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公開番号2025035467
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-03-13
出願番号2023142521
出願日2023-09-01
発明の名称核磁気共鳴信号の測定方法および核磁気共鳴装置
出願人国立大学法人京都大学
代理人弁理士法人三枝国際特許事務所
主分類G01N 24/08 20060101AFI20250306BHJP(測定;試験)
要約【課題】量子センサ素子をNMRのプローブに用いるNMR分光法における、核磁気共鳴信号の新たな測定手法を提供する。
【解決手段】測定対象9との相互作用8により変化する量子センサ素子1を磁場プローブとして、測定対象9の核磁気共鳴信号を測定する方法であって、第1の参照波として、量子センサ素子1の電子スピン状態を操作するための電磁波を第1のパルスシーケンスで量子センサ素子1に照射し、第1の磁気共鳴信号S0を測定するステップと、第1の参照波に対して位相を変化させた第2の参照波として、第1のパルスシーケンスのタイミングをシフトtsさせた第2のパルスシーケンスで電磁波を量子センサ素子1に照射し、第2の磁気共鳴信号S90を測定するステップと、第1および第2の磁気共鳴信号S0,S90を一方を実部とし他方を虚部として結合し、結合した信号を複素フーリエ変換FFTするステップと、を含む。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
測定対象との相互作用により変化する量子センサ素子を磁場プローブとして、前記測定対象の核磁気共鳴信号を測定する方法であって、
第1の参照波として、量子センサ素子の電子スピン状態を操作するための電磁波を第1のパルスシーケンスで前記量子センサ素子に照射し、第1の磁気共鳴信号を測定するステップと、
前記第1の参照波に対して位相を変化させた第2の参照波として、前記第1のパルスシーケンスのタイミングをシフトさせた第2のパルスシーケンスで前記電磁波を前記量子センサ素子に照射し、第2の磁気共鳴信号を測定するステップと、
前記第1および第2の磁気共鳴信号を一方を実部とし他方を虚部として結合し、結合した信号を複素フーリエ変換するステップとを含む、核磁気共鳴信号の測定方法。
続きを表示(約 1,400 文字)【請求項2】
前記第1および第2のパルスシーケンスは、動的デカップリングのパルスシーケンスである、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記第1および第2の参照波間の位相差Φは、前記第1および第2のパルスシーケンス間のタイミングのシフト量t

と、前記動的デカップリングのパルス間隔τとを用いて次式で表される、請求項2に記載の測定方法。
TIFF
2025035467000004.tif
16
170
【請求項4】
前記第1および第2の参照波の位相差は、π/2である請求項1に記載の測定方法。
【請求項5】
前記複素フーリエ変換により得られる前記測定対象の核磁気共鳴信号のスペクトルに基づいて、前記核磁気共鳴信号の周波数の正負も含めた値を算出するステップをさらに含む、請求項1に記載の測定方法。
【請求項6】
前記第1および第2の参照波の周波数を、前記測定対象の試料を溶解する溶媒のピーク周波数に対応させる、請求項1に記載の測定方法。
【請求項7】
前記第1および第2の磁気共鳴信号を測定するステップは、前記第1および第2の参照波の位相差をπ/2に固定しつつ、磁気共鳴信号を励起するパルスの位相を段階的に変化させながら、それぞれの段階に応じた前記第1および第2の参照波の位相を設定して磁気共鳴信号を測定し、
前記複素フーリエ変換するステップは、前記第1および第2の磁気共鳴信号を、段階的に変化させた磁気共鳴信号を励起するパルスの位相差に応じて結合する、請求項1に記載の測定方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の核磁気共鳴信号の測定方法による、多次元の核磁気共鳴信号の測定方法。
【請求項9】
測定対象との相互作用により変化する量子センサ素子を磁場プローブとして、前記測定対象の核磁気共鳴信号を測定する装置であって、
第1の参照波として、量子センサ素子の電子スピン状態を操作するための電磁波を第1のパルスシーケンスで前記量子センサ素子に照射し、前記第1の参照波に対して位相を変化させた第2の参照波として、前記第1のパルスシーケンスのタイミングをシフトさせた第2のパルスシーケンスで前記電磁波を前記量子センサ素子に照射する電磁波照射部と、
