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公開番号
2025158948
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-10-17
出願番号
2025061489
出願日
2025-04-02
発明の名称
脂質スクランブル活性の調節物質のスクリーニング方法
出願人
国立大学法人京都大学
代理人
個人
,
個人
,
個人
,
個人
主分類
C12Q
1/02 20060101AFI20251009BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】本発明は、細胞膜上における新たなPLSシステムに基づき、PLS活性の調節物質又はPLS活性異常を伴う疾患の治療薬のスクリーニング系、及びPLS活性異常を伴う疾患の診断法を提供することである。
【解決手段】Tmem63bにより誘導される脂質スクランブル活性の調節物質のスクリーニング方法であって、次の工程:(1)前記Tmem63b、Slc19a2、及びKcnn4を発現する細胞と、前記調節物質の候補物質とを、Ca
2+
刺激下で接触させる工程;(2)前記候補物質による、前記細胞の細胞膜における脂質スクランブル活性の変化の有無を決定する工程;及び(3)前記変化をもたらした前記候補物質を、前記調節物質として選択する工程;を含む、スクリーニング方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
Tmem63bにより誘導される脂質スクランブル活性の調節物質のスクリーニング方法であって、以下の工程:
(1)前記Tmem63b、Slc19a2、及びKcnn4を発現する細胞と、前記調節物質の候補物質とを、Ca
2+
刺激下で接触させる工程;
(2)前記候補物質による、前記細胞の細胞膜における脂質スクランブル活性の変化の有無を決定する工程;及び
(3)前記変化をもたらした前記候補物質を、前記調節物質として選択する工程;
を含む、スクリーニング方法。
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【請求項2】
前記工程(3)において、前記脂質スクランブル活性が、前記候補物質を接触させていない前記細胞における脂質スクランブル活性と比較して低い場合、前記候補物質を、前記脂質スクランブル活性を阻害する調節物質として選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(3)において、前記脂質スクランブル活性が、前記候補物質を接触させていない前記細胞における脂質スクランブル活性と比較して高い場合、前記候補物質を、前記脂質スクランブル活性を促進する調節物質として選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(2)において、前記脂質スクランブル活性を、前記Tmem63bと前記Slc19a2とのヘテロダイマーの量に基づいて測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(2)において、前記脂質スクランブル活性を、細胞膜の外側に位置するリン脂質又は糖脂質の取込み活性、及び細胞膜の内側に位置するリン脂質の露出活性の少なくともいずれかに基づいて測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
脂質スクランブル活性異常を伴う疾患の治療薬のスクリーニング方法であって、以下の工程:
(1)変異Tmem63b及びSlc19a2を発現する細胞と、前記治療薬の候補物質とを、Ca
2+
非刺激下で接触させる工程;
(2)前記候補物質による、前記細胞の細胞膜における脂質スクランブル活性の低下の有無を決定する工程;及び
(3)前記低下をもたらした前記候補物質を、前記治療薬として選択する工程;
を含み、
前記変異Tmem63bが、
[A-i]配列番号1に示すアミノ酸配列において、第44位アミノ酸残基のメチオニン残基への置換、第459位アミノ酸残基のグルタミン酸残基への置換、第475位アミノ酸残基の欠失、及び第660位アミノ酸残基のトレオニン残基への置換の少なくともいずれかの変異を持つアミノ酸配列からなるポリペプチド、
[A-ii]前記[A-i]に示すポリペプチドのアミノ酸配列において、前記変異のアミノ酸残基以外の1個又は数個のアミノ酸残基が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、Slc19a2とともに形成されるヘテロダイマーが、Ca
