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公開番号
2025034562
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-03-13
出願番号
2023141026
出願日
2023-08-31
発明の名称
口腔内細菌の増殖抑制剤
出願人
伊那食品工業株式会社
,
学校法人藤田学園
代理人
弁理士法人佐川国際特許商標事務所
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
,
個人
主分類
A61K
31/702 20060101AFI20250306BHJP(医学または獣医学;衛生学)
要約
【課題】 口腔内においてムチン分解に関与する細菌の菌数を抑制する技術を提供する。本発明によれば、ルミノコッカス グナバスなどの、ムチン分解に関与しうる口腔内細菌の増殖を抑制することができる。これにより、口腔内のムチンの分解を抑制し、もって、ムチンの不全が発症や悪化に関与する口腔内の不健康状態や疾患の予防や改善に寄与することができる。
【解決手段】 アガロオリゴ糖を有効成分とする、配列番号1(ルミノコッカス グナバスのNanA遺伝子)との配列同一性が49.9%以上のDNA配列からなるNanA遺伝子をゲノムDNA中に保有する口腔内細菌の増殖を抑制する剤。
【選択図】 図1
特許請求の範囲
【請求項1】
配列番号1との配列同一性が49.9%以上のDNA配列からなるN-アセチルノイラミン酸リアーゼ遺伝子をゲノムDNA中に保有する口腔内細菌の増殖抑制剤であって、アガロオリゴ糖を有効成分とする前記剤。
続きを表示(約 520 文字)
【請求項2】
口腔内においてN-アセチルノイラミン酸リアーゼの発現を抑制するために用いられる、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
口腔内ムチンの分解を抑制するために用いられる、請求項1に記載の剤。
【請求項4】
前記口腔内細菌が、ルミノコッカス属、フソバクテリウム属またはブラウティア属である、請求項1に記載の剤。
【請求項5】
前記口腔内細菌がルミノコッカス グナバスである、請求項1に記載の剤。
【請求項6】
前記口腔内細菌がフソバクテリウム属であり、歯肉炎、歯周病、大腸癌および口腔癌から選択される疾患を予防または改善するために用いられる、請求項1に記載の剤。
【請求項7】
前記アガロオリゴ糖が、アガロビオースを含有するアガロオリゴ糖である、請求項1に記載の剤。
【請求項8】
配列番号1との配列同一性が49.9%以上のDNA配列からなるN-アセチルノイラミン酸リアーゼ遺伝子をゲノムDNA中に保有する口腔内細菌の増殖抑制剤であって、3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースまたはこれを還元末端に有するオリゴ糖を有効成分とする前記剤。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、アガロオリゴ糖を有効成分とする、口腔内細菌の増殖抑制剤に関する。詳細には、アガロオリゴ糖を有効成分とする、配列番号1との配列同一性が49.9%以上のDNA配列からなるN-アセチルノイラミン酸リアーゼ遺伝子をゲノムDNA中に保有する口腔内細菌の増殖抑制剤に関する。
続きを表示(約 2,700 文字)
【背景技術】
【0002】
ムチン(mucin)は動物由来の高分子糖タンパク質で、消化管・気道の粘膜上皮や唾液腺などで産生される粘液の主成分である。コアタンパク質に高い頻度で糖鎖が結合した構造を持ち、一般に、強い粘性と高い保水性を有する。ムチンは、分泌型と膜結合型に分類され、物理的バリアとしての粘膜保護や潤滑作用に加え、膜結合型では細胞質内への情報伝達にも関与している。ムチンのコアタンパク質をコードする遺伝子は「MUC」と表記され、発見された順番で番号がつけられており、現在までにヒトでは20数種が報告されている。
【0003】
口腔内では、唾液に分泌型のMUC5BおよびMUC7が主要タンパク質として含まれている(非特許文献1)。また、口腔粘膜上皮には膜結合型のMUC1が発現している(非特許文献2)。口腔内においてムチンは、その潤滑作用により食物の咀嚼・嚥下や発声を助け、口腔粘膜が傷つかないように保護したり、口腔内の乾燥の防止、食品中の有害物質や異物、細菌・ウイルスなどの感染性微生物を捉えて粘膜上皮細胞に接触するのを防止し、嚥下により胃液で処理する洗浄作用を発揮していると考えられる。例えば、唾液ムチンが少ない場合に口腔乾燥感を訴える可能性があるのではないかと推察されているほか、MUC7はカンジダの増殖抑制や抗菌性に関与しているという報告がある(非特許文献3)。
【0004】
