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公開番号2025018330
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-02-06
出願番号2023121930
出願日2023-07-26
発明の名称ゲノム再編を利用した糸状菌休眠遺伝子由来の二次代謝産物の生産
出願人国立大学法人東北大学,国立大学法人 東京大学
代理人個人,個人,個人,個人
主分類C12N 15/09 20060101AFI20250130BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】
糸状菌の休眠遺伝子クラスターを特定し、これを利用して休眠遺伝子由来の新規化合物を探索すること。
【解決手段】
糸状菌におけるゲノム再編方法であって、糸状菌細胞内において好熱菌由来の耐熱性制限酵素を発現させ、前記制限酵素により細胞内のゲノムにランダムな遺伝的組換えを生じさせるゲノム再編工程を含み、前記制限酵素が、約28℃~約37℃の温度条件において、恒常性プロモーターの制御下で発現されることを特徴とする、方法。前記ゲノム再編方法を利用した糸状菌における休眠遺伝子由来の化合物(二次代謝産物)の生産方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
糸状菌におけるゲノム再編方法であって、
糸状菌細胞内において好熱菌由来の耐熱性制限酵素を発現させ、前記制限酵素により細胞内のゲノムにランダムな遺伝的組換えを生じさせるゲノム再編工程を含み、
前記制限酵素が、28℃~37℃の温度条件において、恒常性プロモーターの制御下で発現されることを特徴とする、方法。
続きを表示(約 1,200 文字)【請求項2】
好熱菌由来の耐熱性制限酵素が、BclI、Sse9i、BstUI、TfiI、TseI、Tsp45I、TaqI及びPhoIから選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
好熱菌由来の耐熱性制限酵素がTaqIである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ゲノム再編工程が1週間~12週間実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
恒常性プロモーターが、TAA遺伝子プロモーター(amyB)、GLA遺伝子プロモーター(glaA)、enolase遺伝子プロモーター(enoA)、glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase 遺伝子プロモーター(gpdA)、TEF1遺伝子プロモーター(TEF1)、及びα-glucosidase遺伝子プロモーター(agdA)から選ばれるいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
糸状菌が、Aspergillus属、Acremonium属、Alternaria属、Arthrinium属、Aureobasidium属、Beauveria属、Bipolaris属、Bjerkandera属、Ceriporiopsis属、Chrysosporium属、Chaetomium属、Coprinus属、Coriolus属、Cordyceps属、Colletotricum属、Cryptococcus属、Eupenicillium属、Emericella属、Filibasidium属、Fusarium属、Humicola属、Magna Humicola属、Isaria属、Madurella属、Magnaporthe属、Metarhizium属、Mucor属、Myceliophthora属、Neocallimastix属、Neurospora属、Paecilomyces属、Penicillium属、Pestalotiopsis属、Phanerochaete属、Phlebia属、Piromyces属、Pleurotus属、Purepureocillium属、Schizophyllum属、Stachybotrys属、Salaromyces属、Talaromyces属、Thermoascus属、Thielavia属、Tolypocladium属、Trametes属、及びTrichoderma属からなる群より選ばれるいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
休眠遺伝子由来の化合物の生産方法であって、
1)請求項1~6のいずれか1項に記載の方法により、糸状菌細胞内のゲノムにランダムな遺伝的組換えを生じさせるゲノム再編工程、
2)前記ゲノム再編工程で得られた変異株と野生株の代謝産物を比較解析し、野生株では生産されない化合物を生産する変異株を選択する工程、及び
3)前記変異株を培養して、休眠遺伝子由来の化合物を取得する工程、
を含む、方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、糸状菌におけるゲノム再編方法、及び前記方法を用いた糸状菌における休眠遺伝子クラスターの特定及び休眠遺伝子由来の化合物(二次代謝産物)の生産方法に関する。
続きを表示(約 3,400 文字)【背景技術】
【0002】
糸状菌は有用天然物の生産生物であり、ペニシリンやロバスタチンをはじめ、数多くの医薬品開発に使用されてきた。生物のゲノム上には、通常発現されない遺伝子「休眠遺伝子」が相当数存在し、糸状菌のゲノム上にも、医薬品シーズとなり得る膨大な数の未開拓天然物の生合成遺伝子が休眠遺伝子として眠っている。こうした糸状菌の休眠遺伝子を覚醒することができれば、新たな医薬シーズの開拓が可能になる。
【0003】
TAQingシステムは、生物の形質を高速で改良できる大規模ゲノム再編成技術である(特許文献1、非特許文献1)。このシステムでは、制限酵素を細胞に導入して誘導性プロモーター下で一過性に発現させることで、ゲノムDNA中で同時多発的にDNA二本鎖を切断し、その後、組み替え修復により、末端連結、相同組み替え、転座、コピー数変動などの多様なゲノム再編成を生じさせる。TAQingシステムは、これまで倍数体である植物および酵母に適応され、様々な形質を有する個体の取得を可能にしてきた。しかしながら、既報(前掲)には、糸状菌をはじめとする一倍体へのTAQingシステムの適用は具体的に記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2017-99338
【非特許文献】
【0005】
