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公開番号2024166684
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-29
出願番号2023082933
出願日2023-05-19
発明の名称軸受用樹脂製保持器の強度評価方法および軸受用樹脂製保持器の強度評価用治具セット
出願人NTN株式会社
代理人個人,個人,個人
主分類G01M 13/04 20190101AFI20241122BHJP(測定;試験)
要約【課題】樹脂製保持器の最も強度の弱い部分を特定することが難しい場合に、その樹脂製保持器の強度を正確に評価することが可能な軸受用樹脂製保持器の強度評価方法を提供する。
【解決手段】第1治具1と第2治具2の間に、軸受用の樹脂製保持器の円環状の被試験体Wを配置し、第1治具1には保持器当接面14が形成され、第2治具2の外周には被試験体Wに挿入される円すい面12が形成され、第1治具1と第2治具2を軸方向に近づくように相対移動させることで、第2治具2の外周の円すい面12で被試験体Wの内周を軸方向に押圧し、その円すい面12から作用する径方向外方の分力で被試験体Wを拡径変形させることで樹脂製保持器の強度評価を行なう。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
軸方向に対向して配置した第1治具(1)と第2治具(2)を使用し、
前記第1治具(1)と前記第2治具(2)の間に、軸受用の樹脂製保持器の円環状の被試験体(W)を配置し、
前記第1治具(1)には、前記被試験体(W)の前記第2治具(2)の側とは反対側の面に当接する保持器当接面(14)が形成され、
前記第2治具(2)の外周には、前記第1治具(1)の側に向かって次第に縮径する勾配をもち、前記被試験体(W)に挿入される円すい面(12)が形成され、
前記第1治具(1)と前記第2治具(2)を軸方向に近づくように相対移動させることで、前記第2治具(2)の外周の前記円すい面(12)で前記被試験体(W)の内周を軸方向に押圧し、その円すい面(12)から作用する径方向外方の分力で前記被試験体(W)を拡径変形させることで樹脂製保持器の強度評価を行なう、軸受用樹脂製保持器の強度評価方法。
続きを表示(約 2,000 文字)【請求項2】
前記被試験体(W)は、小径側円環部(3)と、前記小径側円環部(3)から軸方向に間隔をおいて設けられる大径側円環部(4)と、前記小径側円環部(3)と前記大径側円環部(4)の間を軸方向に延びて両者を連結する複数の柱部(5)とを有する円すいころ軸受用の樹脂製保持器の全体またはその樹脂製保持器の前記複数の柱部(5)を切断して得られる前記大径側円環部(4)の側の部分または前記小径側円環部(3)の側の部分であり、
前記第2治具(2)の外周の前記円すい面(12)に、前記複数の柱部(5)に対応する位置を軸方向に延びる複数の柱部逃がし溝(13)が設けられている、請求項1に記載の軸受用樹脂製保持器の強度評価方法。
【請求項3】
前記被試験体(W)は、小径側円環部(3)と、前記小径側円環部(3)から軸方向に間隔をおいて設けられる大径側円環部(4)と、前記小径側円環部(3)と前記大径側円環部(4)の間を軸方向に延びて両者を連結する複数の柱部(5)とを有する円すいころ軸受用の樹脂製保持器の全体であり、
前記第1治具(1)の前記保持器当接面(14)は、前記小径側円環部(3)の前記大径側円環部(4)の側とは反対側の軸方向端面に当接する軸直角平面である、請求項2に記載の軸受用樹脂製保持器の強度評価方法。
【請求項4】
前記被試験体(W)は、小径側円環部(3)と、前記小径側円環部(3)から軸方向に間隔をおいて設けられる大径側円環部(4)と、前記小径側円環部(3)と前記大径側円環部(4)の間を軸方向に延びて両者を連結する複数の柱部(5)とを有する円すいころ軸受用の樹脂製保持器の前記複数の柱部(5)を切断して得られる前記大径側円環部(4)の側の部分であり、
前記第1治具(1)には、前記柱部(5)を収容する柱部収容凹部(15)が周方向に間隔をおいて複数形成され、前記保持器当接面(14)は、周方向に隣り合う前記柱部収容凹部(15)の間に形成された軸直角平面である、請求項2に記載の軸受用樹脂製保持器の強度評価方法。
【請求項5】
前記第1治具(1)と前記第2治具(2)のうちの一方の治具の外周には、他方の治具に向かって軸方向に延びる円筒状の芯合わせ外周面(16)が設けられ、前記他方の治具には、前記芯合わせ外周面(16)に軸方向にスライド可能に嵌合する円筒状の芯合わせ内周面(17)が設けられている、請求項4に記載の軸受用樹脂製保持器の強度評価方法。
【請求項6】
前記芯合わせ外周面(16)と前記芯合わせ内周面(17)のうちの一方に軸方向に延びる周方向位置決め溝(18)が設けられ、他方に、前記周方向位置決め溝(18)に嵌合する周方向位置決め突起(19)が設けられ、前記周方向位置決め溝(18)と前記周方向位置決め突起(19)の嵌合により、前記複数の柱部逃がし溝(13)の周方向位置と前記複数の柱部収容凹部(15)の周方向位置とが対応するように前記第1治具(1)と前記第2治具(2)を周方向に位置決めする、請求項5に記載の軸受用樹脂製保持器の強度評価方法。
【請求項7】
前記被試験体(W)は、円環部(21)と、前記円環部(21)の側面に周方向に間隔をおいて形成された玉を収容する複数の球面状のポケット(22)と、周方向に隣り合う前記ポケット(22)の間に設けられた軸方向に直角な複数の平坦部(23)とを有する玉軸受用の樹脂製保持器であり、
前記第1治具(1)は、周方向に間隔をおいて前記複数の平坦部(23)に対応する位置に複数の軸方向突起(25)を有し、
前記保持器当接面(14)は、前記平坦部(23)に当接するように前記軸方向突起(25)の先端に形成された軸直角平面である、請求項1に記載の軸受用樹脂製保持器の強度評価方法。