これらムチンの機能発現には、糖鎖末端に結合したシアル酸(N-アセチルノイラミン酸 (Neu5Ac)、N-グリコリルノイラミン酸 (Neu5Gc)、デアミノノイラミン酸(3-deoxy-D?glycero?D-galacto-2-nonulopyranosonic acid; KDN) など)が重要であるといわれている。糖鎖末端のシアル酸が口腔微生物によって分解されると、ムチンがアグリゲーションを起こして機能しなくなると考えられている(非特許文献3)。また、MUC7は抗菌性部位を有するところ、糖鎖末端のシアル酸が分解されると当該抗菌性部位の分解が速く進行することが報告されている(非特許文献1)。
【0005】
一方、ムチン分解菌としてはルミノコッカス グナバス(Ruminococcus gnavus)が報告されている。ルミノコッカス グナバスは腸内常在細菌であり、ムチンのシアル酸を栄養源として生育する。Ruminococcus gnavus ATCC 29149株は、ムチン糖鎖から(N-アセチルノイラミン酸でなく)2,7-アンヒドロ-N-アセチルノイラミン酸を切り出し、これを細胞内に移送した後にN-アセチルノイラミン酸に変換し、N-アセチルノイラミン酸リアーゼ(NanA)によりN-アセチルマンノサミンとピルビン酸とに分解して代謝する、独特のシアル酸代謝経路を有することが報告されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
竹原 祥子、抗菌性を有する唾液ムチン(MUC7)のオーラルケア製品への応用、新潟大学 社会連携推進機構>研究シーズ集>H 医療・健康・福祉>歯学部 予防歯科学分野、[online]、[令和5年6月8日検索]、インターネット<https://www.ircp.niigata-u.ac.jp/seeds/12288.html>
H-S Kho, Review Oral epithelial MUC1 and oral health、ORAL DISEASES, First published: 26 February 2018, 2018 Mar;24(1-2):19-21. doi: 10.1111/odi.12713.
中川 洋一、科学研究費非除菌研究成果報告書、平成23年5月11日現在、機関番号:32710、研究種目:基盤研究(C)、研究期間:2008~2010、課題番号20592348、研究課題名(和文)ドライマウス治療へのアプローチ~口腔症状発現に及ぼすムチンの影響~
Andrew Bell et.al. , Elucidation of a unique sialic acid metabolism pathway in mucus-foraging Ruminococcus gnavus unravels mechanisms of bacterial adaptation to the gut, Nat Microbiol. 2019 December ; 4(12): 2393?2404. doi:10.1038/s41564-019-0590-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、口腔内においてムチン分解に関与する細菌の菌数を抑制すれば、口腔内のムチンの分解を抑制することができ、ムチンの不全が発症や悪化に関与する口腔内の不健康状態や疾患を、予防ないし改善することができると考えた。すなわち、本発明は、口腔内においてムチン分解に関与する細菌の菌数を抑制する技術を提供することを目的とする。
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、アガロオリゴ糖、3,6-アンヒドロ-L-ガラクトース、および、3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースを還元末端に有するオリゴ糖が、口腔内において、ムチン分解菌であるルミノコッカス グナバスの菌数を抑制できること、さらには、ルミノコッカス グナバスのシアル酸代謝酵素であるNanAの遺伝子(配列番号1)のホモログをゲノムDNA中に保有する口腔内細菌の菌数を抑制できることを見出した。そこで、これらの知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
【0009】
(1)本発明に係る剤(「本剤」という場合がある。)の第1の態様は、配列番号1(ルミノコッカス グナバスのNanA遺伝子)との配列同一性が49.9%以上のDNA配列からなるNanA遺伝子をゲノムDNA中に保有する口腔内細菌の増殖を抑制する剤であって、アガロオリゴ糖を有効成分とする。
【0010】
(2)本剤は、口腔内においてNanAの発現を抑制するために用いられるものであってもよい。すなわち、本剤は、口腔内におけるNanAの発現抑制剤であってもよい。
(【0011】以降は省略されています)
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