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公開番号2024099749
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-07-25
出願番号2024072000,2022193375
出願日2024-04-26,2017-11-15
発明の名称MPSIおよびMPSIIならびに他の神経障害において神経機能を改善するための方法
出願人リジェネクスバイオ インコーポレイテッド,リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
代理人個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人,個人
主分類A61K 48/00 20060101AFI20240718BHJP(医学または獣医学;衛生学)
要約【課題】中枢神経系障害、例えば、MPSIまたはMPSIIに関連する1つまたは複数の神経症状を、阻止する、阻害する、または処置する方法を提供する。
【解決手段】哺乳動物の中枢神経系に、神経認知衰退を阻止もしくは阻害する、神経認知を増強する、または神経機能を回復するのに有効な遺伝子産物をコードするオープンリーディングフレームを含む、ある量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含む組成物を投与する工程による、方法とする。
【選択図】図15
特許請求の範囲【請求項1】
以下の工程を含む、中枢神経系の障害を症状発現しているか、またはそれを有するリスクがある哺乳動物において、神経認知衰退を阻止もしくは阻害する、神経認知を増強する、または神経機能を回復する方法:
該哺乳動物の中枢神経系に、
神経認知衰退を阻止もしくは阻害する、神経認知を増強する、または神経機能を回復するのに有効な遺伝子産物をコードするオープンリーディングフレームを含む、ある量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含む組成物
を投与する工程。
続きを表示(約 640 文字)【請求項2】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物が成体ではない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒトが、約6歳~約13歳である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒトが、約4か月齢~約5歳である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒトが、2.5歳未満である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒトが、骨髄移植または酵素補充療法を受けたことがある、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物が、ムコ多糖症I型(MPSI)、ムコ多糖症II型(MPSII)、脊髄筋萎縮症、またはバッテン病を有するか、またはそれを有するリスクがある、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記オープンリーディングフレームが、IDUA、イズロナート-2-スルファターゼ(IDS)、サバイバー運動ニューロン-1(SMN-1)、またはセロイドリポフスチン症タンパク質(CLN)をコードする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記量が、脳におけるGAGレベルを低減させる、または、水無脳症を阻止するかもしくは低減させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年2月13日に出願された米国特許出願62/458,248号、2017年2月13日に出願された米国特許出願第62/458,259号、2016年11月15日に出願された米国特許出願第62/422,453号、および2016年11月15日に出願された米国特許出願第62/422,436号の出願日の恩典を主張し、これらの開示は、参照により本明細書に組み入れられる。
続きを表示(約 5,600 文字)【0002】
政府権利の陳述
本発明は、National Institutes of Healthによって授与されたHD032652の下、政府支援で行われた。政府は、本発明においてある一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
ムコ多糖症(MPS)は、グリコサミノグリカン(GAG)の異化における破壊によって引き起こされ、リソソームにおけるそれらの蓄積がもたらされる、11種類の蓄積症の群である(Muenzer, 2004;Munoz-Rojas et al., 2008)。変動する重症度の症状発現には、臓器腫大、骨格形成異常、心臓および肺の閉塞、ならびに神経衰退が含まれる。イズロニダーゼ(IDUA)の欠損症であるMPS Iについて、重症度は、軽度(シャイエ症候群)から中等度(ハーラー-シャイエ)、重篤(ハーラー症候群)までの範囲にわたり、後者は、神経学的欠損および15歳までの死亡を結果としてもたらす(Muenzer, 2004;Munoz-Rojas et al., 2008)。MPSのための治療法は、大半が対症的である。しかし、同種異系造血幹細胞移植(HSCT)が効力を呈している、ハーラー症候群を含むいくつかのMPS疾患がある(Krivit, 2004;Orchard et al., 2007;Peters et al., 2003)。追加的に、ますます多くのMPS疾患について、酵素補充療法(ERT)が利用可能になってきている(Brady, 2006)。概して、HSCTおよびERTは、貯蔵物質の一掃および改善された末梢状態を結果としてもたらすが、いくつかの問題が処置後に持続する(骨格、心臓、角膜混濁)。これらの細胞療法および酵素療法における主たる難題は、神経症状発現に対処する際の有効性であり、それは、末梢に投与された酵素が、血液脳関門を貫通しないためであり、HSCTは、すべてではないがいくつかのMPSにとって有益であることが見出されている。