2+
の刺激無しで細胞膜において脂質スクランブル活性を有するポリペプチド、並びに
[A-iii]前記[A-i]に示すポリペプチドのアミノ酸配列において、前記変異のアミノ酸残基を除いた部分の配列同一性が75%以上のアミノ酸配列からなり、且つ、Slc19a2とともに形成されるヘテロダイマーが、Ca
2+
の刺激無しで細胞膜において脂質スクランブル活性を有するポリペプチド
の少なくともいずれかである、スクリーニング方法。
【請求項7】
前記疾患が、血液学的異常を伴う疾患及びてんかんからなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記血液学的異常が、巨赤芽球性貧血又は溶血性貧血である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(2)において、前記脂質スクランブル活性を、前記Tmem63b変異体と前記Slc19a2とのヘテロダイマーの量に基づいて測定する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(2)において、前記脂質スクランブル活性を、細胞膜の外側に位置するリン脂質又は糖脂質の取込み活性、及び細胞膜の内側に位置するリン脂質の露出活性の少なくともいずれかに基づいて測定する、請求項6に記載の方法。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質スクランブル活性の調節物質のスクリーニング方法、脂質スクランブル活性異常を伴う疾患の治療薬のスクリーニング方法、脂質スクランブル活性異常を伴う疾患の罹患を試験する方法、及び脂質スクランブル活性異常を伴う疾患における重症度を試験する方法に関する。
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【背景技術】
【0002】
分子が膜を隔てて非対称に分布することは、環境の変化に適応するための細胞の基本的な性質である。例えば、脂質は細胞膜の脂質二重層で非対称に分布している。ホスファチジルセリン(PS)とホスファチジルエタノールアミン(PE)は細胞膜の内側に限られ、ホスファチジルコリン(PC)とスフィンゴミエリン(SM)は主に細胞膜の外層に位置している(非特許文献1~4)。しかしながら、生理的な状況によっては、細胞が周囲の環境の変化又は内在的手がかり(intrinsic cues)に反応する際に、脂質スクランブルによって当該非対称性が速やかに変化し、その結果、PSを細胞表面に露出させる。露出したPSは、出血時に活性化血小板上の凝固因子の足場として機能する(非特許文献5)。細胞表面のPSはまた、死細胞が食細胞に飲み込まれるための「eat meシグナル」としても機能する(非特許文献6~9)。
【0003】
スクランブラーゼの分子的実体は何十年もの間不明であった。本発明者は、以前、cDNAライブラリースクリーニングを用い、ユビキタススクランブラーゼTmem16FとXkr8を発見し、それぞれ凝固反応と死細胞のクリアランスにおいて脂質スクランブルを誘導することを明らかにした(非特許文献10~14)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
Nat. Rev. Mol. cell Biol. 9, 112-124 (2008).
Annu. Rev. Biophys. 39, 407-427 (2010).
Front. Physiol. 7,275(2016).
Cell. Mol. Life Sci. CMLS 63,2908-2921 (2006).
Cell. Mol. Life Sci. CMLS 62,971-988 (2005).
J. Exp. Med. 207, 1807-1817 (2010).
Physiol. Rev. 96,605-645 (2016).
Annu. Rev. Immunol. 36,489-517 (2018).
Neurosci. Res. https://doi.org/10.1016/j.neures.2021.01. 003 (2021).
Nature 468, 834-838 (2010).
J. Biol. Chem. 288, 13305-13316 (2013).
Science 341,403-406 (2013).
