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公開番号2025086769
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-06-09
出願番号2023201041
出願日2023-11-28
発明の名称加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法および加圧水型原子力プラント
出願人日立GEニュークリア・エナジー株式会社
代理人弁理士法人磯野国際特許商標事務所
主分類G21D 1/00 20060101AFI20250602BHJP(核物理;核工学)
要約【課題】PWRの一次冷却材に接液する接液部の腐食電位を低く維持し、ステンレス鋼のSCCの抑制とニッケル基合金のSCCの抑制とを両立することが可能な加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法、および、これを用いる加圧水型原子力プラントを提供する。
【解決手段】加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法は、水素注入を行う工程と、貴金属注入を行う工程と、接液部の電極電位を測定する工程とを含み、貴金属注入を行う注入点は、化学体積制御系P300の再生熱交換器P33の下流であり、一次冷却材の溶存水素濃度を、接液部の電極電位とニッケルの酸化物形成反応の平衡電位との差分が目標電位差よりも大きくなるように制御する。加圧水型原子力プラントは、一次冷却系P100、二次冷却系P100、化学体積制御系P300、水素注入装置、貴金属注入装置P31、電位センサを備え、貴金属注入装置P31は、再生熱交換器P33の下流に接続されている。
【選択図】図4
特許請求の範囲【請求項1】
加圧水型原子炉の一次冷却材に水素注入を行う工程と、
前記一次冷却材に貴金属注入を行う工程と、
圧力容器の内部を含む一箇所以上で前記一次冷却材に接液する接液部の電極電位を測定する工程と、を含み、
前記貴金属注入を行う注入点は、化学体積制御系の再生熱交換器よりも下流であり、
前記一次冷却材の溶存水素濃度を、前記電極電位とニッケルの酸化物形成反応の平衡電位との差分が、予め設定された目標電位差よりも大きくなるように制御する加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法。
続きを表示(約 2,400 文字)【請求項2】
請求項1に記載の加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法であって、
前記貴金属注入を行う注入点は、化学体積制御系の再生熱交換器よりも下流と、前記再生熱交換器よりも上流とである加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法。
【請求項3】
加圧水型原子炉の一次冷却材に水素注入を行う工程と、
前記一次冷却材に貴金属注入を行う工程と、
圧力容器の内部を含む一箇所以上で前記一次冷却材に接液する接液部の電極電位を測定する工程と、を含み、
前記貴金属注入を行う注入点は、余熱除去系の冷却器よりも下流であり、
前記一次冷却材の溶存水素濃度を、前記電極電位とニッケルの酸化物形成反応の平衡電位との差分が、予め設定された目標電位差よりも大きくなるように制御する加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法であって、
前記電極電位を測定する場所は、前記圧力容器の内部と、前記圧力容器の外部と、を含む二箇所以上である加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法であって、
前記一次冷却材の溶存水素濃度、前記一次冷却材の導電率、前記一次冷却材のpH、および、前記一次冷却材のイオン濃度のうちの一以上を測定する工程を含む加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法であって、
前記接液部のうちで応力腐食割れのリスクの高い部位を選定する選定工程と、
選定された前記部位の腐食電位を監視する監視工程と、
選定された前記部位に接液する前記一次冷却材に貴金属注入を行って前記応力腐食割れに対する予防保全を実行する予防保全実行工程と、
監視されている前記電極電位と、前記平衡電位との差分が、予め設定された目標電位差よりも大きくなる範囲に、前記一次冷却材の水質パラメータを是正する是正工程と、
前記是正工程を実行しても前記差分が前記目標電位差よりも大きくならない場合に、選定された前記部位の材料の交換、または、選定された前記部位の応力を緩和する措置を実行する改善工程と、
前記選定工程、前記監視工程、前記予防保全実行工程、前記是正工程、前記改善工程の繰り返しによって、前記接液部の応力腐食割れによるリスクを管理するライフサイクルマネジメント工程と、を含む加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法。
【請求項7】
請求項6に記載の加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法であって、
前記水質パラメータは、前記一次冷却材の溶存水素濃度と、前記一次冷却材の導電率、前記一次冷却材のpH、前記一次冷却材のイオン濃度、および、前記接液部に対する貴金属の付着量のうちの一以上とである加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法。
【請求項8】
加圧水型原子炉の圧力容器に接続されており、蒸気発生器、加圧器および冷却材ポンプを有し、前記圧力容器と前記蒸気発生器との間で前記加圧器を介して一次冷却材を循環させる一次冷却系と、
前記蒸気発生器と復水器との間に接続されており、タービンを有し、前記蒸気発生器と前記復水器との間で前記タービンを介して二次冷却材を循環させる二次冷却系と、
前記一次冷却系にバイパス状に接続されており、前記一次冷却材のホウ素濃度および体積を調整する化学体積制御系と、
前記一次冷却材に水素注入を行う水素注入装置と、
前記一次冷却材に貴金属注入を行う貴金属注入装置と、
前記一次冷却材に接液する接液部の電極電位を測定する電位センサと、を備え、
