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公開番号2024142176
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-10-10
出願番号2023054222
出願日2023-03-29
発明の名称プロトン伝導体並びに固体電解質層及びそれを備えた固体電解質接合体
出願人三井金属鉱業株式会社,国立大学法人東北大学
代理人弁理士法人翔和国際特許事務所
主分類H01M 8/1246 20160101AFI20241003BHJP(基本的電気素子)
要約【課題】これまでよりも高いプロトン伝導性の達成が可能なプロトン伝導体を提供すること。
【解決手段】本発明のプロトン伝導体は、Aサイトに二価の陽イオンとなり得る元素を含み、BサイトにZr及びCeからなる群から選択される元素並びに三価の希土類元素及びインジウムよりなる群から選択される元素を含むペロブスカイト酸化物における酸素の一部がハロゲンで置換されている組成を有する。BとMの和に対するMのモル比(M/(B+M))が0.21≦M/(B+M)<0.40を満たす。BとMの和に対するハロゲンXのモル比(X/(B+M))が0<X/(B+M)<0.13を満たす。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
AサイトにA元素を含み、BサイトにB元素及びM元素を含むペロブスカイト酸化物における酸素の一部がX元素で置換されている組成を有するプロトン伝導体であって、
A元素は二価の陽イオンとなり得る元素の少なくとも一種を表し、
B元素はZr及びCeからなる群から選択される少なくとも一種の元素を表し、
M元素は三価の希土類元素及びインジウムよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を表し、
X元素はハロゲンを表し、
B元素とM元素の和に対するM元素のモル比(M/(B+M))が0.21≦M/(B+M)<0.40を満たし、
B元素とM元素の和に対するX元素のモル比(X/(B+M))が0<X/(B+M)<0.13を満たすプロトン伝導体。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
B元素とM元素の和に対するM元素のモル比と、B元素とM元素の和に対するX元素のモル比との差が0.15≦(M/(B+M))-(X/(B+M))≦0.30を満たす、請求項1に記載のプロトン伝導体。
【請求項3】
A元素が第2族元素であり、M元素が希土類元素である、請求項1又は2に記載のプロトン伝導体。
【請求項4】
A元素がバリウムであり、
B元素がジルコニウムであり、
M元素がイットリウムであり、
X元素がフッ素である、請求項1又は2に記載のプロトン伝導体。
【請求項5】
AサイトにA元素を含み、BサイトにB元素及びM元素を含むペロブスカイト酸化物における酸素の一部がX元素で置換されている組成を有するプロトン伝導体を含む固体電解質層であって、
A元素は二価の陽イオンとなり得る元素の少なくとも一種を表し、
B元素はZr及びCeからなる群から選択される少なくとも一種の元素を表し、
M元素は三価の希土類元素及びインジウムよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を表し、
X元素はハロゲンを表し、
B元素とM元素の和に対するM元素のモル比(M/(B+M))が0.21≦M/(B+M)<0.40を満たし、
B元素とM元素の和に対するX元素のモル比(X/(B+M))が0<X/(B+M)<0.13を満たすプロトン伝導体を含む、固体電解質層。
【請求項6】
組成式A

(B
1-b


)O
3-δ


で表されるプロトン伝導体を含む、固体電解質層。
式中、A元素は二価の陽イオンとなり得る元素の少なくとも一種を表し、
B元素はZr及びCeからなる群から選択される少なくとも一種の元素を表し、
M元素は三価の希土類元素及びインジウムよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を表し、
Xはハロゲンを表し、
δは酸素欠損量を表し、
aは0.9以上1.1以下の数を表し、
bは0.21以上0.40未満の数を表し、
cは0超0.13未満の数を表す。
【請求項7】
請求項6に記載の固体電解質層の各面に電極を配してなる固体電解質接合体。
【請求項8】
請求項7に記載の固体電解質接合体を備えた燃料電池のセル。
【請求項9】
請求項7に記載の固体電解質接合体を備えた水蒸気電解セル。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明はプロトン伝導体に関する。また本発明は固体電解質層及びそれを備えた固体電解質接合体に関する。
続きを表示(約 1,900 文字)【背景技術】
【0002】
クリーンなエネルギーを社会に普及させることは持続可能な世界を構築するために重要な課題と認識されており、その解決の具体的手段として、燃料電池がある。セラミックス材料で構成される固体酸化物形燃料電池(SOFC)は高温で作動でき、燃料電池の中で最も発電効率が高いものである。SOFCの主要構成部材である固体電解質は、選択的にイオンを透過させる材料から構成されており、従来は酸化物イオン伝導体が用いられてきた。近年、酸化物イオン伝導体に代えてプロトン伝導体を用いることでSOFCの発電効率が理論上飛躍的に向上することが報告されており、電解質層にプロトン伝導性セラミックスを適用したプロトン伝導性セラミックス燃料電池(PCFC)の実現への期待が高まっている。
【0003】
プロトン伝導性セラミックスの一つとしてペロブスカイト構造のプロトン伝導体が種々提案されている。その中でもイットリウムをドープしたバリウムジルコネート(以下「BZY」ともいう。)は、強固なZr-O結合に起因して燃料電池の運転雰囲気である水蒸気や二酸化炭素を含む雰囲気において化学的安定性が高いことが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
非特許文献1では、高いプロトン伝導性を示すことで知られている、組成式がBaZr
0.8

0.2

3-δ
で表されるプロトン伝導体において、ドーパントであるイットリウム濃度を向上させた試料のプロトン伝導性が調査されている。しかし、ドーパント濃度を向上させることでプロトン固溶量は増加するものの、固溶限界を超えてしまうことによる、異相の結晶粒界への析出やドーパントサイトによるプロトントラッピングなどが要因で、プロトン移動度が減少し、結果としてプロトン伝導率が減少することが報告されている。
【0005】
非特許文献2では、BZYのプロトン伝導性を高めることを目的として、組成式がBaZr
0.8

0.2

3-δ
で表されるプロトン伝導体のO
2-
サイトをF

で置換することが提案されている。しかし、プロトン伝導性セラミックスに対するプロトン伝導性の向上の要求、特に中低温域におけるプロトン伝導性の向上の要求は一層増している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開2009-23883号公報
【非特許文献】
【0007】
Solid State Ionics 181, 1043-1051, 2010
ChemElectroChem 7, 2242-2247, 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、これまでよりも高いプロトン伝導性の達成が可能なプロトン伝導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決すべく本発明者は鋭意検討した結果、ペロブスカイト構造のプロトン伝導体に、プロトン伝導性を向上させ得るドーパント元素をハロゲンとともに含有させることで、これまで一般的に採用されていたBサイトに位置するB元素の一部を置換するM元素の最適固溶量を超えて該M元素を固溶させた組成において、高いプロトン伝導性を示す領域が存在することを知見した。
【0010】
本発明は前記知見に基づきなされたものであり、AサイトにA元素を含み、BサイトにB元素及びM元素を含むペロブスカイト酸化物における酸素の一部がX元素で置換されている組成を有するプロトン伝導体であって、
A元素は二価の陽イオンとなり得る元素の少なくとも一種を表し、
B元素はZr及びCeからなる群から選択される少なくとも一種の元素を表し、
M元素は三価の希土類元素及びインジウムよりなる群から選択される少なくとも一種の元素を表し、
X元素はハロゲンを表し、
B元素とM元素の和に対するM元素のモル比(M/(B+M))が0.21≦M/(B+M)<0.40を満たし、
B元素とM元素の和に対するX元素のモル比(X/(B+M))が0<X/(B+M)<0.13を満たすプロトン伝導体を提供するものである。
(【0011】以降は省略されています)

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