J. Biol. Chem. 289,30257-30267 (2014).
Proc. Natl Acad. Sci. USA 113,9509-9514 (2016).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、Ba/F3細胞(プロB細胞株)においてTmem16FとXkr8とが欠損していても、高Ca
2+
イオノフォア刺激下で脂質スクランブルが依然として誘導される。これは、細胞膜上に他の脂質スクランブルシステムが存在することを示唆する。このような脂質スクランブルシステムが見出されれば、当該脂質スクランブルシステムに基づくスクリーニング系の構築によって、脂質スクランブル活性の調節物質又は脂質スクランブル活性異常を伴う疾患の治療薬のスクリーニングが可能になり、当該脂質スクランブルシステムにおける脂質スクランブル活性と関連する因子をマーカーとして利用することで、脂質スクランブル活性異常を伴う疾患の診断(罹患又は重症度の試験)が可能になることが期待できる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、細胞膜上における新たな脂質スクランブルシステムに基づき、脂質スクランブル活性の調節物質又は脂質スクランブル活性異常を伴う疾患の治療薬のスクリーニング系、及び脂質スクランブル活性異常を伴う疾患の診断法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討の結果、細胞膜上における新たな脂質スクランブルシステムとして、Tmem63b/Slc19a2誘導性の脂質スクランブル(図2e[1]、図5i)と、Stim1/Orai1を介した脂質スクランブル(図2e[2])とを新たに見出した。このうち、Tmem63b/Slc19a2誘導性の脂質スクランブルにおいて、Tmem63bとSlc19a2がヘテロダイマーを形成し、野生型のTmem63bとSlc19a2とのヘテロダイマーがKcnn4の活性化を伴い脂質スクランブルを誘導すること(図5i上)、及び所定の疾患関連変異型Tmem63bとSlc19a2とのヘテロダイマーがKcnn4の活性化を伴わずに脂質スクランブルを示すこと(図5i下)を見出した。さらに、野生型のTmem63bとSlc19a2とのヘテロダイマー、及び所定の疾患関連変異型Tmem63bとSlc19a2とのヘテロダイマーのいずれについても、ヘテロダイマー形成量と脂質スクランブル活性のレベルとの間に相関があることを見出した(図5f、g、及び図5h)。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. Tmem63bにより誘導される脂質スクランブル活性の調節物質のスクリーニング方法であって、以下の工程:
(1)前記Tmem63b、Slc19a2、及びKcnn4を発現する細胞と、前記調節物質の候補物質とを、Ca
2+
刺激下で接触させる工程;
(2)前記候補物質による、前記細胞の細胞膜における脂質スクランブル活性の変化の有無を決定する工程;及び
(3)前記変化をもたらした前記候補物質を、前記調節物質として選択する工程;
を含む、スクリーニング方法。
項2. 前記工程(3)において、前記脂質スクランブル活性が、前記候補物質を接触させていない前記細胞における脂質スクランブル活性と比較して低い場合、前記候補物質を、前記脂質スクランブル活性を阻害する調節物質として選択する、項1に記載の方法。
項3. 前記工程(3)において、前記脂質スクランブル活性が、前記候補物質を接触させていない前記細胞における脂質スクランブル活性と比較して高い場合、前記候補物質を、前記脂質スクランブル活性を促進する調節物質として選択する、項1に記載の方法。
項4. 前記工程(2)において、前記脂質スクランブル活性を、前記Tmem63bと前記Slc19a2とのヘテロダイマーの量に基づいて測定する、項1~3のいずれかに記載の方法。
項5. 前記工程(2)において、前記脂質スクランブル活性を、細胞膜の外側に位置するリン脂質又は糖脂質の取込み活性、及び細胞膜の内側に位置するリン脂質の露出活性の少なくともいずれかに基づいて測定する、項1~3のいずれかに記載の方法。
