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公開番号2023168450
公報種別公開特許公報(A)
公開日2023-11-24
出願番号2023171166
出願日2023-10-02
発明の名称高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置
出願人個人
代理人
主分類C23C 16/509 20060101AFI20231116BHJP(金属質材料への被覆;金属質材料による材料への被覆;化学的表面処理;金属質材料の拡散処理;真空蒸着,スパッタリング,イオン注入法,または化学蒸着による被覆一般;金属質材料の防食または鉱皮の抑制一般)
要約【課題】
パワー半導体材料としてのダイヤモンド膜の形成のために、マイクロ波プラズマCVD装置及び熱フィラメントCVD装置等が開発されている。前者は波長の制約により大面積化が困難であり、後者は熱電子の発生の高密度化のための高温化と基板温度の制御がトレードオフの関係にあることにより、高速成膜化が困難という課題がある。この問題を解決可能な高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置を提供すること。
【解決手段】
基板の輻射加熱と高周波プラズマの発生を兼備する梯子型の輻射加熱兼用プラズマ発生電極と、高周波電力の侵入を遮断するコイルを備えた直流電源と、直流電力の侵入を遮断するコンデンサーを備えた高周波電源と、を具備し、前記電極に前記直流電源及び前記高周波電源からそれぞれに直流及び高周波電力を供給することにより、原料ガスである炭素含有ガスと水素の混合ガスをプラズマ化して、ダイヤモンドを形成することを特徴とする。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
少なくとも炭素含有ガスと水素ガス(H

)を含む原料ガス供給系及び排気系を備えた反応容器と、前記反応容器の内部に配置されて基板を保持する主面を有する基板保持台と、前記基板を加熱する輻射エネルギーを発生し、且つ高周波プラズマを発生する輻射加熱兼用プラズマ発生電極と、前記輻射加熱兼用プラズマ発生電極に直流電力を供給する直流電源と、前記輻射加熱兼用プラズマ発生電極にインピーダンス整合器を介して高周波電力を供給する高周波電源と、電気的に非接地の第1の真空装置用電流導入端子と、接地された第2の真空装置用電流導入端子と、を具備した高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置であって、
前記直流電源の出力端子は前記高周波電源が発生する前記高周波電力の侵入を遮断するコイルを介して前記第1の真空装置用電流導入端子に接続され、
前記インピーダンス整合器の出力端子は前記直流電源が発生する前記直流電力の侵入を遮断するコンデンサーを介して前記第1の真空装置用電流導入端子に接続され、
前記輻射加熱兼用プラズマ発生電極は、線状及び/又は棒状及び/又は板状の高融点金属材で形成された梯子型の形状を有し、前記梯子型の輻射加熱兼用プラズマ発生電極の互いに対向する一方の端部を前記第1の真空装置用電流導入端子と電気的に接続し、他方の端部を前記第2の真空装置用電流導入端子に電気的に接続することを特徴とする高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置。
続きを表示(約 1,100 文字)【請求項2】
前記輻射加熱兼用プラズマ発生電極は、前記第1の真空装置用電流導入端子に電気的に接続された第1の導体棒と、前記第1の導体棒に平行に配置され、且つ前記第2の真空装置用電流導入端子に電気的に接続された第2の導体棒と、前記第1の導体棒と前記第2の導体棒を電気的に接続し、且つ互いに平行に等間隔に配置されるタングステン(W)又はタンタル(Ta)又はタンタルを含む合金で製作された複数の第3の導体棒から構成され、前記第1の導体棒、前記第2の導体棒及び前記複数の第3の導体棒は、前記基板保持台の主面に平行に配置されることを特徴とする請求項1に記載の高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置。
【請求項3】
前記輻射加熱兼用プラズマ発生電極は、前記複数の第3の導体棒に張力を与える張力付与手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置。
【請求項4】
前記複数の第3の導体棒は、断面形状が直径略0.1mm~1.0mmの円形であることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれか一つに記載の高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置。
【請求項5】
前記複数の第3の導体棒は、断面形状が略0.05mm~0.5mmの厚みで、略0.5mm~10mmの幅を持つ長方形であることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれか一つに記載の高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置。
【請求項6】
前記高周波電源の周波数は、VHF帯域(30MHz~300MHz)であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置。
【請求項7】
前記基板保持台は、タンタル(Ta)で形成され、且つ冷媒を用いた冷却手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置。
【請求項8】
前記炭素含有ガスは、メタン(CH

