発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、新規化合物、その用途、及び新規化合物の製造方法に関する。 続きを表示(約 4,300 文字)【背景技術】 【0002】 マウンテンキャビアはホウキギ(Kochia scoparia)の果実であり,最近ではコキアの名称で観賞用に広く栽培されている。また秋田県大館市の特産品に「とんぶり(ホウキギの成熟果実の加工品)」があり,プチプチとした食感やその見た目がキャビアに似ていることから「畑のキャビア」とも呼ばれている。 一方,中国では「地膚子(ジフシ)」と呼ばれ,後漢時代の「神農本草経」には「膀胱の熱をとる,小便の出をよくする,腎の気を補う,長く服用すれば耳や目が聡明になり,身軽になり,老化を抑える」と記載され,2000年以上にわたり生薬として使用されてきた歴史がある。日本には平安時代に中国より渡来したとされ,江戸時代の文献である「農業全書」や「歌謡」にはホウキギの栽培の記録があり,平安時代から,茎は箒の原料として使用(ホウキギの名の由来)され,果実は精進料理などの特別な機会に食されていた。 平成の時代になり日本のサポニン研究の権威である京都薬科大学名誉教授の吉川,松田らのグループによって,マウンテンキャビアの成分や生理活性に関する研究が精力的に行われた。その結果サポニンのmomordin Icが活性本体で,ラットのグルコース負荷試験で血糖値の上昇を抑制することが報告された(非特許文献1)。 作用機序は胃から小腸への糖質の移行抑制(非特許文献2及び非特許文献3) と小腸粘膜内のナトリウム依存性グルコーストランスポーター(SGLT1)の抑制によるグルコースの吸収抑制(非特許文献4) に基づく。したがって,α-グルコシダーゼ阻害による血糖コントロール食品(サラシア,桑の葉エキスなど)と異なり,清涼飲料等で用いられる「液糖」の主成分グルコースの吸収をも抑制することを特徴とする。つまり,オリゴ糖や麦芽糖よりも低分子化されたブドウ糖についても吸収を抑制することで幅広い糖質吸収抑制を示す。 マウンテンキャビアのサポニン類は,オレアナン型のトリテルペンサポニンである。このほか,微量サポニン成分としてkochianosides(非特許文献5) やscoparianosides(非特許文献1) が含まれている。血糖値上昇抑制作用はラットで確認されており(非特許文献5), 機能性関与成分はmomordin Icと2'-O-glucopyranosyl momordin Icである。 【0003】 また、糖尿病においては、体内でのインスリン産生能が極めて低下しているか、あるいは体内でインスリンが作られたとしても、インスリン感受性の低下等によりそのインスリンが有効に作用しないために、血糖値上昇が起き、それによって種々の高血糖症状が引き起こされる。現在広く行われている治療としては、インスリン投与以外に、血糖値降下剤の投与によって血糖値をコントロールする方法がある。 【0004】 一方、II型糖尿病患者の増加に伴い、従来のインスリン投与以外の種々の治療法が検討されている。その中で生体から分泌されるインクレチンに注目が集まっている。 【0005】 インクレチンとは、消化管ホルモンの総称であり、インスリン分泌を刺激することにより、血糖値を下げる作用があることが知られている。インクレチンの中でも、GLP-1アナログ等が医薬品として開発されている。さらには、GLP-1はペプチド分解酵素であるジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)によって分解され、失活することから、DPP4の作用を阻害する物質についても、今後の新しい糖尿病治療薬として開発がなされている(特許文献1)。 【0006】 Yoshikawa M., Shimada H., Morikawa T., Yoshizumi S., Matsumura N., Murakami T., Matsuda H., Hori K., Yamahara J. Medicinal foodstuffs. VII. On the saponin constituents with glucose and alcohol absorption-inhibitory activity from a food garnish "Tonburi", the fruit of Japanese Kochia scoparia (L.) Schrad.: Structures of scoparianosides A, B, and C. Chem. Pharm. Bull., 45, 1300-1305 (1997). Matsuda H., Li Y., Yamahara J., Yoshikawa M. Inhibition of gastric emptying by triterpene saponin, momordin Ic, in mice: roles of blood glucose, capsaicin-sensitive sensory nerves, and central nervous system. J. Pharmacol. Exp. Ther., 289, 729-734 (1999). Matsuda H., Li Y., Murakami T., Yamahara J., Yoshikawa M. Structure-related inhibitory activity of oleanolic acid glycosides on gastric emptying in mice. Bioorg. Med. Chem., 7, 323-327 (1999). Matsuda H., Li Y., Murakami T., Matsumura N., Yamahara J., Yoshikawa M. Antidiabetic principles of natural medicines. III. Structure-related inhibitory activity and action mode of oleanolic acid glycosides on hypoglycemic activity. Chem. Pharm. Bull., 46, 1399-1403 (1998). Yoshikawa M., Dai Y., Shimada H., Morikawa T., Matsumura N., Yoshizumi S., Matsuda H., Matsuda H., Kubo M. Studies on Kochiae Fructus. II. On the saponin constituents from the fruit of Chinese Kochia scoparia (Chenopodiaceae): chemical structures of kochianosides I, II, III, and IV. Chem. Pharm. Bull., 45, 1052-1055 (1997). 特開2014-019657号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 上記サポニンは,抽出物のブタノール可溶画分に含まれている。一方,水可溶分画はブタノール画分と同量以上に存在しているが,その成分研究はほとんど行われていなかった。 このような背景の下、本発明者は、マウンテンキャビアの水可溶分画に3種類の新規成分を含有することを見出してこの3種類の成分を単離し、これらの新規成分について,糖尿病に関連した酵素DPP-4の阻害活性を調べた結果,3種全ての新規成分が阻害活性を有することを見出し,本発明を完成させた。 すなわち、本発明はホウキギ(Kochia scoparia)の果実から新規化合物を得て、さらにその用途を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上記課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。 1.下記化学式(1)にて示される化合物。 JPEG 2025139233000002.jpg 93 146 上記化学式(1)におけるXは単糖類、二糖類、及び三糖類のうちのいずれかが置換されている。 2.下記化学式(2)~(4)で示される化合物。 JPEG 2025139233000003.jpg 94 151 JPEG 2025139233000004.jpg 113 146 JPEG 2025139233000005.jpg 113 148 3.上記1又は上記2.で示される化合物を有効成分とするDPP-4の阻害剤。 4.ホウキギ(Kochia scoparia)の果実を極性溶媒で抽出してホウキギ(Kochia scoparia)果実抽出物を得る工程(1)と、前記工程(1)の後に前記ホウキギ(Kochia scoparia)の果実抽出物を濃縮する工程(2)とを有することを特徴とする上記2に記載の化学式(2)~(4)で示される化合物を含有する組成物の製造方法。 【発明の効果】 【0009】 本発明の化学式(1)~(4)に示される化合物は新規であり、高いDPP-4の阻害活性を有するため、これを有効成分として含有する糖尿病治療剤として有用であり、医薬品、食品組成物等に利用することができる。 【図面の簡単な説明】 【0010】 ホウキギ果実から新規成分を単離する方法示す図である。 新規成分の単離した成分のHPLCクロマトグラムのチャートを示す図である。 化学式(2)に示される化合物の二次元NMR相関を示す図である。 化学式(3)にて示される化合物の二次元NMR相関を示す図である。 化学式(4)で示される化合物の二次元NMR相関を示す図である。 【発明を実施するための形態】 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPat(特許庁公式サイト)で参照する