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公開番号2025088197
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-06-11
出願番号2023202740
出願日2023-11-30
発明の名称セラミックス焼成体の製造方法、成形用組成物
出願人合同会社モルージ
代理人弁理士法人グローバル・アイピー東京
主分類C04B 35/638 20060101AFI20250604BHJP(セメント;コンクリート;人造石;セラミックス;耐火物)
要約【課題】内部に気泡・膨れ・クラックが無い健全な脱脂体を得ることができる成形用組成物、及びセラミックス焼成体の製造方法を提供する。
【解決手段】平均粒径1.0μm以下のセラミックス粉末30-70体積%と、有機バインダ30-70体積%とを含む成形用組成物を用い、前記有機バインダが、有機溶剤に対して溶融または膨潤しない熱可塑性樹脂(A)15~50体積%と;極性基を保有する熱可塑性樹脂(B)5~40体積%と;有機溶剤に溶解する融点70℃以下の有機化合物(C)30~75体積%と;を含み、前記組成物から、射出成形機又は押出成形機を用いて成形体を得る工程と、溶剤を用いて成形用組成物中の前記有機バインダの30体積%以上に相当する量の有機化合物(C)を温度40℃以上80℃以下で抽出脱脂する工程と、抽出脱脂後の成形体を加熱して、残存する有機バインダを脱脂する工程と、セラミックス成形体を焼成する工程とを含む方法。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
焼成可能な平均粒径1.0μm以下のセラミックス粉末30-70体積%と、有機バインダ30-70体積%とを含む成形用組成物を用いた、セラミックス焼成体の製造方法であって、前記有機バインダが、
有機溶剤に対して溶融または膨潤しない熱可塑性樹脂(A)と;
極性基を保有する熱可塑性樹脂(B)と;
有機溶剤に溶解する融点70℃以下の有機化合物(C)と;を含み、
前記熱可塑性樹脂(A)は、前記有機バインダ全体に占める割合が15~50体積%となる量で含有され、
前記熱可塑性樹脂(B)は、前記有機バインダ全体に占める割合が5~40体積%となる量で含有され、
前記有機化合物(C)は、前記有機バインダ全体に占める割合が30~75体積%となる量で含有されており、セラミックス焼成体の製造方法は、以下の工程:
前記成形用組成物から、射出成形機または押出成形機を用いて、成形体を得る工程と、
得られた成形体中の前記有機化合物(C)を溶出することができる溶剤を用いて、前記成形用組成物中の前記有機バインダの30体積%以上に相当する量の前記有機化合物(C)を、温度40℃以上80℃以下で抽出脱脂する工程と、
抽出脱脂後の成形体を加熱して、成形体に残存する前記有機バインダを脱脂して、セラミックス成形体を得る工程と、
セラミックス成形体を焼成して、セラミックス焼成体を得る工程と、
を含む、セラミックス焼成体の製造方法。
続きを表示(約 1,200 文字)【請求項2】
前記熱可塑性樹脂(A)が、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマーおよびポリアセタールからなる群より選択される一種またはこれらの任意の混合物を含み、
前記熱可塑性樹脂(B)が、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレングリシジルメタクリレート共重合体、低密度ポリエチレンおよびポリプロピレンランダムコポリマーからなる群より選択される一種またはこれらの任意の混合物を含み、
前記有機化合物(C)が、パラフィンワックス、およびマイクロクリスタリンワックスからなる群より選択される一種またはこれらの任意の混合物を含む、請求項1に記載のセラミックス焼成体の製造方法。
【請求項3】
抽出脱脂工程において用いられる溶剤が、アセトン、メタノール、エタノール、およびイソプロピルアルコールからなる群より選択される一種またはこれらの任意の混合物を含む、請求項1に記載のセラミックス焼成体の製造方法。
【請求項4】
焼成可能な平均粒径1.0μm以下のセラミックス粉末30-70体積%と、有機バインダ30-70体積%とを含む成形用組成物であって、前記有機バインダが、
有機溶剤に対して溶融または膨潤しない熱可塑性樹脂(A)と;
極性基を保有する熱可塑性樹脂(B)と;
有機溶剤に溶解する融点70℃以下の有機化合物(C)と;を含み、
前記熱可塑性樹脂(A)は、前記有機バインダ全体に占める割合が15~50体積%ととなる量で含有され、
前記熱可塑性樹脂(B)は、前記有機バインダ全体に占める割合が5~40体積%となる量で含有され、
前記有機化合物(C)は、前記有機バインダ全体に占める割合が30~70体積%となる量で含有されている、成形用組成物。
【請求項5】
セラミックスが、アルミナ、ジルコニア、マグネシアおよびチタニアからなる群より選択される酸化物セラミックス、窒化アルミおよび窒化珪素からなる群より選択される窒化物セラミックス、および炭化ケイ素および炭化ホウ素からなる群より選択される炭化物セラミックス、およびこれらの1以上の混合物である、請求項4に記載の成形用組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(A)が、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、およびポリアセタールからなる群より選択される一種またはこれらの任意の混合物を含み、
前記熱可塑性樹脂(B)が、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレングリシジルメタクリレート共重合体、低密度ポリエチレンおよびポリプロピレンランダムコポリマーからなる群より選択される一種またはこれらの任意の混合物を含み、
