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公開番号2023066992
公報種別公開特許公報(A)
公開日2023-05-16
出願番号2021177902
出願日2021-10-29
発明の名称既設石積み擁壁の耐震補強工法
出願人学校法人五島育英会,エスティーエンジニアリング株式会社,岡三リビック株式会社
代理人個人,個人,個人,個人
主分類E02D 17/20 20060101AFI20230509BHJP(水工;基礎;土砂の移送)
要約【課題】経済性と工期、及び、補強効果を改善すること、大規模地震に対しても設計照査が可能とすること、及び、初期工事費と施工速度の改善、更にライフサイクルコストを低減すること。
【解決手段】既設石積み擁壁の壁面を覆うように鉄筋7aの配置が可能な厚さwの張りコンクリート7が配置され、その張りコンクリート7の上端側の背面側上面に設定した延長区間whに引張ボルト1の頭部が、下端側には圧縮杭2の頭部が連結された擁壁横断面から成り、引張ボルト1と圧縮杭2の擁壁延長方向打設間隔B1、B2は1.0m~2.5mの大きなピッチとした既設石積み擁壁の耐震補強工法を採用した。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
間知石、割石又はコンクリートブロック(6)からなる既設石積み擁壁の耐震補強工法において、
前記既設石積み擁壁の頂部の背面側、及び、前記既設石積み擁壁の袖部の前面側において、それぞれ呼び径φ115mm~φ146mmのリングビット(27)付きのアウターパイプ(28)とセンタービット(26)付きのインナーロッド(24)を用いた2重管削孔により、鉛直方向に対する角度を所定の下向き角度(δ1、δ2)、擁壁延長方向間隔(B1、B2)を1.0m~2.5mとして削孔作業を進め、それぞれの前記削孔(1h、2h)が所定の深さに達したら前記インナーロッド(24)と前記センタービット(26)を回収する第1工程と、
周辺地山との付着改善を目的とした複数のフックスペーサ(12)と底面支圧プレート(15)を配置した充実断面の鋼棒(1a、2a)と注入ホースをアウターパイプ(28)内に挿入し、又は、周辺地山との付着改善を目的とした複数のフックスペーサ(12)と底面支圧プレート(15)を配置した中空鋼棒(1a、2a)をアウターパイプ(28)内に挿入する第2工程と、
前記注入ホース又は前記中空鋼棒(1a、2a)の内孔を介してセメントグラウト(3)を前記削孔(1h、2h)に逐次下側から上方に向かって充填する第3工程と、
擁壁頂部の背面側の前記削孔(1h)における引張ボルト(1)の構築として、前記リングビット(27)付きの前記アウターパイプ(28)を前記セメントグラウト(3)を加圧充填しながら回収し、その後前記鋼棒(1a)に挿通した頭部支圧板(5)を前記鋼棒(1a)に配置した上下2個のナット(36、36)で前記鋼棒(1a)の上部の所定位置に締め付けて固定する第4工程と、
擁壁袖部の前面側の前記削孔(2h)における圧縮杭(2)の構築として、その上端に落下防止蓋(38)のついた直径φ76.3~φ114.3mm、長さ2~5mの口元補強管(4)を、前記鋼棒(2a)の上部の所定位置に挿通して落下防止ナット(37)で吊り下げて支持し、前記リングビット(27)付きの前記アウターパイプ(28)を前記セメントグラウト(3)を加圧充填しながら回収し、前記落下防止蓋(38)及び前記鋼棒(2a)に挿通した頭部支圧板(5)を前記鋼棒(2a)の上側から装着した六角ナット(36)と前記落下防止ナット(37)との間で締め付けて固定する第5工程と、
所定量の鉄筋(7a)を前記既設石積み擁壁の前面区間(vh)と前記既設石積み擁壁の頂部の背面側上面に設定した延長区間(wh)に配筋し、前記鉄筋(7a)を収容可能な厚さ(w)の張りコンクリート(7)を前記既設石積み擁壁の前面区間(vh)と前記延長区間(wh)に打設する第6工程と、
を備え、
前記張りコンクリート(7)の前記延長区間(wh)に前記引張ボルト(1)の頭部が、前記張りコンクリート(7)の下端に前記圧縮杭(2)の頭部が連結されている既設石積み擁壁の耐震補強工法。
続きを表示(約 420 文字)【請求項2】