前記第1のパルスシーケンスで前記電磁波が照射された前記量子センサ素子から第1の磁気共鳴信号を測定し、前記第2のパルスシーケンスで前記電磁波が照射された前記量子センサ素子から第2の磁気共鳴信号を測定する信号測定部と、
前記第1および第2の磁気共鳴信号を一方を実部とし他方を虚部として結合し、結合した信号を複素フーリエ変換する複素フーリエ変換部と、
を備える、核磁気共鳴装置。
【請求項10】
前記信号測定部は、
前記電子スピン状態を読み出すための光を、前記量子センサ素子に照射する光照射部と、
前記光の照射によって前記量子センサ素子に生じる変化を検出する検出部と、
前記検出された変化から前記電子スピン状態の情報を読み出すデータ処理部と、
を備える、請求項9に記載の核磁気共鳴装置。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象との相互作用により変化する量子センサ素子を磁場プローブとして測定対象の核磁気共鳴信号を測定する方法および装置に関する。
続きを表示(約 3,700 文字)【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance: NMR)分光法は、生体分子を生体系が生きたままで測定が可能な数少ない構造解析手法である。NMR分光法は感度が低く測定に多量の試料を必要とするため、単一細胞などを対象とした局所的な測定は困難であった。
【0003】
近年ではダイヤモンド中の窒素-空孔中心(以下、NV中心(Nitrogen Vacancy center)と記載する)が注目されている。NV中心は室温下で超高感度かつ超高空間分解能な磁場センサ素子として利用可能であり、NV中心をNMRのプローブに用いることにより、極小量の試料に対する構造解析にも取り組まれつつある。例えば非特許文献1では、ダイヤモンド中のNV中心を磁場プローブとして用いて、マイクロスケール試料からNMR信号を測定している。
【0004】
ダイヤモンドの結晶構造には、上記したNV中心以外にも、珪素-空孔中心(Silicon Vacancy center)と呼ばれる複合欠陥や、ゲルマニウム-空孔中心(Germanium Vacancy center)と呼ばれる複合欠陥が見られることがあり、NV中心を含むこれら複合欠陥は色中心と呼ばれている。これらダイヤモンドの色中心も磁場センサ素子として利用可能である。磁場センサ素子として利用されているセンサには、このようなダイヤモンドの色中心を用いたセンサ以外にも、例えば炭化ケイ素(SiC)中の色中心を用いたセンサや、光ポンピング磁力計(optically pumped atomic magnetometer, OPM)、超伝導量子干渉計(superconducting quantum interference device, SQUID)等の種々の種類が存在する。これらダイヤモンドの色中心、炭化ケイ素の色中心、光ポンピング磁力計、および超伝導量子干渉計は、量子効果を利用して物理量を計測していることから量子センサと呼ばれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
Glenn, D., Bucher, D., Lee, J. et al. , “High-resolution magnetic resonance spectroscopy using a solid-state spin sensor”, Nature 555, 351-354 (2018). https://doi.org/10.1038/nature25781
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NMR分光法において、試料の構造情報を得るためにはNMR周波数値が必要とされる。NV中心をNMRのプローブに用いる上記した従来の測定手法ではヘテロダイン検波をベースにしているものの、検波は単相である。単相検波(single-phase detection)では、基準周波数からのずれを測定値として得ることはできるが、そのずれが基準周波数の高低どちら側にずれているのかを測定することはできない。すなわち従来の測定手法は単相検波であり、正負の符号を含めたNMR周波数を得るためには直交検波を行う必要がある。ところが、NV中心をNMRのプローブに用いる測定手法では、蛍光を光信号として測定した時点においてサンプリング済かつヘテロダイン検波済である。したがって、NV中心をNMRのプローブに用いるNMR分光法において直交検波を導入するためには、量子測定の手法そのものを新たに開発する必要がある。核磁気共鳴信号の新たな測定手法が求められている。
【0007】
