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公開番号2025067879
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-04-24
出願番号2024178528
出願日2024-10-11
発明の名称ブタ由来培養細胞、及びそれを用いたウイルス増殖方法及びウイルス分離方法
出願人国立大学法人 宮崎大学
代理人個人,個人
主分類C12N 5/071 20100101AFI20250417BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約【課題】本発明の目的は、トリプシンを用いずに効率的にインフルエンザウイルスなどのウイルスの分離培養ができる方法を提供することである。
【解決手段】前記課題は、本発明の(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質、又は(B)配列番号1で表されるアミノ酸破配列との同一性が90%以上のアミノ酸配列を含み、且つセリンプロテアーゼ活性を示すタンパク質、が発現している、ブタ由来培養細胞によって解決することができる。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質、又は
(B)配列番号1で表されるアミノ酸破配列との同一性が90%以上のアミノ酸配列を含み、且つセリンプロテアーゼ活性を示すタンパク質、
が発現している、ブタ由来培養細胞。
続きを表示(約 710 文字)【請求項2】
前記ブタ由来培養細胞が、呼吸器由来培養細胞、又は消化器由来培養細胞である、請求項1に記載のブタ由来培養細胞。
【請求項3】
前記ブタ由来培養細胞が、STAT2、IFNAR1、IFNAR2、JAK1、STAT1、及びIRF1からなる群から選択される遺伝子がノックアウト又はノックダウンされた細胞である、請求項1に記載のブタ由来培養細胞。
【請求項4】
前記ブタ由来培養細胞が、PK-15細胞、SK-6細胞、ST細胞、又は初代培養細胞である、請求項1に記載のブタ由来培養細胞。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のブタ由来培養細胞にプロテアーゼ依存性ウイルスを接触させる工程、及び
前記ブタ由来培養細胞から増殖したウイルスを回収する工程、
を含むウイルスの増殖方法。
【請求項6】
前記ウイルスが、インフルエンザウイルス、豚流行性下痢ウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタ呼吸器コロナウイルス、又は牛コロナウイルスである、請求項5に記載のウイルスの増殖方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載のブタ由来培養細胞に、ウイルスを含む可能性のある試料を接触させる工程、及び
前記ブタ由来培養細胞からウイルスを分離する工程、
を含むウイルスの分離方法。
【請求項8】
前記試料が、血液、唾液、糞便、尿、涙、髄液、リンパ液、鼻腔スワブ、咽頭スワブ、直腸スワブ、皮膚パンチ、気管支肺胞洗浄液、膣洗浄液、精液、又は組織検体である、請求項7に記載のウイルスの分離方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、ブタ由来培養細胞、及びそれを用いたウイルス増殖方法及びウイルス分離方法に関する。本発明によれば、ブタの呼吸器系ウイルス又は消化器系ウイルスを効率的に増殖及び分離することができる。
続きを表示(約 3,600 文字)【背景技術】
【0002】
従来、ブタのインフルエンザウイルスなどは、培養細胞を用いて分離培養を行う際、ウイルス感染効率を向上させるためにトリプシンを培養液に添加することがあった(非特許文献1)。トリプシンの効果は通常の培養液ではその効果が減弱することから、特殊な培養液を準備する必要があり、作業が煩雑であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
「ジャーナル・オブ・ヴィロロジー(Journal of Virorogy)」2014年(米国)第88巻、p2260-2267
「プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイト・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」(米国)2020年、第117巻、p.7001-7003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、トリプシンを用いずに効率的にインフルエンザウイルスなどのウイルスの分離培養ができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、トリプシンを用いずに効率的にインフルエンザウイルスなどのウイルスの分離培養ができる方法について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、ブタのII型膜通過型セリンプロテアーゼ(Transmembrane protease,serine2;以下、TMPRSS2と称することがある)を発現させたブタの培養細胞を用いることにより、効率的にインフルエンザウイルスなどのウイルスを増殖及び分離培養できることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1](A)配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質、又は(B)配列番号1で表されるアミノ酸破配列との同一性が90%以上のアミノ酸配列を含み、且つセリンプロテアーゼ活性を示すタンパク質、が発現している、ブタ由来培養細胞、
[2]前記ブタ由来培養細胞が、呼吸器由来培養細胞、又は消化器由来培養細胞である、[1]に記載のブタ由来培養細胞、
[3]前記ブタ由来培養細胞が、STAT2、IFNAR1、IFNAR2、JAK1、STAT1、及びIRF1からなる群から選択される遺伝子がノックアウト又はノックダウンされた細胞である、[1]に記載のブタ由来培養細胞、