【請求項8】
前記第1治具(1)と前記第2治具(2)のうちの一方の治具の外周には、他方の治具に向かって軸方向に延びる円筒状の芯合わせ外周面(16)が設けられ、前記他方の治具には、前記芯合わせ外周面(16)に軸方向にスライド可能に嵌合する円筒状の芯合わせ内周面(17)が設けられている、請求項7に記載の軸受用樹脂製保持器の強度評価方法。
【請求項9】
前記芯合わせ外周面(16)と前記芯合わせ内周面(17)のうちの一方に軸方向に延びる回り止め溝(26)が設けられ、他方に、前記回り止め溝(26)に嵌合して前記第1治具(1)と前記第2治具(2)を回り止めする回り止め突起(27)が設けられている、請求項8に記載の軸受用樹脂製保持器の強度評価方法。
【請求項10】
前記円すい面(12)は、Ra1.2μm以下の面粗さをもつ研削仕上げ面である、請求項1から9のいずれかに記載の軸受用樹脂製保持器の強度評価方法。
(【請求項11】以降は省略されています)

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受用樹脂製保持器の強度評価方法、およびその方法に使用する軸受用樹脂製保持器の強度評価用治具セットに関する。
続きを表示(約 2,000 文字)【背景技術】
【0002】
近年、自動車用デファレンシャル装置、自動車用トランスミッション装置、バッテリー式電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)用の走行モータの減速装置などの自動車分野や、ロボット用減速機、建設機械、トラクターなどの産業機械分野で使用される転がり軸受(円すいころ軸受、深溝玉軸受など)では、転動体を保持する保持器として、樹脂製保持器を使用することが増えている。
【0003】
樹脂製保持器は、金属製保持器よりも軽量である、形状工夫により潤滑剤保持の機能をもたせることができる、高速回転時の遠心力による変形を抑えることができる、などといった利点を有する。一方、樹脂製保持器は、金属製保持器よりも強度が低いので、保持器の強度を確保するため、実際に樹脂成形した保持器の強度を正確に評価することが重要となる。
【0004】
ここで、実際に樹脂成形した保持器の強度を評価する方法として、特許文献1や特許文献2に記載の方法が知られている。
【0005】
特許文献1の強度評価方法は、同文献の図1に示される円すいころ軸受用の樹脂製保持器を対象としている。円すいころ軸受用の樹脂製保持器は、小径側円環部と、その小径側円環部から軸方向に間隔をおいて設けられる大径側円環部と、小径側円環部と大径側円環部の間を軸方向に延びて両者を連結する複数の柱部とを有する。そして、同文献の図8のように、複数の柱部を切断して得られる大径側円環部の側の部分を被試験体として準備し、その被試験体の内周に、半円形状の断面をもつ一対の治具を円形断面となるように組み合わせた状態で嵌め込み、その一対の治具を径方向に離反するように相対移動させることで被試験体に引張力を付与し、被試験体が破断した時の引張力の大きさに基づいて樹脂製保持器の強度評価を行なうというものである。
【0006】
特許文献2の強度評価方法は、同文献の図3のように、円環部と、円環部の側面に周方向に間隔をおいて形成された玉を収容する複数の球面状のポケットとを有する玉軸受用の樹脂製保持器を被試験体として使用している。そして、同文献の図4のように、被試験体の内周に、半円形状の断面をもつ一対の治具を円形断面となるように組み合わせた状態で嵌め込み、その一対の治具を径方向に離反するように相対移動させることで被試験体に引張力を付与し、被試験体が破断した時の引張力の大きさに基づいて樹脂製保持器の強度評価を行なうというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2020-24013号公報
特開2017-57956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1、2の強度評価方法は、いずれも、円環状の被試験体の内周に、半円形状の断面をもつ一対の治具を円形断面となるように組み合わせた状態で嵌め込み、その一対の治具を径方向に離反するように相対移動させることで被試験体に引張力を付与し、被試験体が破断する時の引張力の大きさを調べるというものである。
【0009】
この強度評価方法では、被試験体に作用する引張力が、半円形状の一対の治具の合わせ目に対応する位置(円環状の被試験体の180°反対の2箇所の位置)に集中するため、樹脂製保持器の強度を適切に評価するには、前記2箇所の位置に、被試験体の最も強度の弱い部分がくるように、被試験体をセットする必要がある。ここで、一般に、被試験体の最も強度の弱い部分は、樹脂製保持器のウエルド部(樹脂成形を行なうときに、成形金型のキャビティ内で溶融樹脂が合流する部分)である。
【0010】
しかしながら、周方向に間隔をおいて複数箇所(例えば3箇所以上)のウエルド部をもつ樹脂製保持器の場合、樹脂製保持器を射出成形する際の成形金型の温度分布や圧力分布などの諸条件によって、ウエルド部同士に強度の差が生じることがある。この場合、その複数箇所のウエルド部のうち、いずれの箇所のウエルド部が最も強度の弱いウエルド部であるかを特定するのが難しい。さらに、樹脂製保持器を射出成形する際の成形金型の温度分布や圧力分布などの諸条件によって、実際のウエルド部の位置が、設計上のウエルド部の位置から周方向にずれることもある。そのため、被試験体の最も強度の弱い部分が、半円形状の一対の治具の合わせ目に対応する位置にくるように被試験体をセットするのは難しく、樹脂製保持器の強度を正確に評価することが難しいという問題があることに本願の発明者らは着目した。
(【0011】以降は省略されています)

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