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公開番号2024121816
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-09-06
出願番号2024026241
出願日2024-02-26
発明の名称抗成長ホルモン抗体を含有する医薬
出願人大正製薬株式会社
代理人個人,個人,個人
主分類A61K 39/395 20060101AFI20240830BHJP(医学または獣医学;衛生学)
要約【課題】成長ホルモン(GH)の分泌過多や分泌不全に関連する疾患を治療、予防するための、血液中のインスリン様成長因子1(IGF-1)のレベルを低減する医薬組成物を提供する。
【解決手段】ヒトGHに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。一実施形態において、本発明は、ヒトGHに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、VHが、それぞれ特定のアミノ酸配列を有するVH相補性決定領域(CDR)1(VHCDR1)、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、VLが、それぞれ特定のアミノ酸配列を有するVL相補性決定領域(CDR)1(VLCDR1)、VLCDR2、及びVLCDR3を含む、前記抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
ヒト成長ホルモンに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、
VHがVH相補性決定領域(CDR)1(VHCDR1)として配列番号5のアミノ酸配列、VHCDR2として配列番号6のアミノ酸配列、及びVHCDR3として配列番号7のアミノ酸配列を含み、
VLがVL相補性決定領域(CDR)1(VLCDR1)として配列番号8のアミノ酸配列、VLCDR2として配列番号9のアミノ酸配列、VLCDR3として配列番号10のアミノ酸配列を含む、抗体又はその抗原結合断片を含有する、注射用組成物である医薬。
続きを表示(約 760 文字)【請求項2】
抗体又は抗原結合断片が、表面プラズモン共鳴法によって測定した場合に、1.0×10
-8
mol/L以下の平衡解離定数(K
D
)でヒト成長ホルモンに結合する、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
抗体又は抗原結合断片が、成長ホルモン作用を中和する、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
抗体又は抗原結合断片が、配列番号3、11、12、又は19のアミノ酸配列を有するVH、及び/又は配列番号4、13、14、又は20のアミノ酸配列を有するVLを含む、請求項1に記載の医薬。
【請求項5】
抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体、ベニア化抗体又は完全ヒト抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
抗体が、配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖定常領域、及び/又は配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
抗原結合断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又はscFvである、請求項1~4のいずれか一項に記載医薬。
【請求項8】
血液中のインスリン様成長因子1(IGF-1)のレベルを低減させるための、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項9】
先端巨大症、巨人症、がん、糖尿病性腎症、関節炎、及び肺炎症からなる群から選択される疾患を治療及び/又は予防するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
抗体又はその抗原結合断片の投与量が1日当たり0.0001~100 mg/kgである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
一実施形態において、本発明は、ヒト成長ホルモンに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片、それらをコードする核酸、前記核酸を含むベクター、前記核酸又はベクターを含む細胞、前記抗体又はその抗原結合断片を含む医薬、又は治療有効量の前記抗体又はその抗原結合断片を投与するステップを含む血液中のインスリン様成長因子1(IGF-1)のレベルを低減させるための方法に関する。
続きを表示(約 2,600 文字)【背景技術】
【0002】
