TOP特許意匠商標
特許ウォッチ Twitter
公開番号2024108824
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-08-13
出願番号2023013416
出願日2023-01-31
発明の名称鋼板および鋼板の製造方法
出願人株式会社神戸製鋼所
代理人個人,個人
主分類C22C 38/00 20060101AFI20240805BHJP(冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理)
要約【課題】高強度と低降伏比を示すと共に優れた靭性を示す鋼板であって、該鋼板を用い、厳しい条件で溶接を行った場合にも、優れた熱影響部の靭性(HAZ靭性)を確保できる鋼板と、該鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】所定の元素が各含有量範囲を満たし、残部:Feおよび不可避不純物であって、式(1)で表されるCeqが0.50質量%~1.30質量%、式(2)で表されるPcmが0.15質量%~0.35質量%、および式(3)で表されるMPが31以上を満たし、かつ鋼板の板厚/4の位置の組織が、ベイナイトとマルテンサイトの合計:95面積%以上、およびMA:1.0面積%以上、5.0面積%未満を満たす、鋼板。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
成分組成が、
C :0.020質量%以上、0.045質量%未満、
Si:0.01質量%~0.50質量%、
Mn:1.00質量%~2.50質量%、
P :0質量%超、0.015質量%以下、
S :0質量%超、0.008質量%以下、
Al:0質量%超、0.080質量%以下、
Cu:0.10質量%以上、0.60質量%未満、
Ni:0.10質量%~2.70質量%、
Cr:0.90質量%~3.00質量%、
Mo:0.10質量%~1.50質量%、
Ti:0.004質量%~0.030質量%、
B :0.0004質量%~0.0030質量%、
N :0.0010質量%~0.0070質量%、および
Ca:0.0004質量%~0.0030質量%を満たし、
残部がFeおよび不可避不純物であり、更に、
下記式(1)で表されるCeqが0.50質量%~1.30質量%、
下記式(2)で表されるPcmが0.15質量%~0.35質量%、および
下記式(3)で表されるMPが31以上を満たし、
鋼板の板厚/4の位置の組織が、
ベイナイトとマルテンサイトの合計:95面積%以上、および
MA:1.0面積%以上、5.0面積%未満を満たす、鋼板。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14・・・(1)
式(1)中のC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Vはそれぞれ、質量%で示したC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Vの含有量を示し、含まない元素はゼロとする。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B・・・(2)
式(2)中のC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bはそれぞれ、質量%で示したC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bの含有量を示し、含まない元素はゼロとする。
MP=(1/[C])×(2.0×[Cr]+[Mo])/([Si]+[Mn]+0.3×[Ni]+[Cu])・・・(3)
式(3)中の[C]、[Cr]、[Mo]、[Si]、[Mn]、[Ni]、[Cu]はそれぞれ、質量%で示したC、Cr、Mo、Si、Mn、Ni、Cuの含有量を示し、含まない元素はゼロとする。
続きを表示(約 450 文字)【請求項2】
前記成分組成は、更に、
REM:0質量%超、0.003質量%以下
を含む、請求項1に記載の鋼板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鋼板を製造する方法であって、
請求項1または2に記載の成分組成を有する鋼片を、1000℃~1250℃に加熱してから、熱間圧延を、960℃~830℃の温度域での累積圧下率:25%以上、圧延終了温度:800℃~920℃の条件で行うこと、および、
(i)熱間圧延後に、800℃から500℃までを1.0℃/s未満の平均冷却速度で冷却し、その後、300℃~650℃で焼戻しを行うこと、または、
(ii)熱間圧延後に、800℃から300℃以下の冷却停止温度までを1.0℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、次いで、760℃~950℃の再加熱温度に再加熱し、再加熱温度から500℃までを1.0℃/s未満の平均冷却速度で冷却し、その後、300℃~650℃で焼戻しを行うこと、
