TOP特許意匠商標
特許ウォッチ Twitter
公開番号2024115890
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-08-27
出願番号2023021780
出願日2023-02-15
発明の名称座屈拘束ブレース
出願人大成建設株式会社
代理人園田・小林弁理士法人
主分類E04H 9/02 20060101AFI20240820BHJP(建築物)
要約【課題】芯材と座屈補剛材の間に設けられたアンボンド部の損傷とこれに伴う芯材の局部座屈を抑制しつつ、安定した性能を発揮することができる、座屈拘束ブレースを提供する。
【解決手段】座屈拘束ブレース1は、鋼製の芯材2と、芯材2を外側から覆うように設けられ、筒状を成す外側鋼材4と、外側鋼材4の内側に設けられたセメント系充填部5と、を備えている座屈補剛材3と、芯材2とセメント系充填部5との間に設けられたアンボンド部7と、を備え、アンボンド部7は、芯材2の表面2sに設けられ、芯材2の変形を吸収する変形吸収層8と、変形吸収層8とセメント系充填部5との間に設けられ、セメント系充填部5との間で滑動自在となるように設けられた滑動層9と、を備えている。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
座屈拘束ブレースであって、
鋼製の芯材と、
前記芯材を外側から覆うように設けられ、筒状を成す外側鋼材と、前記外側鋼材の内側に設けられたセメント系充填部と、を備えている座屈補剛材と、
前記芯材と前記セメント系充填部との間に設けられたアンボンド部と、
を備え、
前記アンボンド部は、前記芯材の表面に設けられ、当該芯材の変形を吸収する変形吸収層と、前記変形吸収層と前記セメント系充填部との間に設けられ、前記セメント系充填部との間で滑動自在となるように設けられた滑動層と、を備えている
ことを特徴とする座屈拘束ブレース。
続きを表示(約 190 文字)【請求項2】
前記滑動層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、及び長鎖アルキル系剥離剤のうち、いずれかを用いて表面処理された剥離紙で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記変形吸収層はゴム系粘着剤で形成され、前記芯材の前記表面に貼付されていることを特徴とする請求項1または2に記載の座屈拘束ブレース。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、座屈拘束ブレースに関する。
続きを表示(約 4,400 文字)【背景技術】
【0002】
鋼製の芯材により軸力を負担しつつ、芯材を外側から覆うように設けられた座屈補剛材により芯材を拘束して芯材の座屈を抑制する、座屈拘束ブレースが用いられている。座屈拘束ブレースは、地震が生じて芯材に圧縮力が作用した場合に、芯材の座屈を抑制することで、芯材に引張力が作用した場合と同様に芯材の靭性を安定して発揮させて、地震力を効率的に吸収する。
このような座屈拘束ブレースにおいて、芯材に作用する軸力が座屈補剛材に伝達すると、座屈拘束ブレース全体としての剛性が設計時に意図した値以上に高まってしまう。すると、座屈拘束ブレースの周辺の柱梁架構に座屈拘束ブレースが本来吸収すべき応力が集中し、柱梁架構が損壊してしまうことがある。したがって、例えば座屈補剛材を、筒状を成す外側鋼材と、外側鋼材の内側に設けられたセメント系充填部とを含むように実現するような場合においては、芯材に作用する軸力がセメント系充填部に伝達されないように、セメント系充填部と芯材との間にアンボンド部を設けるのが一般である。
【0003】
これに関し、例えば、特許文献1には、芯材と、芯材の両面に沿って配置した一対の拘束材とを有し、一対の拘束材は、それぞれ芯材側が開口した溝形鋼材と、溝形鋼材内に充填したモルタルまたはコンクリートと、モルタルまたはコンクリートの表面を覆いかつモルタルまたはコンクリートにその硬化によって接着された板状の蓋部材と、を有する座屈拘束ブレースが開示されている。芯材の蓋部材と対向する表面、または蓋部材の芯材と対向する表面には、例えば板状ないしシート状のブチルゴム等からなるアンボンド材が貼り付けられている。
特許文献1に記載された構成においては、地震時に芯材に圧縮力が作用し、ポアソン効果により芯材が幅方向に膨張して断面積が増加すると、芯材と拘束材の間に設けられたアンボンド材は膨張した芯材により圧縮されて、剛性が高くなる。すると、芯材と拘束材との間に生じる摩擦力が高くなり、芯材に作用する軸力が拘束材に伝達されてしまい、結果として、座屈拘束ブレースの性能が安定して発揮されない可能性がある。
また、特許文献1に記載された構成においては、地震時における芯材の伸長、収縮により、アンボンド材には、芯材と拘束材との間でせん断力が作用する。このせん断力により、アンボンド材が剥離、破断して、損傷することが考えられる。アンボンド材が損傷すると、損傷した部分に隙間が生じ、この部分において芯材が拘束材によって十分に拘束されないため、次に地震が生じた際に、芯材に局部座屈が生じる可能性がある。
【0004】
これに対し、特許文献2には、鋼部材で補強された座屈拘束用コンクリート部材に鋼製中心軸力部材が挿通され、鋼製中心軸力部材と座屈拘束用コンクリートとの界面に付着防止皮膜が設けられた軸降伏型弾塑性履歴ブレースが開示されている。付着防止皮膜の膜厚方向の割線剛性は、付着防止皮膜の圧縮歪0%と圧縮歪50%との2点間においては0.1N/mm