成長ホルモン(Growth Hormone、以下「GH」とも言う)は、脳下垂体から合成及び分泌されるタンパク性のホルモンである。GHには分子量22kDaと20kDaのアイソフォーム(GH-22K、GH-20K)が知られており、ヒト血清における主要分子種はGH-22Kであるが、これ以外にも20kDa(GH-20K)等の複数のアイソフォームの存在が知られている(非特許文献1)。また、妊婦では胎盤から分子量22kDa及び20kDaのGHアイソフォーム(GH-V-22K、GH-V-20K)が分泌される(非特許文献2)。GHは組織への直接作用と、肝臓及び他の組織に発現する成長ホルモン受容体(成長ホルモンレセプター、以下「GHR」とも言う)への作用を介したインスリン様成長因子1(Insulin-like growth factor-1、以下「IGF-1」とも言う)の放出刺激の両方により、骨の伸長や筋肉の成長等、成長に関わる作用や代謝促進、血糖値上昇、恒常性の維持等、代謝に関わる作用を示す(非特許文献3)。
【0003】
GHの分泌過多や分泌不全は多くの疾患に関連している。GH分泌過多は良性の下垂体腺腫により生じ、その典型的な症状としては、先端巨大症と巨人症が知られている。先端巨大症は、「末端肥大症」とも呼ばれ、額、鼻やあご、手足、舌など体の先端が肥大し、体毛の剛毛化、皮膚の肥厚、皮脂腺や汗腺の肥大による大量発汗と不快な体臭、口頭軟骨の増殖による声の低音化などを伴う疾患である。GH分泌過多が思春期までに発症すると巨人症になる。
【0004】
先端巨大症の有病率は人口10万人あたり4-24人という報告があり、その数は多くはなく希少疾患とされているが、長期にわたってGHの過剰分泌が続くと、上記症状の他に糖尿病、高血圧、高脂血症などの代謝異常、睡眠時無呼吸症候群、心肥大などの症状を伴い、さらに狭心症、心筋梗塞 、脳血管障害などを起こす危険性もあり、GH分泌過多を見逃し、治療しないと死亡率が高くなることが分っている。また、先端巨大症は大腸がん、甲状腺がんなどを合併する可能性も高くなることが知られており、早期に発見し治療することが重要である。
【0005】
GH過剰分泌による疾患として、先端巨大症、巨人症の他、がん、糖尿病性腎症、関節炎、肺炎症等が知られている。非特許文献4には、がん細胞のGH発現が子宮内膜がん、乳がん等の進行に関与していること、非特許文献5には、GH受容体拮抗薬であるペグビソマントの腫瘍モデルマウスにおける腫瘍抑制作用が記載されている。非特許文献6にはGHと糖尿病性腎症との関連性、非特許文献7にはGHと関節痛や関節炎との関連性が記載されており、また、非特許文献8には、IGF-1と肺炎症との関連性が記載されている。
先端巨大症や巨人症の治療法としては、GHを過剰分泌する下垂体腺腫の摘出手術や放射線療法による退縮、そして薬物治療が施されている。下垂体腺腫摘出手術はその他の外科的手術と同様に死亡を含む合併症のリスクを伴い、高度な技術を要する。また放射線療法にも同様なリスクが伴い、効力を発揮するには数年を要することがある。現在、市場で使用できる治療薬としてはソマトスタチン類似体(オクトレオチド酢酸塩徐放性製剤、ランレオチド酢酸塩徐放性製剤など)、ドーパミン作動薬(メシル酸ブロモクリプチン)、GH受容体拮抗薬(ペグビソマント)があるが、有効性、安全性、利便性を同時に満たす薬剤はいまだ存在しない。
【0006】
特許文献1には、GH-22Kに結合するが、GH-20Kには実質的には結合しない抗ヒトGHマウスモノクローナル抗体(mAb)(hGH-25、hGH-26)、GH-20Kに結合するが、GH-22Kには実質的には結合しない抗ヒトGHマウスmAb(hGH-33)、並びにGH-22K、GH-20Kのいずれにも結合する抗ヒトGHマウスmAb(hGH-12)が開示されている。これらの抗体はヒトGHR/G-CSFRを強制発現させたBa/F3細胞株のGH依存的増殖試験において、hGH-25、hGH-26はGH-22K依存的な細胞増殖のみを、hGH-33はGH-20K依存的な細胞増殖のみを、hGH-12はGH-22K及びGH-20K依存的な細胞増殖を阻害したことが示されているが、阻害の強さ(IC
50
:50%阻害濃度)は明示されていない。
【0007】
非特許文献9には、8種類の抗ヒトGHマウスmAbを取得し、これらのうち、ヒト胎盤性乳腺刺激ホルモン(hCS)(ヒト胎盤性ラクトゲン(hPL))に交差反応するクローンEB1、EB2、NA71がヒトGHやhCS依存的なNb
2
ラットリンパ腫細胞株の増殖を抑制したことが記載されているが、阻害活性の強さ(IC
50
)は明示されていない。
【0008】
非特許文献10には、非特許文献1に記載の抗ヒトGHマウスmAb EB1、EB2がヒトGHやhCSの矮小マウスにおける軟骨細胞増殖作用及びハトにおける乳腺刺激作用を逆に促進したことが示されている。
【0009】
非特許文献11には、複数の抗ヒトGHマウスmAbが記載され、非特許文献9、10に記載のクローンEB1とEB2がヒトGHのヒトGHRへの結合を阻害し、また3T3-F422A脂肪細胞株へのグルコース取り込みに対するヒトGHの阻害活性を阻害したことが示されているが、阻害の強さ(IC
50
)は明示されていない。
【0010】
非特許文献12は、特許文献1に関連したものである。非特許文献12では、ヒトGHR/G-CSFRを強制発現させたBa/F3細胞株のGH依存的増殖試験において、hGH-25、hGH-26はGH-22K依存的な細胞増殖のみを、hGH-33はGH-20K依存的な細胞増殖のみを、hGH-12はGH-22K及びGH-20K依存的な細胞増殖を阻害したことが示されているが、阻害の強さ(IC
50
)は明示されていない。
(【0011】以降は省略されています)

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