【0004】
MPS Iは、細胞療法および分子療法の開発のために、MPS疾患の最も広範囲にわたって研究されているものの1つである。同種異系HSCTの有効性は、代謝交差補正の結果である可能性が最も高く、それによって、失われている酵素が、ドナー由来の細胞から放出され、その後、宿主細胞によって取り込まれてリソソームに輸送され、そこで、酵素がリソソーム代謝に寄与する(Fratantoni et al., 1968)。GAG貯蔵物質の一掃が、その後、肝臓および脾臓などの末梢臓器において観察され、心肺閉塞からの解放および角膜混濁の改善がある(Orchard et al., 2007)。MPS疾患における神経症状発現の出現に対する同種異系幹細胞移植の効果は、特に重要である。この点において、同種異系幹細胞が生着した個体が、移植されていない患者との比較において改善された転帰に直面する、数種類のMPS疾患についての証拠がある(Bjoraker et al., 2006;Krivit, 2004;Orchard et al., 2007;Peters et al., 2003)。同種異系造血幹細胞移植の神経学的有益性を説明する中心的な仮説は、ドナー由来の造血細胞(ミクログリアの可能性が最も高い)の中枢神経系中への浸透であり(Hess et al., 2004;Unger et al., 1993)、そこで、失われている酵素が生着した細胞によって発現され、その点から、酵素がCNS組織中に拡散して、貯蔵物質の一掃に関与する。CNS組織に提供される酵素のレベルは、このように、脳に生着しているドナー由来の細胞から発現され、放出される量に限定される。そのような生着は、MPS Iにとって大きく有益であるが、レシピエントは、それでもなお、正常よりも下のIQおよび損なわれた神経認知能力を呈し続ける(Ziegler and Shapiro, 2007)。
【0005】
代謝交差補正の現象はまた、数種類のリソソーム蓄積症についてのERTの有効性も説明し(Brady, 2006)、最も著しくはMPS Iである。しかし、CNSに有効に到達するためには、特定のリソソーム蓄積症(LSD)において失われている酵素が血液脳関門(BBB)を通過する必要があり、リソソーム蓄積症(LSD)の神経症状発現に対する酵素療法の有効性は観察されていない(Brady, 2006)。酵素は、BBBを有効に横切るには、ほぼ常に大きすぎ、かつ概して荷電しすぎている。これにより、侵襲的くも膜下腔内酵素投与への調査が促され(Dickson et al., 2007)、それについては、MPS Iのイヌモデルにおいて有効性が実証されており(Kakkis et al., 2004)、MPS Iのためにヒト臨床試験が始まっている(Pastores, 2008;Munoz-Rojas et al., 2008)。酵素療法の主な短所には、その高い費用(1年あたり200,000ドルよりも高い)、および組換えタンパク質の反復注入の必要性が含まれる。くも膜下腔内IDUA投与の現在の臨床試験は、3か月ごとに1回のみ、酵素を注射するように設計されており、そのためこの投薬レジメンの有効性は、不確定のままである。
【0006】
別のMPSである、ハンター症候群(ムコ多糖症II型;MPS II)は、組織におけるグリコサミノグリカン(GAG)の蓄積を特徴とするイズロナート-2-スルファターゼ(IDS)の欠損によって引き起こされ、骨格形成異常、肝脾腫大、心肺閉塞、および神経衰退を結果としてもたらす、X連鎖潜性遺伝性リソソーム病である。患者の標準治療は、酵素補充療法(ERT)であるが、ERTは、神経学的改善と関連していない。MPS II(ハンター症候群)の神経症状発現については、現在、既存の許容される治療法がない。
【発明の概要】
【0007】
概要
IDS欠損症のマウスモデルにおいて、若い8週齢マウス中へのAAV9.hIDSの脳室内(ICV)投与は、IDS欠損対照同腹子と比較して、補正的レベルのhIDS酵素活性、GAG貯蔵のほぼ野生型(WT)レベルへの低減、および神経認知機能不全の阻止を結果としてもたらした。神経症状発現の出現が若い成体において阻止できたため、AAV9.hIDSのICV投与によって2か月齢または4か月齢で処置した、より高齢の成体MPS II動物が、神経行動学的機能を回復し、補正されたレベルのIDS酵素活性およびGAG貯蔵を示し得ると仮定された。本明細書において開示されるように、ICV注射の4週間後まで、循環におけるIDS酵素活性は、WTレベルの1000倍であった(0.39+/-0.04 nmol/hr/mlと比較して305+/-85 nmol/hr/mL)。36週齢で、処置動物を、バーンズ迷路において神経認知機能について試験した。処置動物の動作は、罹患していない同腹子のものと区別不能であり、無処置MPS IIマウスと比較して有意に改善された。4か月齢までに失われる認知機能を、このように、IDSをコードするAAV9の脳脊髄液への送達によって、MPS IIマウスにおいて修復させることができる。これらの結果の興味深い意味合いは、ヒトMPS IIが、CNSへのAAV媒介性IDS遺伝子移入によって神経症状発現の発生後に処置可能であるかもしれないという見通しである。このように、CNSへのアデノ随伴ウイルス媒介性IDS遺伝子移入は、MPS IIのマウスモデルにおいて神経機能不全の発生を阻止した。注目すべきことに、CNSへのAAV媒介性IDS遺伝子移入はまた、疾患の症状発現が既に発生している動物に投与した時に、神経機能の回復を結果としてもたらした。このように、MPS IIにおける神経機能の回復は、神経学的欠損症の症状発現が既に出現した後に、CNS中へのIDS遺伝子移入によって達成することができ、そのため、ハンター症候群を有する患者は、この様式で、神経症状の発症後でさえも処置され得る。
