TOP特許意匠商標
特許ウォッチ Twitter
公開番号2024084898
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-06-26
出願番号2022199080
出願日2022-12-14
発明の名称イリジウム-マンガン酸化物複合材料、イリジウム-マンガン酸化物複合電極材料及びこれらの製造方法
出願人国立研究開発法人理化学研究所,東ソー株式会社
代理人弁理士法人T.S.パートナーズ,個人,個人,個人,個人,個人
主分類C25B 11/093 20210101AFI20240619BHJP(電気分解または電気泳動方法;そのための装置)
要約【課題】 水電解における酸素発生用電極として使用される、安価で、高触媒活性かつ高耐久性を有するイリジウム-マンガン酸化物複合材料、イリジウム-マンガン酸化物複合電極材料、及びこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】 表面-内部間のイリジウム濃度勾配が0%以上55%以下であるイリジウム-マンガン酸化物複合材料、上記イリジウム-マンガン酸化物複合材料が、導電性繊維で構成される導電性基材の少なくとも一部に被覆されているイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料、及びこれらの製造方法。
【選択図】 なし
特許請求の範囲【請求項1】
表面-内部間のイリジウム濃度勾配が0%以上55%以下であるイリジウム-マンガン酸化物複合材料。
続きを表示(約 840 文字)【請求項2】
酸素欠陥量が20%以上34%以下である請求項1に記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料。
【請求項3】
マンガン酸化物が電解二酸化マンガンである請求項1又は2に記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料。
【請求項4】
マンガン酸化物がβ型二酸化マンガンである請求項1又は2に記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料が、導電性繊維で構成される導電性基材の少なくとも一部に被覆されているイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料。
【請求項6】
前記マンガン酸化物の含有量が、前記導電性基材の幾何面積当たり、0.1mg/cm

以上15mg/cm

以下である請求項5に記載のイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料。
【請求項7】
前記イリジウムの含有量が、前記導電性基材の幾何面積当たり、0.01mg/cm

