発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本開示は無線受信装置、無線受信装置が実行する方法及びプログラムに関する。 続きを表示(約 4,200 文字)【背景技術】 【0002】 大容量通信を実現させる手法として、多数のアンテナを有する基地局を用いて複数のユーザとの無線通信を行う大規模マルチユーザMulti-Input Multi-Output (MIMO) が知られている。大規模マルチユーザMIMOは、massive MIMOとも呼ばれる。大規模マルチユーザMIMOは、例えば、第5世代移動通信 (5G) システム等のマルチプルアクセス・セルラーシステムの上り回線(アップリンク)に使用されることができる。大規模マルチユーザMIMOの受信機は、受信した信号からマルチユーザ信号 (signals) を分離するためにマルチユーザ検出を行う必要がある。5Gの基地局は、主にデジタルベースバンド信号処理を担うDistributed Unit (DU) 及びCentral Unit (CU) と、主に無線信号の送受信のためのRadio Frequency (RF) 信号処理を担うRadio Unit (RU) とから構成される。一般的に、マルチユーザ検出はDUで実行される。このとき、RUにて受信された受信信号は、RUとDUを接続するフロントホールを介してDUへ伝送される必要がある。しかしながら、大規模マルチユーザMIMOでは、無線信号が多数のアンテナによって受信されるため、フロントホールを介して伝送する受信信号数が多く、RUとDUを接続するフロントホール帯域が広帯域であることが必要となる。 【0003】 知られたマルチユーザ検出アルゴリズムに、QR-decomposed Gaussian Belief Propagation (QR-GA-BP) アルゴリズムがある(非特許文献1を参照)。QR-GA-BPアルゴリズムは、1または複数の無線送信装置のM個の送信アンテナと、無線受信装置のN個の受信アンテナとの間で定義されるN×M(i.e., N行M列)のチャネル行列を、QR分解を用いて、各列が直交するN×Mの行列QとM次上三角行列とに分解する。QR-GA-BPアルゴリズムは、生成された行列Qのエルミート共役とN×1の各アンテナの受信信号からなる受信信号ベクトルとの行列積を計算することで受信ビームフォーミングを行う。そして、QR-GA-BPアルゴリズムは、受信ビームフォーミング後の受信信号に対してGaBP(Gaussian Belief Propagation:ガウス信念伝搬(伝播)法又はガウス確率伝搬(伝播)法)アルゴリズムを適用して、送信信号を検出する。QR-GA-BPアルゴリズムは、受信ビームフォーミング後のチャネル行列が上三角行列となることを利用して、含まれる送信信号成分が少ない受信信号から順番に干渉除去とビリーフ(belief)生成を行う。QR-GA-BPアルゴリズムは、初めのステップにて、1つの送信信号成分のみが含まれる受信信号に対してGaBPアルゴリズムを用いてビリーフおよびレプリカを生成する。QR-GA-BPアルゴリズムは、以降のm回目のステップでは、(m-1) 回目のステップで用いた (m-1) 個の受信信号と、m個の送信信号成分を持つ受信信号と、(m-1) 回目のステップで生成したビリーフおよびレプリカとを用いて、GaBPアルゴリズムを適用して干渉除去、ビリーフ生成およびレプリカ生成を行う。上三角行列の性質上、第m受信信号は第1~m送信信号成分のみを含むため、mが小さい場合には中心極限定理によるスカラーガウス近似の精度が劣化する。したがって、QR-GA-BPアルゴリズムがすべての受信信号に対して同時にビリーフ生成を行うと、精度よくビリーフが生成されない。そこで、QR-GA-BPアルゴリズムが干渉のない第1受信信号から順番に検出を行うことで、精度よく生成された第1~第 (m-1) 送信信号成分を用いて、第m送信信号成分に対して干渉キャンセルが行われる。このため、第m送信信号成分に対するビリーフおよびレプリカが精度よく生成される。全ての受信信号に対して上記のステップを完了することを1セットとした場合に、QR-GA-BPアルゴリズムは、複数セットを繰り返すことで徐々に検出精度を改善する。また、受信ビームフォーミングを用いることで、フロントホールを介してRUからDUへ伝送される受信信号数が削減されるため、フロントホール帯域が削減される。 【0004】 他の知られたマルチユーザ検出に、K-neighborhood search for zero forcing solution (K-NSF ZF) がある(非特許文献2を参照)。K-NSF ZFは、探索型のアルゴリズムであり、チャネル行列の擬似逆行列であるZFフィルタを用いてレプリカを生成し、生成したレプリカを信号探索の初期値とする。K-NSF ZFは、探索の初期値となるベクトル要素のうちK以下のベクトル要素が変化した候補ベクトルのうち、チャネル行列と候補ベクトルの積と受信信号との二乗誤差が最も小さい候補ベクトルを探索する。