)、エタン(C



)、プロパン(C



)、エチレン(C



)、プロピレン(C



)及びアセチレン(C



)から選ばれる少なくとも1種を含むガスであることを特徴とする請求項1から請求7のいずれか一つに記載の高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置に関する。特に、VHF帯域(30MHz~300MHz)の周波数を用いた高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置に関する。
続きを表示(約 8,500 文字)【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは、例えば、非特許文献1及び非特許文献2に記載されているように、宝飾品や機械加工材料のみならず、ワイドギャップ半導体として知られ、SiやSiC等の半導体より遙かに優れた特性を有することから、究極のパワー半導体材料として注目されている。そして、パワー半導体材料への応用を図るために、4~5インチ級の基板への対応が可能な、大面積のダイヤモンド形成装置に関し、鋭意、開発研究が進められている。
パワー半導体材料としてのダイヤモンドを形成する方法には、主として、マイクロ波プラズマCVD法と熱フィラメントCVD法があることが知られている。また、一般に次のことが知られている。即ち、上記CVD法において、基板にダイヤモンドを用いる場合には、ホモエピタキシャル成長によりダイヤモンドが形成され、不純物を容易に制御可能で、かつ歪みのない結晶を形成することができる。また、基板がダイヤモンド以外の場合、ヘテロエピタキシャル成長によりダイヤモンドが形成されるので、歪みの発生を伴い、かつ結晶性が低下することがある。
【0003】
マイクロ波プラズマCVD法は、基板の加熱と原料ガスの分解にマイクロ波を用いることを特徴とする。即ち、マイクロ波を用いて原料ガスであるメタン(CH

)と水素(H

)の混合ガスをプラズマ化することにより、該プラズマ中に生成される電子及びイオン等によってダイヤモンド膜の形成に不可欠の主要ラジカルであるCH

ラジカルと原子状水素H等を発生させるとともに、前記マイクロ波を用いて基板上でのプラズマ化学反応促進に必要な基板温度を、約700℃~約1,00℃に加熱する。基板上に形成されるダイヤモンドは、CH

ラジカルを主たる前駆体とし、基板に化学吸着して、基板上で原子状H等によって水素成分やグラファイト成分が排除されて、ダイヤモンド結晶が成長する。
しかしながら、上記究極のパワー半導体材料の形成への応用の観点で見ると、マイクロ波プラズマCVD法は、例えば、非特許文献1、非特許文献2及び特許文献3に記載されているように、一般にダイヤモンド成長速度は1~10μm/hと比較的高いが、マイクロ波の波長が短いことに起因する均一プラズマ生成領域の広さに制限があり、成膜可能な面積がλ/8~λ/10程度(λ:波長)と小さく、4~5インチ級の基板への対応の必須条件である大面積化が困難である、という課題がある。なお、周波数2.45GHzの場合、高密度プラズマ中の波長λは、真空中の波長λ

(122mm)x波長短縮率(例えば、0.65)=79.3mmであり、均一な高密度プラズマ生成領域を、例えば、λ/8~λ/10程度と見積もると、成膜可能な面積は、直径約8~10mm程度である。
熱フィラメントCVD法は、基板の加熱に輻射熱を用い、原料ガスの分解に熱フィラメントから放出される熱電子及び紫外線等を用いることを特徴とする。即ち、基板の直上数mm~10mm程度の位置に、高温のフィラメント(約1,000℃~2,400℃)を設置し、高温度のフィラメントから放出される熱電子及び紫外線等によって原料ガスである水素(H

