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公開番号2024059499
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-05-01
出願番号2022167194
出願日2022-10-18
発明の名称薬物の脳内濃度の予測方法、薬物投与補助プログラム、薬物投与補助装置、及び薬物投与補助システム
出願人国立大学法人京都大学
代理人個人,個人,個人
主分類G16H 20/00 20180101AFI20240423BHJP(特定の用途分野に特に適合した情報通信技術)
要約【課題】本発明は、薬物の脳内濃度をより正しく予測できる新たなPK/PDモデルを提供することである。
【解決手段】静注により患者に持続的に投与する薬物の脳内濃度の予測方法であり;中央コンパートメント、迅速平衡化コンパートメント、及び低速平衡化コンパートメントを含む3コンパートメントモデルに、さらに脳コンパートメントが付加されたマルチコンパートメントモデルを用い、前記中央コンパートメントから前記脳コンパートメントへの分配速度定数k1eと、定常状態での前記薬物の血漿中濃度に対する脳内濃度の比に相当する分配係数Kpとの積に基づいて、脳内濃度の予測値を導出する工程を含む方法によれば、薬物の脳内濃度をより正しく予測できる。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項1】
静注により患者に持続的に投与する薬物の脳内濃度の予測方法であり、
中央コンパートメント、迅速平衡化コンパートメント、及び低速平衡化コンパートメントを含む3コンパートメントモデルに、さらに脳コンパートメントが付加されたマルチコンパートメントモデルを用い、
前記中央コンパートメントから前記脳コンパートメントへの分配速度定数k
1e
と、定常状態での前記薬物の血漿中濃度に対する脳内濃度の比に相当する分配係数K
p
との積に基づいて、脳内濃度の予測値を導出する工程を含む、方法。
続きを表示(約 1,200 文字)【請求項2】
前記脳内濃度が、下記式により導出される、請求項1に記載の方法:
TIFF
2024059499000011.tif
16
158
式中、