本発明は、量子センサ素子をNMRのプローブに用いるNMR分光法における、核磁気共鳴信号の新たな測定手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、例えば以下に示す態様を含む。
【0009】
(項1)
測定対象との相互作用により変化する量子センサ素子を磁場プローブとして、前記測定対象の核磁気共鳴信号を測定する方法であって、
第1の参照波として、量子センサ素子の電子スピン状態を操作するための電磁波を第1のパルスシーケンスで前記量子センサ素子に照射し、第1の磁気共鳴信号を測定するステップと、
前記第1の参照波に対して位相を変化させた第2の参照波として、前記第1のパルスシーケンスのタイミングをシフトさせた第2のパルスシーケンスで前記電磁波を前記量子センサ素子に照射し、第2の磁気共鳴信号を測定するステップと、
前記第1および第2の磁気共鳴信号を一方を実部とし他方を虚部として結合し、結合した信号を複素フーリエ変換するステップと
を含む、核磁気共鳴信号の測定方法。
(項2)
前記第1および第2のパルスシーケンスは、動的デカップリングのパルスシーケンスである、項1に記載の測定方法。
(項3)
前記第1および第2の参照波間の位相差Φは、前記第1および第2のパルスシーケンス間のタイミングのシフト量t

と、前記動的デカップリングのパルス間隔τとを用いて次式で表される、項2に記載の測定方法。
TIFF
2025035467000002.tif
22
170
(項4)
前記第1および第2の参照波の位相差は、π/2である項1から3のいずれか一項に記載の測定方法。
(項5)
前記複素フーリエ変換により得られる前記測定対象の核磁気共鳴信号のスペクトルに基づいて、前記核磁気共鳴信号の周波数の正負も含めた値を算出するステップをさらに含む、項1から4のいずれか一項に記載の測定方法。
(項6)
前記第1および第2の参照波の周波数を、前記測定対象の試料を溶解する溶媒のピーク周波数に対応させる、項1から5のいずれか一項に記載の測定方法。
(項7)
前記第1および第2の磁気共鳴信号を測定するステップは、前記第1および第2の参照波の位相差をπ/2に固定しつつ、磁気共鳴信号を励起するパルスの位相を段階的に変化させながら、それぞれの段階に応じた前記第1および第2の参照波の位相を設定して磁気共鳴信号を測定し、
前記複素フーリエ変換するステップは、前記第1および第2の磁気共鳴信号を、段階的に変化させた磁気共鳴信号を励起するパルスの位相差に応じて結合する、項1から6のいずれか一項に記載の測定方法。
(項8)
項1から7のいずれか一項に記載の核磁気共鳴信号の測定方法による、多次元の核磁気共鳴信号の測定方法。
(項9)
測定対象との相互作用により変化する量子センサ素子を磁場プローブとして、前記測定対象の核磁気共鳴信号を測定する装置であって、
第1の参照波として、量子センサ素子の電子スピン状態を操作するための電磁波を第1のパルスシーケンスで前記量子センサ素子に照射し、前記第1の参照波に対して位相を変化させた第2の参照波として、前記第1のパルスシーケンスのタイミングをシフトさせた第2のパルスシーケンスで前記電磁波を前記量子センサ素子に照射する電磁波照射部と、
前記第1のパルスシーケンスで前記電磁波が照射された前記量子センサ素子から第1の磁気共鳴信号を測定し、前記第2のパルスシーケンスで前記電磁波が照射された前記量子センサ素子から第2の磁気共鳴信号を測定する信号測定部と、
前記第1および第2の磁気共鳴信号を一方を実部とし他方を虚部として結合し、結合した信号を複素フーリエ変換する複素フーリエ変換部と、
を備える、核磁気共鳴装置。
(項10)
前記信号測定部は、
前記電子スピン状態を読み出すための光を、前記量子センサ素子に照射する光照射部と、
前記光の照射によって前記量子センサ素子に生じる変化を検出する検出部と、
前記検出された変化から前記電子スピン状態の情報を読み出すデータ処理部と、
を備える、項9に記載の核磁気共鳴装置。
(項11)
前記複素フーリエ変換により得られる前記測定対象の核磁気共鳴信号のスペクトルに基づいて、前記核磁気共鳴信号の周波数の正負も含めた値を算出する周波数算出部をさらに備える、項9または10に記載の核磁気共鳴装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、量子センサ素子をNMRのプローブに用いるNMR分光法における、核磁気共鳴信号の新たな測定手法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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