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公開番号2024072225
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-05-27
出願番号2022193156
出願日2022-11-15
発明の名称電解用電極
出願人有限会社シーエス技術研究所
代理人
主分類C25B 11/093 20210101AFI20240520BHJP(電気分解または電気泳動方法;そのための装置)
要約【課題】 イオン交換膜法食塩電解や海水電解のような塩素発生用の陽極において、極めて低い陽極電位を有し、しかも陽極反応の副反応である塩素中の酸素を極めて低くなるように抑えるとともに、実用電極として、長期間安定に電解できる電解用陽極を得る。
【解決手段】
あらかじめ作製した、白金とパラジウムからなる金属合金微粉末とルテニウム及び/又はイリジウムとチタン及び/又はスズからなる酸化物の混合物コーティング層をチタン又はチタン合金からなる基材表面にコーティングした、主反応が塩素発生である電解用陽極。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
あらかじめ作製した、白金とパラジウムからなる金属合金微粉末とルテニウム及び/又はイリジウムとチタン及び/又はスズからなる酸化物の混合物コーティング層をチタン又はチタン合金からなる基材表面にコーティングした、主反応が塩素発生である電解用陽極。
続きを表示(約 1,000 文字)【請求項2】
前記白金とパラジウムからなる金属合金微粉が前記被覆層中に3から20質量%含まれてなることを特徴とする請求項1の電解用陽極。
【請求項3】
白金とパラジウムからなる金属合金の微粉末をあらかじめ作製し、該微粉末をルテニウム及び/又はイリジウムとチタン及び/又はスズを含む液中に分散させたコーティング液をチタン又はチタン合金基材表面に塗布し、空気中で熱分解法によりコーティングすることを特徴とする請求項1又は2の電解用陽極。
【請求項4】
白金とパラジウム合金微粉末の組成がパラジウム10モル%以上、50モル%以下であり、残部が白金であることを特徴とする請求項1から3のいずれかの電解用陽極。
【請求項5】
前記酸化物がイリジウムとルテニウム及びチタンからなる複合酸化物であり、イリジウムが0から30モル%、ルテニウムが20から40モルパーセントからなり、残部がチタンである事を特徴とする請求項1から4のいずれかの電解用陽極。
【請求項6】
前記酸化物がルテニウムとスズ及びチタンからなる複合酸化物でありルテニウムが10から30モル%、スズが10から30モル%及びチタンが40から70モル%であることを特徴とする請求項1から4のいずれかの電解用陽極。
【請求項7】
あらかじめ作製した白金とパラジウムからなる合金の微粉末をルテニウム塩及び/又はイリジウム塩とチタン塩及び/又はスズ塩を含有する液中に分散した後、該分散液をチタン又はチタン合金多孔体基材表面に塗布して空気中で熱分解を行うことによって表面コーティング層を形成したことを特徴とする請求項1の電解用陽極。
【請求項8】
白金とパラジウムからなる合金の微粉末を白金塩とパラジウム塩を溶解した混合溶液を作製し、該溶液を乾燥した後に火炎にて加熱熱分解して合金薄片とし、必要に応じて微粉砕することによって作製することを特徴とする請求項7に記載の電解用陽極。
【請求項9】
前記、分散液を前記基材に塗布し、空気中で熱分解を行うことを複数回繰り返して、所望の厚みのコーティング層を得ることを特徴とする請求項7の電解用陽極。
【請求項10】
前記熱分解を空気中460℃以上の温度で行うことを特徴とする請求項7又は9の電解用陽極。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換膜法食塩電解や海水電解、希薄塩水電解など塩素発生反応を主反応とする陽極として使用する不溶性金属陽極であって、非常に低い塩素発生電位と非常に低い塩素中酸素濃度を有し、しかも長寿命で、長期間にわたりその特性を保持することが出来る電解用陽極である。
続きを表示(約 2,600 文字)【背景技術】
【0002】
食塩水を電気分解して陽極から塩素を、陰極から苛性ソーダを得る、いわゆるクロルアルカリ電解プロセスは今や陽イオン交換膜を隔膜として陽極/陰極共にこの陽イオン交換膜に密着させて電極間距離を最小として電解を行ういわゆるゼロギャップ方式のイオン交換膜法電解が主流になっている。 これによると、電極部分以外ではイオン交換膜自身の電気抵抗とその前後のわずかな電解液による電気抵抗が電気抵抗分であり、電気分解の特性は、そのほとんどが電極にかかっている。従って、クロルアルカリ電解では、電極の性能そのものが他のプロセスにもまして極めて重要である。特に陽極では電圧を決めることになる陽極過電圧と、陽極反応である主反応としての塩素発生反応と副反応としての酸素発生反応との選択性の問題があり、そこでは当然のことながら極めて低い陽極過電圧を有し、しかも、酸素発生反応を最小にすることが必要である。