項6. 脂質スクランブル活性異常を伴う疾患の治療薬のスクリーニング方法であって、以下の工程:
(1)変異Tmem63b及びSlc19a2を発現する細胞と、前記治療薬の候補物質とを、Ca
2+
非刺激下で接触させる工程;
(2)前記候補物質による、前記細胞の細胞膜における脂質スクランブル活性の低下の有無を決定する工程;及び
(3)前記低下をもたらした前記候補物質を、前記治療薬として選択する工程;
を含み、
前記変異Tmem63bが、
[A-i]配列番号1に示すアミノ酸配列において、第44位アミノ酸残基のメチオニン残基への置換、第459位アミノ酸残基のグルタミン酸残基への置換、第475位アミノ酸残基の欠失、及び第660位アミノ酸残基のトレオニン残基への置換の少なくともいずれかの変異を持つアミノ酸配列からなるポリペプチド、
[A-ii]前記[A-i]に示すポリペプチドのアミノ酸配列において、前記変異のアミノ酸残基以外の1個又は数個のアミノ酸残基が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、Slc19a2とともに形成されるヘテロダイマーが、Ca
2+
の刺激無しで細胞膜において脂質スクランブル活性を有するポリペプチド、並びに
[A-iii]前記[A-i]に示すポリペプチドのアミノ酸配列において、前記変異のアミノ酸残基を除いた部分の配列同一性が75%以上のアミノ酸配列からなり、且つ、Slc19a2とともに形成されるヘテロダイマーが、Ca
2+
の刺激無しで細胞膜において脂質スクランブル活性を有するポリペプチド
の少なくともいずれかである、スクリーニング方法。
項7. 前記疾患が、血液学的異常を伴う疾患及びてんかんからなる群より選択される、項6に記載の方法。
項8. 前記血液学的異常が、巨赤芽球性貧血又は溶血性貧血である、項7に記載の方法。
項9. 前記工程(2)において、前記脂質スクランブル活性を、前記Tmem63b変異体と前記Slc19a2とのヘテロダイマーの量に基づいて測定する、項6~8のいずれかに記載の方法。
項10. 前記工程(2)において、前記脂質スクランブル活性を、細胞膜の外側に位置するリン脂質又は糖脂質の取込み活性、及び細胞膜の内側に位置するリン脂質の露出活性の少なくともいずれかに基づいて測定する、項6~8のいずれかに記載の方法。
項11. 脂質スクランブル活性異常を伴う疾患の治療薬のスクリーニング方法であって、以下の工程:
(1)変異Tmem63b、Slc19a2、及びKcnn4を発現する細胞と、前記治療薬の候補物質とを、Ca
2+
刺激下で接触させる工程;
(2)前記候補物質による、前記細胞の細胞膜における脂質スクランブル活性の増大の有無を決定する工程;及び
(3)前記増大をもたらした前記候補物質を、前記治療薬として選択する工程;
を含み、
前記変異Tmem63bが、
[B-i]配列番号1に示すアミノ酸配列において、第433位アミノ酸残基のヒスチジン残基への置換を持つアミノ酸配列からなるポリペプチド、
[B-ii]前記[B-i]に示すポリペプチドのアミノ酸配列において、前記置換のアミノ酸残基以外の1個又は数個のアミノ酸残基が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、Slc19a2とともに形成されるヘテロダイマーが、Ca
2+
の刺激下で細胞膜において脂質スクランブル活性を有しないポリペプチド、並びに、
[B-iii]前記[B-i]に示すポリペプチドのアミノ酸配列において、前記置換のアミノ酸残基を除いた部分の配列同一性が75%以上であり、且つ、Slc19a2とともに形成されるヘテロダイマーが、Ca
2+
の刺激下で細胞膜において脂質スクランブル活性を有しないポリペプチド
の少なくともいずれかである、スクリーニング方法。
項12. 前記疾患が、血液学的異常を伴う疾患及び難聴からなる群より選択される、項11に記載の方法。
項13. 脂質スクランブル活性異常を伴う疾患の罹患を試験する方法であって、以下の工程:
(1)試験対象に由来する細胞試料において、Ca
2+
非刺激下での変異Tmem63bとSlc19a2とのヘテロダイマーの定量値を得る工程;及び
(2)前記定量値を閾値と比較する工程
を含み、
前記変異Tmem63bが、