)とメタン(CH

)の混合ガスを分解し、ダイヤモンド膜の形成に不可欠の主要ラジカルであるCH

ラジカルと原子状水素H等を発生させる。ダイヤモンドは、CH

ラジカルを主たる前駆体とし、基板に化学吸着しつつ、基板上で原子状H等によって水素成分やグラファイト成分が排除されて、ダイヤモンド結晶が形成される。基板の温度は、一般に、約700~約1,000℃に設定される。
しかしながら、上記究極のパワー半導体材料の形成への応用の観点で見ると、熱フィラメントCVD法は、例えば、非特許文献1及び特許文献3に記載されているように、製膜速度が、一般に1.5~2.0μm/hと低速であることから、マイクロ波プラズマCVD法と同じレベルの高速製膜の実現が課題である。また、パワー半導体材料への応用を図るには、4~5インチ級の基板への対応が可能な大面積化が課題である。
【0004】
熱フィラメントCVDによるダイヤモンド形成装置に関する代表的特許技術として、例えば、特許文献1ないし特許文献3が挙げられる。
特許文献1には、加熱体によって加熱した原料ガスを基板表面に導入してダイヤモンドを析出させるにあたって、該ガス流に対面して2以上の加熱体を多段に配置したことを特徴とするダイヤモンドの気相合成方法、が記載されている。また、具体的知見として、以下に示す主旨の記述がある。即ち、
(1)W、Ta等の高融点金属で製作された第1フィラメント層と第2のフィラメント層からなる加熱体を原料ガス噴出のノズルの前方に2段に配置した方法であって、各々のフィラメントは該ノズルから噴出し基板に至るガス流に対面して置かれている.そのため第1のフィラメントを通過したガスは更に第2のフィラメントで充分な活性状態を得る.(ロ(2)フィラメントの層数が多い程、またフィラメント間の距離が小である程、望ましくは20mm以内とすることで、良好な結果をうることかできる。
(3)フィラメントの代わりとして他の形状の加熱体、例えばメッシュ状、棒状、コイル状あるいは板状の加熱体等を用いることもできる.
特許文献2には、熱フィラメントCVDを用いたダイヤモンド形成装置に関し、以下に示す主旨の記述がある。即ち、従来技術では、高温発熱体が一つの発熱系で構成されているため、高温発熱体の中央部分と周辺部分とでは、反応容器への熱の逃げなどの違いから、高温発熱体表面に温度の低い部分が現われ、接触分解反応の均一性が損なわれる。このため基板面内に形成される膜厚を良好で、均一にすることは困難であるという課題がある。基板上に堆積される薄膜の膜厚を良好で均一なものにするためには、基板表面に到達する活性種の量を基板箇所に応じて制御する必要がある。この課題を解決する半導体製造装置は、基板を処理する反応室と、前記反応室内に反応ガスを供給するガス供給手段と、前記反応室内に供給された反応ガスと接触することにより前記反応ガスを分解する高温発熱体とを備え、前記高温発熱体は、互いに独立にまたは複数個ずつ組み合わされて制御されるユニットから構成され、前記ユニットは前記反応室内を適宜分割した複数の領域に配置されていることを特徴とする。実施例として、基板の面に平行で、且つ距離が異なる2つの平面に、それぞれに複数のフィラメントを配置し、互いに独立した加熱用電源が配置されている構成が記載されている。
【0005】
特許文献3には、熱フィラメント法を用いたダイヤモンド形成装置に関し、以下に示す主旨の記述がある。
即ち、従来の技術課題として、プラズマCVDは、成膜室内に供給した原料ガスをマイクロ波等によりプラズマ状態にし、成膜する方法であることから、成長速度が1~10μm/hと比較的高いという長所があるが、装置の構造が複雑で高価であり、マイクロ波の波長の制約により可能な成膜面積に限界があるという短所がある。
熱フィラメントCVDは、成膜室に供給した原料ガスを高温フィラメントにて熱分解し、化学反応を誘導する成膜方法であり、構造が簡単で安価であるとともに、成膜面積を大きくすることができる。しかしながら、これまで、この熱フィラメントCVDは、上記プラズマCVDより成膜の成長速度が低いという課題があった。
この課題を解決する半導体製造装置として、特許文献3に記載の装置は、成膜室と、前記成膜室内に配置された、基板を載置するための基板ホルダー及び2,500℃以上に加熱されるためのフィラメント層と、前記成膜室内に原料ガス及びキャリアガスを供給するためのガス供給手段と、前記成膜室内からガスを排気するための排気手段とを備え、前記フィラメント層は1~10mmの間隔を隔てて複数段に配置され、前記複数段に配置されたそれぞれのフィラメント層は、線径0.1~1.0mmのタンタル又はその合金からなる線材が3~30mmの間隔で複数本配置されていることを特徴とする。
特許文献3に記載の装置に関する実施例に以下に示す主旨の記述がある。即ち、
(1)フィラメントの線径は0.1~1.0mmの範囲、好ましくは0.1~0.3mmの範囲がよい。
(2)1つのフィラメント層を形成するフィラメントの間隔は3~30mm、好ましくは5~15mmの範囲である。
(3)一段目のフィラメント層と二段目のフィラメント層の間隔は1mm~10cm、好ましくは1~10mmの範囲である。
(4)フィラメントの材質は、2,400℃以上の高温に耐えられるものであれば、各種材質を用いることができる。例えば、タングステン、タンタル等であり、これらはその合金又は炭化物等の化合物であってもよい。タンタルが好ましい。
特許文献3に記載の熱フィラメントCVDを用いたダイヤモンド形成装置は、熱電子発生量(熱電子放出量)を増大させる手段として、熱フィラメントの材料にタンタル(Ta)を用い、且つ該熱フィラメントの温度を2,500℃以上に加熱し、且つ前記熱フィラメントを多段に配置することを特徴とする。
【0006】
他方、例えば、特許文献4及び特許文献5に見られるように、電源の周波数がVHF帯域(30~300MHz)であるVHFプラズマCVDによるダイヤモンド形成装置が提案されている。
特許文献4に記載のVHFプラズマCVDによるダイヤモンド形成装置は、対向電極型容量性放電にプラズマを用いるプラズマCVD法によりダイヤモンドを合成するに際し、超短波域(30~300MHz)の電力を用いることを特徴とする。
特許文献5に記載のVHFプラズマCVDによるダイヤモンド形成装置は、高周波プラズマCVD法によるダイヤモンド膜の形成方法において、誘導結合型プラズマCVD法を用い、かつ高周波周波数を40~250MHzとして、炭素を含有する原料ガスを分解し、基体上にダイヤモンド膜を形成することを特徴とする。
しかしながら、基板温度を約700~約1,000℃に制御可能で、イオンダメージが抑制され、高品質のダイヤモンドを形成可能なVHFプラズマCVDによるダイヤモンド形成装置は、依然として開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開平03-103396
特開2002-093714
特許7012304
特公平07-042197
特開平08-027576
【0008】
有屋田修、ダイヤモンド合成用CVD装置、真空ジャーナル、2023年1月、24-26
山田英明、プラズマ CVD による単結晶ダイヤモンド合成の現状と課題、J. Plasma Fusion Res. Vol.90, No.2 (2014)152‐158
小林利明、SPring8 熱電子銃について 、運転員講習会資料、2003.5.12
ギード(横堀進、久我修、共訳本)、基礎伝熱工学、1960(丸善)、20-222
近 藤 道雄 、藤原 裕 之 、 松 田 彰 久、シリコン系薄膜製膜技術の現状 と展望、応 用物理 第71巻 第7号(2002)、823-832
布村正太、片山博貴、吉田功、表面処理用水素プラズマにおける水素原子の物理化学、AIST太陽光発電研究、成果報告2017
M. Murata, Y. Takeuchi, E. Sasakawa, K. Hamamoto, Inductively coupled radio frequency plasma chemical vapor deposition using a ladder-shaped antenna, Rev. Sci. Instrum.67(4), April 1996,1542-1545
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、マイクロ波プラズマCVDを用いたダイヤモンド形成装置は、使用するマイクロ波の波長が短いことから、生成されるプラズマの生成領域は小さい領域(例えば、約8~10mm)となり、サイズ4~5インチ級の基板への対応が本質的に困難であるという課題がある。
従来の熱フィラメントCVD法を用いたダイヤモンド形成装置は、例えば、特許文献1~3に記載の熱フィラメントCVD法を用いたダイヤモンド形成装置は、ダイヤモンド形成に際し、熱フィラメント温度をCH

