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公開番号2025098090
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-07-01
出願番号2025042641,2023552901
出願日2025-03-17,2022-10-04
発明の名称コレステロール不含の高比重リポタンパク質粒子
出願人株式会社フェニックスバイオ
代理人個人,個人
主分類C07K 14/47 20060101AFI20250624BHJP(有機化学)
要約【課題】高いコレステロール引き抜き能を有し、コレステロール運搬体として利用される粒子、及び粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】肝細胞の培養物から採取された、少なくともコレステロール不含の高比重リポタンパク質粒子、及び肝細胞を培養し、得られる培養物から少なくともコレステロール不含の高比重リポタンパク質粒子を採取することを特徴とする、当該粒子の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
肝細胞の培養物から採取された、少なくともコレステロール不含の高比重リポタンパク質粒子。
続きを表示(約 540 文字)【請求項2】
肝細胞が、ヒト肝細胞、又は当該ヒト肝細胞と同等の脂質代謝機能を有する非ヒト由来肝細胞である請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
非ヒト由来肝細胞が、肝臓の少なくとも70%がヒト肝細胞に置換された非ヒト動物由来の肝細胞である請求項2に記載の粒子。
【請求項4】
コレステロール引き抜き能を有する、請求項1に記載の粒子。
【請求項5】
非ヒト動物がマウスである請求項3に記載の粒子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の粒子を含む、コレステロール運搬体。
【請求項7】
組織中のコレステロールを引き抜いて肝臓に運搬する、請求項6に記載の運搬体。
【請求項8】
組織が循環器系組織である、請求項7に記載の運搬体。
【請求項9】
循環器系組織中のコレステロールが、動脈硬化プラークのコレステロールである、請求項8に記載の運搬体。
【請求項10】
肝細胞を培養し、得られる培養物から、少なくともコレステロール不含の高比重リポタンパク質粒子を採取することを特徴とする、当該粒子の製造方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステロールを含まない高比重リポタンパク質粒子に関する。当該粒子は、コレステロール引き抜き能を有し、コレステロール運搬体として利用される。
続きを表示(約 7,300 文字)【背景技術】
【0002】
高比重リポタンパク(High Density Lipoprotein:HDL)は、動脈硬化の抑制に深く関係することが報告されている(非特許文献1~3)。このため、血中HDL量の制御を目的とした治療薬の開発が進められているが、臨床試験において満足な薬効が得られないケースが報告されている(非特許文献4~7)。近年、HDLの種類によって、末梢細胞からコレステロールを引き取る能力、いわゆるCholesterol Uptake Capacity(CUC)に差があることが明らかになった(非特許文献8)。このことから、CUCの高いHDLを増加させる事が治療薬に要求される重要なポイントとなる認識が高まってきた。
【0003】
HDLは主に肝臓で新生された後に血中に分泌され、ABCA1というトランスポーターにより末梢組織から遊離コレステロールを引き抜いて取り込む(HDL-CUC)。HDL中の遊離コレステロールはレシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼによりエステル化され、コレステロールエステルとなる。このコレステロールエステルはVLDLやLDLに含まれる中性脂肪と交換され、HDLは成熟する。成熟したHDLは肝臓でのHDL受容体を介して取り込まれ、その後再生される。
このように、HDLにおけるCUC等の脂質代謝に着目することは、上記治療薬の開発のために急務とされるところであり、更に、HDLの新生、取り込みと再生を担う肝細胞(特にヒト肝細胞)の脂質代謝機能の全容の理解に大きく貢献することが期待される。
他方、ヒト肝細胞と同等又は類似の脂質代謝機能を持つ細胞として、肝臓の70%以上がヒトの肝細胞で置換されたキメラマウス(PXBマウス)が知られている(非特許文献9)。PXBマウスでは、ヒト肝細胞が分泌するCholesterol Ester Transport proteinにより、HDLと低比重リポタンパク(Low Density Lipoprotein:LDL)との間の脂質輸送が行われるため、血中のリポタンパクプロファイルがヒトに類似した構成を示すことが確認されている(非特許文献10)。
すなわち、PXBマウスから分離された肝細胞(PXB-cells)も、ヒトの新鮮肝細胞に類似した脂質代謝能を有することが証明されている(非特許文献11)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
Gordon T, Castelli WP, Hjortland MC, Kannel WB, Dawber TR. High density lipoprotein as a protective factor against coronary heart disease. The Framingham Study. Am J Med. 1977 May;62(5):707-14. doi: 10.1016/0002-9343(77)90874-9. PMID: 193398.
