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公開番号
2024105484
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-08-06
出願番号
2024076825,2019135675
出願日
2024-05-09,2019-07-23
発明の名称
リン酸カルシウム、リン酸カルシウムの製造方法
出願人
国立大学法人東北大学
,
日本ファインセラミックス株式会社
代理人
個人
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
主分類
C01B
25/32 20060101AFI20240730BHJP(無機化学)
要約
【課題】リン酸カルシウムに対するタンパク質の集積量を向上させうる方法およびタンパク質が集積されたリン酸カルシウムを提供する。
【解決手段】1~5mMのカルシウムイオンおよび0.5~3mMの無機リン酸イオンを含有し、25~45℃でpH6~8に調整された緩衝液が調製される。緩衝液のカルシウムイオン含有量が1~5mMの場合には0.01~10mg・mL
-1
の範囲でタンパク質を緩衝液に溶解させる。これにより得られたタンパク質含有緩衝液にリン酸カルシウムを接触させる。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
第1の結晶と、前記第1の結晶の表面に形成され、且つ前記第1の結晶よりもサイズが小さい複数の第2の結晶と、を有し、
前記第2の結晶が前記第1の結晶の表面において凹凸を形成している、リン酸カルシウム。
続きを表示(約 1,000 文字)
【請求項2】
前記第1の結晶および前記第2の結晶は、リン酸八カルシウム、ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、アモルファスリン酸カルシウムおよびそれらの複合体からなる、請求項1に記載のリン酸カルシウム。
【請求項3】
前記第2の結晶を介してタンパク質が集積されている、請求項1に記載のリン酸カルシウム。
【請求項4】
ラングミュア式から予測しうる量を超える量のタンパク質が集積されている、請求項3に記載のリン酸カルシウム。
【請求項5】
下記関係式(2)で表されるラングミュア式に基づいて得られた吸着定数から算出されたタンパク質の吸着量が、37℃、pH7.4におけるリン酸カルシウムについての飽和状態でのリン酸カルシウムへのタンパク質の吸着量を超えている、請求項4に記載のリン酸カルシウム。
Q=KQ
0
C/(1+KC) ‥(関係式(2))
(Qは吸着材への吸着質の吸着量、Cは吸着質の平衡濃度、Kは平衡定数、Q0は吸着質の飽和容量である。KおよびQ
0
の定数は、それぞれ1520mL・μmol
-1
と0.054μmol・m
-2
である。)
【請求項6】
タンパク質を集積させたリン酸カルシウムの製造方法であって、
1~5mMのカルシウムイオンおよび0.5~3mMの無機リン酸イオンを含有し、25~45℃でpH6~8に調整された緩衝液を調製する緩衝液調製工程と、
前記緩衝液のカルシウムイオン含有量が1~2mMの場合には0.01~0.5mg・mL
-1
の範囲で、カルシウムイオン含有量が2~5mMの場合には0.01~1.5mg・mL
-1
の範囲で、タンパク質を前記緩衝液に溶解し、タンパク質含有緩衝液を調製するタンパク質含有緩衝液調製工程と、
前記タンパク質含有緩衝液にリン酸カルシウムを接触させ、リン酸カルシウムの表面に、リン酸カルシウムからなる凹凸を形成するリン酸カルシウム接触工程と、を含む、リン酸カルシウムの製造方法。
【請求項7】
前記リン酸カルシウム接触工程において、前記リン酸カルシウムからなる凹凸にタンパク質を吸着させる、請求項6に記載のリン酸カルシウムの製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸カルシウム、およびリン酸カルシウムの製造方法に関する。
続きを表示(約 7,400 文字)
【背景技術】
【0002】
リン酸八カルシウム(OCP、Ca
8
H
2
(PO
4
)
6
・5H
2
O)が、骨アパタイト結晶の前駆体であるといわれている。これは、ハイドロキシアパタイト(HA)との構造的な類似性(、溶液化学および理論的な溶解度分析に基づいている(例えば、非特許文献1参照)。合成OCPは、特定の合成条件で合成された場合、非焼結HAなどの他のリン酸カルシウム材と比較してより高い骨伝導性を持つことが認識されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
OCPの骨伝導性は、骨芽細胞の機能を活性化する能力だけでなく破骨細胞の形成促進によっても説明され、その刺激能力は、OCPが破骨細胞の分化だけでなく、OCP材料との直接的または間接的な接触による前駆細胞からの破骨細胞の形成をも増強することが証明されている(例えば、非特許文献10~12参照)。生理的骨リモデリングプロセスにおける破骨細胞吸収後の転化的骨形成は、アパタイト結晶核形成およびHAに関して周囲組織液の過飽和条件下での骨基質タンパク質上でのHAの成長を含むことが知られている(例えば、非特許文献13参照)。OCP上への新たな骨形成が結晶成長に関するそのような石灰化プロセス(例えば、非特許文献1参照)も含むと仮定することは合理的である。