を含む、鋼板の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本開示は、鋼板および鋼板の製造方法に関する。
続きを表示(約 3,300 文字)【背景技術】
【0002】
建築構造物は、近年、大型化が進んでおり、該建築構造物に用いられる鋼板は厚肉化と更なる高強度化が求められている。また、建築構造物に用いられる鋼板には、溶接により形成される溶接接合部の靭性と、地震発生時の安全性の確保も求められる。
【0003】
例えば特許文献1には、近年の鋼板の厚手化による溶接入熱の増大に伴い、溶接後の冷却速度が低下していることが、結晶粒の粗大化とMAの増加を招き、HAZ靭性の確保が一層困難となっていることが示されている。そして、この問題点を解消するため、大入熱溶接HAZにおける靭性の主要な支配因子である結晶粒径の微細化とMAの低減に着眼し、鋼板(母材)の高強度化と大入熱溶接HAZの靭性の確保とを両立させるために検討を行ったことが示されている。具体的には、鋼板の焼入れ性を一定以上に高めて、HAZの結晶粒を微細化することが行われている。また、鋼板の焼入れ性を一定以上に高めるには、焼入れ倍数DIを10以上とすること、焼入れ性を高める元素としてNiが極めて有効であって、Niを1.3%以上含有させることで、焼入れ性向上による細粒化効果とMA微細化効果とが得られることが示されている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、所定の成分組成を満たし、降伏強さが700MPa以上、引張強さ780MPa以上である大入熱溶接熱影響部靭性に優れた高強度厚鋼板を得ることが示されている。特許文献2には、極低炭素化して大入熱溶接熱影響部における島状マルテンサイトの生成を抑えることが、大入熱溶接熱影響部靭性の向上のために重要であること、そして、極低炭素化した上で、所望の引張強さ:780MPa以上の高強度と優れた大入熱溶接熱影響部靭性とを兼備するには、MnおよびCrを含有させることが重要であると示されている。また特許文献2には、低C-高Mn化により靭性が低下しやすくなるが、Crを多く含有することでHAZ組織での粒界破壊を抑制できること、更に、低P化とCr添加による粒界破壊発生の抑制により、大入熱溶接熱影響部靭性をさらに安定して向上できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2020-204092号公報
特開2017-155254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、Niを積極的に添加すると共に、Cuを、溶接性及びHAZ靭性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度と靭性を向上させる元素であるとして、その含有量を0.60質量%以上としている。しかし、Niは高価であるためコスト高を招き、Cuは、熱間圧延時の割れ(表面性状の悪化)と熱影響部の硬化を招くため、HAZ靭性の更なる向上は難しいと考える。
【0007】
特許文献2では、熱間圧延後に再加熱焼入れ-焼戻しを行って高強度鋼板を製造しているが、該方法で製造すると、鋼板の強度と靭性の確保には有効であるが、水冷により平坦度が悪くなりやすく、高い生産性の確保が難しい。
【0008】
また特許文献1と特許文献2では、溶接継手のHAZ靭性の評価に用いる溶接継手を、スキンプレートとダイアフラムをT字状に配置し、エレクトロスラグ溶接法(ESW)によって溶接し、T字継手を作製している。この特許文献1と特許文献2のT字継手は、スキンプレートとダイアフラムが同鋼種であって、板厚は同一であるか、ダイアフラムの板厚がスキンプレートの板厚よりも薄い(板厚範囲は40~100mm)。しかし近年、特許文献1、2よりも更に厳しい溶接が施工される場合がある。特に、ダイアフラムの板厚がスキンプレートの板厚を上回る、スキンプレートとダイアフラムの組み合わせに対し大入熱溶接することが、例えば大型建築構造物の建設で施工効率向上等の観点から求められている。該組み合わせに対する大入熱溶接では、冷却速度が、ダイアフラムの板厚がスキンプレートの板厚と同一または薄い場合よりも遅くなり、優れた熱影響部(HAZ)の靭性(「衝撃特性」ともいう。HAZの靭性を「HAZ靭性」という)を確保することが困難であるといった問題がある。特に、高強度と低降伏比を確保しつつ、上記厳しい条件で大入熱溶接を行った場合のHAZ靭性を確保することは達成されなかった。