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Robins SJ, Collins D, Wittes JT, Papademetriou V, Deedwania PC, Schaefer EJ, McNamara JR, Kashyap ML, Hershman JM, Wexler LF, Rubins HB; VA-HIT Study Group. Veterans Affairs High-Density Lipoprotein Intervention Trial. Relation of gemfibrozil treatment and lipid levels with major coronary events: VA-HIT: a randomized controlled trial. JAMA. 2001 Mar 28;285(12):1585-91. doi: 10.1001/jama.285.12.1585. PMID: 11268266.
Schwartz GG, Olsson AG, Abt M, Ballantyne CM, Barter PJ, Brumm J, Chaitman BR, Holme IM, Kallend D, Leiter LA, Leitersdorf E, McMurray JJ, Mundl H, Nicholls SJ, Shah PK, Tardif JC, Wright RS; dal-OUTCOMES Investigators. Effects of dalcetrapib in patients with a recent acute coronary syndrome. N Engl J Med. 2012 Nov 29;367(22):2089-99. doi: 10.1056/NEJMoa1206797. Epub 2012 Nov 5. PMID: 23126252.
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Barter PJ, Caulfield M, Eriksson M, Grundy SM, Kastelein JJ, Komajda M, Lopez-Sendon J, Mosca L, Tardif JC, Waters DD, Shear CL, Revkin JH, Buhr KA, Fisher MR, Tall AR, Brewer B; ILLUMINATE Investigators. Effects of torcetrapib in patients at high risk for coronary events. N Engl J Med. 2007 Nov 22;357(21):2109-22. doi: 10.1056/NEJMoa0706628. Epub 2007 Nov 5. PMID: 17984165.
Schwartz GG, Olsson AG, Abt M, Ballantyne CM, Barter PJ, Brumm J, Chaitman BR, Holme IM, Kallend D, Leiter LA, Leitersdorf E, McMurray JJ, Mundl H, Nicholls SJ, Shah PK, Tardif JC, Wright RS; dal-OUTCOMES Investigators. Effects of dalcetrapib in patients with a recent acute coronary syndrome. N Engl J Med. 2012 Nov 29;367(22):2089-99. doi: 10.1056/NEJMoa1206797. Epub 2012 Nov 5. PMID: 23126252.
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Tateno C, Kawase Y, Tobita Y, Hamamura S, Ohshita H, Yokomichi H, Sanada H, Kakuni M, Shiota A, Kojima Y, Ishida Y, Shitara H, Wada NA, Tateishi H, Sudoh M, Nagatsuka S, Jishage K, Kohara M. Generation of Novel Chimeric Mice with Humanized Livers by Using Hemizygous cDNA-uPA/SCID Mice. PLoS One. 2015 Nov 4;10(11):e0142145. doi: 10.1371/journal.pone.0142145. PMID: 26536627; PMCID: PMC4633119.
Papazyan R, Liu X, Liu J, Dong B, Plummer EM, Lewis RD 2nd, Roth JD, Young MA. FXR activation by obeticholic acid or nonsteroidal agonists induces a human-like lipoprotein cholesterol change in mice with humanized chimeric liver. J Lipid Res. 2018 Jun;59(6):982-993. doi: 10.1194/jlr.M081935. Epub 2018 Mar 20. PMID: 29559521; PMCID: PMC5983391.