【0003】
これらのことは、イオン交換膜法食塩電解のみではなく、条件は異なるが、電解における陽極反応としては同じ主反応が塩素発生であり、副反応として酸素発生を行う、海水電解や希薄塩水電解用の陽極でも同じであり、特に無隔膜電解で行う希薄塩水電解では陰極還元の影響があるが、陽極自身の電解反応の選択性つまり、電流効率が、到達可能な次亜塩素酸塩濃度に関係することから陽極の特性がきわめて重要である。
【0004】
いわゆるDSA(Dimensionally Stable Anode)と称される皮膜形成金属基材表面に白金族金属酸化物を含む電極物質を熱分解法によって形成する金属電極では,電極物質を比較的自由に選択できることから種々の電極物質が使用できる。食塩水を電解する塩素発生用陽極としては電極物質として主として白金,イリジウム及びルテニウムが使用され、これらの組み合わせと、安定化物質/補助電極物質として、チタンや、スズ、或いはジルコニウムなどを加えた主として酸化物、複合酸化物からなる電極であり、広く使用されている。
【0005】
実際には、電極物質として、電解反応に直接寄与するのは、ほぼ、ルテニウムとイリジウムに限られ、これに安定化物質として、又特性の調整用としてチタン(酸化チタン)、スズ(酸化スズ)を加えた複合酸化物として使用されることが多い。
これらの電極では、ルテニウム成分は塩素発生に対する過電圧を小さくすることが出来るが、電解反応の選択性、つまり生成塩素中の副反応としての酸素発生が比較的大きくいわゆる電流効率が若干低くなるとされる。一方、イリジウム成分は電極寿命を極めて長くすること、副反応である塩素中の酸素を少なくするという特徴があるが、塩素発生電位が若干高いと言う問題点を有する。実際の商業用電極においてはこれらを微妙に調整して使用している。特に、現在のイオン交換膜法電解では、電流密度が0.6A/cm2から0.8A/cm2と当初の2倍以上と高くなっており、しかも電極寿命10年以上の長寿命を要求するケースが多いので、ルテニウムとイリジウムの組み合わせが必須であり、またその条件を最適化することが大きな課題である。
【0006】
現在、多くの商業用電解槽ではこのような電極を使用しているが、それにイリジウムやルテニウムの価格によっては許せる範囲で特性をある程度調整しながら、電極物質の組成を変えることも行われている。ただ特性には一義的なところがあり、イリジウム成分を増やすと電極消耗は減るが、電位が高くなること、又ルテニウムを増やすとその逆である事、また、寿命が短くなることは上述の通りである。
【0007】
このような電極は基材である、チタンやチタン合金からなる、板や多孔体の表面にこれらのイリジウム及び/又はルテニウム成分を含むコーティング液を塗布し、空気中で熱分解法を行い、酸化物被覆とするが、熱分解温度を低くすると電位は低下し、活性化するが、電極消耗が大きくなること、つまり寿命が短くなることが経験的にわかっている。又生成塩素中の酸素が増加するという問題点がある。また熱分解温度を高くするとこの逆となり、寿命は長くなるが、電位が高くなり、ひいては電解電圧が高くなるという問題を有する。
【0008】
本願発明者らの検討ではこれらに白金を加えると、初期には塩素発生電位を極めて低く保持し、又塩素中の酸素濃度を極めて低くすることが出来ることを見いだしている。しかしながらこの特性は、通常の電極作製条件で電極を作製すると、電解開始後数十時間で失われてしまい、その後は白金を含まないのと同じ特性になると言う問題点がある。但し、ここでは、白金が消耗しているわけではないので、陽分極時の白金の特徴である白金表面の不働体化が起こるためであると考えられる。
【0009】
一方、添加剤として、白金と類似、或いはより優れた電気化学特性を与える電極物質としてパラジウムが知られている。パラジウムは酸化物或いは金属として、上記の様な電極に加えると、活性な白金と同じく、又は、より塩素発生過電圧を低くでき、副反応である塩素中の酸素を極めて小さく出来るという特徴がある。しかしながらパラジウム成分は電気分解を続けると短時間に消耗してしまい、工業的には実用性の無いことがわかっている。これはパラジウムについて、酸化物型コーティングの基本特許である、特公昭48-3954号公報特許請求範囲1では、公開公報にはあったパラジウムが特許公報では、除かれていることでも明らかである。
【0010】
ただ、パラジウムの優れた働きは古くから知られており、その実用化について、過去には、あらかじめ、安定化した酸化パラジウム(PdO)粉末としてコーティング液に加え、それを使って酸化物からなる電極を作製することによって、パラジウム成分の消耗を防ぐといういくつの特許出願がなされている。 但しそのようにしてもなおかつ不安定であるためか、実用電極として使用されているものは殆どないようである。このように白金とパラジウムは可能性を有するが、実用化の条件がなかなか見いだせていないという問題点が残されていた。
(【0011】以降は省略されています)

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