公開番号2025033132 公報種別公開特許公報(A) 公開日2025-03-13 出願番号2023138641 出願日2023-08-29 発明の名称転がり軸受の異常診断方法、および、異常診断用コンピュータプログラム 出願人国立大学法人信州大学,シナノケンシ株式会社 代理人個人,個人 主分類G01M 13/045 20190101AFI20250306BHJP(測定;試験) 要約【課題】非接触かつ迅速に測定行うことができ、軸受損傷信号のS/N比が低い場合や軸受損傷が初期段階の場合においても軸受の異常を検出可能な異常診断方法を提案する。 【解決手段】この軸受の異常診断方法は、軸受の動作音信号を取得する動作音取得ステップST1と、動作音信号をフィルタバンクによって分割したそれぞれの帯域の動作音信号のエンベロープスペクトルの尖度を算出し、算出した尖度の中から最も大きい尖度を有する尖度指標を用いて共振周波数を推定する第1の共振周波数推定ステップST2と、動作音信号から当該動作音信号を混入周波数と振動周波数分布で表現したスペクトル相関を用いて共振周波数を推定する第2の共振周波数推定ステップST3と、推定したそれぞれの共振周波数を比較し、一致していると見なせる場合には異常、見なせない場合には正常と判定する異常判定ステップST4と、を含む。 【選択図】図4 特許請求の範囲【請求項1】 転がり軸受の損傷による異常を診断する転がり軸受の異常診断方法であって、 前記転がり軸受の動作音信号を取得する動作音取得ステップと、 前記動作音取得ステップで取得した前記動作音信号を所定のバンド幅のバンドパスフィルタによって低域から高域まで隙間なく並べられたフィルタバンクによって分割したそれぞれの帯域の動作音信号のエンベロープスペクトルの尖度を算出し、算出した尖度の中から最も大きい尖度を有する尖度指標を用いて共振周波数を推定する第1の共振周波数推定ステップと、 前記動作音取得ステップで取得した前記動作音信号から当該動作音信号を混入周波数と振動周波数分布で表現したスペクトル相関を用いて共振周波数を推定する第2の共振周波数推定ステップと、 前記第1および第2の共振周波数推定ステップで推定したそれぞれの共振周波数を比較し、一致していると見なせる場合には異常と判定し、一致していると見なせない場合には正常と判定する異常判定ステップと、 を含むことを特徴とする転がり軸受の異常診断方法。 続きを表示(約 2,100 文字)【請求項2】 請求項1に記載の転がり軸受の異常診断方法において、 前記第1の共振周波数推定ステップでは、周波数の時間変化を解析する短時間フーリエ変換を前記フィルタバンクとして解釈して当該短時間フーリエ変換の時間窓長ごとに前記動作音信号のエンベロープスペクトルの尖度を算出するカートグラムを用いて前記共振周波数を推定する転がり軸受の異常診断方法。 【請求項3】 請求項2に記載の転がり軸受の異常診断方法において、 前記カートグラムとして、様々な通過帯域のフィルタで構成された樹枝状のマルチレートフィルタバンク構造に基づき、計算を高速化した高速カートグラムを用いる転がり軸受の異常診断方法。 【請求項4】 請求項1に記載の転がり軸受の異常診断方法において、 前記第2の共振周波数推定ステップでは、前記スペクトル相関として、次の式1で表される高速スペクトル相関を用いる転がり軸受の異常診断方法。 TIFF 2025033132000012.tif 141 170 【請求項5】 請求項1~4のいずれか一項に記載の転がり軸受の異常診断方法において、 前記異常判定ステップで異常と判定した場合に、一致していると見なした前記共振周波数に対応させた中心周波数、および当該中心周波数を中心として高調波成分のS/N比に応じて設定された最適バンド幅を有するバンドパスフィルタを前記動作音信号に適用する最適バンドパスフィルタ適用ステップと、 前記最適バンドパスフィルタ適用ステップで前記最適バンド幅を有するバンドパスフィルタを適用した前記動作音信号のエンベロープスペクトルを算出する最適バンド幅エンベロープスペクトル算出ステップと、 前記最適バンド幅エンベロープスペクトル算出ステップで算出した前記エンベロープスペクトルを周波数解析して混入周波数の振幅値を取得する混入周波数振幅値取得ステップと、 前記混入周波数振幅値取得ステップで取得した前記混入周波数の振幅値の大きさから前記転がり軸受の異常度合いを推定し、定量診断を行う定量診断ステップと、 を更に含む転がり軸受の異常診断方法。 【請求項6】 請求項5に記載の転がり軸受の異常診断方法において、 前記定量診断ステップでは、前記混入周波数の1次高調波成分のみに着目し、前記定量診断を行う転がり軸受の異常診断方法。 【請求項7】 音声信号取得機器が接続されたコンピュータ装置にインストールされ、当該コンピュータ装置に転がり軸受の損傷による異常を診断させる転がり軸受の異常診断用コンピュータプログラムであって、 前記コンピュータ装置に、 前記転がり軸受の動作音信号を取得させる動作音取得処理と、 前記動作音取得処理で取得させた前記動作音信号を所定のバンド幅のバンドパスフィルタによって低域から高域まで隙間なく並べられたフィルタバンクによって分割したそれぞれの帯域の動作音信号のエンベロープスペクトルの尖度を算出し、算出した尖度の中から最も大きい尖度を有する尖度指標を用いて共振周波数を推定させる第1の共振周波数推定処理と、 前記動作音取得処理で取得させた前記動作音信号から当該動作音信号を混入周波数と振動周波数分布で表現したスペクトル相関を用いて共振周波数を推定させる第2の共振周波数推定処理と、 前記第1および第2の共振周波数推定処理で推定させたそれぞれの共振周波数を比較し、一致していると見なせる場合には異常と判定させ、一致していると見なせない場合には正常と判定させる異常判定処理と、 を実行させることを特徴とする転がり軸受の異常診断用コンピュータプログラム。 【請求項8】 請求項7に記載の転がり軸受の異常診断用コンピュータプログラムにおいて、 前記第1の共振周波数推定処理では、前記コンピュータ装置に、周波数の時間変化を解析する短時間フーリエ変換を前記フィルタバンクとして解釈して当該短時間フーリエ変換の時間窓長ごとに前記動作音信号のエンベロープスペクトルの尖度を算出するカートグラムを用いて前記共振周波数を推定させる転がり軸受の異常診断用コンピュータプログラム。 