以上0.2mg/cm

以下である請求項5に記載のイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料。
【請求項8】
前記導電性基材が、カーボン、チタン、及び白金被覆されたチタンからなる群から選択される少なくとも1種で構成される請求項5に記載のイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料を担持させた電極と、高分子電解質膜とを有する膜-電極接合体。
【請求項10】
硫酸-硫酸マンガンを含む混合溶液の電解で得られたマンガン酸化物をイリジウム塩-硫酸を含む混合溶液に浸漬または接触させた後、アニール処理を行う請求項1又は2に記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料の製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、水分解触媒用のイリジウム-マンガン酸化物複合材料、イリジウム-マンガン酸化物複合電極材料、及びこれらの製造方法並びにこれらの用途に関する。より詳しくは、アルカリ性条件下、中性条件下、又は酸性条件下で行われる工業的な水電解や、固体高分子膜(PEM)型電解槽を用いる水電解において、酸素発生用陽極として使用されるイリジウム-マンガン酸化物複合材料、イリジウム-マンガン酸化物複合電極材料、膜-電極接合体及びこれらの製造方法に関する。
続きを表示(約 4,700 文字)【背景技術】
【0002】
化石燃料の枯渇問題や環境汚染問題から、クリーンなエネルギーとしての水素の利用とその製造手法に注目が集まっている。水電解法は、水を電気分解して陰極から高純度の水素ガスを製造する有効な手段のひとつであるが、この際、対極の陽極からは酸素発生が同時に起こることが特徴である。水電解法において水分解反応を効率よく進行させるには、陰極では水素過電圧の低い電極触媒を、陽極では酸素過電圧の低い電極触媒を用いて、電気分解にかかる電解電圧を低く保ちながら電解する必要がある。このうち、陽極の低酸素過電圧に優れた電極触媒材料として、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)などの希少な白金族金属や、それらの元素を含んだ酸化物をはじめとする化合物が提案されている(特許文献1、2、非特許文献1~3)。
【0003】
一方で、このような白金族金属で構成される電極触媒は非常に高価であることから、安価な遷移金属を用いた電極触媒の開発が進められてきている。例えば、近年では、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などで構成される遷移金属材料が提案されている(特許文献3~5、非特許文献4~7)。
最近まで、安価な遷移金属で構成され、且つ、PtやIrなどの白金族金属系に匹敵する高い触媒活性を有する酸素発生電極触媒材料は実現されていなかったが、このような課題に対して、マンガン酸化物に少量のIrを導入することで低コストと白金族金属系に匹敵する触媒活性を両立した電極触媒が見出された(特許文献6)。
【0004】
しかしながら、例えばPEM型水電解中の陽極付近の過酷な酸性環境は、前記のような主に遷移金属から構成される触媒の耐久性を著しく低下させる。したがって、遷移金属を主成分とする材料であっても、高い耐久性を有する触媒の開発が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開平8-269761号公報
特表2007-514520号公報
特開2015―192993号公報
国際公開(WO)2009/154753
国際公開(WO)2019/117199
国際公開(WO)2021/193467
【非特許文献】
【0006】
S.Trasatti,G.Buzzanca,J.Electroanal.Chem.,1971,29,A1.
A.Harriman,I.J.Pickering,J.M.Thomas,P.A.Christensen,J.Chem.Soc.,Faraday Trans.1,1988,84,2795.
Y.Zhao,N.M.Vargas-Barbosa,E.A.Hernandez-Pagan,T.E.Mallouk,Small,2011,7,2087.
M.M.Najafpour,G.Renger,M.Holynska,A.N.Moghaddam,E.-M.Aro, R.Carpentier,H.Nishihara,J.J.Eaton-Rye,J.-R.Shen,S.I.Allakhverdiev,Chem.Rev.,2016,116,2886.
T.Takashima,K.Ishikawa,H.Irie,J.Phys.Chem.C,2016,120,24827.
J.B.Gerken,J.G.McAlpin,J.Y.C.Chen,M.L.Rigsby,W.H.Casey,R.D.Britt,S.S.Stahl,J.Am.Chem.Soc.,2011,133,14431.
M.Dinca,Y.Surendranath,D.G.Nocera,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,2010,107,10337.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水分解触媒用のイリジウム-マンガン酸化物複合材料、イリジウム-マンガン酸化物複合電極材料、及びそれらの製造方法の提供に関するものである。
より詳しくは、アルカリ性条件下、中性条件下、又は酸性条件下で行われる工業的な水電解や、固体高分子膜(PEM)型電解槽を用いる水電解における酸素発生用陽極触媒材料であって、高い耐久性を有する水分解触媒用のイリジウム-マンガン酸化物複合材料(以下、本発明のイリジウム-マンガン酸化物複合材料という場合がある。)、水分解触媒用のイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料及びそれらの製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、水電解の酸素発生電極触媒として使用される触媒材料について鋭意検討を重ねた結果、表面-内部間のイリジウム濃度勾配が0%以上55%以下であるイリジウム-マンガン酸化物複合材料及びイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料が優れた耐久性を示すことを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は特許請求の範囲のとおりであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]表面-内部間のイリジウム濃度勾配が0%以上55%以下であるイリジウム-マンガン酸化物複合材料。
[2]酸素欠陥量が20%以上34%以下である上記[1]に記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料。
[3]マンガン酸化物が電解二酸化マンガンである上記[1]又は[2]に記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料。
[4]マンガン酸化物がβ型二酸化マンガンである上記[1]~[3]のいずれかひとつに記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料。
[5]上記[1]~[4]のいずれかひとつに記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料が、導電性繊維で構成される導電性基材の少なくとも一部に被覆されているイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料。
[6]前記マンガン酸化物の含有量が、前記導電性基材の幾何面積当たり、0.1mg/cm

以上15mg/cm

以下である上記[5]に記載のイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料。
[7]前記イリジウムの含有量が、前記導電性基材の幾何面積当たり、0.01mg/cm

