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公開番号
2024156361
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-11-06
出願番号
2023070761
出願日
2023-04-24
発明の名称
マイコプラズマ・ジェニタリウム検出用プローブ及びその用途
出願人
東洋紡株式会社
,
国立大学法人 筑波大学
代理人
弁理士法人三枝国際特許事務所
主分類
C12N
15/09 20060101AFI20241029BHJP(生化学;ビール;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学)
要約
【課題】マイコプラズマ・ジェニタリウム検出用プローブを提供すること。
【解決手段】以下の特徴(A)及び(B)を有する、マイコプラズマ・ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium)検出用プローブ:
(A)以下の(A-1)又は(A-2)の塩基配列を含む;
(A-1)配列番号1で示される塩基配列の72~100番目の領域の塩基配列若しくは前記塩基配列と相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列であって、マイコプラズマ・ジェニタリウムのParC遺伝子配列の247位、248位、及び249位に相当する位置の3つの塩基の領域を少なくとも含む塩基配列、又は
(A-2)(A-1)の塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列;及び
(B)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
【選択図】なし
特許請求の範囲
【請求項1】
以下の特徴(A)及び(B)を有する、マイコプラズマ・ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium)検出用プローブ:
(A)以下の(A-1)又は(A-2)の塩基配列を含む;
(A-1)配列番号1で示される塩基配列の72~100番目の領域の塩基配列若しくは前記塩基配列と相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列であって、マイコプラズマ・ジェニタリウムのParC遺伝子配列の247位、248位、及び249位に相当する位置の3つの塩基の領域を少なくとも含む塩基配列、又は
(A-2)(A-1)の塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列;及び
(B)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
続きを表示(約 1,000 文字)
【請求項2】
前記(A)において、配列番号1で示される塩基配列におけるParC遺伝子配列の247位、248位、及び249位に相当する位置の3つの塩基が、それぞれ独立して、アデニン塩基、グアニン塩基、及びチミン塩基から選択される、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記(A)において、配列番号1で示される塩基配列におけるParC遺伝子配列の247位、248位、及び249位に相当する位置の3つの塩基からなる配列がAGT又はATTである、請求項1に記載のプローブ。
【請求項4】
前記(A)の塩基配列が、配列番号7~17のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列を含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項5】
前記(A)の塩基配列の長さが15~30塩基である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項6】
前記(B)の標識が蛍光色素標識である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項7】
前記(B)の標識が、前記プローブの塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列を含む核酸と結合した場合に消光する蛍光消光色素による標識である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項8】
前記(B)の標識が、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素による標識である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項9】
前記(B)の標識が、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、並びにBODIPY及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項10】
前記(B)の標識が、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G、TAMRA、ローダミン6G、テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、請求項1に記載のプローブ。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイコプラズマ・ジェニタリウム検出用プローブ、該プローブを用いてマイコプラズマ・ジェニタリウムを検出する方法及び当該方法に用いるための試薬・キット等に関する。
続きを表示(約 6,000 文字)
【背景技術】
【0002】
性感染症は性的接触によって感染する病気であり、無症状や自覚しない軽症の場合も多く、感染がいつの間にか広がってしまうという問題がある。性感染症を引き起こす原因細菌としては、Chlamydia trachomatis、Neisseria gonorrhoeaeが代表例として挙げられる。更に、その他の原因細菌として、Mycoplasma genitalium、Mycoplasma hominis、Ureaplasma parvum、Ureaplasma urealyticum、Trichomonas vaginalis、Treponema pallidum等も知られている。
【0003】
