発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、電気特性を組織コントラストとして用いた画像の再構成のための磁気共鳴電気特性トモグラフィ、特に物理結合神経回路網磁気共鳴電気特性トモグラフィに関する。 続きを表示(約 2,600 文字)【背景技術】 【0002】 ヒト組織の電気特性(EPs;導電率σ、誘電率ε)は、様々な病態やその発生を識別するのに役立つ定量的なバイオマーカーであり、EPsを組織コントラストとして用いた画像(導電率マップ、誘電率マップ)は、癌組織の早期診断に応用できる可能性がある。 【0003】 磁気共鳴電気特性トモグラフィ(MREPT)は、MRI装置により測定されたラジオ波磁場(RF場)を用いてEPsを再構成する画像診断法である。従来、MREPTは、Maxwell方程式に基づく標準的な解析モデル(std-EPT)を数値的に解くことにより導電率マップを再構成するものが知られている。このような解析的なMREPTの数値解法は、簡単な手法である反面、解析モデルの背後にある均一性の仮定、すなわち導電率は一定であるとする仮定の不正確さや数値誤差に起因して組織境界で境界アーティファクトが発生し、再構成精度が低くなるという問題がある。 【0004】 非特許文献1では、Maxwell方程式に基づく解析モデルから均一性の仮定を取り除き、再構成問題を柔軟に解決する手法が提案されている。詳しくは、再構成問題を対流反応偏微分方程式(cr-EPT)として定式化し、関心領域(ROI)に対して離散化して解くことにより、空間的な制約なしに解ける未知数となるため、均一性の仮定を不要とすることができる。しかしながら、この手法では、MRI装置により測定されたB 1 フィールドの解像度が低い場合、数値アーティファクトが発生してしまう虞がある。 【0005】 cr-EPTを用いた手法における数値アーティファクトの影響は、粘性正則化の役割を果たす拡散項を追加することによって低減できるが、拡散項に含まれる拡散係数の値が大きいと、この拡散項がcr-EPTを支配し、EPsの分布がぼやけてコントラストが低下してしまう。そのため、EPsの再構成の急激な変動の抑制とコントラストの低下とのトレードオフを実現するために、サンプルに応じた適切な拡散係数を与える必要がある。 【0006】 非特許文献2では、境界アーティファクトを補正するために、cr-EPTに拡散係数の他に、対流項の重みを調整する対流係数を追加する手法が提案されている。詳しくは、非特許文献2では、画素依存ではなく、ROI全体に対して経験的に選択された1つの対流係数、いわゆるグローバル対流係数マップを追加する手法(d∇ 2 ρ+c∇φ・∇ρ+(∇ 2 φ)ρ=ωμ 0 )が提案されている。しかしながら、対流係数は、ROI内の異なる領域(境界部または非境界部)において、再構成精度を向上させるために異なる値が必要となる場合があり、サンプルに応じた適切な対流係数を与える必要があるだけでなく、拡散係数との協調も考慮する必要がある。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0007】 F. S. Hafalir, O. F. Oran, N. Gurler, and Y. Z. Ider, “Convection-reaction equation based magnetic resonance electrical properties tomography (crmrept),”IEEE Trans Med Imaging, vol. 33, no. 3, pp. 777-793, Mar. 2014. Y. Z. Ider and M. N. Akyer, “Properties and implementation issues of phase based cr-MRECT for conductivity imaging,” in Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med. 28, 2020, p. 3190. S. Mandija, E. F. Meliad`o, N. R. F. Huttinga, P. R. Luijten, and C. A. T. van den Berg, “Opening a new window on mr-based electrical properties tomography with deep learning,” Scientific Reports, vol. 9, no. 1, Dec. 2019. 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 上述したように、解析的なMREPTの数値解法に伴うアーティファクトは、解析モデルに安定化係数、すなわちサンプルに応じた適切な拡散係数と対流係数を追加することで低減できるが、これらの安定化係数の選択は経験的に行われてきたため、解析モデルの汎化性を向上させることは難しかった。 【0009】 また、非特許文献3では、上述した解析的なMREPTの数値解法に伴うアーティファクトを回避するために、Maxwell方程式を用いることなく、トレーニングサンプルからB + 1 フィールドをEPsにマッピングする関数を学習するデータ駆動型のエンドツーエンドのニューラルネットワーク(NN)に基づくMREPT(NN-EPT)が提案されている。しかしながら、非特許文献3のNN-EPTは、解析的なMREPTでは認識される波動物理を捉えていない物理非結合アプローチであるため、新しいサンプルに対する頑健性、すなわち汎化性を確保するために膨大な量のトレーニングサンプルデータが必要となる。特に医療分野では膨大な量のデータを収集することは困難である。加えて、MRIにおいて、再構成精度を高めるために様々な種類のノイズに対するロバスト性が求められている。 【0010】 本発明は、このような課題に着目してなされたもので、ノイズロバスト性に優れ、汎化性に優れる磁気共鳴電気特性トモグラフィを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する