以上0.2mg/cm

以下である上記[5]又は[6]に記載のイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料。
[8]前記導電性基材が、カーボン、チタン、及び白金被覆されたチタンからなる群から選択される少なくとも1種で構成される上記[5]~[7]のいずれかひとつに記載のイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料。
[9]上記[1]~[4]のいずれかひとつに記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料を担持させた電極と、高分子電解質膜とを有する膜-電極接合体。
[10]硫酸-硫酸マンガンを含む混合溶液の電解で得られたマンガン酸化物をイリジウム塩-硫酸を含む混合溶液に浸漬または接触させた後、アニール処理を行う上記[1]~[4]のいずれかひとつに記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料の製造方法。
[11]硫酸-硫酸マンガンを含む混合溶液で、さらにアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種を含み、その濃度が1.4mol/L以下である混合溶液の電解で得られたマンガン酸化物をイリジウム塩-硫酸を含む混合溶液に浸漬または接触させた後、アニール処理を行う上記[1]~[4]のいずれかひとつに記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料の製造方法。
[12]硫酸-硫酸マンガンを含む混合溶液を電解して、マンガン酸化物を導電性繊維で構成される導電性基材の少なくとも一部に電析させ、続いて、イリジウム塩-硫酸を含む混合溶液に浸漬または接触させた後、アニール処理を行う上記[5]~[8]のいずれかひとつに記載のイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料の製造方法。
[13]硫酸-硫酸マンガンを含む混合溶液で、さらにアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩からなる群から選択される少なくとも1種を含み、その濃度が1.4mol/L以下である混合溶液を電解して、マンガン酸化物を導電性繊維で構成される導電性基材の少なくとも一部に電析させ、続いて、イリジウム塩-硫酸を含む混合溶液に浸漬または接触させた後、アニール処理を行う上記[5]~[8]のいずれかひとつに記載のイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料の製造方法。
[14]上記[1]~[4]のいずれかひとつに記載のイリジウム-マンガン酸化物複合材料を含む水電解における酸素発生電極活物質。
[15]上記[14]に記載の酸素発生電極活物質を含む酸素発生電極。
[16]上記[15]に記載の酸素発生電極と、高分子電解質膜とを有する膜-電極接合体。
[17]上記[5]~[8]のいずれかひとつに記載のイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料を有する水電解装置。
[18]上記[15]に記載の酸素発生電極を有する水電解装置。
[19]上記[5]~[8]のいずれかひとつに記載のイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料を使用して水電解する水素の製造方法。
[20]上記[15]に記載の酸素発生電極を使用して水電解する水素の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のイリジウム-マンガン酸化物複合材料、及びイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料は、アルカリ下、中性下、又は酸性下で行われる工業的な水電解やPEM型電解槽を用いる水電解において、高い耐久性を示す酸素発生用陽極触媒として作用する。
また、本発明のイリジウム-マンガン酸化物複合材料、及びイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料を用いる上記電解系に二酸化炭素を添加等することにより、該二酸化炭素等を陰極において還元して、炭化水素化合物(ギ酸、ホルムアルデヒド、メタノール、メタン、エタン、プロパン等)を製造することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の、各深さにおけるIr/Mn原子比を示したデータである。
実施例1のイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料のIr未担持の場合およびIr担持した場合のXRDパターンである。
比較例2のイリジウム-マンガン酸化物複合電極材料のIr未担持の場合およびIr担持した場合のXRDパターンである。
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の、酸素発生時(水電解時)における、1M H

SO

と0.5M K

SO

とを含む水溶液を用いた三電極型電解セルで80℃で測定した電流と電位との関係を示すリニアスイープボルタモグラム(LSV)である。
【発明を実施するための形態】
(【0011】以降は省略されています)

特許ウォッチbot のツイートを見る
この特許をJ-PlatPatで参照する

関連特許

個人
小型めっき装置
4か月前
株式会社カネカ
電解装置
5か月前
株式会社カネカ
電解装置
5か月前
キヤノン電子株式会社
撥水部材
3か月前
太陽誘電株式会社
めっき装置
6か月前
有限会社シーエス技術研究所
電解用電極
1か月前
有限会社シーエス技術研究所
電解用陽極
1か月前
株式会社神戸製鋼所
接点材料
5か月前
株式会社ワンテンス
電解装置
5か月前
株式会社大阪ソーダ
電解槽
1か月前
株式会社ケミカル山本
電解研磨装置用電極
1か月前
日本ラック株式会社
めっき治具
5か月前
トヨタ自動車株式会社
水電解セル
1か月前
トヨタ自動車株式会社
水電解セル
1か月前
トヨタ自動車株式会社
水電解装置
2か月前
株式会社神戸製鋼所
端子材料および端子
2か月前
三恵技研工業株式会社
外装品及びその製造方法
2か月前
株式会社ナノバブル研究所
微細生成物発生装置
2か月前
トヨタ自動車株式会社
水電解セル
1か月前
株式会社大阪ソーダ
水素発生電極、及びその製造方法
5か月前
トヨタ自動車株式会社
水電解装置
5日前
トヨタ自動車株式会社
水電解装置
1か月前
トヨタ自動車株式会社
膜電極接合体
3か月前
株式会社ヨコオ
軸材及び電鋳管の製造方法
7か月前
TDK株式会社
電子部品の製造装置
3か月前
本田技研工業株式会社
二酸化炭素電解装置
1か月前
本田技研工業株式会社
二酸化炭素電解装置
1か月前
東ソー株式会社
食塩電解用酸素還元電極とその製造方法
1か月前
株式会社荏原製作所
めっき装置
8か月前
株式会社大気社
電着装置
1か月前
トヨタ自動車株式会社
水電解スタック
7か月前
株式会社SCREENホールディングス
水電解装置
3か月前
株式会社東芝
電解装置
3か月前
トヨタ自動車株式会社
水電解システム
1か月前
株式会社東芝
電解装置
3か月前
トヨタ自動車株式会社
水電解システム
1か月前
続きを見る