これらの性感染症を引き起こす原因細菌のうち、マイコプラズマ・ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium)は、膿性や漿液性の尿道分泌物を伴う尿道炎を引き起こすことが報告されており、これを簡便、迅速、高感度に検出することは臨床診断上重要である。マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症に対しては、マクロライド系抗菌薬が最もよく治療に用いられている。しかしながら、マクロライド系抗菌薬に対して耐性を持つ株が報告されており、マクロライド系抗菌薬による治療が難しいケースも確認されている。さらに、マイコプラズマ・ジェニタリウム感染症の治療にキノロン系抗菌薬も用いられるが、キノロン系抗菌薬に対しても耐性を持つ株が報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
Anna Vesty et al., Mycoplasma genitalium Antimicrobial Resistance in Community and Sexual Health Clinic Patients, Auckland, New Zealand., Journal of Emerging Infectious Diseases,February 2022 Volume 26 Number 2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイコプラズマ・ジェニタリウムの野生型又は変異型を問わず可能な限り網羅的に検出できる方法の開発が求められている。また、野生型及び変異型の両方を検出できるだけでなく、マイコプラズマ・ジェニタリウムの抗生物質(キノロン系抗菌薬等)に対する耐性の有無についても簡便、迅速、且つ高感度に検出する方法の開発が望まれている。
本発明の主な目的は、マイコプラズマ・ジェニタリウムの検出に有用なプローブ及びそれを用いたマイコプラズマ・ジェニタリウムの検出方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意研究した結果、特定の塩基配列を有する標識プローブを用いることで、マイコプラズマ・ジェニタリウムを簡便、迅速、且つ高感度に検出できることを見出した。本発明者らは、当該知見を基に更に鋭意研究を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は、以下の態様を包含する。
[項1] 以下の特徴(A)及び(B)を有する、マイコプラズマ・ジェニタリウム(Mycoplasma genitalium)検出用プローブ:
(A)以下の(A-1)又は(A-2)の塩基配列を含む;
(A-1)配列番号1で示される塩基配列の72~100番目の領域の塩基配列若しくは前記塩基配列と相補的な塩基配列において連続する少なくとも15塩基の塩基配列であって、マイコプラズマ・ジェニタリウムのParC遺伝子配列の247位、248位、及び249位に相当する位置の3つの塩基の領域を少なくとも含む塩基配列、又は
(A-2)(A-1)の塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列;及び
(B)5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
[項2] 前記(A)において、配列番号1で示される塩基配列におけるParC遺伝子配列の247位、248位、及び249位に相当する位置の3つの塩基が、それぞれ独立して、アデニン塩基、グアニン塩基、及びチミン塩基から選択される、項1に記載のプローブ。
[項3] 前記(A)において、配列番号1で示される塩基配列におけるParC遺伝子配列の247位、248位、及び249位に相当する位置の3つの塩基からなる配列がAGT又はATTである、項1又は2に記載のプローブ。
[項4] 前記(A)の塩基配列が、配列番号7~17のいずれかで示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列を含む、項1~3のいずれかに記載のプローブ。
[項5] 前記(A)の塩基配列の長さが15~30塩基である、項1~4のいずれかに記載のプローブ。
[項6] 前記(B)の標識が蛍光色素標識である、項1~5のいずれかに記載のプローブ。
[項7] 前記(B)の標識が、前記プローブの塩基配列に対して相補的な塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列を含む核酸と結合した場合に消光する蛍光消光色素による標識である、項1~6のいずれかに記載のプローブ。
[項8] 前記(B)の標識が、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素による標識である、項1~7のいずれかに記載のプローブ。
[項9] 前記(B)の標識が、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、並びにBODIPY及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、項1~8のいずれかに記載のプローブ。
[項10] 前記(B)の標識が、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G、TAMRA、ローダミン6G、テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素による標識である、項1~9のいずれかに記載のプローブ。
[項11] 前記(B)において、標識されている末端塩基がシトシンである、項1~10のいずれかに記載のプローブ。
[項12] 項1~11のいずれかに記載のプローブを用いて、検体試料中に含まれ得るマイコプラズマ・ジェニタリウムを検出する方法。
[項13] 以下の工程(1)、(2)、及び(3):
(1)マイコプラズマ・ジェニタリウムを含み得る検体試料を提供する工程、
(2)工程(1)の検体試料を、マイコプラズマ・ジェニタリウムのParC遺伝子配列の一部又は全部を鋳型とする核酸増幅反応に供する工程、及び
(3)工程(2)の核酸増幅反応で生成し得る1又は複数の核酸増幅産物を、1又は複数の前記プローブを用いて検出する工程、
を含む、項12に記載の方法。
[項14] 工程(2)がPCR反応により実施され、前記PCR反応に用いる核酸増幅酵素が、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼである項13に記載の方法。
[項15] ファミリーBに属するDNAポリメラーゼが、KOD由来のDNAポリメラーゼ又はその変異体である、項14に記載の方法。
