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公開番号2024102019
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-07-30
出願番号2024005290
出願日2024-01-17
発明の名称エラストマー
出願人国立大学法人 東京大学,国立大学法人千葉大学
代理人弁理士法人三枝国際特許事務所
主分類C08G 63/91 20060101AFI20240723BHJP(有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物)
要約【課題】多分岐型ポリマーを重合してなる新規エラストマーを提供する。
【解決手段】ポリエステルを骨格とする多分岐型ポリマーとリンカーとを重合してなるエラストマーであって、前記多分岐型ポリマーが側鎖又は末端に第1の官能基を有し、前記リンカーが側鎖又は末端に、前記第1の官能基と反応性の第2の官能基を有する、エラストマー。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
ポリエステルを骨格とする多分岐型ポリマーとリンカーとを重合してなるエラストマーであって、
前記多分岐型ポリマーが側鎖又は末端に第1の官能基を有し、
前記リンカーが側鎖又は末端に、前記第1の官能基と反応性の第2の官能基を有する、エラストマー。
続きを表示(約 940 文字)【請求項2】
前記多分岐型ポリマーが、脂肪族ポリエステルを骨格とする多分岐型ポリマーを含む請求項1に記載のエラストマー。
【請求項3】
前記多分岐型ポリマーが、三分岐型ポリマー又は四分岐型ポリマーを含む請求項1に記載のエラストマー。
【請求項4】
第1の官能基及び第2の官能基の一方が、チオール基及びアミノ基よりなる群から選択され、
第1の官能基及び第2の官能基の他方が、求電子性官能基が、マレイミジル基、ビニルスルホニル基、ノルボルネン基、ブロモ基、エポキシ基、N-スクシンイミジルエステル基、スルホスクシンイミジルエステル基、N-アシルイミダゾール基、及びアクリロイル基よりなる群から選択される、請求項1に記載のエラストマー。
【請求項5】
第1の官能基及び第2の官能基の一方がアジ基を含み、第1の官能基及び第2の官能基の他方がアルキニル基を含む、請求項1に記載のエラストマー。
【請求項6】
複数の、ポリエステルを骨格とする多分岐型ポリマーに由来する構成単位と、
前記複数の多分岐型ポリマーに由来する構成単位のうちの隣接する多分岐型ポリマーに由来する構成単位を結合する、リンカー部位と、
を含むエラストマー。
【請求項7】
一軸引張試験において、破断伸長比が15以上である請求項1~6のいずれか一項に記載のエラストマー。
【請求項8】
最大伸長比が10以上、かつ接線弾性率の初期値に対する破断直前の接線弾性率の比E
t,max
/E
t,min
が1000以上である請求項1~6のいずれか一項に記載のエラストマー。
【請求項9】
無溶媒環境下で非結晶性である請求項1~6のいずれか一項に記載のエラストマー。
【請求項10】
ポリエステルを骨格とする多分岐型ポリマーとリンカーとを重合することを含む、エラストマーの製造方法であって、
前記多分岐型ポリマーが側鎖又は末端に第1の官能基を有し、
前記リンカーが側鎖又は末端に、前記第1の官能基と反応性の第2の官能基を有する、方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、多分岐型ポリマーを重合してなるエラストマーに関する。
続きを表示(約 5,900 文字)【背景技術】
【0002】
19世紀に天然ゴムの加硫が偶然発見されて以来、エラストマーは私たちの社会に欠かせない素材のひとつとなっている。エラストマーの柔軟性、伸縮性、弾性は他に類を見ないものであり、したがって他の種類の材料で代替することはできない。エラストマーは、柔軟なポリマー鎖の三次元架橋ネットワークから構成されており、その機械的特性は、ネットワークの構造とポリマー鎖を構成する繰り返し単位に大きく依存する。従来のエラストマーは一般に、線状のポリマー鎖をランダムに結合させて製造されるため、ネットワーク構造には必然的に不均一性が存在した(図1(a))。
ダングリング鎖は弾性に寄与せず、架橋点間の鎖長が不均一であると、変形時には少数の鎖に応力が集中する。
【0003】
過去数十年の間に、架橋ポリマーネットワークの構造制御は大きく進歩した。構造の不均一性を低減する最も有望な方法は、モジュール組立戦略である(非特許文献1-3) (図1(b))。多腕ポリマーの鎖の末端を溶液中で結合させると、理想的にはダングリング鎖のないネットワークが得られる。多腕ポリマーの分子量分布を狭くすることで、隣接する架橋点間の鎖長を均一にすることができる。この単純かつ強力な戦略は、現在、制御されたネットワーク構造と予測可能な特性を有するゲル材料を作製するための便利なツールとなっている(非特許文献3,4) 。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
T. Sakai et al., Macromolecules 2008, 41, 5379
X. Li et al., Science Advances 2019, 5, eaax8647
S.Nakagawa et al., Polym. Chem. 2022, 13, 2074
M. Ohira et al., Advanced Materials 2022, 34, 2108818
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでの研究は主に溶媒中の架橋ゲルに対してなされており、しかし、無溶媒エラストマーへのモジュール組立戦略の応用は、これまでほとんど追求されてこなかった。鎖はゲルよりもエラストマーの方がはるかに密に詰まっている。従って、無溶媒エラストマーに高度に均質なネットワーク構造を付与すれば、これまでにない機械的性能につながる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に記載の実施形態を包含する。
項1.