ラジカル等及び原子状H等の大量発生に適した約2,400~約2,500℃以上に設定し(ここで、装置操作パラメータAと呼ぶ)、且つ基板温度をダイヤモンド成長に適した約700~約1,000℃に設定する(ここで、装置操作パラメータBと呼ぶ)。
熱電子の発生は、例えば、非特許文献3に記載されているように、リチャードソン・ダッシ ュマンの式に従う(熱電子の発生は、該熱フィラメント温度の2乗に比例する)ことから、該熱電子の大量発生に際し、該熱フィラメント温度は高ければ高いほどよい。他方、該熱フィラメントの温度を高温化すると、例えば、非特許文献4に記載されているように、基板に到達する該熱フィラメントの放射エネルギーは、ステファン・ボルツマンの法則により該熱フィラメント温度の4乗に比例し、該熱フィラメントと該基板間の距離の2乗に反比例することから、該熱フィラメントの温度を高温にすると該基板の温度は上昇する。
即ち、熱電子の大量発生のための該熱フィラメントの超高温化(装置操作パラメータA)と該基板温度の適正値設定(装置操作パラメータB)は両立出来ないという関係(トレードオフの関係)がある。それが故に、ダイヤモンド形成に必須のCH

ラジカル等及び原子状H等を大量に生成する作用を有する熱電子及び紫外線等の発生量増大(熱電子の高密度化)という装置操作パラメータAと、ダイヤモンド成長に必須の基板温度の適正値設定という装置操作パラメータBは、両立出来ない。その結果、ダイヤモンドの製膜速度(成長速度)を増大させることは困難である、という問題がある。
電源周波数としてVHF帯域(30MHz~300MHz)を用いるVHFプラズマCVD装置は、例えば、非特許文献5に記載されているように、プラズマのシース電圧(プラズマ電位V

