記縦板の下端部を囲う回し溶接部とを有する溶接部と
を備える鋼床版の残留応力を低減する方法であって、
前記横板の前記第1面及び前記第2面の一方である加熱対象面について、前記溶接部の回し溶接部の止端部に対応する第1加熱対象領域に対して高周波誘導加熱を行う第1加熱工程と、
前記第1加熱工程の後、前記横板の前記加熱対象面について、前記溶接部のうち前記縦板の表面及び裏面の一方の側に延びる前記直線溶接部に沿った第2加熱対象領域に対して高周波誘導加熱を行う第2加熱工程と、
前記第2加熱工程の後、前記横板の前記加熱対象面について、前記溶接部のうち前記縦板の表面及び裏面の他方の側に延びる前記直線溶接部に沿った第3加熱対象領域に対して高周波誘導加熱を行う第3加熱工程と
を含み、
前記第1加熱工程、前記第2加熱工程及び前記第3加熱工程では、前記第1加熱対象領域に圧縮応力が作用し、前記第1加熱対象領域から前記溶接部の端部の前記止端部に沿った方向に離れるにつれて引張応力が強くなるような応力分布を形成するように前記高周波誘導加熱を行う
鋼床版の残留応力低減方法。
続きを表示(約 640 文字)【請求項2】
前記残留応力は、橋梁の製作時の溶接により発生し、橋梁の主桁に支持された状態の前記鋼床版上を通過する移動体の荷重と残留応力が相俟って疲労き裂が発生する
請求項1に記載の鋼床版の残留応力低減方法。
【請求項3】
前記第1加熱工程の加熱温度である第1加熱温度は、前記第2加熱工程の加熱温度である第2加熱温度及び前記第3加熱工程の加熱温度である第3加熱温度よりも低い
請求項1に記載の鋼床版の残留応力低減方法。
【請求項4】
前記第1加熱温度は、250℃以上550℃以下の温度である
請求項3に記載の鋼床版の残留応力低減方法。
【請求項5】
前記第2加熱温度及び前記第3加熱温度は、250℃以上550℃以下の温度である
請求項3に記載の鋼床版の残留応力低減方法。
【請求項6】
前記第1加熱工程の加熱時間である第1加熱時間は、前記第2加熱工程の加熱時間である第2加熱時間及び前記第3加熱工程の加熱時間である第3加熱時間よりも短い
請求項1に記載の鋼床版の残留応力低減方法。
【請求項7】
前記第1加熱時間は、9秒以上40秒以下の時間である
請求項6に記載の鋼床版の残留応力低減方法。
【請求項8】
前記第2加熱時間及び前記第3加熱時間は、9秒以上40秒以下の時間である
請求項6に記載の鋼床版の残留応力低減方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼床版の残留応力低減方法に関する。
続きを表示(約 2,200 文字)【背景技術】
【0002】
道路橋等の橋梁に用いられる鋼床版として、例えば、主桁に支持されるデッキプレートと、デッキプレートの下面に接合される横板(横リブ、ダイヤフラム等)と、デッキプレートの下面に横板に交差して溶接される縦板(縦リブ等)とを備える鋼床版が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許第6072946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶接で製作された橋梁の場合、溶接部に残留応力が発生する。橋梁を使用することにより、例えば横板の一部に応力が集中し、残留応力と相俟って疲労き裂のような損傷が生じる可能性がある。残留応力を低減させるため、従来では、横板において溶接部分の止端仕上げ、ピーニング等の処理が行われている。しかしながら、これらの処理では、横板の両面側から溶接部分の止端に沿って施工する必要があるため、施工時間が掛かってしまう。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、施工時間を短縮することが可能な鋼床版の残留応力低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鋼床版の残留応力低減方法は、デッキプレートと、前記デッキプレートの下面に接合され、第1方向に延び、前記第1方向に直交する第2方向の表裏の第1面と第2面とを貫通するように上端から下方に向けて帯状に形成された切り欠き部を有する横板と、前記第2方向に延び、前記横板の前記切り欠き部を前記第2方向に貫通するように前記デッキプレートの下面に接合された縦板と、前記横板の前記第1面及び前記第2面の両方にそれぞれ前記縦板を囲うように配置されて前記横板と前記縦板とを接合し、前記縦板の前記第1方向の表裏のそれぞれの面に沿った直線溶接部と前記縦板の下端部を囲う回し溶接部とを有する溶接部とを備える鋼床版の残留応力を低減する方法であって、前記横板の前記第1面及び前記第2面の一方である加熱対象面について、前記溶接部の回し溶接部の止端部に対応する第1加熱対象領域に対して高周波誘導加熱を行う第1加熱工程と、前記第1加熱工程の後、前記横板の前記加熱対象面について、前記溶接部のうち前記縦板の表面及び裏面の一方の側に延びる前記直線溶接部に沿った第2加熱対象領域に対して高周波誘導加熱を行う第2加熱工程と、前記第2加熱工程の後、前記横板の前記加熱対象面について、前記溶接部のうち前記縦板の表面及び裏面の他方の側に延びる前記直線溶接部に沿った第3加熱対象領域に対して高周波誘導加熱を行う第3加熱工程とを含み、前記第1加熱工程、前記第2加熱工程及び前記第3加熱工程では、前記第1加熱対象領域に圧縮応力が作用し、前記第1加熱対象領域から前記溶接部の端部の前記止端部に沿った方向に離れるにつれて引張応力が強くなるような応力分布を形成するように前記高周波誘導加熱を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、施工時間を短縮することが可能な鋼床版の残留応力低減方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1は、本実施形態に係る橋梁の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、橋梁の一例を示す断面図である。
図3は、鋼床版の横リブと縦リブとの交差部分の一例を示す図である。
図4は、鋼床版の横リブと縦リブとの交差部分の一例を示す図である。
図5は、本実施形態に係る鋼床版の残留応力低減方法の一例を示すフローチャートである。
図6は、鋼床版の横リブと縦リブとの交差部分の一例を示す図である。
図7は、高周波誘導加熱を行う場合の対象領域の温度変化の一例を示す図である。
図8は、本実施形態に係る溶接構造に対して高周波誘導加熱を行う場合の応力の変化の一例を示す図である。
図9は、横リブの加熱対象面の応力分布の一例を示す図である。
図10は、横リブの非加熱面の応力分布の一例を示す図である。
図11は、横リブの加熱対象面の応力分布の一例を示す図である。
図12は、横リブの非加熱面の応力分布の一例を示す図である。
図13は、鋼床版を交換する工程の例を示す図である。
図14は、鋼床版を交換する工程の例を示す図である。
図15は、鋼床版の横リブと縦リブとの交差部分の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る鋼床版の残留応力低減方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
図1は、本実施形態に係る橋梁100の一例を模式的に示す斜視図である。図2は、橋梁100の一例を示す断面図である。図1及び図2に示す橋梁100は、例えば自動車等が走行する道路橋である。図1及び図2に示すように、橋梁100は、鋼床版10と、主桁20とを備える。
(【0011】以降は省略されています)

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