[A-i]配列番号1に示すアミノ酸配列において、第44位アミノ酸残基のメチオニン残基への置換、第459位アミノ酸残基のグルタミン酸残基への置換、第475位アミノ酸残基の欠失、及び第660位アミノ酸残基のトレオニン残基への置換の少なくともいずれか の変異を持つアミノ酸配列からなるポリペプチド、
[A-ii]前記[A-i]に示すポリペプチドのアミノ酸配列において、前記変異のアミノ酸残基以外の1個又は数個のアミノ酸残基が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、Slc19a2とともに形成されるヘテロダイマーが、Ca
2+
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、細胞膜上における新たな脂質スクランブルシステムに基づき、脂質スクランブル活性の調節物質又は脂質スクランブル活性異常を伴う疾患の治療薬のスクリーニング系、及び脂質スクランブル活性異常を伴う疾患の診断法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
繰り返し選別による高PLS(リン脂質スクランブル)細胞の確立(図1a~図1d)。PLS活性の解析。PLS活性は、Ba/F3細胞及びTmem16FとXkr8を欠損した細胞(BDKO細胞)のNBD-PC取り込みアッセイを用いて調べた。細胞をLipid緩衝液(1mMのCaCl
2
と1mMのMgCl
2
を含んだHBSS)に再懸濁し、低濃度のカルシウムイオノフォアA23187(0.5μM)及び高濃度のA23187(3.0μM)で4℃にて刺激し、0分後(薄灰色)及び10分後(濃灰色)に解析した。バーはホスファチジルコリン(PC)取り込み陽性領域、数値はバー内の細胞集団。実験は独立して3回行い、代表的なデータを示す。
高PLS細胞の構築戦略。Lipid緩衝液中、A23187(0.5μM)で刺激したとき、高いNBD-PC取り込み活性を示したBDKO細胞をフローサイトメトリーで回収し、その後増殖させた。高PLS細胞(hPC19)は、19回のソーティングを繰り返すことにより得られた。
hPC19細胞中のPC取り込みアッセイ。hPC19細胞をLipid緩衝液中、低濃度のA23187(0.5μM)及び高濃度のA23187(3.0μM)で4℃にて刺激し、0分後(薄灰色)と10分後(濃灰色)に解析した。バーはPC取り込み陽性領域、数値はバー内の細胞集団。
ホスファチジルセリン(PS)露出活性。親BDKO細胞とhPC19細胞を、AnnexinV-Cy5/PI(ヨウ化プロピジウム)を含んだAnnexin緩衝液(10mMのHepes、140mMのNaCl、2.5mMのCaCl
2
)中で、3.0μMのA23187で室温にて10分間刺激した。PI陰性領域を示す。実験は独立して3回行い、代表的なデータを示す。
PLS誘導タンパク質としてのTmem63bの同定(図2a~図2e)。sgRNAライブラリーを用いたリバイバルスクリーニングの模式図。sgRNAライブラリーをCRISPR-Cas9を発現するhPC19細胞に導入した。NBD-PCアッセイを行った際、細胞をLipid緩衝液中で、3.0μMのA23187で4℃にて10分間刺激し、PC取り込み陰性領域をフローサイトメトリーで選別した。選別された細胞からゲノムDNAを精製し、PCRを行って統合sgRNA領域を増幅し、濃縮sgRNAライブラリーを再構築するために、レンチウイルスベクターに挿入した。新たに再構築されたライブラリーは、次のスクリーニングに使用した。これらのプロセスを次世代シーケンシング(NGS)のために3回繰り返した。
リバイバルスクリーニング。PC取り込み陰性細胞(1%)をフローサイトメトリーで選別し、sgRNAライブラリーの再構築に用いた。sgPC0は元のsgRNAライブラリーを導入した細胞、sgPC2は2回ソートした細胞、sgPC3は3回ソートした細胞。バーはPC取り込み陰性領域、数字はバー内の細胞集団。
4回目のソーティング後のsgRNAのNGS解析。総リード数(同一遺伝子に対する異なるsgRNAからのリードの合計)をランク付けした。マッピングされた数字は、6種類のsgRNAのうち、同定されたsgRNA標的の数を示す。マップ番号0~2はリストから除外した。さらに解析した遺伝子には下線を付している。