ポリエステルを骨格とする多分岐型ポリマーとリンカーとを重合してなるエラストマーであって、
前記多分岐型ポリマーが側鎖又は末端に第1の官能基を有し、
前記リンカーが側鎖又は末端に、前記第1の官能基と反応性の第2の官能基を有する、エラストマー。
項2.
前記多分岐型ポリマーが、脂肪族ポリエステルを骨格とする多分岐型ポリマーを含む項1に記載のエラストマー。
項3.
前記多分岐型ポリマーが、三分岐型ポリマー又は四分岐型ポリマーを含む項1に記載のエラストマー。
項4.
第1の官能基及び第2の官能基の一方が、チオール基及びアミノ基よりなる群から選択され、
第1の官能基及び第2の官能基の他方が、求電子性官能基が、マレイミジル基、ビニルスルホニル基、ノルボルネン基、ブロモ基、エポキシ基、N-スクシンイミジルエステル基、スルホスクシンイミジルエステル基、N-アシルイミダゾール基、及びアクリロイル基よりなる群から選択される、項1に記載のエラストマー。
項5.
第1の官能基及び第2の官能基の一方がアジ基を含み、第1の官能基及び第2の官能基の他方がアルキニル基を含む、項1に記載のエラストマー。
項6.
複数の、ポリエステルを骨格とする多分岐型ポリマーに由来する構成単位と、
前記複数の多分岐型ポリマーに由来する構成単位のうちの隣接する多分岐型ポリマーに由来する構成単位を結合する、リンカー部位と、
を含むエラストマー。
項7.
一軸引張試験において、破断伸長比が15以上である項1~6のいずれか一項に記載のエラストマー。
項8.
最大伸長比が10以上、かつ接線弾性率の初期値に対する破断直前の接線弾性率の比E
t,max
/E
t,min
が1000以上である項1~6のいずれか一項に記載のエラストマー。
項9.
無溶媒環境下で非結晶性である項1~6のいずれか一項に記載のエラストマー。
項10.
ポリエステルを骨格とする多分岐型ポリマーとリンカーとを重合することを含む、エラストマーの製造方法であって、
前記多分岐型ポリマーが側鎖又は末端に第1の官能基を有し、
前記リンカーが側鎖又は末端に、前記第1の官能基と反応性の第2の官能基を有する、方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリエステルを骨格とする多分岐型ポリマーを重合してなる新規なエラストマーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本研究のコンセプト。(a)従来のエラストマー。非晶性の低Tgポリマーがランダムに架橋され、高度に不均一なポリマーネットワークとなる。伸長により、応力は少数の鎖に集中し、一部の鎖は応力を受けない。(b)本研究で開発された均質なエラストマー。非晶性の低Tgマルチアームプレポリマーを末端結合させると、非常に均質なゲルが得られ、これを乾燥させると無溶媒エラストマーが得られる。伸長により均一な応力分布が期待できる。
OH末端PMCL(3-arm 30k)の
1
H NMRスペクトル。
OH末端PMCL(4-arm 20k)の
1
H NMRスペクトル。
OH末端PMCL(4-arm 40k)の
1
H NMRスペクトル。
3つのOH末端PMCLのSEC曲線。4-arm 20kのデータは、他のサンプルとは異なる装置(Prominence GPC, Shimadzu, Japan, TSKgel GMHHR-M カラム使用, DMF + LiCl 10 mMで溶出)を使用して測定されたことに注意すべきである。したがって、4-arm 20kのピーク位置は他の2つのサンプルのそれと比較できない。
PhMal末端PMCL(3-arm 30k)の
1
H NMRスペクトル。
PhMal末端PMCL(4-arm 20k)の
1
H NMRスペクトル。
PhMal末端PMCL(4-arm 40k)の
1
H NMRスペクトル。
鎖末端修飾前後のPMCL(3-arm 30k)の
1
H NMRスペクトル。
PhMal末端PMCLのSEC曲線。
エラストマーの調製スキーム。PhMal末端多腕PMCLを溶液中でジチオールリンカー(DODT)と反応させる。得られたゲルから溶媒を除去し、PMCLエラストマーを得た。
実施例のエラストマーの延伸性を示す写真。エラストマーフィルムの寸法は19mm×7mm×0.25mmであった。フィルムは4-arm 20k前駆体から調製した。
実施例のエラストマーの耐穿刺性を示す写真。
一軸引張試験前および試験中のリング状エラストマー試験片を示す写真。(左)試験前、(右)試験中。
3-arm 30k前駆体から合成したエラストマーの応力-ひずみ曲線。延伸速度はdλ/dt=0.05秒
-1
。再現性を示すために3つの試験片(Piece 1~3)のデータを示す。
接線弾性率(Tangent modulus)Et=d
σtrue
/d
εtrue
と伸長比の関係。
ひずみ硬化を示す広範な伸縮性高分子材料に対する、最大伸長比対ひずみ硬化度(E
t,max
/E
t,min
)のアシュビー型プロット。