【0009】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高強度、特には強度が630MPa級以上であって、地震の際の安全性向上の観点から低降伏比を示すと共に優れた靭性(上記HAZ靭性と区別するため「母材靭性」ということがある)を示す鋼板であって、該鋼板を用い、上述の通り、ダイアフラムの板厚がスキンプレートの板厚を上回るスキンプレートとダイアフラムの組み合わせに対し、大入熱溶接を行うといった、厳しい条件で大入熱溶接を行った場合であっても優れたHAZ靭性を確保できる(以下、この特性を優れた「溶接性」ということがある)鋼板と、該鋼板の製造方法を提供することにある。なお、以下では、本開示の鋼板と、該鋼板を用い溶接することで形成される熱影響部(HAZ)とを区別するため、本開示の鋼板を特に母材ということがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様1は、
成分組成が、
C :0.020質量%以上、0.045質量%未満、
Si:0.01質量%~0.50質量%、
Mn:1.00質量%~2.50質量%、
P :0質量%超、0.015質量%以下、
S :0質量%超、0.008質量%以下、
Al:0質量%超、0.080質量%以下、
Cu:0.10質量%以上、0.60質量%未満、
Ni:0.10質量%~2.70質量%、
Cr:0.90質量%~3.00質量%、
Mo:0.10質量%~1.50質量%、
Ti:0.004質量%~0.030質量%、
B :0.0004質量%~0.0030質量%、
N :0.0010質量%~0.0070質量%、および
Ca:0.0004質量%~0.0030質量%を満たし、
残部がFeおよび不可避不純物であり、更に、
下記式(1)で表されるCeqが0.50質量%~1.30質量%、
下記式(2)で表されるPcmが0.15質量%~0.35質量%、および
下記式(3)で表されるMPが31以上を満たし、
鋼板の板厚/4の位置の組織が、
ベイナイトとマルテンサイトの合計:95面積%以上、および
MA:1.0面積%以上、5.0面積%未満を満たす、鋼板である。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14・・・(1)
式(1)中のC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Vはそれぞれ、質量%で示したC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Vの含有量を示し、含まない元素はゼロとする。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B・・・(2)
式(2)中のC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bはそれぞれ、質量%で示したC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bの含有量を示し、含まない元素はゼロとする。
MP=(1/[C])×(2.0×[Cr]+[Mo])/([Si]+[Mn]+0.3×[Ni]+[Cu])・・・(3)
式(3)中の[C]、[Cr]、[Mo]、[Si]、[Mn]、[Ni]、[Cu]はそれぞれ、質量%で示したC、Cr、Mo、Si、Mn、Ni、Cuの含有量を示し、含まない元素はゼロとする。
(【0011】以降は省略されています)

この特許をJ-PlatPatで参照する

関連特許

大同特殊鋼株式会社
金属粉末
19日前
株式会社神戸製鋼所
鋼板
1か月前
日本特殊陶業株式会社
複合材
5日前
株式会社神戸製鋼所
銅合金板
12日前
日本製鉄株式会社
鋼材
4日前
日本製鉄株式会社
鋼材
1か月前
石福金属興業株式会社
耐熱性Ir合金
1か月前
日本製鉄株式会社
ボルト
8日前
日本製鉄株式会社
鋼部品
1か月前
日本製鉄株式会社
鋼部品
1か月前
日本製鉄株式会社
鋼材
1か月前
日本製鉄株式会社
鋼材
1か月前
日本製鉄株式会社
鋼矢板
18日前
住友金属鉱山株式会社
スラグ移送設備
15日前
日本製鉄株式会社
継目無鋼管
1か月前
日本製鉄株式会社
継目無鋼管
1か月前
日本製鉄株式会社
継目無鋼管
1か月前
住友金属鉱山株式会社
集塵装置
1か月前
NTN株式会社
転動部材
1か月前
MAアルミニウム株式会社
アルミニウムクラッド箔
20日前
日鉄ステンレス株式会社
溶接継手
22日前
日鉄ステンレス株式会社
溶接継手
15日前
株式会社神戸製鋼所
鋼板および鋼板の製造方法
1か月前
JFEスチール株式会社
軸受用鋼
1か月前
セイコーエプソン株式会社
チクソ成形体
2か月前
JFEスチール株式会社
製鉄ダストの処理方法
12日前
日鉄ステンレス株式会社
ステンレス鋼
1か月前
住友金属鉱山株式会社
コバルト水溶液の製造方法
18日前
日本冶金工業株式会社
フェロニッケル合金とその製造方法
1か月前
住友金属鉱山株式会社
ニッケル酸化鉱石の製錬方法
1か月前
住友金属鉱山株式会社
ニッケル酸化鉱石の製錬方法
1か月前
住友金属鉱山株式会社
ニッケル酸化鉱石の製錬方法
1か月前
多木化学株式会社
フッ化リチウムアルミニウム溶解液の製造方法
1か月前
住友金属鉱山株式会社
ニッケル酸化鉱石の製錬方法
8日前
住友金属鉱山株式会社
ニッケル酸化鉱石の製錬方法
8日前
住友金属鉱山株式会社
ニッケル酸化鉱石の製錬方法
8日前
続きを見る