【0004】
OCPは準安定相と考えられているため、HAに関して過飽和条件下で最も熱力学的に安定なHAに変換することができる(例えば、非特許文献1参照)。実際、OCPは様々な骨組織に埋入された場合、時間とともに徐々にアパタイト相に変換されることが示された(例えば、非特許文献2、3参照)。ミネラル結晶-マトリックスタンパク質の相互作用の観点から、骨石灰化プロセスは、通常、ミネラル結晶および組織特異的細胞、骨芽細胞および循環血清による分泌マトリックスタンパク質などのタンパク質との間の相互作用を伴って進行することが認められている(例えば、非特許文献7参照)。その結果、骨組織中に組織化されたミネラル/タンパク質複合体が形成される。
【0005】
以前のレクチン組織化学およびプロテオーム解析により、マウス頭蓋冠骨への移植時またはインビトロでのラット血清への浸漬により、非コラーゲン性血清タンパク質がOCP結晶の周囲に集積あるいは吸着することが示された(例えば、非特許文献8参照)。超微細構造レベルでの脱灰組織標本を用いた観察により、マウス頭蓋冠へのOCP移植における新しい骨形成がOCP-非コラーゲンタンパク質複合体からなる構造物上から開始されたことが確認された(例えば、非特許文献2参照)。さらに、超微細構造レベルでの非脱灰組織標本を用いた観察により、マウス頭蓋冠への移植後の個々のOCP結晶への新規ナノ結晶析出が実証された(例えば、非特許文献1参照)。その結果により、新しい骨形成がOCP上で起こっているかまたはOCPが溶解されている環境が、血清タンパク質の存在にかかわらず、実際に新しいリン酸カルシウム結晶形成を開始することができるある飽和レベルを有することが示唆されている。しかしながら、イオン濃度、主にカルシウムおよび無機リン酸イオンによって決定される飽和レベルが、血清タンパク質-OCP相互作用を強化または弱める可能性があるかどうかについては不十分であり、それはOCP材料の骨伝導性に影響し得ると考えられる。
【0006】
血清の組成は、HAに関して過飽和であり、OCPに対してほぼ飽和していると報告されている(例えば、非特許文献9参照)。これは、ラット頭蓋冠骨欠損に埋入されたOCPがアパタイト相に変換される傾向があるという以前の観察と矛盾しない(例えば、非特許文献3参照)。上記の破骨細胞様細胞吸収がOCP周辺の飽和レベルに影響を与える可能性に加えて、OCPと間葉系幹細胞由来細胞(ATDC5)の存在は培地中のカルシウムイオン濃度を増加させOCPが溶解したことが示されている(例えば、非特許文献10参照)。骨欠損に埋入されたOCPは骨形成中に、間葉由来細胞や炎症性免疫細胞などの他の細胞にも遭遇し、それによって細胞の溶解および再沈殿を調節されると考えられる。
ウシ血清アルブミン(BSA)の吸着は、OCP相に関して飽和条件下でラングミュア型単層吸着モデルによって十分に説明することができる(例えば、非特許文献11参照)。同様のモデルを用いて、HAへの唾液タンパク質およびアミノ酸の吸着が説明された(例えば、非特許文献12、13参照)。
【0007】
しかしながら、リン酸カルシウム相の安定性は過飽和度によって決定されると考えられ(例えば、非特許文献1参照)、タンパク質を含む他の成分は結晶相や結晶成長を調節すると考えられている(例えば、非特許文献14参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
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Suzuki, O. ; Kamakura, S. ; Katagiri, T. ; Nakamura, M. ; Zhao, B.H. ; Honda, Y. ; Kamijo, R. Bone formation enhanced by implanted octacalcium phosphate involving conversion into Ca-deficient hydroxyapatite. Biomaterials 2006, 27, 2671-2681, doi:10.1016/j.boimaterials.2005.12.004.
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リン酸カルシウム、特にOCPは、骨芽細胞および破骨細胞様細胞の活性とそれに付随するHA形成およびその表面上の血清タンパク質吸着、OCP自身の生体吸収と相まって新生骨の形成を促進することが示されている。これらに対し、任意のタンパク質を事前に必要量集積させることが出来れば、より生体材料としての有用性が向上すると考えられる。また必要量を集積させるにあたっては、従来の方法よりもより多量のタンパク質を効率よく集積させることができる方法が求められると考えられる。
【0010】
これに対し、本発明者らはOCPを含むリン酸カルシウム結晶上に同結晶相(OCP)が特異的に成長・析出する過飽和条件下でタンパク質の吸着が促進しうる原理を見出した。
(【0011】以降は省略されています)
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