種々の前駆体ポリマーから合成したエラストマーの応力-ひずみ曲線。3-arm 30kの曲線は図15から複製した。再現性を確認するため、各エラストマーについて3つの試験片を試験した。
エラストマーの機械的耐久性試験。エラストマーは3-arm 30k前駆体から調製した。リング状試験片の100サイクル引張試験。1サイクルで試験片に与えられた変形を示す写真。
図19のエラストマーの機械的耐久性試験。100サイクル試験中に加えられた伸長比(上)と観察された工学応力(下)。
図19のエラストマーの機械的耐久性試験。100サイクル試験におけるすべての応力-ひずみ曲線。
図19のエラストマーの機械的耐久性試験。サイクル数の関数としての各サイクルの最大応力と荷重仕事。
(a)-(d)ノッチ付きリング試験片の繰返し引張試験。試験片に部分的な切り込みを入れ、10回の負荷-除荷サイクルを行った。公称伸長比は1.5から11まで増加させ、その後1サイクルで1.5まで減少させた。(b,c)1サイクル目(b)と10サイクル目(c)で公称伸長比を変えたときの写真。(d) 繰返し試験中の公称伸長比(上)と観察された引張力(下)。
4-arm 20k前駆体から合成したエラストマーのTensile-SWAXS分析。実験のレイアウト。試験片をdλ/dt= 0.1 s
-1
の速度でλ=1から13まで引き伸ばし、すぐに同じ速度で除荷した。SWAXS測定はこの過程で連続して行われた。
λ=12.3で収集したWAXS画像。破線の長方形は、図27aでの拡大表示範囲を示す。
λ=12.3で収集したSAXS画像。青い破線の長方形は、図27bでの拡大表示範囲を示す。
(a)延伸及び除荷中の各λにおけるWAXS画像。(b)延伸及び解放中の各λにおけるWSAXS画像。図25と図26の点線の矩形で示した範囲を示す。
(a)方位角86°≦β≦94°の範囲でセクター平均して得られた1次元WAXSプロファイル。大きなひずみで現れるピークとショルダを三角形で示す。(b)λ=1及び12.3における1次元WAXSプロファイルのピークデコンボリューション解析結果。強度は、21-26 nm
-1
のq範囲における積分強度によって正規化されている。まず、λ=1のアモルファスハローを擬Voigt関数でフィッティングした。このアモルファスハローの強度をベースラインとして、λ=12.3のフィッティングを行い、さらに2つの擬Voigt関数を追加してピークとショルダをモデル化した。これらの2つの関数の幅は、カーブフィッティングの際に等しくなるように制約された。(c)ストリークが現れる2次元画像上の限られた領域をセクター平均して得られた1次元SAXSプロファイル。実線は、べき乗則モデルI(q) = Aq
-d
に従った線形フィッティング結果を表す。Amorphous halo: アモルファスハロー、peaks:ピーク、total: 全体。
(a)正規化WAXSピーク強度(i
WAXS
)、(b)q = 0.1 nm
-1
における正規化SAXS強度(iSAXS)、及び(c)伸張及び解放中のエラストマーの巨視的工学応力σ
eng
。Streching: 延伸、Releasing: 除荷。
市販のゴムバンド(TT-01, 株式会社ユタカメイク)の応力-ひずみ曲線。ひずみ速度は0.05秒
-1
。 (a)伸長比に対してプロットした工学応力。(b)真応力(true stress)を真ひずみ(true strain)に対してプロットしたもの。区間と線形フィッティングの結果も示す。(c)各区間における接線弾性率。
伸長比に対するX線吸光度のプロット。
OH末端PDXO(4-arm 13k)の
1
H NMRスペクトル。
アジド末端PDXO(4-arm 11k)の
1
H NMRスペクトル。
OH末端PDXO(4-arm 13k)とアジド末端PDXO(4-arm 11k)のSEC曲線。
アジド末端マルチアームPDXO溶液及びゲル化過程の赤外吸収スペクトル
異なる架橋剤比で調製したゲルのアジド末端の反応率の時間変化
異なる分子量の前駆体ポリマーから調製したエラストマーの応力-ひずみ曲線
異なる架橋剤比で調製したエラストマーの応力-ひずみ曲線
4-arm 9k PDXO前駆体から合成したエラストマーのTensile-WAXS分析。(a)応力-ひずみ曲線。(b)延伸中の各λにおけるWAXS画像
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「含有する」及び「有する」は、「実質的にのみからなる」、及び「のみからなる」も包含する概念である。
【0010】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。更に、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
(【0011】以降は省略されています)

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