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公開番号2025098295
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-07-02
出願番号2022052114
出願日2022-03-28
発明の名称神経変性疾患の予防または治療薬
出願人国立大学法人京都大学
代理人個人,個人
主分類A61K 45/00 20060101AFI20250625BHJP(医学または獣医学;衛生学)
要約【課題】神経変性疾患における神経症状が発露し病状が進行する時期において最も重要な神経変性死を予測し、神経変性疾患を治療するための分子標的の特定、並びに該特定した分子標的の発現を抑制することによる、神経変性疾患を予防または治療する方法の提供。
【解決手段】KLHL32遺伝子の発現抑制薬を含有してなる、神経変性疾患の予防または治療薬、ならびに(1)KLHL32遺伝子を発現する細胞に、被験物質を接触させる工程、および(2)KLHL32遺伝子の発現量を減少させた被験物質を神経変性疾患の予防または治療薬の候補として選択する工程を含む、神経変性疾患の予防または治療薬のスクリーニング方法。
【選択図】なし


特許請求の範囲【請求項1】
KLHL32遺伝子の発現抑制薬を含有してなる、神経変性疾患の予防または治療薬。
続きを表示(約 900 文字)【請求項2】
前記発現抑制薬が、siRNA、ヘテロ二本鎖核酸、アンチセンス核酸、shRNA、miRNA、アンチジーン核酸およびCRISPR-Casシステムからなる群から選択される、請求項1に記載の予防または治療薬。
【請求項3】
前記発現抑制薬がsiRNAである、請求項2に記載の予防または治療薬。
【請求項4】
神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、前頭側頭葉変性症、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、ハンチントン病、進行性核上性麻痺および大脳皮質基底核変性症からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の予防または治療薬。
【請求項5】
神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項1~4のいずれか1項に記載の予防または治療薬。
【請求項6】
(1)KLHL32遺伝子を発現する細胞に、被験物質を接触させる工程、および
(2)KLHL32遺伝子の発現量を減少させた被験物質を神経変性疾患の予防または治療薬の候補として選択する工程
を含む、神経変性疾患の予防または治療薬のスクリーニング方法。
【請求項7】
(1)細胞に、被験物質を接触させる工程、および
(2)KLHL32遺伝子の発現量の増加を抑制した被験物質を神経変性疾患の予防または治療薬の候補として選択する工程
を含む、神経変性疾患の予防または治療薬のスクリーニング方法。
【請求項8】
前記細胞が神経変性疾患のモデル細胞である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記神経変性疾患のモデル細胞が神経変性疾患の患者由来の細胞または神経変性疾患の原因である遺伝子に変異を有する多能性幹細胞から分化誘導した細胞である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
KLHL32タンパク質またはKLHL32転写産物からなる、神経変性疾患診断用バイオマーカー。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、KLHL32遺伝子の発現抑制薬を含有してなる、神経変性疾患の予防または治療薬に関する。
続きを表示(約 3,800 文字)【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease; AD)は、認知症の代表とされる脳の変性疾患であり、その患者数は増加の一途をたどっている。アルツハイマー病患者の脳神経機能低下に伴う生活の質(Quality of Life)の低下は、患者本人に加え家族など周囲に多大な影響を与え、現代社会の抱える深刻な問題となっている。2021年6月米食品医薬品局(FDA)は、アルツハイマー病治療薬の候補である「アデュカヌマブ」について、条件付きで承認を認めた。一方で、FDAは、アデュカヌマブがアルツハイマー病の症状を治療に役立つかどうかを確認するための追跡調査を行うことを、開発者の1社であるバイオジェン社に要求している。
【0003】
アルツハイマー病同様に、進行性の神経変性障害を示す疾患として、前頭側頭葉変性症(FTLD)が知られている。前頭側頭葉変性症は、アルツハイマー病に次いで2番目若しくは3番目に頻度の高い早期発症型神経変性認知症であり、顕著な挙動および人格変化の症状を示し、しばしば言語機能障害が付随して起こり、これが徐々に認知障害および認知症へと発展していくこととなる。また、アルツハイマー病同様に研究が進められているが、発症機構の全貌は未だ明らかになっていない。
【0004】
また、パーキンソン病はアルツハイマー病と並ぶ神経変性疾患の代表的な疾患であり、患者の脳には黒質にレビー小体(Lewy body)が出現することが知られている。レビー小体とは、αシヌクレインと呼ばれる140アミノ酸残基からなるタンパク質の凝集体であり、パーキンソン病の他にレビー小体型認知症、多系統萎縮症等のようなレビー小体病と称される疾患の患者の脳にも出現することが知られており、脳内におけるαシヌクレインの蓄積を伴う疾患は、αシヌクレイノパチーと呼ばれている。αシヌクレイノパチーの進行には、αシヌクレインの凝集、すなわちαシヌクレイン線維形成が重大な役割を果たしていると考えられており、αシヌクレイン線維形成を抑制等する物質について各方面で活発に研究が進められている。
【0005】