AnnexinV-Cy5/PI染色によるPLS活性は、コントロールとしてBDKO細胞中で行い、Stim1ノックアウト(KO)BDKO細胞及びStim1で修復した細胞、Tmem63b KO BDKO細胞、及びTmem63bで修復した細胞を、AnnexinV-Cy5/PIを含んだAnnexin緩衝液中で、3.0μMのA23187で室温にて10分間刺激した。PI陰性領域を解析した。実験は独立して3回行い、代表的なデータを示す。
AnnexinV-Cy5/PI染色によるPLS活性は、コントロールとしてBDKO細胞中で行い、Stim1/Tmem63b二重KO BDKO細胞、及びTmem63b又はStim1で修復した細胞を、AnnexinV-Cy5/PIを含んだAnnexin緩衝液中で、3.0μMのA23187で室温にて10分間刺激した。PI陰性領域を解析した。実験は独立して3回行い、代表的なデータを示す。
2つの独立したCa
2+
介在PLS系のモデル。[1]は、PMにおけるTmem63b依存性PLS。[2]は、ERPM接触部位でのStim1/Orai1依存性PLS。epSCRは、未知のER-PMスクランブラーゼ。
Tmem63b変異体を介したPLS(図3a~図3e)。Tmem63bと脊椎動物種5種のオルソログの多重整列(Homo sapiens NP_001305721.1;Mus musculus NP_937810.2;Gallus gallus NP_001366170.1;Xenopus tropicalis XP_031757905.1;Danio rerio NP_001313336.1)。変異残基を太字で示した。配列の下のアスタリスク(*)は、アミノ酸が異なる種間で保存されている位置を示し、コロン(:)は、類似のアミノ酸が異なる種間で保存されていることを示している。
ヒトTMEM63Bタンパク質の模式図と構造(pdb:8ehx)上の同定された疾患変異体(V44M、R433H、D459E、I475del、R660T)の位置。アスタリスク(*)は変異の位置。
PS露出アッセイ。Tmem63b WT発現又はTmem63b変異体発現細胞を、Annexin V-Cy5/PIを含んだAnnexin緩衝液中、3.0μMのA23187で刺激し((+)A23187)、又はA23187なしで刺激し((-)A23187)、4℃にて10分間インキュベートした。バーはPS露出陽性領域、数値はバー内の細胞集団。Tmem63b変異体のデータは、活性の強さに従って表示した。
PS露出の定量化。図3cのA23187刺激なしのTmem63b変異体の平均蛍光強度(MFI)を、3反復の平均値として示した(n=3、独立した実験)。中央、下、上の線はそれぞれ中央値、最小値、最大値を示す。Tmem63b変異体のデータは、活性の強さに従って表示した。ソースデータはSource Dataファイルとして提供されている。
骨髄単一細胞RNA-seqデータ(n=9、異なるBMサンプル、k=103,228、妊娠12~19週(PCW))のヒト胎児骨髄単一細胞RNA-seqデータの均一多様体近似と射影(UMAP)をデータベースE-MTAB-9389から取得し、大まかなカテゴリー別に解析した。Baso basophil;eo eosinophil;MK megakaryocyte。TMEM63Bは赤血球系で発現し、特に中期及び後期赤血球で高発現している。
Tmem63bを介したPLSの活性化因子の同定(図4a~図4h)。リバイバルスクリーニング。Tmem63b-GFP発現BDKO細胞を、Annexin V-Cy5/PIを含んだAnnexin緩衝液中、3.0μMのA23187で4℃にて1時間刺激し、フローサイトメトリーを行い、GFP陽性集団の中からPS露出陰性細胞を回収し、濃縮されたsgRNAライブラリーの再構築に使用した。sgPC0は、元のsgRNAライブラリーを導入した細胞を指し、sgPC3は、3回ソーティングした細胞を指す。バーはPS露出陰性領域、数値はバー内の細胞集団。
