TOP特許意匠商標
特許ウォッチ Twitter
10個以上の画像は省略されています。
公開番号2024070420
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-05-23
出願番号2022180897
出願日2022-11-11
発明の名称マグネシウム基合金伸展材
出願人国立研究開発法人物質・材料研究機構
代理人
主分類C22C 23/00 20060101AFI20240516BHJP(冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理)
要約【課題】優れた引張降伏強度特性を維持しながら、降伏異方性を低減させることができるMg基合金伸展材を提供する。
【解決手段】In、Ge、及びGaの3種類の元素のうち少なくとも1種類以上を含み、残部がMgと不可避的成分からなるMg基合金伸展材であって、In、Ge、及びGaのうち含有されている元素の含有量が0.03mol%以上、1mol%以下である室温強度に優れたMg基合金伸展材を提供する。
In、Ge、及びGaの3種類の元素のうち少なくとも1種類以上に加えて、Mn、又はBiの2種類の元素のうちいずれかを含み、前記5種類の元素の含有量が、0.03mol%以上、In、Ge、及びGaの含有量が1.0mol%以下である室温強度に優れたMg基合金伸展材を提供する。
前記伸展材は、引張試験によって得られる降伏応力が200MPa以上であり、圧縮試験によって得られる降伏応力との比が0.6以上を示すことを特徴とする。
【選択図】図5
特許請求の範囲【請求項1】
Mg-Amol%Xからなり、残部がMgと不可避的不純物からなるMg基合金伸展材であって、
ここで、XはIn、Ge、Gaのうちいずれか一種類以上の元素であって、
Aの値は、0.03mol%以上、1mol%以下であるMg基合金伸展材。
続きを表示(約 870 文字)【請求項2】
請求項1に記載のMg基合金伸展材であって、Mg-Amol%X-Bmol%Zからなり、残部がMgと不可避的不純物からなるMg基合金伸展材であって、
ここで、XはIn、Ge、Gaのうちいずれか一種類以上の元素であり、ZはMn、又はBiのいずれかの元素であって
Aの値は、0.03mol%以上、1mol%以下であり、
AとBの関係は、B≧Aであって、Aの上限値はBの上限値に対して1.0倍以下であり、Bの下限値は0.03mol%以上であるMg基合金伸展材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のMg基合金伸展材であって、前記Mg基合金伸展材の結晶粒界に、Mg以外の元素が偏析しているMg基合金伸展材。
【請求項4】
請求項1から3に記載のMg基合金伸展材であって、前記Mg基合金伸展材のMg母相の平均結晶粒サイズが20μm以下であるMg基合金伸展材。
【請求項5】
請求項1から4に記載のMg基合金伸展材であって、Mg基合金伸展材の初期ひずみ速度:1x10
-3
s
-1
以上の室温引張試験によって得られる応力-ひずみ曲線図において、降伏応力が200MPa以上、破断伸びが15%以上であるMg基合金伸展材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のMg基合金伸展材であって、Mg基合金伸展材の初期ひずみ速度:1x10
-3
s
-1
以上で、同じ初期ひずみ速度の室温引張と圧縮試験によって得られる降伏応力の比(=圧縮降伏応力÷引張降伏応力)、すなわち、降伏異方性が0.6以上であるMg基合金伸展材。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載のMg基合金伸展材であって、Mg基合金伸展材の初期ひずみ速度:1x10
-5
s
-1
以下の室温圧縮試験において、圧縮ひずみが0.5以上付与できるMg基合金伸展材。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、室温強度に優れ、降伏異方性が低減されたマグネシウム(Mg)基合金伸展材に関する。
続きを表示(約 3,300 文字)【背景技術】
【0002】