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景から、高いコレステロール引き抜き能を有し、コレステロール運搬体として利用される粒子の開発が求められていた。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ヒトの新鮮肝細胞又は同様の脂質代謝機能を持つ細胞(例えばPXBマウス由来の肝細胞)の培養物に含まれる高比重リポタンパク質粒子が、コレステロール引き抜き能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 肝細胞の培養物から採取された、少なくともコレステロール不含の高比重リポタンパク質粒子。
[2] 肝細胞が、ヒト肝細胞、又は当該ヒト肝細胞と同等の脂質代謝機能を有する非ヒト由来肝細胞である[1]に記載の粒子。
[3] 非ヒト由来肝細胞が、肝臓の少なくとも70%がヒト肝細胞に置換された非ヒト動物由来の肝細胞である[2]に記載の粒子。
[4] コレステロール引き抜き能を有する、[1]に記載の粒子。
[5] 非ヒト動物がマウスである[3]に記載の粒子。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載の粒子を含む、コレステロール運搬体。
[7] 組織中のコレステロールを引き抜いて肝臓に運搬する、[6]に記載の運搬体。
[8] 組織が循環器系組織である、[7]に記載の運搬体。
[9] 循環器系組織中のコレステロールが、動脈硬化プラークのコレステロールである、[8]に記載の運搬体。
[10] 肝細胞を培養し、得られる培養物から、少なくともコレステロール不含の高比重リポタンパク質粒子を採取することを特徴とする、当該粒子の製造方法。
[11] 肝細胞が、ヒト肝細胞、又は当該ヒト肝細胞と同等の脂質代謝機能を有する非ヒト由来肝細胞である[10]に記載の方法。
[12] 非ヒト由来肝細胞が、肝臓の少なくとも70%がヒト肝細胞に置換された非ヒト動物由来の肝細胞である[10]に記載の方法。
[13] 高比重リポタンパク質粒子がコレステロール引き抜き能を有する、[10]に記載の方法。
[14] 非ヒト動物がマウスである[12]に記載の方法。
[15] [1]~[5]のいずれか1項に記載の粒子を含む、循環器系疾患用医薬組成物。
[16] [6]に記載の運搬体を含む、循環器系疾患用医薬組成物。
[17] 循環器系疾患が、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、アテローム動脈硬化症、末梢血管疾患、脂質異常症、狭心症、虚血、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、及び糖尿病の血管合併症からなる群から選ばれる少なくとも1つの疾患である[15]に記載の医薬組成物。
[18] 循環器系疾患が、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、アテローム動脈硬化症、末梢血管疾患、脂質異常症、狭心症、虚血、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、及び糖尿病の血管合併症からなる群から選ばれる少なくとも1つの疾患である[16]に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、コレステロール不含のHDLが提供される。本発明のHDLはコレステロールを含まないことを特徴とし、高いコレステロール回収能を有するためコレステロール運搬体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明のHDLの模式図である。
PXB-cellsの培養上清中に含まれるアポリポタンパク質の測定結果を示す図である。
HDLによるコレステロールの取り込み能を試験した結果を示す図である。
リポタンパク質分画に含まれる脂質を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.概要
本発明は、少なくともコレステロール不含の高比重リポタンパク質粒子に関する。本発明の粒子は、肝細胞の培養物から採取されたものであり、コレステロールの引き抜き能を有する。
脂質粒子の1種である高比重リポタンパク質(HDL:high density lipoprotein)は、身体の中の組織や器官に含まれるコレステロールを引き抜く(回収する)機能を持っており、近年はHDLのコレステロール回収機能を回復することが創薬の標的となりつつある。そして、ヒトを含む動物の血液中に含まれるHDLは、多少の差があるもののコレステロールを必ず含んでいる。
【0010】
しかしながら、本発明において、肝細胞の培養物、特に培養上清を超低比重リポタンパク質(VLDL)、低比重リポタンパク質(LDL)及びHDLの分画に分け、それぞれの分画に含まれるコレステロール量を確認した結果、HDLの分画にはコレステロールが殆ど含まれていなかった(図4)。図4において、上段がコレステロール、下段が中性脂肪の含有量を示す。HDLの分画には、コレステロール、中性脂肪共に殆どピークがないことが確認された。
上記培養上清中のHDL分画にコレステロールが含まれないことは、HDLそのものが存在しないのか、あるいはHDLは存在するがHDLにコレステロールを吸収する機能がないのかが不明であった。
(【0011】以降は省略されています)

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