以上であり、圧縮歪50%と圧縮歪75%との2点間においては21000N/mm

以下であり、且つ鋼製中心軸力部材の板厚及び板幅のそれぞれの方向における付着防止皮膜の膜厚は、鋼製中心軸力部材の板厚及び板幅のそれぞれの0.5%以上10%以下とすることが記載されている。
特許文献2には、上記のように付着防止皮膜の膜厚方向の割線剛性を規定することによって、コンクリート打設時において付着防止皮膜に要求される膜厚を確保し、鋼製中心軸力部材が降伏して塑性変形するときに面外方向の膨張を吸収し鋼製中心軸力部材の局部座屈を防止することが、記載されている。しかし、特許文献2の構成においても、付着防止皮膜にせん断力が作用することを前提とした構造であるため、地震力を繰り返し受けると、付着防止皮膜が損傷し、鋼製中心軸力部材に局部座屈が生じる可能性がある。
【0005】
また、特許文献3には、ブレース芯材と、ブレース芯材を囲繞する補剛筒体と、ブレース芯材の外周面に配置された、プラスチックダンボールからなる離間材と、補剛筒体と離間材との間に充填された充填材が固化した充填材固化体とを備える座屈拘束ブレースが開示されている。
特許文献3の構成において、ブレース芯材が圧縮力を受けて断面積が増加すると、ブレース芯材と充填材固化体との間に位置する離間材には非常に大きな圧力が作用する。これにより、プラスチックダンボールからなる離間材は、プラスチック製リブ板が塑性変形して、平行に配置されていた2枚のプラスチック製平板間の距離が小さくなることにより座屈し、その剛性は極端に低下する。このため、その後ブレース芯材の断面積が多少増加しても、離間材はその増加をほとんど阻害せず、離間材は塑性材料であるプラスチックから形成されているので、一旦座屈すると、圧力が除去されても変形したままであると、特許文献3には記載されている。
特許文献3に記載されているように、プラスチックダンボールは、いったん座屈してしまうと変形したままであり元の状態には復元しない。したがって、一度地震が生じてプラスチックダンボールが座屈すると、座屈した部分に隙間が生じ、この部分においてブレース芯材が外方から十分に拘束されない状態となるため、次に地震が生じた際に、ブレース芯材に局部座屈が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特開2009-249833号公報
特開2001-227192号公報
特開2016-118090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、芯材と座屈補剛材の間に設けられたアンボンド部の損傷とこれに伴う芯材の局部座屈を抑制しつつ、安定した性能を発揮することができる、座屈拘束ブレースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、座屈拘束ブレースとして、芯材と座屈補剛材との間に設けるアンボンド部を、芯材の変形を吸収する変形吸収層と、変形吸収層と座屈補剛材の内側に充填されるセメント系充填部との間に設け、前記セメント系充填部との間で滑動自在となるように設ける滑動層とで形成した。よって、座屈拘束ブレースでは、芯材と座屈補剛材との間の摩擦力を変形吸収層で低減し、かつ芯材に圧縮力、または引張力が作用した際には芯材のポアソン効果による膨張を、芯材とセメント系充填部との間にて分離されている滑動層で吸収することで摩擦力の増大を防止することのできる点に着眼し、本発明に至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、座屈拘束ブレースであって、鋼製の芯材と、前記芯材を外側から覆うように設けられ、筒状を成す外側鋼材と、前記外側鋼材の内側に設けられたセメント系充填部と、を備えている座屈補剛材と、前記芯材と前記セメント系充填部との間に設けられたアンボンド部と、を備え、前記アンボンド部は、前記芯材の表面に設けられ、当該芯材の変形を吸収する変形吸収層と、前記変形吸収層と前記セメント系充填部との間に設けられ、前記セメント系充填部との間で滑動自在となるように設けられた滑動層と、を備えていることを特徴とする座屈拘束ブレースを提供する。
上記のような構成によれば、芯材と、座屈補剛材のセメント系充填部と、の間に設けられたアンボンド部は、芯材の表面に設けられ、当該芯材の変形を吸収する変形吸収層を備えている。このため、地震時に芯材に圧縮力が作用し、ポアソン効果により芯材が面外方向に膨張して断面積が増加しても、芯材の変形に追随して芯材の表面に設けた変形吸収層が変形することにより芯材の面外方向への膨張が吸収される。また、芯材に圧縮力、または引張力が作用した際には芯材が伸縮することにより、芯材の表面はセメント系充填部に対して軸線方向に相対移動しようとする。ここで、アンボンド部は、変形吸収層とセメント系充填部との間に、セメント系充填部との間で滑動自在となるように設けられた滑動層を備えているため、滑動層とセメント系充填部とが互いに、滑らかに滑動する。このように、変形吸収層にはセメント系充填部からの摩擦力が作用しにくくなっているため、変形吸収層が圧縮されて剛性が高くなったとしても、変形吸収層には、芯材とセメント系充填部との間で大きなせん断力が作用しにくい。このため、変形吸収層の損傷と、次の地震における芯材の局部座屈を抑制することができる。
また、アンボンド部が上記のような滑動層を備えており、アンボンド部の滑動層側においては、アンボンド部にはセメント系充填部からの摩擦力が作用しにくくなっている。したがって、芯材に作用する軸力が座屈補剛材に伝達されてしまい、座屈拘束ブレース全体としての剛性が想定以上に高まることが、抑制される。これにより、地震時に、座屈拘束ブレースの性能が安定して発揮される。
このようにして、芯材と座屈補剛材の間に設けられたアンボンド部の損傷とこれに伴う芯材の局部座屈を抑制しつつ、安定した性能を発揮することが可能となる。
【0009】
本発明の一態様においては、前記滑動層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、及び長鎖アルキル系剥離剤のうち、いずれかを用いて表面処理された剥離紙で形成されている。
上記のような構成によれば、滑動層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、及び長鎖アルキル系剥離剤のうち、いずれかを用いて表面処理された剥離紙で形成されているため、滑動層とセメント系充填部との間の摩擦が低減され、これらの間の滑動が適切に行われる。これにより、芯材と座屈補剛材の間に設けられたアンボンド部の損傷とこれに伴う芯材の局部座屈を抑制しつつ、安定した性能を発揮することが可能となる。
【0010】
本発明の別の態様においては、前記変形吸収層はゴム系粘着剤で形成され、前記芯材の前記表面に貼付されている。
上記のような構成によれば、変形吸収層はゴム系粘着剤で形成されているため、地震時に芯材に圧縮力が作用し、ポアソン効果により芯材が幅方向(弱軸方向)だけでなく、せい方向(強軸方向)を含む芯材全周面に対して面外方向に膨張して断面積が増加した際には、変形吸収層が変形することで断面積の増加を十分に吸収することができる。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