4回ソーティング後のNGS解析。総リード数(同一遺伝子に対する異なるsgRNAからのリード数の合計)をランク付けした。マッピングされた数値は、6種類の異なるsgRNAのうち、同定されたsgRNA標的の数値を示す。マッピングされた数値が0から2までのものはリストから除外した。さらに解析された遺伝子には下線を付している。
PS露出アッセイ。Tmem63b-GFP発現BDKO細胞、sgKcnn4発現細胞、ならびにsgKcnn4及びKcnn4 WT-tagRFPの両方を発現する細胞を、AnnexinV-Cy5/PIを含んだAnnexin緩衝液中で3μMのA23187で刺激した。フローサイトメトリー解析は10分間隔で行った。PI陰性細胞を解析した。3回(n=3、独立した実験)の平均値をエラーバーとともに示す。データは平均値±SEMとして提示する。ソースデータはSource dataファイルとして提供されている。
PS露出アッセイ。Tmem63b-GFP発現BDKO細胞、sgSlc19a2発現細胞、ならびにsgSlc19a2及びSlc19a2 WT-tagRFP又はS143F-tagRFPの両方を発現する細胞を、AnnexinV-Cy5/PIを含んだAnnexin緩衝液中で3.0μMのA23187で4℃にて刺激した。フローサイトメトリー解析は10分ごとに実施した。PI陰性細胞を示す。3回(n=3、独立した実験)の平均値をエラーバーとともに示す。データは平均値±SEMとして提示する。ソースデータはSource dataファイルとして提供されている。
図4cと図4dとの比較。40分のPS露出の平均値を示す。データは平均値±SEMで提示する。統計解析は、スチューデントのt検定の両側検定を用いて行った。p<0.05を統計学的に有意とみなした。*p<0.05、**p<0.01。ソースデータはSource Dataファイルとして提供されている。
PS露出アッセイ。Tmem63b変異体-GFP発現細胞を、Slc19a2-tagRFP又はsgSlc19a2、及びKcnn4-tagRFP又はsgKcnn4とともに、AnnexinV-Cy5/PIを含んだAnnexin緩衝液中で4℃にて10分間、A23187刺激なしでインキュベートした。
図4fの定量化。実験はそれぞれ独立して3回行い、PS露出の平均値をエラーバーとともに示す。データは平均値±SEMとして提示する。統計解析は、スチューデントのt検定の両側検定を用いて行った。p<0.05を統計学的に有意とみなした。*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001。Tmem63b変異体とsgRNAの両方を発現する細胞の列は網掛けした。ソースデータはSource Dataファイルとして提供されている。
図4fの定量化。実験はそれぞれ独立して3回行い、PS露出の平均値をエラーバーとともに示す。データは平均値±SEMとして提示する。統計解析は、スチューデントのt検定の両側検定を用いて行った。p<0.05を統計学的に有意とみなした。*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001。Tmem63b変異体とsgRNAの両方を発現する細胞の列は網掛けした。ソースデータはSource Dataファイルとして提供されている。
Tmem63BとSlc19a2はヘテロダイマーを形成する(図5a~図5i)。Tmem63b GFP発現BDKO細胞の溶解液のBN-PAGE解析。Tmem63bは主にモノマーとして存在し、わずかにダイマー様状態としても存在する。抗GFPを用いてTmem63bを検出した。実験は独立して3回行い、代表的なデータを示す。
Tmem63b相互作用分子。Tmem63b GFP発現細胞をLMNG/CHSで可溶化し、抗GFPナノボディ結合ビーズを用いた免疫沈降に供し、その後質量分析を行った。x軸は、Ca
2+
非存在下におけるTmem63bと親細胞との間のフォールド変化(log2)で示した存在比を示し、y軸は、Ca
2+
存在下におけるTmem63bと親細胞との間のフォールド変化(log2)で示した存在比を示す。矢印で指し示したドットは、Tmem63bとSlc19a2を示す。
Slc19a2-tagRFP、Kcnn4-tagRFP、及びCsnk2b-tagRFPの過剰発現、又はsgSlc19a2、sgKcnn4、及びsgCsnk2bの導入によるTmem63b発現細胞のBN-PAGE解析。抗GFP抗体を用いてTmem63bを検出した。実験は3回独立して行い、代表的なデータを示す。