Mg合金は、次世代の軽量金属材料として注目されている。構造部材として使用する場合、安全性・信頼性を確保するため、強度特性に優れた素材や部材の開発が望まれている。金属冶金学において、結晶粒サイズの微細化は、強度の向上に効果的な手法として古来より活用されている。特に、Mgは、その結晶構造(=六方晶構造)に起因し、他金属に比べてHall―Petch係数が大きいため(非特許文献1)、結晶粒サイズ微細化による高強度化への効果が大きい。また、強度改善に関する別の手法として、Mg以外の元素を一種類以上添加し、合金化することもよく認知されて実験している。とりわけ、母金属との原子半径差が大きな元素であるほど、改善の効果が大きく、Mg合金では、希土類金属を添加することが最も有効である。しかしながら、希土類元素の使用は、素材価格が高騰するため、経済的観点からは好ましくはない。
【0003】
汎用元素に目を向けると、アルミニウムと亜鉛を含有したMg-Al-Zn:AZ系合金や、亜鉛とジルコニウムを含有したMg-Zn-Zr:ZK系合金が流通している。これらのMg合金に対し、結晶粒サイズの微細化を目的として、熱処理をともなう伸展加工を付与し、強度の改善を図っている。この伸展加工時に、底面が加工方向に平行に配向し、底面集合組織を形成する。そのため、結晶粒サイズ微細化に起因し、「引張」強度は改善するものの、「圧縮」強度は引張強度の半分程度であり、応力付与方向によって降伏応力が変化する降伏異方性を示す問題を抱えている。通常、金属材料の塑性変形は、転位が変形を担うが、Mgの場合、c軸に対して圧縮応力が付与されると、転位運動よりも小さな応力で変形双晶を形成する。この塑性変形機構の違いが、降伏異方性を引き起こし、Mg伸展材の扱いを制限している要因でもある。
【0004】
この様な背景のなかで、発明者らは、一種類のみの溶質元素を添加させることに着目し、Mg基合金の高強度化について調査し、研究を行った。その研究結果に基づいて、希土類元素又は汎用元素であるCa,Sr,Ba,Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Dr,Tm,Yb,Luのうち一種類の元素を微量に含有させ、結晶粒が微細化している強度特性に優れた微細結晶粒Mg合金を特許文献1に開示している。この合金の高強度化は、添加した溶質元素が結晶粒界に偏析することが主要因である。
【0005】
また、特許文献2では、14.5mass%以下のSnが含有され、Mg母相の平均粒径が10μm以下で、Mg母相を取り囲む結晶粒界のうち、平均粒径が2μm以下の亜結晶粒界(小角粒界)の割合が多数を占めることで、室温強度特性に優れたMg基合金を開示している。高密度に亜結晶粒界を導入する前記知見を、3.5~11mass%のAlが含有されるMg基合金にも展開できることを見出し、特許文献3に開示している。特許文献2や3に開示するMg基合金は、優れた強度だけでなく、亜結晶粒界の存在に起因し、圧縮降伏応力と引張降伏応力との降伏異方性が低減することも特徴としている。
【0006】
また、特許文献4には、二種類以上の溶質元素を添加したMg基合金について、CaとZnを固溶量以内で含有し、CaとZnがMgのc軸方向に対して平行に偏析していることを特徴とする高強度Mg基合金も開示されている。
【0007】
Mnを含有するMg基合金に関しても、発明者らは鋭意調査し、研究を行った。その研究結果に基づいて、1mol%以下のMnを含有し、Mg母相内に変形双晶が存在する破壊靭性に優れたMg合金を特許文献5に開示している。特許文献6では、Mg母相のサイズが5μm以下で、0.07~2mass%のMnを含有した室温延性に優れたMg基合金を開示している。これらの合金は、破断伸びが100%程度を示し、変形に及ぼす粒界すべりの寄与率の指標であるm値が0.1以上を示すことを特徴としている。また、成形性の指標として、応力低下度を用い、その値が0.3以上を示すことを特徴としている。また、特許文献7では、Mg-Amol%Mn-Bmol%Xからなり、Aは0.03~1mol%、BはAの1倍以下であり、Bi、Sn、Zrを含有し、公称ひずみを0.2以上付与しても破断しない室温延性に優れたMg基合金を開示している。しかし、これらの特許文献5~7は、破壊靱性や室温延性に関する改善に関するものであり、強度特性の改善については、記載、開示されていない。
【0008】
Mgに対して添加されるMn元素は、溶解時に鉄(Fe)やシリコン(Si)と結合し、不純物元素除去元素として使用されることがほとんどである。Mnを主元素(筆頭元素)として含有するMg合金について、延性能が付与されることは知られている(特許文献6、7、非特許文献2、3)。これは、Mn元素の添加によって、粒界すべりが活性化されることによる。また、Mg-Mn系合金の強度や延性に関しては、Mg-Mn-X三元系合金として非特許文献4、5に報告例がある。Xは、Al、Bi、Li、Sn、Y、Zn、Zrである。BiやLi、Zr元素の添加は高強度化の効果が乏しいが、延性能改善の効果が大きい。他方、Al、Sn、Y、Znは逆の様相を示し、強度向上に優れるものの、延性を劣化させる。これらの報告例より、添加元素:Xは強度または延性のどちらかの特性改善に効果があるものの、強度・延性の両方を兼備することは難しい。また、三元系以上の合金になると、金属間化合物を形成することがあるため、強度や延性に対する元素機能が不明であり、従来の固溶強化理論などを適応させることは難しい。勿論、研究歴史が浅く、研究報告例がないMnを主元素とした合金において、第三元素を添加した場合、これらの元素が強度や延性に効果があるかは不明である。