ランダムな初期値から処理を始める場合にはK-NSF ZFが最適な信号を探索するために、Kを非常に大きな値に設定する必要がある。そのため、特に送信アンテナ数が大きい場合に探索に膨大な演算量が必要となる。一方で、K-NSF ZFは、ZFを用いて初期値を生成することにより、最適な候補ベクトルの近傍から探索を始められるため、探索に必要な演算量を削減できる。 【0005】 他の知られたマルチユーザ検出に、特異値分解を用いた受信ビームフォーミングと、ZFによるレプリカ生成と、GaBPによる信号検出とを備えた手法がある(特許文献1を参照)。特許文献1に記載の手法は、非特許文献1に記載のQR-GA-BPアルゴリズムおよび非特許文献2に記載のK-NSF ZFの両方の特徴を有する。非特許文献1に記載のQR-GA-BPアルゴリズムは、受信ビームフォーミングを用いてフロントホール帯域を削減できる一方で、マルチユーザ検出に多くの繰り返しが必要になるため、実行時間が長くなる課題がある。非特許文献2に記載のK-NSF ZFは、線形フィルタを用いて生成したレプリカにより演算量を削減できる一方で、受信アンテナで受信した信号がそのままRUからDUへ伝送されるため、広いフロントホール帯域が必要となる。しかしながら、特許文献1に記載のGaBPアルゴリズムは、ソフト干渉除去、ビリーフ生成、ソフトレプリカ生成を繰り返すことで高精度に送信信号を検出することができる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 特開2023-037446号公報 【非特許文献】 【0007】 S. Tanabe, A. D. Shigyo, and K. Ishibashi, “Not-so-large MIMO signal detection based on damped QR-decomposed belief propagation,” 2016 International Symposium on Information Theory and Its Applications (ISITA), pp. 463-467, 2016. M. Chaudhary, N. K. Meena, and R. S. Kshetrimayum, “Local search based near optimal low complexity detection for large MIMO system,” 2016 IEEE International Conference on Advanced Networks and Telecommunications Systems (ANTS), pp. 1-5, 2016. 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 特許文献1に記載の方法では、ZFにより雑音強調が発生するため、Minimum Mean Square Error (MMSE) によりレプリカを生成した場合と比較してマルチユーザ検出の精度が低くなることが想定される。一方で、検出精度を向上するためにMMSEを用いてレプリカを生成する場合には、特許文献1に記載の方法を用いることができない。したがって、MMSEフィルタの生成に逆行列演算が必要となるため、演算量が増加することが想定される。 【0009】 本開示の実施形態が達成しようとする目的の1つは、演算量が抑制された状態でマルチユーザ検出を精度良く行うことに寄与する装置、方法、及びプログラムを提供することである。なお、この目的は、ここに開示される複数の実施形態が達成しようとする複数の目的の1つに過ぎないことに留意されるべきである。その他の目的又は課題と新規な特徴は、本明細書の記述又は添付図面から明らかにされる。 【課題を解決するための手段】 【0010】 第1の態様では、無線受信装置は、特異値分解器と、対角行列補正器と、レプリカ生成器と、非線形検出器を備える。前記特異値分解器は、1または複数の無線送信装置のM個の送信アンテナと前記無線受信装置に結合されたN個の受信アンテナとの間で定義されるN×Mのチャネル行列を、N×Mの左特異行列U、M次対角行列である特異値行列Σ、およびM×Mの右特異行列Vに特異値分解するよう構成される。前記対角行列補正器は、前記特異値行列Σと任意の対角行列Aとを用いることで対角行列Σ’を生成するよう構成される。前記レプリカ生成器は、前記左特異行列Uを用いることで前記受信アンテナの各々の受信信号に対して受信ビームフォーミングがなされた受信信号ベクトルy’と、前記右特異行列V及び前記対角行列Σ’を用いて生成された線形フィルタWと、を用いることでレプリカベクトルx^を生成するよう構成される。前記非線形検出器は、前記受信信号ベクトルy’と前記レプリカベクトルx^とを用いることで非線形信号検出アルゴリズムを実行するよう構成される。 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する