1e
は前記中央コンパートメントから前記脳コンパートメントへの分配速度定数、

p
は定常状態での前記薬物の血漿中濃度に対する脳内濃度の比に相当する分配係数、

central
は前記中央コンパートメントの前記薬物の血漿中濃度、

e0
’は前記脳コンパートメントからの消失速度定数、及び

brain
は前記脳コンパートメントの前記薬物の前記脳内濃度を表す。
【請求項3】
前記k
1e
が、前記中央コンパートメントと前記脳コンパートメントとのコンパートメント間クリアランスQ
4
を前記中央コンパートメントの容積V
1
で除して算出される値であり、
前記k
e0
’が前記k
1e
と同じ値である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記K
p
が1.1~1.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記k
1e
が0.008~0.03である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記k
1e
と前記K
p
との積が、0.01~0.04である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記薬物が中枢神経系作用薬である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
静注により患者に持続的に投与する薬物の投与を補助するための補助装置であり、
前記薬物の脳内濃度の予測値を計算するための予測部を含み、
前記予測部が、中央コンパートメント、迅速平衡化コンパートメント、及び低速平衡化コンパートメントを含む3コンパートメントモデルに、さらに脳コンパートメントが付加されたマルチコンパートメントモデルを用い、前記中央コンパートメントから前記脳コンパートメントへの分配速度定数k
1e
と、定常状態での前記薬物の血漿中濃度に対する脳内濃度の比に相当する分配係数K
p
との積に基づいて、脳内濃度の予測値を導出する、補助装置。
【請求項9】
前記予測値及び/又は前記薬物の目標濃度を表示処理する表示処理部をさらに含む、請求項8に記載の補助装置。
【請求項10】
前記予測値及び前記薬物の目標濃度に基づいて、前記薬物の投与量を計算する計算部をさらに含む、請求項8に記載の補助装置。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の脳内濃度の予測方法、薬物投与補助プログラム、薬物投与補助装置、及び薬物投与補助システムに関する。
続きを表示(約 5,600 文字)【背景技術】
【0002】
静注麻酔薬は、薬物動態及び薬力学(PK/PD)モデルでプログラムされた目標制御注入(Target Control Infusion:TCI)法を利用して、周術期の麻酔深度及び覚醒の調節に用いられている。TCI法では、目標とする効果部位濃度まで麻酔濃度を素早く上昇させ、その濃度を維持する。具体的には、プロポフォールがこのようなTCI法を利用して効果部位濃度を意識した投与の制御が行われている。
【0003】
多くの薬物の薬物動態はマルチコンパートメントモデルで表される。マルチコンパートメントモデルは、薬物を生体に投与した後の動態を速度論的に解析するための算術的モデルであり、薬物が注入される中央コンパートメント(通常は血中)と、薬物が再分布するいくつかの末梢コンパートメント、及び薬物が効果を発揮する効果部位(効果コンパートメント)で構成されており、これらに加えて薬物の代謝による消失が加味されている。
【0004】
プロポフォールの薬物動態は、中央コンパートメント、迅速平衡化コンパートメント(筋肉、内部器官等の血流が豊富なコンパートメント)、及び低速平衡化コンパートメント(脂肪組織、骨等の血流が乏しいコンパートメント)を含む3コンパートメントモデル、具体的にはMarshモデル(非特許文献1)及びSchniderモデル(非特許文献2、3)で表されることが多い。
【0005】
Marshモデルは、小児のデータから構築されたオリジナルのPK/PDモデルである(非特許文献1)が、効果部位平衡速度定数(k
e0
)は、別の研究に基づいて後から追加された(非特許文献4)ものである。パラメータk
e0
は、プロポフォールに対する脳波反応から推定されている(非特許文献5)。このようなPK/PDモデルについては、これまで数多くの検証がなされてきたが、それらの検証は、もっぱら、効果部位濃度と平衡化した血漿中濃度を測定することに基づいて行われてきた(非特許文献1~3、5~10)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
Marsh B, White M, Morton N, Kenny GNC. Pharmacokinetic model driven infusion of propofol in children. Br J Anaesth 1991; 67: 41-8.
Schnider TW, Minto CF, Gambus PL, et al. The influence of method of administration and covariates on the pharmacokinetics of propofol in adult volunteers. Anesthesiology 1998; 88: 1170-82.
Schnider TW, Minto CF, Shafer SL, et al. The influence of age on propofol pharmacodynamics. Anesthesiology 1999; 90: 1502-16.
Struys MMRF, De Smet T, Glen JIB, Vereecke HEM, Absalom AR, Schnider TW. The history of target-controlled infusion. Anesth Analg 2016; 122: 56-69.
Wakeling HG, Zimmerman JB, Howell S, Glass PS. Targeting effect compartment or central compartment concentration of propofol: what predicts loss of consciousness? Anesthesiology 1999; 90: 92-7.
Kazama T, Ikeda K, Morita K, et al. Comparison of the effect-site keos of propofol for blood pressure and EEG bispectral index in elderly and younger patients. Anesthesiology 1999; 90: 1517-27.
Van Hese L, Theys T, Absalom AR, et al. Comparison of predicted and real propofol and remifentanil concentrations in plasma and brain tissue during target-controlled infusion: a prospective observational study. Anaesthesia 2020; 75: 1626-34.
Park JH, Choi SM, Park JH, et al. Population pharmacokinetic analysis of propofol in underweight patients under general anaesthesia. Br. J. Anaesth 2018; 121: 559-66.
Sahinovic MM, Eleveld DJ, Miyabe-Nishiwaki T, Struys MMRF, Absalom AR. Pharmacokinetics and pharmacodynamics of propofol: changes in patients with frontal brain tumours. Br. J. Anaesth 2017; 118: 901-9.
Lee YH, Choi GH, Jung KW, et al. Predictive performance of the modified Marsh and Schnider models for propofol in underweight patients undergoing general anaesthesia using target-controlled infusion. Br. J. Anaesth 2017; 118: 883-91.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、現在のPK/PDモデルでは、効果部位予測(つまり脳内濃度)の精度について評価されていない点に着眼した。そして、本発明者が、覚醒下開頭手術を受けた患者のプロポフォールの血漿中濃度および脳内濃度を同時に測定したところ、血漿中濃度の測定値とMarshモデル及びSchniderモデルによる予測値との間には有意な正の相関があった一方で、プロポフォールの脳内濃度の実測値が、Marshモデル及びSchniderモデルによる予測値や血漿中濃度の実測値よりも高いことが明らかになった。つまり、この結果は、MarshモデルやSchniderモデルで予測される作用部位の濃度が、実際の脳内濃度を反映していなかったことを示すものであった。しかしながら、Marshモデル及びSchniderモデルで用いられている脳内分布速度定数はk
1e
のみであるため、予測される作用部位濃度が血漿中濃度より高くなることはありえない。つまり、本発明者は、Marshモデル及びSchniderモデルが、本質的に、脳内濃度を正しく反映できない構造的欠陥を有しているという課題に直面した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、薬物の脳内濃度をより正しく予測できる新たなPK/PDモデルを構築し提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、定常状態の脳内濃度だけでなく、逐次脳内濃度のデータも考慮した結果、MarshモデルやSchniderモデルの3コンパートメントモデルをベースに、さらに、脳コンパートメントへの分配速度定数k
1e
と定常状態での血漿中濃度に対する脳内濃度の比に相当する分配係数をK
p
とを組み合わせて改変したマルチコンパートメントモデルを構築し、この実測濃度に基づく新しい動的モデルによって、薬物の脳内濃度をより正確に予測することができることを見出した。本発明は、この知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 静注により患者に持続的に投与する薬物の脳内濃度の予測方法であり、
中央コンパートメント、迅速平衡化コンパートメント、及び低速平衡化コンパートメントを含む3コンパートメントモデルに、さらに脳コンパートメントが付加されたマルチコンパートメントモデルを用い、
前記中央コンパートメントから前記脳コンパートメントへの分配速度定数k
1e
と、定常状態での前記薬物の血漿中濃度に対する脳内濃度の比に相当する分配係数K
p
との積に基づいて、脳内濃度の予測値を導出する工程を含む、方法。
項2. 前記脳内濃度が、下記式により導出される、項1に記載の方法:
TIFF
2024059499000001.tif
18
158
式中、