[4]前記ブタ由来培養細胞が、PK-15細胞、SK-6細胞、ST細胞、又は初代培養細胞である、[1]に記載のブタ由来培養細胞、
[5][1]~[4]のいずれかに記載のブタ由来培養細胞にプロテアーゼ依存性ウイルスを接触させる工程、及び前記ブタ由来培養細胞から増殖したウイルスを回収する工程、を含むウイルスの増殖方法、
[6]前記ウイルスが、インフルエンザウイルス、豚流行性下痢ウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタ呼吸器コロナウイルス、又は牛コロナウイルスである、[5]に記載のウイルスの増殖方法、
[7][1]~[4]のいずれかに記載のブタ由来培養細胞に、ウイルスを含む可能性のある試料を接触させる工程、及び前記ブタ由来培養細胞からウイルスを分離する工程、
を含むウイルスの分離方法、及び
[8]前記試料が、血液、唾液、糞便、尿、涙、髄液、リンパ液、鼻腔スワブ、咽頭スワブ、直腸スワブ、皮膚パンチ、気管支肺胞洗浄液、膣洗浄液、精液、又は組織検体である、[7]に記載のウイルスの分離方法、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のブタ由来培養細胞、ウイルス増殖方法、ウイルス分離方法によれば、インフルエンザウイルスなどのウイルスを効率的に増殖及び分離培養することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
PK-15細胞にブタのTMPRSS2を導入し、ウエスタンブロッティングで発現を確認した写真である。
TMPRSS2発現PK-15細胞におけるインフルエンザウイルスの増殖を検討したグラフである。
TMPRSS2発現PK-15細胞におけるインフルエンザウイルスの増殖に対するTMPRSS2阻害剤の影響を検討したグラフである。
TMPRSS2発現PK-15細胞におけるアカバネウイルスの増殖を検討したグラフである。
TMPRSS2発現PK-15細胞におけるレンチウイルスベクターの増殖を検討したグラフである。
Vero細胞にヒトのTMPRSS2を発現させた細胞と、本発明のブタ由来培養細胞とを用いて、インフルエンザウイルスの増殖を比較したグラフである。
PK-15(Stat2k/o)/TMPRSS2#15、PK-15(Stat2k/o)、PK-15/TMPRSS2#23、又はPK-15細胞を、IFNβで処理、又は未処理で、インフルエンザウイルスの増殖を検討したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1]ブタ由来培養細胞
本発明のブタ由来培養細胞は、(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質、又は(B)配列番号1で表されるアミノ酸破配列との同一性が90%以上アミノ酸配列を含み、且つセリンプロテアーゼ活性を示すタンパク質、が発現している。
【0009】
《II型膜通過型セリンプロテアーゼ》
II型膜通過型セリンプロテアーゼ(Transmembrane protease,serine2)は、膜通過型セリンプロテアーゼの1つであり、ブタのTMPRSS2は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質である。TMPRSS2は、肺、小腸、前立腺及び結腸などの組織において発現している。TMPRSS2は限定されるものではないが、ウイルスの膜融合タンパク質を開裂することによって、ウイルスの細胞への感染、又は増殖を促進していると推定される。また、TMPRSS2は、ウイルスの感染時に作用することもある。更に、TMPRSS2は、ウイルスの増殖又は放出時に作用することもある。
【0010】
II型膜通過型セリンプロテアーゼは限定されるものではないが、例えば(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。更に、(B)配列番号1で表されるアミノ酸破配列との同一性が90%以上のアミノ酸配列を含み、且つセリンプロテアーゼ活性を示すタンパク質(以下、タンパク質(B)と称することがある)であってもよい。
前記(B)のタンパク質は、前記(A)のタンパク質と同等の機能(例えば、(A)のII型膜通過型セリンプロテアーゼに対して50%以上の活性、例えば60%以上の活性、例えば70%以上の活性、例えば80%以上の活性、例えば90%以上の活性、例えば同等の活性)を有する限りにおいて、限定されるものではない。配列番号1で表されるアミノ酸配列の同一性は、好ましくは92%以上であり、より好ましくは94%以上であり、より好ましくは96%以上であり、より好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である。配列番号1のアミノ酸配列は以下のとおりである。
MALNSGSRPGVGPYYENHGYQPESVYPPQPPGAHRPYGAYPAQYHPPSVPQYAPRVQTHASTPAVVVSRQPKPRSRTMCSSKTKKALCITFALGAILAGAVLATVLLWKFMEKKRCSTPEMECGSSGTCISPSHWCDGILHCPGGEDENQCVRLYGPNFILQVYSAQRKSWYPVCQDDWTENYGRAACQDMGYRNSFFSSQGIADDSGATSFMKLNKSANNMDLYKKLYHSDVCTSNTVVSLRCIECGVSGKMSNRQSRIVGGSSAALGDWPWQVSLHVQGIHICGGSIITPDWIVTAAHCVEEPLNNPKIWTAFAGILRQSFMFYGSGYRVAKVISHPNYDPKTKNNDIALMKLQTPMTFNDKVKPVCLPNPGMMLEPTQSCWISGWGATYEKGKTSEVLNAAMVRLIEPWSCNSKQVYNNLITPAMICAGYLQGSVDSCQGDSGGPLVTLKSSIWWLIGDTSWGSGCAKAYRPGVYANVTLFTDWIYRQMRANS(配列番号1)
(【0011】以降は省略されています)

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