前記化学体積制御系は、前記一次冷却系から抽出された一次冷却材と前記ホウ素濃度および前記体積が調整された一次冷却材とを熱交換させる再生熱交換器を有し、
前記貴金属注入装置は、前記化学体積制御系の前記再生熱交換器の下流に接続されている加圧水型原子力プラント。
【請求項9】
請求項8に記載の加圧水型原子力プラントであって、
前記貴金属注入装置は、前記化学体積制御系の前記再生熱交換器よりも下流と、前記再生熱交換器よりも上流とに接続されている加圧水型原子力プラント。
【請求項10】
加圧水型原子炉の圧力容器に接続されており、蒸気発生器、加圧器および冷却材ポンプを有し、前記圧力容器と前記蒸気発生器との間で前記加圧器を介して一次冷却材を循環させる一次冷却系と、
前記蒸気発生器と復水器との間に接続されており、タービンを有し、前記蒸気発生器と前記復水器との間で前記タービンを介して二次冷却材を循環させる二次冷却系と、
前記一次冷却系にバイパス状に接続されており、前記一次冷却材のホウ素濃度および体積を調整する化学体積制御系と、
前記一次冷却系にバイパス状に接続されており、原子炉の停止後の前記一次冷却材の余熱を除去する余熱除去系と、
前記一次冷却材に水素注入を行う水素注入装置と、
前記一次冷却材に貴金属注入を行う貴金属注入装置と、
前記一次冷却材に接液する接液部の電極電位を測定する電位センサと、を備え、
前記余熱除去系は、前記一次冷却系から抽出された一次冷却材を冷却する冷却器を有し、
前記貴金属注入装置は、前記余熱除去系の前記冷却器よりも下流に接続されている加圧水型原子力プラント。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材の応力腐食割れを貴金属注入によって抑制する加圧水型原子炉の腐食環境緩和方法および加圧水型原子力プラントに関する。
続きを表示(約 1,900 文字)【背景技術】
【0002】
原子力プラントの機器や配管は、ステンレス鋼、ニッケル基合金等で形成されている。これらの材料は、材料的因子、力学的因子および環境的因子の重畳によって、応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking:SCC)の感受性が高くなる。そのため、原子力プラントでは、プラントの健全性を維持するために、SCCを防止する対策が実施されている。また、近年では、原子炉の稼働率の向上や、経済性の向上や、高経年化への対応の観点からも、SCCの予防が進められている。
【0003】
SCCに対する対策としては、材料の耐食性の向上や、引張応力の緩和や、腐食環境の緩和等を目的とした措置が実行されている。国内外の沸騰水型原子炉(Boiling Water Reactor:BWR)では、冷却水である軽水に接液する構造部材のSCCを防止する対策として、水素注入が広く行われている。特許文献1、2には、水素注入に関する技術が開示されている。
【0004】
圧力容器の内部のような高線量下では、水の放射線分解が起こり、冷却水中に酸素や過酸化水素が生成される。圧力容器に対して循環する冷却水は、酸素濃度や過酸化水素濃度が高くなり、SCCが発生し易い腐食環境となる。水素注入では、このような冷却水に水素ガスを注入して、酸素や過酸化水素と水素とを再結合反応させる。冷却水中の酸素や過酸化水素を再結合反応で消費させることによって、冷却水に接液する材料が晒される腐食環境が緩和される。
【0005】
BWRでは、SCCに対する予防保全の効果を表す指標として、冷却水に接液する構造部材の腐食電位(Electrochemical Corrosion Potential:ECP)が用いられている。ステンレス鋼の腐食電位が-300~-200mV vs.SHEよりも低くなると、SCCの発生が抑制されることが知られている。そのため、-300mV vs.SHE程度よりも低い腐食電位の目標値の下で、プラントの運転が行われている。
【0006】
一方、加圧水型原子炉(Pressurized Water Reactor:PWR)においても、PWRの実用化の当初から一次冷却系に対する水素注入が行われている。接液部の腐食環境を表す指標としては、一次冷却材である軽水の溶存水素濃度が用いられている。PWRの保安規定では、溶存水素濃度の許容範囲が15~50mL/kgに定められている。PWRの水化学管理指針では、出力運転中の溶存水素濃度の許容範囲が25~35mL/kgとされている。一次冷却材の溶存酸素濃度の運転管理値は、5ppb以下に設定されている。
【0007】
従来の研究によると、PWRにおいて、ステンレス鋼のSCCを抑制するために必要な構造部材の電極電位の条件は、約-400mV vs.SHE以下であると考えられる。PWRの運転中の溶存水素濃度の範囲では、構造部材の腐食電位が水素電極電位付近まで低下していると考えられる。そのため、一次冷却材の温度や、pHないし溶存水素濃度を考慮した組み合わせ条件に基づくと、PWRで確保するべき腐食電位は-800~-700mV vs.SHEとなる。
【0008】
構造部材の腐食電位を低下させる技術を用いる場合、冷却材に接液する構造部材の腐食電位を把握する必要があり、構造部材の電極電位を高精度に測定する必要がある。PWRにおいて腐食電位を監視した事例は少ないが、炉心の上部や炉外で電極電位を測定した事例がある。一般には、圧力容器の内部や、圧力容器に接続された配管に電位センサが設置されており、電位センサによる測定結果に基づいて、構造部材の腐食電位が所定の条件に管理されている。
【0009】
また、BWRでは、冷却水に接液する構造部材のSCCを防止する対策として、貴金属注入が行われている。貴金属注入では、冷却水に貴金属化合物の溶液を注入して、冷却水に接液する構造部材の表面に貴金属を付着させる。白金族等の貴金属は、構造部材の表面に粒子として析出し、再結合反応を触媒する。そのため、貴金属注入を行うと、水素注入量が少ない場合であっても、腐食環境を効率的に緩和させることが可能になる。
【0010】
特許文献3には、原子炉の高温高圧の水に晒されるステンレス鋼製部材の表面の混合酸化物外皮の表面上に、白金族金属に属する少なくとも1種の金属の薄い皮膜を形成することが記載されている。特許文献3の技術は、沸騰水型原子炉を対象としている。
(【0011】以降は省略されています)

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