しかしながら、これらの神経変性症の研究は精力的に進められているが、その発症機構の全貌は明らかではなく、その根治薬はいまだ開発されていないのが現状である。アルツハイマー病を始めとする、多くの神経変性疾患の共通病態として、caspase 3の活性化を伴う神経変性が挙げられる(例えば、非特許文献1)。本発明者らは以前、深層学習と人工多能性幹細胞(iPS細胞)技術を用いて、神経変性の有無および多寡を位相差画像から予測する方法を開発した(特許文献1)。しかしながら、この予測方法のメカニズムや、深層学習を施したモデルが、神経変性を予測する際に何を指標としたかについては依然として不明なままであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
国際公開第2020/241772号
【非特許文献】
【0007】
D'Amelio M. et al., Nat Neurosci. 14(1):69-76 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、神経変性疾患における神経症状が発露し病状が進行する時期において最も重要な神経変性死を予測し、神経変性疾患を治療するための分子標的を特定することである。そして、該特定した分子標的の発現を抑制することで、神経変性疾患を予防または治療する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、深層学習を施したモデルを構築し、該モデルにより、スコアが高い細胞(カスパーゼ-3が活性化する予定の細胞である確率が高い細胞)と、スコアが低い細胞(カスパーゼ-3が活性化する予定の細胞である確率が低い細胞)について、単一細胞RNAシーケンス(single cell RNA-seq)解析を行った。その結果、スコアが高い細胞群において、カスパーゼ-3の活性化前に特異的に発現する遺伝子としてKLHL32を見出した。次に、アルツハイマー病患者の剖検脳を解析したところ、βアミロイドが蓄積している部位特異的にKLHL32の発現が認められること、アルツハイマー病マウスモデルでは、カスパーゼ-3の活性化に先行して神経細胞で発現することを確認した。さらに、アルツハイマー病の細胞モデルにおいて、siRNAによりKLHL32遺伝子の発現をノックダウンすると、カスパーゼ-3の活性化が抑制されて細胞死が抑制されることが明らかとなった。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]
KLHL32遺伝子の発現抑制薬を含有してなる、神経変性疾患の予防または治療薬。
[2]
前記発現抑制薬が、siRNA、ヘテロ二本鎖核酸、アンチセンス核酸、shRNA、miRNA、アンチジーン核酸およびCRISPR-Casシステムからなる群から選択される、請求項1に記載の予防または治療薬。
[3-1]
前記発現抑制薬がsiRNAである、[2]に記載の予防または治療薬。
[3-2]
前記CRISPR-CasシステムがCRISPR-dCasシステムである、[2]に記載の予防または治療薬。
[4]
神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、前頭側頭葉変性症、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、ハンチントン病、進行性核上性麻痺および大脳皮質基底核変性症からなる群から選択される、[1]~[3-2]のいずれか1つに記載の予防または治療薬。
[5]
神経変性疾患がアルツハイマー病である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の予防または治療薬。
[6]
(1)KLHL32遺伝子を発現する細胞に、被験物質を接触させる工程、および
(2)KLHL32遺伝子の発現量を減少させた被験物質を神経変性疾患の予防または治療薬の候補として選択する工程
を含む、神経変性疾患の予防または治療薬のスクリーニング方法。
[7]
(1)細胞に、被験物質を接触させる工程、および
(2)KLHL32遺伝子の発現量の増加を抑制した被験物質を神経変性疾患の予防または治療薬の候補として選択する工程
を含む、神経変性疾患の予防または治療薬のスクリーニング方法。
[8]
前記細胞が神経変性疾患のモデル細胞である、[6]または[7]に記載の方法。
[9]
前記神経変性疾患のモデル細胞が神経変性疾患の患者由来の細胞または神経変性疾患の原因である遺伝子に変異を有する多能性幹細胞から分化誘導した細胞である、[8]に記載の方法。
[10]
前記細胞が神経細胞である、[6]~[9]のいずれか1つに記載の方法。
[11]
前記細胞がヒト細胞である、[6]~[10]のいずれか1つに記載の方法。
[12]
KLHL32タンパク質またはKLHL32転写産物からなる、神経変性疾患診断用バイオマーカー。
[13]
被験者または該被験者由来の試料において、[12]に記載のバイオマーカーを検出する工程を含む、該被験者が神経変性疾患であるかの診断を補助する方法。
[14]
KLHL32タンパク質を特異的に認識する抗体またはKLHL32転写産物を特異的に認識する核酸プローブ若しくは核酸プライマーを含む、神経変性疾患診断用キット。
[15]
哺乳動物に対して、KLHL32遺伝子の発現抑制薬の有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物における神経変性疾患の予防または治療方法。
[16]
神経変性疾患の予防または治療における使用のための、KLHL32遺伝子の発現抑制薬。
[17]
神経変性疾患の予防または治療薬の製造のための、KLHL32遺伝子の発現抑制薬の使用。
[18]
以下の(i)~(iii)の工程を含む、神経変性疾患の予防または治療方法。
(i)被験者または被験者由来の試料における、[12]に記載のバイオマーカーを検出する工程、
(ii)前記工程(i)の結果に基づき、該被験者が神経変性疾患であるかの診断を行う工程、
(iii)(ii)により神経変性疾患であると診断された被験者に、神経変性疾患の予防または治療薬を投与する工程
[19]
前記神経変性疾患の予防または治療薬が、KLHL32遺伝子の発現抑制薬、アデュカヌマブ、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、ドネペジルおよびメマンチンからなる群から選択される、[18]に記載の方法。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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