この特許をJ-PlatPatで参照する

関連特許

大成建設株式会社
制振装置
19日前
大成建設株式会社
基礎構造
27日前
大成建設株式会社
補強用繊維
18日前
大成建設株式会社
窓システム
20日前
大成建設株式会社
木質耐火部材
21日前
大成建設株式会社
放射空調ダクト
20日前
大成建設株式会社
座屈拘束ブレース
21日前
大成建設株式会社
防水マイクロホン
1か月前
大成建設株式会社
避難誘導システム
19日前
大成建設株式会社
自動均し作業ロボット
26日前
大成建設株式会社
放射線遮蔽体、および照射室
1か月前
大成建設株式会社
土砂ホッパーおよび土砂搬出方法
1か月前
大成建設株式会社
壁面施工装置および壁面施工方法
21日前
大成建設株式会社
水処理用分離膜および水処理方法
14日前
大成建設株式会社
洗掘防止構造および杭の施工方法
25日前
大成建設株式会社
濁水処理装置および濁水処理方法
26日前
大成建設株式会社
仮設屋根および仮設屋根の使用方法
19日前
リーフ株式会社
搬送アシスト装置
11日前
大成建設株式会社
土砂用消泡装置および土砂消泡方法
1か月前
大成建設株式会社
橋桁撤去用の仮設構造体と橋桁撤去装置
26日前
大成建設株式会社
コンクリート鋼管柱およびその構築方法
4日前
大成建設株式会社
掘進機の振動制御システムと振動制御方法
5日前
株式会社きんそく
3次元CAD装置の使用方法
1か月前
大成建設株式会社
針貫入試験システム、制御装置、及び針貫入試験方法
19日前
大成建設株式会社
マーカ粒子、振動試験方法、及びマーカ粒子の製造方法
22日前
大成建設株式会社
自走式揚重機用嵩上装置および自走式揚重機の嵩上方法
25日前
大成建設株式会社
変位計測用ターゲット及びトンネル坑内変位計測システム
26日前
大成建設株式会社
プレキャスト壁高欄およびプレキャスト壁高欄の接合構造
19日前
大成建設株式会社
プレキャスト壁高欄およびプレキャスト壁高欄の接合構造
19日前
大成建設株式会社
災害時現地調査支援システム及び災害時現地調査支援方法
1か月前
大成建設株式会社
水中作業機用の削孔装置、水中削孔方法および水中削岩方法
1か月前
株式会社コルラボ
情動判定システム及び情動判定プログラム
8日前
大成建設株式会社
場所打ちコンクリート杭および場所打ちコンクリート杭の施工方法
4日前
大成建設株式会社
床フレーム昇降システム、構造物の解体方法、および構造物の構築方法
19日前
大成建設株式会社
床フレーム昇降システム、構造物の構築方法、および構造物の解体方法
27日前
大成建設株式会社
短繊維補強コンクリート部材の製造方法および短繊維補強コンクリート部材
22日前
続きを見る