【0009】
一方、Mgに対して0.03mol%以上固溶できる他元素に着目すると、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)が存在する。Inを含有するMg基合金が特許文献8~10、Geを含有するがMg基合金が特許文献10、Gaを含有するMg基合金が特許文献11と12に、それぞれ開示されている。
【0010】
特許文献8では12mol%未満、特許文献9では40mol%のInが含有することを特徴とするMg基合金が開示されている。しかし,それぞれ、リサイクル性や減衰性の改善を主眼とするため、伸展加工による強度、延性の効果については、記載されていない。また、特許文献10は、0.5mass%以上、2mass%以下のGeと0.5mass%以上、2mass%以下のInが含有する耐食性に優れた三元系Mg基合金とその製造方法について開示している。前記特許文献8、9と同じく、伸展加工に関する記載がなく、強度と延性、異方性低減の効果は不明である。また、Gaが含有した特許文献11は、1.26~2.6mass%Mnと2~4.2mass%のGaが含有したステント用Mg基合金が開示されている。435~835℃で押出加工を必要とするが、Mgの融点を鑑みると、伸展加工温度が高く、作業安全性の観点から危険である。一方で、Liと3~8.5mass%のGaが含有し、強度特性に優れたMg基合金が特許文献12に開示されている。この特許文献では、伸展加工は任意とされているが、強度特性を発現する主因子は、Mg-Ga-Li三元析出相の時効硬化であるため、伸展加工およびGa添加による強化の寄与は開示されていない。これら先行特許文献より、In、Ge、Ga元素添加による強度、延性や異方性低減の効果は不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
(【0011】以降は省略されています)

特許ウォッチbot のツイートを見る
この特許をJ-PlatPatで参照する

関連特許

ハイモ株式会社
水中の金属の回収方法
12日前
大同特殊鋼株式会社
鋼材及び金型
1か月前
大同特殊鋼株式会社
鋼材及び金型
2か月前
株式会社神戸製鋼所
鋼製下地材
2か月前
日本製鉄株式会社
鋼材
27日前
日本製鉄株式会社
鋼材
1か月前
日本製鉄株式会社
ボルト
2か月前
日本製鉄株式会社
ボルト
2か月前
日本製鉄株式会社
ボルト
2か月前
日本製鉄株式会社
接合継手
1か月前
日本製鉄株式会社
接合継手
1か月前
住友金属鉱山株式会社
銀粉の製造方法
1か月前
MAアルミニウム株式会社
アルミニウム合金箔
2か月前
日本冶金工業株式会社
抗菌性に優れるNi合金
1か月前
JFEスチール株式会社
鋼板
2か月前
JFEスチール株式会社
鋼板
2か月前
住友金属鉱山株式会社
有価金属の製造方法
2か月前
JFEスチール株式会社
鋼板
2か月前
住友金属鉱山株式会社
有価金属の回収方法
2か月前
住友金属鉱山株式会社
有価金属の製造方法
6日前
住友金属鉱山株式会社
銅製錬転炉の操業方法
1か月前
JX金属株式会社
金属回収方法
2か月前
住友金属鉱山株式会社
銅製錬転炉の操業方法
1か月前
住友金属鉱山株式会社
銅製錬原料の供給方法
7日前
日本製鉄株式会社
スチールピストン
1か月前
大同特殊鋼株式会社
浸炭用鋼およびその製造方法
1か月前
株式会社トウネツ
金属溶湯炉
1か月前
国立研究開発法人物質・材料研究機構
マグネシウム基合金伸展材
25日前
日本精線株式会社
ステンレス鋼極細線
1か月前
学校法人福岡工業大学
触媒の処理方法
27日前
日本製鉄株式会社
シャフト部材
1か月前
住友金属鉱山株式会社
硫化水素ガスの除害設備
17日前
DOWAメタルマイン株式会社
ルテニウムの回収方法
2か月前
JFEスチール株式会社
レーザ溶接継手およびレーザ溶接方法
2か月前
武生特殊鋼材株式会社
刃物用鋼
28日前
日本製鉄株式会社
鋼部品及び鋼部品の製造方法
2か月前
続きを見る