発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、試料と滴定液の化学反応を利用して、試料の濃度等を測定するための化学滴定方法、及び化学滴定システムに関する。 続きを表示(約 2,400 文字)【背景技術】 【0002】 試料の定量分析を行う場合に、化学滴定の手法が用いられることがある。従来の化学滴定においては、図11に示す様に、物質拡散を利用したフローインジェクション滴定が行われる例がある。この例では、指示薬が添加された滴定液の流路に試料を注入し、撹拌器で撹拌した後に、下流側の流路において、流れ方向に対する指示薬の色調の分布を計測することで、試料の濃度を測定する(例えば、非特許文献1参照。)。 【0003】 しかしながら、このようなフローインジェクション滴定においては、物質拡散が充分に生じる迄に一定時間以上の時間を必要とし、また、装置規模も大きく、手順が複雑であるため、現場分析が困難であった。さらに、分析時に要求されるスキルも高く、オペレータも制限されていた。 【0004】 また、装置規模の縮小のための、マイクロ流体デバイスを用いた滴定法も提案されている(例えば、非特許文献2~4参照。)。このマイクロ流体デバイスは、基板上に微細な流路が形成され、その流路内で試料と滴定液の化学反応が進められるものであり、その使用により、試料の量は少量に抑えられ、複数の化学反応を集積化することが可能であり、分析時間の低減が可能となる。しかしながら、マイクロ流体デバイスを用いた化学滴定を行うためには、デバイス内に複雑な流路設計が必要であり、装置の設計コストが増大する場合があった。また、正確な濃度測定のためには、デジタル的計測が求められており、化学滴定による分析手法の簡易化には限界があった。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0005】 フローインジェクション滴定に関する論文 J. Ruzicka, E. H. Hansen, H. Mosbaek, Anal. Chim. Acta, 92, 235-249 (1977). 十字型マイクロ流体デバイスを用いた物質反応場の創成 C. Kanzaki, A. Inagawa, G. Fukuhara, T. Okada, M. Numata, ChemSystemsChem, 2, e2000006 (2020). マイクロ流体デバイスを用いた化学滴定方法R. Ferrigno, J. N. Lee, X.Jiang, G. M. Whitesides, Anal. Chem. 76, 76, 2273 (2004). マイクロ流体デバイスを用いた化学滴定方法H. Song, H. Li, M. S. Munson, T. G. Van Ha, R. F. Ismagilov, Anal. Chem. 78, 4839 (2006). 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 上記のような問題点に鑑み、本発明は、より簡易な装置または容易な方法で、より精度よい化学滴定を行うことが可能な技術を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記の課題を解決するため、本開示は以下の構成を採用する。すなわち、試料に滴定液を加えた際の、試料または滴定液に加えられた指示薬の示す色調により、試料の濃度を測定する、化学滴定方法であって、 前記試料と前記滴定液とを滴定のための流路に各々流入させ、前記試料の流路に、前記 滴定液の流路を合流させ、 前記試料の流路と前記滴定液の流路の合流点の下流側の流路である合流後流路の、所定の測定点における、前記合流後流路の流れ方向と垂直方向についての、前記指示薬の色が変化する境界と基準点との間の距離に基づいて、試料の濃度を測定することを特徴とする、化学滴定方法である。 【0008】 本開示においては、試料と滴定液とを、滴定のための流路に各々流入させ、試料の流路に、滴定液の流路を合流させて、合流後流路とする。なお、試料と滴定液のいずれかまたは、両方には、滴定のための指示薬が添加されている。そして、本開示においては、合流後流路の、所定の測定点における、合流後流路の流れ方向と垂直方向についての、指示薬の色が変化する境界と基準点との間の距離に基づいて、試料の濃度を測定する。ここで、基準点とは、指示薬の色が変化する境界との距離が精度よく計測できる点であればよく、特に制限はない。基準点は例えば、測定点における合流後流路の片側の壁面であってもよい。あるいは、合流後流路において指示薬の色が変化する境界が流れの両側に現れる場合には、基準点は測定点における、合流後流路の流れ方向と垂直方向についての、指示薬の色調が変化する片側の境界であってもよい。 【0009】 上記の通り、本開示では、試料と滴定液の流路を合流させて合流後流路とする。この合流後流路においては、試料と滴定液とが互いに拡散して化学反応を起こしながら下流側に流れていく。その結果、例えば、指示薬において中和点(あるいは当量点)を示す色調の領域の幅が、下流側に行くにつれて増加する。 【0010】 そして、本開示においては、測定点において、指示薬によって示される、特定の色調の領域の境界の位置を、基準点との間の距離として検知し、その距離に基づいて、試料の濃度を測定する。例えば、試料の濃度が高ければ、合流後流路において、指示薬によって示される、特定の色調の領域の境界はより早く広がる。試料の濃度が低ければ、逆に、合流後流路における、指示薬によって示される、特定の色調の領域の境界の広がり方は遅くなる。すなわち、本開示においては、合流後流路の所定の測定点において、指示薬によって示される、特定の色調の領域の境界の位置に基づいて、試料の濃度を測定するのである。 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する