発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、多血小板血漿点眼液の製造法に関する。 続きを表示(約 3,300 文字)【背景技術】 【0002】 移植片対宿主病、角膜移植、シェーグレン症候群や重症ドライアイなどでは、難治性の角結膜上皮障害を生じ、自覚症状の悪化のみならず、視力低下、易感染性、穿孔などを起こすことが問題となっている。これらの角結膜上皮障害に対する治療は、点眼療法が中心であり、本邦ではジクアホソルナトリウム、レバミピドなどのムチン産生促進剤やヒアルロン酸ナトリウム含有点眼液などの角結膜上皮障害治療点眼薬が承認され、臨床に用いられている。しかし、これらの角結膜上皮障害治療に対する点眼療法では奏効しない難治性の角結膜上皮障害が存在し、新規治療薬の開発の必要性がある。 【0003】 このような観点から、涙液と類似した成分であり、創傷治癒に必要な生理活性物質を含む血清(以下、AS)が点眼液として用いられている(非特許文献1~4)。一方で、AS点眼液でも奏効しない難治性の角結膜上皮障害が存在する。最近になって、多くの生理活性物質を含む多血小板血漿(以下、PRP)が角結膜上皮障害に対する新規点眼薬として期待されている(非特許文献5)。しかし、PRP点眼液における血球成分ならびに角膜上皮障害の治癒促進に寄与する成長因子や、有効成分の作製から使用されるまでの保存期間における動態と、その無菌性は明らかになっていない。 【先行技術文献】 【非特許文献】 【0004】 Tsubota K, Goto E, Fujita H, Ono M, Inoue H, Saito I, et al. Treatment of dry eye by autologous serum application in Sjogren's syndrome. Br J Ophthalmol. 1999;83(4):390-5. Tsubota K, Goto E, Shimmura S, Shimazaki J. Treatment of persistent corneal epithelial defect by autologous serum application. Ophthalmology. 1999;106(10):1984-9. Akyol-Salman I. Effects of Autologous Serum Eye Drops on Corneal Wound Healing After Superficial Keratectomy in Rabbits. Cornea. 2006;25(10):1178-81. Semeraro F, Forbice E, Nascimbeni G, Taglietti M, Romano V, Guerra G, et al. Effect of Autologous Serum Eye Drops in Patients with Sjogren Syndrome-related Dry Eye: Clinical and In Vivo Confocal Microscopy Evaluation of the Ocular Surface. In Vivo. 2016;30(6):931-8. Kim KM, Shin YT, Kim HK. Effect of autologous platelet-rich plasma on persistent corneal epithelial defect after infectious keratitis. Jpn J Ophthalmol. 2012;56(6):544-50. 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 PRP点眼液は、患者の血液を採取して遠心分離により作製される自家点眼液であるため、PRP中に含まれる角膜上皮の創傷治癒に必要な生理活性物質であるTGFβ1やEGFの濃度が十分であるか否かは不明である。さらに作製から使用されるまでの保存期間における生理活性物質の動態や、点眼液の無菌性は明らかになっていない。 従って、本発明の課題は、生理活性物質量が十分に高くなったPRP点眼液の簡便な製造法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 そこで本発明者は、採取した血液から作製したPRPを冷蔵保存し経時的な生理活性物質含量を測定すると共に、点眼液中の細菌、真菌の発生を確認したところ、保存7日後からTGFβ1及びEGF濃度が作製直後よりも顕著に上昇し、35日後程度までは細菌などの発生もなく、生理活性物質濃度が上昇したPRP点眼液が容易に得られることを見出し、本発明を完成した。 【0007】 すなわち、本発明は、次の発明[1]~[6]を提供するものである。 [1]血液から作製したPRPを7日から35日冷蔵保存することを特徴とする、TGFβ1及びEGF濃度が上昇したPRP点眼液の製造法。 [2]PRP中のTGFβ1濃度が35pg/mL以上、EGF濃度が1000pg/mL以上である[1]記載のPRP点眼液の製造法。 [3]PRPが、自家点眼用PRP点眼液である[1]又は[2]記載のPRP点眼液の製造法。 [4]冷蔵保存が、温度0℃~8℃の保存である[1]~[3]のいずれかに記載のPRP点眼液の製造法。 [5]PRP点眼液が、自家角結膜上皮障害治療用PRP点眼液である[1]~[4]のいずれかに記載のPRP点眼液の製造法。 [6]冷蔵保存期間が10日から35日である[1]~[5]のいずれかに記載のPRP点眼液の製造法。 【発明の効果】 【0008】 本発明によれば、角結膜上皮障害治療に有用なTGFβ1及びEGF濃度が十分に上昇したPRP点眼液が簡便な操作により得られる。また、得られた点眼液は、細菌などの発生もなく安全に自家点眼液として使用できる。特に、慢性移植片対宿主病、Stevens-Johnson症候群、シェーグレン症候群、重症ドライアイなどの難治性の角結膜 上皮障害治療用の自家PRP点眼液の製造法として有用である。 【図面の簡単な説明】 【0009】 PRPの血小板数の経時変化を示す。 PRPのフィブロネクチン濃度の経時変化を示す。 PRPのTGFβ1濃度の経時変化を示す。 PRPのEGF濃度の経時変化を示す。 PRP作製28日後の細菌・真菌の培養検査結果を示す。 【発明を実施するための形態】 【0010】 本発明のTGFβ1及びEGF濃度が上昇したPRP点眼液の製造法は、血液から作製したPRPを7日から35日冷蔵保存することを特徴とする。 原料である血液は、点眼液を投与しようとする患者の血液である。血液からPRPを作製するには、通常、血液採取後速やかに遠心分離することにより行われる。遠心分離の方法にはいくつかの方法があり、800gで10分間遠心分離する方法、2000gで7分間遠心分離する方法、400gで10分間遠心した後に2000gで3分間遠心する2期的な遠心分離の方法なども存在する。このうち、2000gで7分間遠心分離する方法、400gで10分間遠心した後に2000gで3分間遠心する2期的な遠心分離方法が、冷蔵保存により、TGFβ1及びEGF濃度が顕著に上昇する点で好ましい。その他にも多血小板血漿作製キットがすでにいくつか開発されており、それらを用いて作製することも可能である。なお、PRP点眼液中には、300000~900000個/μLの血小板が含まれているのが好ましい。 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPatで参照する