Muramoto et al., Nat Commun. 2018 May 18;9(1):1995. doi: 10.1038/s41467-018-04256-y.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、糸状菌の休眠遺伝子クラスターを特定し、これを利用して休眠遺伝子由来の新規化合物を探索することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、糸状菌の休眠遺伝子の特定のために、TAQingシステムを利用することを検討した。植物は酵母を対象とした従来の方法では、制限酵素の過度な切断作用によって細胞が脆弱化することを防止するため、30~40℃において、誘導性プロモーターの制御下で制限酵素を一時的に発現させて、ゲノム再編成を実施していた。しかしながら、発明者らが、この方法にしたがい糸状菌にTAQingシステムを適用しても、形質改変体は得られなかった。そこで、制限酵素の発現系、ベクターの導入方法、ヒートショックの温度条件や時間、タイミングなど、様々な条件について試行錯誤を重ねた結果、糸状菌へのTAQingの適用と、これによる休眠遺伝子の活性化に成功した。
【0008】
本発明は上記知見に基づくものであり、以下の[1]~[7]を提供する。
[1]糸状菌におけるゲノム再編方法であって、
糸状菌細胞内において好熱菌由来の耐熱性制限酵素を発現させ、前記制限酵素により細胞内のゲノムにランダムな遺伝的組換えを生じさせるゲノム再編工程を含み、
前記制限酵素が、28℃~37℃の温度条件において、恒常性プロモーターの制御下で発現されることを特徴とする、方法。
[2]好熱菌由来の耐熱性制限酵素が、BclI、Sse9i、BstUI、TfiI、TseI、Tsp45I、TaqI及びPhoIから選択される1種又は2種以上である、[1]に記載の方法。
[3]好熱菌由来の耐熱性制限酵素がTaqIである、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]ゲノム再編工程が1週間~12週間実施される、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]恒常性プロモーターが、TAA遺伝子プロモーター(amyB)、GLA遺伝子プロモーター(glaA)、enolase遺伝子プロモーター(enoA)、glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase 遺伝子プロモーター(gpdA)、TEF1遺伝子プロモーター(TEF1)、及びα-glucosidase遺伝子プロモーター(agdA)から選ばれるいずれかである、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]糸状菌が、Aspergillus属、Acremonium属、Alternaria属、Arthrinium属、Aureobasidium属、Beauveria属、Bipolaris属、Bjerkandera属、Ceriporiopsis属、Chrysosporium属、Chaetomium属、Coprinus属、Coriolus属、Cordyceps属、Colletotricum属、Cryptococcus属、Eupenicillium属、Emericella属、Filibasidium属、Fusarium属、Humicola属、Magna Humicola属、Isaria属、Madurella属、Magnaporthe属、Metarhizium属、Mucor属、Myceliophthora属、Neocallimastix属、Neurospora属、Paecilomyces属、Penicillium属、Pestalotiopsis属、Phanerochaete属、Phlebia属、Piromyces属、Pleurotus属、Purepureocillium属、Schizophyllum属、Stachybotrys属、Salaromyces属、Talaromyces属、Thermoascus属、Thielavia属、Tolypocladium属、Trametes属、及びTrichoderma属からなる群より選ばれるいずれかである、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]休眠遺伝子由来の化合物の生産方法であって、
1)[1]~[6]のいずれかに記載の方法により、糸状菌細胞内のゲノムにランダムな遺伝的組換えを生じさせるゲノム再編工程、
2)前記ゲノム再編工程で得られた変異株と野生株の代謝産物を比較解析し、野生株では生産されない化合物を生産する変異株を選択する工程、及び
3)前記変異株を培養して、休眠遺伝子由来の化合物を取得する工程、
を含む、方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規な糸状菌の大規模ゲノム再編成方法が提供される。本発明のゲノム再編方法を利用することで、糸状菌の休眠遺伝子クラスターを特定し、休眠遺伝子由来の化合物の取得が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1は、実施例1の実験の概要を示す。
図2は、菌類発現プラスミド構築の概略を示す。PamyB:A. oryzae amyBプロモーター(デンプンまたはマルトースで誘導可能)、TamyB:A. oryzae amyBターミネーター、Amp
r
:アンピシリン耐性遺伝子、ptrA:ピリチアミン耐性遺伝子
図3は、PCRで増幅したNLS- taqI遺伝子の配列を示す。網掛け:順に6 x His、SV40 NLS、taq1配列
図4は、A. nigerの形質転換体を継代後に出現した形質変化株 を示す。上段はamyBプロモーターの下流にtaqIを連結したベクターを用いた形質転換体から出現した形質変化株を示す。下段はenoAプロモーターの下流にtaqIを連結したベクターを用いた形質転換体から出現した形質変化株を示す。
図5は、amyB#1-14のゲノムPCR(電気泳動)の結果を示す。
図6は、A. niger形質変化株の代謝物分析(HPLC)の結果を示す。
図7A-Bは、A. niger形質変化株培養抽出物の抗菌活性評価の結果を示す。
図8は、A. niger形質変化株のシーケンス用ゲノム抽出(電気泳動)の結果を示す。
図9は、糸状菌形質変化株で観測された遺伝子欠失及び逆位を示す(enoA 1-6株:遺伝子欠損、amyB 1-8株:遺伝子転座)。
図10は、糸状菌形質変化株で観測されたSNPを示す。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)

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