[項16] 工程(2)の核酸増幅反応で使用するプライマーセットが、配列番号1の1~71番目の塩基配列若しくは前記塩基配列と相補的な塩基配列において連続する19~32塩基の塩基配列、又はそれらの塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列からなる第一のプライマーと、配列番号1の99~142番目の塩基配列若しくは前記塩基配列と相補的な塩基配列において連続する19~32塩基の塩基配列、又はそれらの塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列からなる第二のプライマーとの組合せからなるプライマーセットであって、第二のプライマーが第一のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるプライマーセットである、項13~15のいずれかに記載の方法。
[項17] 前記第一のプライマーが、配列番号18及び19のいずれかで示される塩基配列若しくはそれらに相補的な塩基配列、又はそれらの塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列からなり、かつ、前記第二のプライマーが、配列番号20~22のいずれかで示される塩基配列若しくはそれらに相補的な塩基配列、又はそれらの塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列からなる、項16に記載の方法。
[項18] マイコプラズマ・ジェニタリウムの野生型及びキノロン系抗生物質に対する耐性変異型の両方を検出する、項12~17のいずれかに記載の方法。
[項19] マイコプラズマ・ジェニタリウムを野生型及びキノロン系抗生物質に対する耐性変異型のいずれであるかを判別して検出する、項12~18のいずれかに記載の方法。
[項20] マイコプラズマ・ジェニタリウムのParC遺伝子配列の247位、248位、及び249位における少なくとも1つの変異の有無を判別して検出する、項12~19のいずれかに記載の方法。
[項21] マイコプラズマ・ジェニタリウムのParC遺伝子配列の248位における変異の有無を判別して検出する、項12~20のいずれかに記載の方法。
[項22] 工程(3)の検出する工程が、融解曲線分析により実施される、項13~21のいずれかに記載の方法。
[項23] 前記融解曲線分析において、キノロン系抗生物質に対する耐性変異型の検出温度が、野生型の検出温度より低い又は高い温度で検出される、項22に記載の方法。
[項24] 前記融解曲線分析において、キノロン系抗生物質に対する耐性変異型の検出温度と、野生型の検出温度との間の差が4℃以上である、項22又は23に記載の方法。
[項25] 前記融解曲線分析において、キノロン系抗生物質に対する耐性変異型の検出温度と、野生型の検出温度との間の差が8℃以上である、項22~24のいずれかに記載の方法。
[項26] 項1~11のいずれかに記載のプローブを含む、マイコプラズマ・ジェニタリウムを検出するための試薬キット。
[項27] 配列番号1で示される塩基配列の1~71番目の塩基配列若しくは前記塩基配列と相補的な塩基配列において連続する19~32塩基の塩基配列、又はそれらの塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列からなる第一のプライマーと、配列番号1で示される塩基配列の99~142番目の塩基配列若しくは前記塩基配列と相補的な塩基配列において連続する19~32塩基の塩基配列、又はそれらの塩基配列において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列からなる第二のプライマーとの組合せからなるプライマーセットであって、第二のプライマーが第一のプライマーのDNA伸長生成物に対して相補的であるプライマーセットを更に含む、項26に記載の試薬キット。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、マイコプラズマ・ジェニタリウムを簡便、迅速、且つ高感度に検出することができる。また、本発明では、1種類のプローブを用いることにより、野生型及びキノロン系抗生物質に対して耐性を示す変異型の両方のマイコプラズマ・ジェニタリウムを検出することも可能である。さらに、本発明では、マイコプラズマ・ジェニタリウムを、野生型及びキノロン系抗生物質に対して耐性を示す変異型のいずれであるかを判別して検出することも可能となり、更に特定の実施態様では、マイコプラズマ・ジェニタリウムのParC遺伝子配列の247位、248位、及び249位の少なくとも1つの位置における変異の有無を判別して検出することも可能である。本発明のプローブ、それを用いた検出方法、試薬、又はキット等を使用することで、マイコプラズマ・ジェニタリウムの簡便、迅速、且つ高感度な検出が可能になり、臨床診断の分野に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1は実施例1の結果の代表例(配列番号8で示されるプローブを用いて融解曲線解析を行った場合の検出結果)を示す。
図2は実施例2の結果の代表例(配列番号19と配列番号22で示されるプライマーの組合せで融解曲線解析を行った場合の検出結果)を示す。
図3は実施例3の結果の代表例(配列番号8で示されるプローブを用いて融解曲線解析を行った場合の検出結果)を示す。
図4は実施例4の結果の代表例(配列番号13で示されるプローブを用いて融解曲線解析を行った場合の検出結果)を示す。
図5はマイコプラズマ・ジェニタリウムのParC遺伝子配列(配列番号1)の一部と、試験例で用いた各プローブ及びプライマーの塩基配列との対応関係を示す図である。四角で囲んだ部分が、マイコプラズマ・ジェニタリウムのParC遺伝子配列の247位、248位、及び249位に相当する位置の3つの塩基の領域(図5の例では、AGT又はATT)である。黒丸は蛍光消光色素の結合位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書中に記載された非特許文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用され、その全体が明細書に組み込まれる。また、本明細書中の「~」は「以上、以下」を意味し、例えば明細書中で「X~Y」と記載されていれば「X以上、Y以下」を示す。本明細書中の「及び/又は」は、いずれか一方又は両方を意味する。本明細書中の「含む」は、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を包含する。
(【0011】以降は省略されています)
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