前記センタービット(26)付きの前記インナーロッド(24)に代えて、ロスト型センタービット(41)付きで周辺地山との付着改善を目的とした複数のフックスペーサ(12)を配置した中空断面の鋼棒(1a、2a)を採用して削孔作業を完了し、その鋼棒(1a、2a)を回収することなく残置して前記セメントグラウト(3)を充填し、前記センタービット(26)付きの前記インナーロッド(24)の回収工程と、前記注入ホースの挿入工程と前記充実断面の鋼棒(1a、2a)又は前記中空鋼棒(1a、2a)の前記アウターパイプ(28)内への挿入工程を省略した請求項1に記載の既設石積み擁壁の耐震補強工法。
【請求項3】
上記圧縮杭(2)の口元補強管(4)に、その内面及び外面に凹凸を有し内面側及び外面側の前記セメントグラウト(3)との付着力改善を目的としたディンプル鋼管(4’)を用いた請求項1又は2に記載の既設石積み擁壁の耐震補強工法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
既設の石積みや既設のブロック積み擁壁(以下、既設石積み擁壁と総称する)の耐震補強工法の提供に関する。
続きを表示(約 3,300 文字)【背景技術】
【0002】
歴史的に数多く存在する石積みやブロック積み擁壁において、間知石や割石などの目地部にセメントを間詰めしないで構築した空積みの石積みや、ブロック積み擁壁、及び、積み石の合端や表面目地部に限定した間詰めコンクリートで練積みした石積み擁壁は、建設当時の耐震補強に関する知見が少ない時代に構築されたものも数多く存在している。また、これらの既設石積み擁壁は、近年の建築や土木分野の擁壁工指針などで設計評価が不能な規格適用外の擁壁とされている。実際、これらの中には、過去の地震や雨水の侵入、基礎部の沈下などによる裏グリ石の沈降と石積み壁面のはらみ出しが年月を掛けて進行しているものも多く、更に大規模地震などが発生すると石積み壁の倒壊に至る可能性がある。
【0003】
平成7年の兵庫県南部地震や平成16年の新潟県中越地震では、盛土や斜面に腹付けした盛土や石積み擁壁などが滑動崩落を起こし、多くの宅地被害が発生した。これに対して平成18年に宅地造成等規制法が改訂され、新規宅地造成に係る耐震性を確保するための技術基準が法令上明確になり、国土交通省ではこれに準じた「宅地耐震化推進事業」を創設し、多くの地方公共団体も参加して各自治体で危険個所に対する調査・対策事業の整理が推進しており、平成23年の東北地方太平洋沖地震の事後対策と新しい知見の更新が追加され、各種の対策工選定の考え方を示した「大規模盛土造成地の滑動崩壊対策推進ガイドライン及び同解説」(以下「ガイドライン」と称す)が平成27年に発行され、その後の平成29年3月には「被災宅地災害復旧技術マニュアル(熊本地震対応)国土交通省・熊本県・熊本市の連名で発行」にて大幅に活用され、今後も発生が予想される首都直下型地震や南海トラフ地震なども視野にガイドラインの内容研鑽が継続している。
【0004】
前記ガイドラインの内容は、国の「激甚災害指定」を受けた大規模地震対策でも活用され、提案されている対策工も液状化対策工、抑止杭工、永久アンカー工、地山補強土工などが幅広く紹介されているが、この中で本願の石積み擁壁の耐震補強工法は、宅地間の狭隘地にある既設石積み擁壁に対する「地山補強土工法(擁壁補強)」として、鉄筋挿入工(引張補強)と(圧縮補強:圧縮型ルートパイル=網状鉄筋挿入工)が断面図付きで提案されているが、この内の圧縮補強:圧縮型ルートパイルの改良工法に該当する。
【0005】
本願は、圧縮補強の圧縮型ルートパイルの特徴と課題を説明するとともに、発明者らの調査・研究により判明した既設石積み擁壁の新しい耐震補強策工法を提案するものだが、既設石積み擁壁の補強に豊富な採用実績があるEPルートパイル工法(登録商標)での過去の特許文献が見いだせないため、本願の「従来の技術」として、圧縮型ルートパイルを既設石積み擁壁補強に応用した例を用いて説明する。
【0006】
従来の技術であるルートパイル工法は、例えば、社団法人地盤工学会冊子、土質基礎工学ライブラリー29、補強土工法(平成13年発行第8版)の3.3章に解説があり、前記ガイドラインにも「圧縮型ルートパイル」として紹介され、過去の大規模地震後の既設石積み擁壁の補修・補強の実績が豊富な工法のため、従来の技術として引用すると共に、これに対する本願の新規性や改善点を説明する。
【0007】