【請求項9】 請求項8に記載の転がり軸受の異常診断用コンピュータプログラムにおいて、 前記カートグラムとして、様々な通過帯域のフィルタで構成された樹枝状のマルチレートフィルタバンク構造に基づき、計算を高速化した高速カートグラムを用いる転がり軸受の異常診断用コンピュータプログラム。 【請求項10】 請求項7に記載の転がり軸受の異常診断用コンピュータプログラムにおいて、 前記第2の共振周波数推定処理では、前記スペクトル相関として、次の式1で表される高速スペクトル相関を用いる転がり軸受の異常診断用コンピュータプログラム。 TIFF 2025033132000013.tif 141 170 (【請求項11】以降は省略されています) 発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、転がり軸受の異常診断方法、および、転がり軸受の異常診断用コンピュータプログラムに関する。 続きを表示(約 2,300 文字)【背景技術】 【0002】 転がり軸受(以下、単に「軸受」という。)は、タービン、ファン、ポンプをはじめとした様々な回転機械に組み込まれている非常に重要な機械要素である。これらの機械は高速に回転しているため、軸受の故障により大事故に至る可能性がある。このため、温度、摩耗粉、AE(Acoustic Emission)、振動、音などを用いた様々な異常診断手法が提案されてきた。 【0003】 現状、振動を用いた診断手法が一般的であるが、この診断手法は、加速度センサを接触させる必要があるため、接触が難しい状況では診断が困難であり、また、加速度センサの着脱工数がかかり測定に時間がかかる、等の問題がある。 【0004】 ところで、軸受が損傷した場合の動作音および振動の波形の特徴としては、損傷部位を転動体が通過することにより発生する周期的な非定在性波形が含まれることが挙げられる。この否定在性波形は、軸受が組み込まれた機械筐体の共振周波数成分が多く含まれる、という特徴を有する。 【0005】 振動波形の周期性に着目して軸受の異常を診断する解析手法として、非特許文献1に提案されているエンベロープ解析が広く用いられている。エンベロープ解析は、信号波形のエンベロープ(包絡線)を利用した手法であるため、非定在性波形が広帯域の背景雑音に埋もれる場合や損傷の程度が小さいことで励起される非定在性波形が微弱な場合には周期性を検出することができない、といった問題がある。この場合、共振周波数を含む周波数帯域でバンドパスフィルタをかけることで非定在性波形を抽出することが効果的となるが、共振周波数を判別し、最適な中心周波数および帯域幅を推定することが困難である。 【0006】 一方、非定在性波形の抽出手法についても広く研究されている。非特許文献2においては、波形の尖度指標に基づいたスペクトル尖度が提案されており、その有効性が示されている。 【0007】 また、非特許文献3においては、スペクトル尖度を一般化させたカートグラムであって計算コストを低減した高速カートグラムが提案されている。高速カートグラムは、非定在性波形を抽出するのに適した中心周波数および周波数分解能を推定する解析手法である。ただし、高速カートグラムは、周期性信号に比べて非周期性信号に強い感度をもつため、周期的な非定在性波形の抽出では有効性が限られる。 【0008】 また、非特許文献4においては、周期的な非定在性波形を抽出する手法として、時系列信号の尖度の代わりにエンベロープスペクトルの尖度を評価指数とした「Protrugram」が提案されている。しかし、Protrugramは、バンドパスフィルタのバンド幅に経験的に選択した幅を用いるため、バンド幅の設計において課題がある。 【0009】 また、非特許文献5においては、周期的な非定在性波形に着目した別の手法として、スペクトル相関が提案されている。スペクトル相関は、自己相関関数の周波数表現から、信号のエンベロープの周波数成分が含んでいるスペクトル周波数成分を解析することができる。そのため、非定在性波形の包絡線の周波数から非定在性波形の支配的なスペクトル周波数を推定することができる。ただし、スペクトル相関は、推定精度が低い、または計算コストが高い推定手法となっており、実用面において課題がある。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0010】 P.D.McFadden, J.D.Smith: Vibration monitoring of rolling element bearings by the high frequency resonance technique-a review, Tribology International 17, pp.3-10, (1984). J.Antoni: The spectral kurtosis: a useful tool for characterizing non-stationary signals, Mechanical Systems and Signal Processing 20, pp.282-307, (2006) J.Antoni: Fast computation of the kurtogram for the detection of transient faults, Mechanical Systems and Signal Processing 21, pp.108-124, (2007) Tomasz Barszcz, Adam Jablonski: A nobel method for the optimal band selection for vibration signal demodulation and comparison with the Kurtogram, Mechanical Systems and Signal Processing 25, pp.431-451, (2011) J.Antoni: Cyclic spectral analysis in practice, Mechanical Systems and Signal Processing 21, pp.597-630, (2007) 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する