Slc19a2-HA-tagRFPの過剰発現におけるTmem63b-FLAG-GFP発現細胞のBN-PAGE解析。界面活性剤による可溶化後、細胞溶解液を抗FLAG又は抗HA抗体と混合し、ゲルシフトを観察するためにBN-PAGEに供した。(i)はモノマー、(ii)はヘテロダイマー、(iii)は抗体と結合したモノマー、(iv)は抗体と結合したヘテロダイマーを示す。抗GFPはTmem63bの検出に使用した。実験は2回行い、代表的なデータを示す。
Tmem63b変異体発現細胞のBN-PAGE解析。抗GFPを用いてTmem63bを検出した。実験は3回独立して行い、代表的なデータを示す。
Slc19a2 WT-tagRFPの過剰発現におけるTmem63b変異体発現細胞のBN-PAGE解析。抗GFP抗体を用いてTmem63bを検出した。実験は3回独立して行い、代表的なデータを示す。
Slc19a2 S143F-tagRFPの過剰発現におけるTmem63b変異体発現細胞のBN-PAGE解析。抗GFPを用いてTmem63bを検出した。
1mMのCaCl
2
又は0.5mMのEGTAの存在下におけるSlc19a2 WT-tagRFP又はS143F-tagRFPの過剰発現におけるTmem63b発現細胞のBN-PAGE解析。抗GFPを用いてTmem63bを検出した。実験は2回独立して行い、代表的なデータを示す。
Tmem63b/Slc19a2が介したPLSの概略モデル。活性化状態では、Ca
2+
刺激によりTmem63b/Slc19a2ヘテロダイマーが介したPLSが誘導され、Kcnn4が活性化される(上)。Tmem63b変異体発現細胞では、Ca
2+
刺激やK
+
流出がなくても持続的なPLSが起こる(下)。
Stim1とTmem63b依存性PLS(図6a~図6e)。Stim1
-/-
BDKOシングルクローンの塩基配列解析。sgRNA標的領域をPCRで増幅し、塩基配列を決定した。Stim1
(-/-)
の配列(上)。
Tmem63b
-/-
BDKOシングルクローンの塩基配列解析。sgRNA標的領域をPCRで増幅し、塩基配列を決定した。Tmem63b
(-/-)
の配列(上)。
Ca
2+
流入アッセイ。BDKO細胞を培養液中1M Fluo4-AMと37℃で30インキュベートし、Annexin緩衝液(10mM HEPES、140mM NaCl、2.5mM CaCl
2
)中3.0M A23187とAnnexin V-Cy5/PIで100秒間刺激し、フローサイトメトリーにより室温で合計200秒間記録した。実験は独立して3回行い、代表的なデータを示した。
PS暴露アッセイ。GFPと融合したTmem63ファミリーメンバー(Tmem63a-GFP、Tmem63b-GFP、又はTmem63c-GFP)を発現するStim1
-/-
BDKO細胞を、AnnexinV-Cy5とPIの存在下、室温で3.0μM A23187で刺激した。PI陰性領域を解析した。Stim1
-/-
のデータは図2dと同じである。実験は独立して3回行い、代表的なデータを示した。
PC取り込みアッセイ。Stim1
-/-
Tmem63b
-/-
BDKO細胞にTmem63b-tagRFP又はStim1-tagRFPを導入し、Lipid buffer(HBSSと1mM CaCl
2
及び1mM MgCl
2
を含む)中でNBD-PC取り込みアッセイを行った。バーはPC取り込み陽性領域、数字はバー内の細胞集団。実験は独立して3回行い、代表的なデータを示した。
PS暴露アッセイ。BDKO細胞及びTmem63b-GFPを発現している細胞を、AnnexinV-Cy5/PIを含むAnnexin緩衝液中で、3.0M A23187の添加又は非添加で4℃で刺激した。フローサイトメトリー分析は10分ごとに行った。PI陰性細胞の解析も行った。実験は別々に2回行い、代表的なデータを示した。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)
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