と壁電位V

の差:V

―V

)が低く、イオンダメージが抑制される、という特徴がある。また、例えば、非特許文献6に記載されているように、高濃度の原子状水素Hを発生することが可能であり、該原子状水素Hの濃度は、圧力に比例して増大する、という特徴がある。即ち、VHFプラズマCVD装置は、イオンダメージの抑制が可能、且つ高濃度原子状Hの生成が可能、という特徴があり、ダイヤモンド形成装置への応用が期待される。
しかしながら、VHFプラズマCVD法を用いたダイヤモンド形成装置は、特許文献4及び特許5に記載の方法を用いた装置以外は見当たらない。VHFプラズマCVD法は、生成されるプラズマ中の波長がマイクロ波プラズマのそれと比べると、充分に長いことから、波長に起因する問題はない。実用に供せられるVHFプラズマCVD法を用いたダイヤモンド形成装置の創出が課題である。
本発明は、上記課題を解決可能な高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置を提供することを目的とする。即ち、高速製膜が可能で4~5インチ級大面積基板への対応が可能な高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置を提供することを目的とする。また、イオンダメージの抑制が可能で、CH

ラジカル等と高濃度原子状H等の生成が可能という特徴を有する超高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、少なくとも炭素含有ガスと水素ガス(H

)を含む原料ガス供給系及び排気系を備えた反応容器と、前記反応容器の内部に配置されて基板を保持する主面を有する基板保持台と、前記基板を加熱する輻射エネルギーを発生し、且つ高周波プラズマを発生する輻射加熱兼用プラズマ発生電極と、前記輻射加熱兼用プラズマ発生電極に直流電力を供給する直流電源と、前記輻射加熱兼用プラズマ発生電極にインピーダンス整合器を介して高周波電力を供給する高周波電源と、電気的に非接地の第1の真空装置用電流導入端子と、接地された第2の真空装置用電流導入端子と、を具備した高周波プラズマCVDによるダイヤモンド形成装置であって、
前記直流電源の出力端子は前記高周波電源が発生する前記高周波電力の侵入を遮断するコイルを介して前記第1の真空装置用電流導入端子に接続され、
前記インピーダンス整合器の出力端子は前記直流電源が発生する前記直流電力の侵入を遮断するコンデンサーを介して前記第1の真空装置用電流導入端子に接続され、
前記輻射加熱兼用プラズマ発生電極は、線状及び/又は棒状及び/又は板状の高融点金属材で形成された梯子型の形状を有し、前記梯子型の輻射加熱兼用プラズマ発生電極の互いに対向する一方の端部を前記第1の真空装置用電流導入端子と電気的に接続し、他方の端部を前記第2の真空装置用電流導入端子に電気的に接続することを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記輻射加熱兼用プラズマ発生電極は、前記第1の真空装置用電流導入端子に電気的に接続された第1の導体棒と、前記第1の導体棒に平行に配置され、且つ前記第2の真空装置用電流導入端子に電気的に接続された第2の導体棒と、前記第1の導体棒と前記第2の導体棒を電気的に接続し、且つ互いに平行に等間隔に配置されるタングステン(W)又はタンタル(Ta)又はタンタルを含む合金で製作された複数の第3の導体棒から構成され、前記第1の導体棒、前記第2の導体棒及び前記複数の第3の導体棒は、前記基板保持台の主面に平行に配置されることを特徴とする。
第3の発明は、第2の発明において、前記輻射加熱兼用プラズマ発生電極は、前記複数の第3の導体棒に張力を与える張力付与手段を備えることを特徴とする。
第4の発明は、第2の発明又は第3の発明において、前記複数の第3の導体棒は、断面形状が直径略0.1mm~1.0mmの円形であることを特徴とする。
第5の発明は、第2の発明又は第4の発明において、前記複数の第3の導体棒は、断面形状が略0.05mm~0.5mmの厚みで、略0.5mm~10mmの幅を持つ長方形であることを特徴とする。
第6の発明は、第1の発明から第5の発明のいずれか一つの発明において、前記高周波電源の周波数は、VHF帯域(30MHz~300MHz)であることを特徴とする。
第7の発明は、第1の発明から第6の発明のいずれか一つの発明において、前記基板保持台は、タンタル(Ta)で形成され、且つ冷媒を用いた冷却手段を備えることを特徴とする。
第8の発明は、第1の発明から第7の発明のいずれか一つの発明において、前記炭素含有ガスは、メタン(CH

)、エタン(C



)、プロパン(C



)、エチレン(C



)、プロピレン(C



)及びアセチレン(C



)から選ばれる少なくとも1種を含むガスであることを特徴とする。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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