公開番号2024147832 公報種別公開特許公報(A) 公開日2024-10-17 出願番号2021099186 出願日2021-06-15 発明の名称たばこ用の組成物 出願人日本たばこ産業株式会社 代理人個人,個人,個人,個人 主分類A24B 15/24 20060101AFI20241009BHJP(たばこ;葉巻たばこ;紙巻たばこ;喫煙具) 要約【課題】本発明は、たばこ用の組成物、また、たばこ用の組成物を含むE-リキッド又はたばこ製品、さらにコチニンの合成方法を提供する。 【解決手段】本発明のたばこ用の組成物は、コチニンを含む。本発明のコチニンの合成方法は、(1)たばこ原料から、水による抽出、有機溶媒を用いた1回目の液液分配および酸性水を用いた2回目の液液分配、を含む液液分配によりニコチン塩水溶液を得る工程、(2)ニコチン塩水溶液から遊離ニコチンを分画する工程、そして、(3)工程(2)で分画されたニコチンからコチニンを合成する工程、を含む。 【選択図】図1 特許請求の範囲【請求項1】 コチニンを含む、たばこ用の組成物。 続きを表示(約 490 文字)【請求項2】 ニコチンを含まない、請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 香料及び/又は甘味料を含む、請求項1又は2に記載の組成物。 【請求項4】 請求項1-3のいずれか1項に記載の組成物を含む、E-リキッド。 【請求項5】 少なくとも0.005重量%のコチニンを含む、請求項4に記載のE-リキッド。 【請求項6】 少なくとも0.02重量%のコチニンを含む、請求項4に記載のE-リキッド。 【請求項7】 請求項1-3のいずれか1項に記載の組成物を含む、たばこ製品。 【請求項8】 たばこ製品が燃焼式香味吸引物品である、請求項7に記載のたばこ製品。 【請求項9】 たばこ製品が加熱式香味吸引物品である、請求項7に記載のたばこ製品。 【請求項10】 たばこ製品が、たばこ葉、刻みたばこ又はたばこシートを含み、たばこ葉、刻みたばこ又はたばこシート1g当たり少なくとも3mgのコチニンを含む、請求項8に記載のたばこ製品。 (【請求項11】以降は省略されています) 発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、たばこ用の組成物に関する。本発明はまた、たばこ用の組成物を含む、E-リキッド又はたばこ製品に関する。本発明はさらに、コチニンの合成方法に関する。 続きを表示(約 4,400 文字)【背景技術】 【0002】 たばこ葉に含まれる主要なアルカロイド(植物塩基)として、ニコチン(Nicotine)は最も広く知られている成分である。シガレットや葉巻のような燃焼式たばこ、非燃焼式の加熱式たばこ、たばこ葉を使用しない電子たばこ、などに挙げられるような、煙やエアロゾルを吸引してすることによって口腔内に香味を送達させる形態のたばこ製品のいずれにおいてもニコチンは、いわゆる「インパクト」や「キック感」と表現されるような独特の体性感覚を発現し、製品の香喫味を構成する上で非常に重要な成分である。 【0003】 しかしながら、これらのたばこ製品においてニコチンは、日本をはじめ多くの国で様々な法規制等によりその使用に制約を受ける。例えば、日本においてニコチンは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(「薬機法」と呼称される場合がある)においては医薬品に分類されるため、同法に基づく承認を受けずにニコチンを含む電子たばこ用リキッド(「E-リキッド」と呼称する場合がある))を販売等することは禁じられている。日本と同様にニコチンを含む電子たばこ用リキッド販売を禁止している国は他にもオーストラリアなどが知られている。また、ニコチンを含む電子たばこ用リキッド自体は認められているが、その含量に規制がある国・地域も存在する。例えば欧州では、電子たばこ用リキッド中のニコチン含量は20mg/mL以下でなければならないと定められている(非特許文献1)。 【0004】 さらに、シガレット(紙巻たばこ)においてもニコチン量の上限が設定されている国・地域が存在する。欧州では、シガレット1本あたりのニコチン排出量(喫煙して人体に送達される量)の上限は1mgと設定されている(非特許文献1)。さらに米国でも、2017年にFDAが発表した計画の中で、シガレット中のニコチン含量を最小限にするための基準を策定することが言及されており(https://www.fda.gov/tobacco-products/ctp-newsroom/fdas-comprehensive-plan-tobacco-and-nicotine-regulation#altmilestones)、今後米国においてもシガレットのニコチン量の上限規制が見込まれる。以上のようなニコチンに関わる様々な法規制や制約が存在する理由の一つとして、ニコチン自体が持つ有害性や依存性が挙げられる(非特許文献2)。 【0005】 このように、たばこ製品やE-リキッドにおけるニコチンの使用は、様々な法規制や制約を受ける。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0006】 “DIRECTIVE 2014/40/EU OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 3 April 2014 on the approximation of the laws, regulations and administrative provisions of the Member States concerning the manufacture, presentation and sale of tobacco and related products and repealing Directive 2001/37/EC”, Official Journal of the European Union (2014) U.S. Department of Health and Human Services, “The Health Consequences of Smoking-50 Years of Progress: A Report of the Surgeon General” (2014) Sanji Matsushima et al., Agricultural and Biological Chemistry, 47 (3), 507-510 (1983) Xintong LI et al., Analytical Sciences, 35 (8), 849-854 (2019) Janne Hukkanen et al., Pharmacological Reviews, 57 (1), 79-115 (2005) Ana-Maria Vlasceanu et al., Journal of Mind and Medical Sciences, 5 (1), 117-122 Omar Riah et al., Toxicology Letters, 109 (1-2), 21-29 (1999) Sarah Burgess et al., Journal of Clinical Toxicology, S6-003 (2012) Ruth A. Etzel, Preventive Medicine, 19 (2), 190-197 (1990) Joseph G. Lisko et al, Nicotine & Tobacco Research, 17 (10), 1270-1278 (2015) Bowman E. R. et al., Biochemical Preparations, 10, 36-39 (1963) Christopher J. Legacy et al., Angewandte Chemie International Edition, 54 (19), 14907-14910 (2015) Yasuko Tsujino et al., Agricultural and Biological Chemistry, 43 (4), 871-872 (1979) Ahmad Fauzantoro, International Journal of Applied Engineering Research, 12 (23), 13891-13897 (2017) Amzad M. 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