【0008】
1つの態様において、本発明は、哺乳動物において神経認知機能不全を阻止、阻害、もしくは処置する、神経認知を増強する、神経機能を回復する、または神経認知衰退を阻止するための、AAVを介した治療用タンパク質のCNSへの送達を提供する。1つの態様において、哺乳動物は、MPSIIを有するか、またはそれを有するリスクがある、例えば、症状が出る前である。1つの態様において、哺乳動物は、MPSIを有するか、またはそれを有するリスクがある、例えば、症状が出る前である。1つの態様において、rAAVは、神経認知機能不全を阻止、阻害、もしくは処置するため、または神経認知機能を修復(増強)するために哺乳動物に、くも膜下腔内に(IT)、血管内に(IV)、または脳室内に(ICV)送達される。1つの態様において、哺乳動物は、免疫抑制に供される。1つの態様において、哺乳動物は、寛容化に供される。1つの態様において、例えば成体哺乳動物において、神経認知機能不全を阻止する、阻害する、および/または処置する方法が提供される。1つの態様において、哺乳動物は、寛容化に供される。1つの態様において、例えば非成体哺乳動物において、神経認知機能不全を阻止する、阻害する、および/または処置する方法が提供される。1つの態様において、rAAVは、乳児(例えば、3歳以下、例えば、3、2.5、2、もしくは1.5歳未満であるヒト)、前青年(例えば、10、9、8、7、6、5、もしくは4歳未満であるが、3歳よりも大きいヒト)、または成人(例えば、約12歳よりも年長のヒト)に投与される。
【0009】
1つの態様において、方法は、IDSをコードするオープンリーディングフレームを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの有効量を含む組成物を、処置の必要がある哺乳動物のCNSに送達する工程を含む。AAVベクターは、それがCNS/脳に送達されること、および導入遺伝子が対象のCNS/脳において成功裡に形質導入されることを確実にするために、様々なやり方で投与することができる。CNS/脳への送達の経路には、くも膜下腔内投与(例えば、大槽を介したまたは腰椎穿刺を介した)、頭蓋内投与、例えば、脳室内投与または側脳室投与、血管内投与、および実質内投与が含まれるが、それらに限定されない。1つの態様において、投与されるAAV-IDUAの量は、AAV-IDSが投与されていないMPSIIを有する対応する哺乳動物と比べて哺乳動物において、例えば血漿または脳において、例えば、2、5、10、25、50、100、200、または500倍以上、最大で1000倍多いIDSの増加を結果としてもたらす。1つの態様において、MPSIIを有するか、またはそれを有するリスクがある患者、例えば、約4か月齢~約5歳のヒトは、約1.3×10
10
ゲノムコピー(GC)/g脳質量~約6.5×10
10
GC/g脳質量を投与される。1つの態様において、MPSIIを有するか、またはそれを有するリスクがある患者、例えば、4か月齢以上約9か月齢までのヒトは、約7.8×10
12
一律用量~約3.9×10
13
一律用量が投与され;9か月齢以上約18か月齢までは、約1.3× 10
13
一律用量~約6.5×10
13
一律用量が投与され;約18か月齢以上約3歳以下は、約1.4×10
13
~約7.2×10
13
一律用量が投与され;または、3歳以上は、約1.7×10
13
~約8.5×10
13
一律用量が投与され、例えば、クモ膜下腔内に、および任意で、大槽を介してまたは腰椎穿刺を介してである。用量は、約5~約20 mLの体積中であることができる。
【0010】
1つの態様において、方法は、IDSをコードするオープンリーディングフレームを含むrAAVセロタイプ9(rAAV9)ベクターの有効量を含む組成物を、処置の必要がある成体哺乳動物のCNSに送達する工程を含む。1つの態様において、方法は、IDSをコードするオープンリーディングフレームおよびSUMF-1をコードするオープンリーディングフレームを含むrAAV9ベクターの有効量を含む組成物を、処置の必要がある成体哺乳動物のCNSに送達する工程を含む。例えば、AAV9-IDSは、免疫適格性であるか、免疫欠損であるか、例えば、シクロホスファミド(CP)で免疫抑制されているか、またはIDSタンパク質の注射によって免疫寛容化されているかのいずれかである成体IDS欠損マウスの側脳室中への直接注射によって、投与されてもよい。1つの態様において、投与されるAAV-IDUAの量は、AAV-IDSが投与されていないMPSIIを有する対応する哺乳動物と比べて成体哺乳動物において、例えば血漿または脳において、例えば、2、5、10、25、50、100、200、または500倍以上、最大で1000倍多いIDSの増加を結果としてもたらす。
(【0011】以降は省略されています)

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