1e
は前記中央コンパートメントから前記脳コンパートメントへの分配速度定数、

p
は定常状態での前記薬物の血漿中濃度に対する脳内濃度の比に相当する分配係数、

central
は前記中央コンパートメントの前記薬物の血漿中濃度、

e0
’は前記脳コンパートメントからの消失速度定数、及び

brain
は前記脳コンパートメントの前記薬物の前記脳内濃度を表す。
項3. 前記k
1e
が、前記中央コンパートメントと前記脳コンパートメントとのコンパートメント間クリアランスQ
4
を前記中央コンパートメントの容積V
1
で除して算出される値であり、
前記k
e0
’が前記k
1e
と同じ値である、項2に記載の方法。
項4. 前記K
p
が1.1~1.5である、項1~3のいずれかに記載の方法。
項5. 前記k
1e
が0.008~0.03である、項1~4のいずれかに記載の方法。
項6. 前記k
1e
前記K
p
値との積が、0.01~0.04である、項1~5のいずれかに記載の方法。
項7. 前記薬物が中枢神経系作用薬からなる群より選択される、項1~6のいずれかに記載の方法。
項8. 静注により患者に持続的に投与する薬物の投与を補助するための補助装置であり、
前記薬物の脳内濃度の予測値を計算するための予測部を含み、
前記予測部が、中央コンパートメント、迅速平衡化コンパートメント、及び低速平衡化コンパートメントを含む3コンパートメントモデルに、さらに脳コンパートメントが付加されたマルチコンパートメントモデルを用い、前記中央コンパートメントから前記脳コンパートメントへの分配速度定数k
1e
と、定常状態での前記薬物の血漿中濃度に対する脳内濃度の比に相当する分配係数K
p
との積に基づいて、脳内濃度の予測値を導出する、補助装置。
項9. 前記予測値及び/又は前記薬物の目標濃度を表示処理する表示処理部をさらに含む、項8に記載の補助装置。
項10. 前記予測値及び前記薬物の目標濃度に基づいて、前記薬物の投与量を計算する計算部をさらに含む、項8又は9に記載の補助装置。
項11. 薬物の投与量を前記投与量に制御する投与器制御部をさらに含む、項10に記載の補助装置。
項12. 項8~11のいずれかに記載の補助装置と、前記薬物を前記患者に投与する投与器とを含む、薬物投与補助システム。
項13. 静注により患者に持続的に投与する薬物の投与を補助するための薬物投与補助プログラムであり、
コンピュータを、
中央コンパートメント、迅速平衡化コンパートメント、及び低速平衡化コンパートメントを含む3コンパートメントモデルに、さらに脳コンパートメントが付加されたマルチコンパートメントモデルを用い、前記中央コンパートメントから前記脳コンパートメントへの分配速度定数k
1e
と、定常状態での前記薬物の血漿中濃度に対する脳内濃度の比に相当する分配係数K
p
との積に基づいて、脳内濃度の予測値を導出する予測部として機能させるための、プログラム。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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