その従来技術として、例えば、図19及至図21Dに示すように、高さ(h)が4.0mの既設石積み擁壁の上側背面近傍に、圧縮型ルートパイル(82)を構築した事例がある。同ルートパイルは、表層が砂質土で標準貫入試験のN値が10の軟弱地盤(I)であるため、その下の礫質土からなるN値が50の強固な定着地盤(II)まで貫通させて定着している横断面図と縦断平面図であり、斜め背面方向と鉛直方向にξ1=20°、ξ2=0°で2列のパイルが配置され、パイル(82)の削孔呼び径はφ115mmであり、擁壁延長方向には各列のピッチが削孔呼び径の7倍以下(つまり、Sn=800mm以下)で千鳥配置に打設され、密なピッチのパイル頭部は共にキャッピングビーム(81)により連結されており、パイル(82)間のハッチングした軟弱地盤部には「地中疑似擁壁(N)」を形成しており、図19の横断面図に示すように、土はこの地中疑似擁壁(N)をすり抜けることができずに円弧滑り力(Pr)の抑止する工法であり、一般には石積み擁壁以外の盛土補強土壁や重力式擁壁などの上部構造物が載る基礎の補強事例にも多用され、それらの基礎反力である鉛直力、水平力、及び、転倒モーメントもこの「地中疑似擁壁(N)」で支持する工法である。
【0008】
標準貫入試験のN値とは、土質力学の分野で多用される土の強度を示す値であり、試験はシンプルでSPT(Standard Penetration Test)試験とも称して当初米国で提案された試験で今では世界中で同じであり、63.5kgの重りを国際標準のサンプラー貫入ロッドの頭に75cm上から自然落下させ、各試験地層を30cm貫通するための打撃数(Number of Blow)であり、土質には土砂、粘性土、礫質土(岩石も含む)の3種類があり、それぞれにこのN値を使って長年研究された工学式でそれぞれの土質に応じた土の引張ボルトや圧縮ボルトとのセメントグラウトを介した極限周面摩擦力や水平バネ乗数(K

)を求めることができ、杭基礎の水平変位量を求める汎用解析ソフトも用意されている。本願の事例では軟弱な地盤(I)は土砂でN=10と比較的軟弱であり、その地層線(20)より下の定着地盤(II)は礫質土でN=50で良質で強固である。
【0009】
従来技術である図19乃至図21Dに示す工法では、既設石積み擁壁の延長方向に沿う2列の圧縮型ルートパイルを備え、それぞれ、石積み擁壁の上側背面近傍から呼び径φ115mmにて汎用小型アンカーマシンによる2重管掘りを所定の深さまで実施した後に、インナーロッドを回収してから、注入ホースを削孔(82h)内のアウターパイプに挿入し、例えば設計呼び強度24(N/mm

)程度の所定の化学添加剤を配合した汎用セメントグラウト(86)が空中を落下して分離しないように下側から逐次充填し、口元までセメントグラウト(86)が充填されたら、ボルト材として充実断面で連続したねじを有する直径φ29mmのねじ節異形棒鋼からなる芯材(82a)を所定の長さになるように接続カップラー(84)で接続し、芯材(82a)が削孔(82h)の中央に配置されるように複数のスペーサ(85)が配置され、また付着効果を発現するための鍔材(83)が略1.0mピッチで配置され、これら全部を組み込んでから、アウターパイプ内に充填されたセメントグラウト(86)の中に立て込む手法がとられ、その後でアウターパイプ内のセメントグラウト(86)を加圧し、加圧浸透した削孔壁(82’)を構築しながら逐次、アウターパイプを回収し、その後で頭部の支圧板(87)をキャッピングビーム(81)の所定の高さで上下の両側から六角ナット(88)で固定してルートパイル(82)の構築を終える手法を取っている。
【0010】
圧縮型ルートパイルは引張力が全てのパイルに生じないように「地中疑似擁壁(N)」を構築する必要があるが、図19に示す検討基準面(▽Lo)にて疑似擁壁水平断面における各構成部材の照査において、擁壁高(h)の1/3の高さに生じる円弧滑り線(10’)に沿った滑り力(Pr)の水平分力(Prh)による転倒モーメントに、キャッピングビーム(81)重心と疑似擁壁(N)の重心に生じる地震時の水平慣性力による検討基準面(▽Lo)での転倒モーメントを加えた全転倒モーメントはかなり大きい値となる。
(【0011】以降は省略されています)

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