前記有機化合物(C)が、パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスからなる群より選択される一種またはこれらの任意の混合物を含む、請求項4または5に記載の成形用組成物。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形及び押出成形により焼成可能な平均粒径1μm以下のセラミックス粉末を用いた成形体を製造し、この成形体から焼成体製品を製造する方法に用いるための押出成形用組成物、射出成形用組成物並びに脱脂方法に関する。
続きを表示(約 3,400 文字)【背景技術】
【0002】
セラミックスの射出成形及び押出成形の際には所望する形状に加工するために有機バインダを添加する必要がある。有機バインダは成形時に形状を付与するために必要なものであり、加熱により添加した有機バインダを除去する必要がある。従来からある射出成形、及び押出成形の成形工程を図1に示す。近年ではセラミックスの強度、耐熱性、熱伝導性等を向上させるためにできるだけ焼成密度を高めたセラミックス製品が強く求められている。焼成密度を高めるためにはできるだけ微細な平均粒径1μm以下の粉末を使用する必要があり、有機バインダによっては不活性ガス中でバインダを除去しないと残留炭素分が残る場合がある。また、粉末の粒子径が1μm以下になると加熱脱脂時間が24時間を超え、肉厚が10mmを超えるような成形体の場合には加熱脱脂時間100時間以上にしても加熱脱脂中にクラック、膨れが発生することが多い。
上記を解決するために抽出脱脂方法が知られており、特許文献1及び特許文献2には水を用いた脱脂方法が開示されている。
【0003】
抽出する溶媒に水を用いた場合には水溶性バインダを用いる必要があるが、成形材料並びに成形体の保管・再生の際に吸湿率が高くなり成形体の流動性の低下並びに成形体の強度が低下する場合がある。また、成形材料に水分を含むことでカビの発生等により材料の再生が困難になる。また、水を抽出溶剤として用いた場合には沸点が100℃であり、一般的な非水系有機溶媒であるケトン系有機溶剤、芳香族系有機溶剤、塩素系有機溶剤では沸点が100℃以下で、蒸気圧も水よりも小さいものが多いことから、水を用いた抽出脱脂では有機溶剤を用いた抽出脱脂と比較して乾燥時間が長時間化する。
【0004】
また特許文献3、4及び非特許文献1、2には金属粉末に対して有機バインダを添加し得られた射出成形体を有機溶剤で抽出脱脂を行う方法が記載されている。しかしながら、本方法をセラミックス粉末に適応して成形体を作成し、有機溶剤で抽出脱脂を行うと、抽出脱脂工程において成形体に膨れを生じ、健全な脱脂体を抽出脱脂後に得ることが困難である。金属粉末射出成形法で用いられる粉末は平均粒径が5~10μm程度であり、セラミックス粉末成形における平均粒径が0.1~1μm程度と比較して粒径が10~100倍程度と大きいために、用いるバインダ中の樹脂成分が有機溶剤に対して溶解しなくとも膨潤する程度では金属粉末成形体を健全に抽出脱脂することが可能である。一方、粒子径が金属粉末よりも小さいセラミックス粉末を用いた射出成形及び押出成形では粉末粒子径が小さくなることで、容易に有機溶剤が成形体から抜け出ることが困難となり、抽出脱脂工程において膨れ、クラックが発生する。
【0005】
また、特許文献5にはセラミックス粉末を用いて有機バインダとしてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタールを用い、抽出溶剤にはケトン系有機溶剤、ハロゲン系有機溶剤、炭化水素系有機溶剤、芳香族系有機溶剤で抽出脱脂を行う方法が記載されている。特許文献5においても0.1μm以下の粉末を用いた場合には肉厚が3mm以上になる場合、抽出脱脂中にクラックを生じやすい。また、ハロゲン系の溶剤を実施例に使用しているが、環境問題の観点から塩素系有機溶剤のみならず臭素系有機溶剤の使用に対しても制限が加わることから、使用する溶剤に対する使用制限についても留意する必要が生じている。また、複雑形状の成形体を作成した場合にはクラックが生じやすいという問題もある。
最近では微細な平均粒径0.1μm以下の粉末を用いることで低温での焼成が可能になることが多くの技術文献で確認されている(非特許文献3)。しかしながら、平均粒径0.1μm以下の粉末を用いた場合には上記従来の抽出脱脂法においてクラックの発生を防ぐことが容易ではなく、健全な焼成体を得ることが非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特許第4330086号
特開平10-110201号公報
特開平02-194105号公報
特表2009-527651号公報
特開2021-138983号公報
【非特許文献】
【0007】
「粉体および粉末冶金」第38巻、第6号、80頁
「粉体および粉末冶金」49巻、第6号、518頁
「まてりあ」第33巻、第2号、155頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明はセラミックス粉末の射出成形及び押出成形において、複雑形状の成形体が作成でき、抽出脱脂工程を、アセトンもしくはアルコール等の有機溶剤を用いて短時間で行うことができ、脱脂工程、セラミックス成形体の焼成工程において、セラミックス焼成体の膨れや気泡の発生を防ぐことができる、セラミックス焼成体の製造方法、ならびに当該製造方法に用いられる成形用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の実施形態は、焼成可能な平均粒径1.0μm以下のセラミックス粉末30-70体積%と、有機バインダ30-70体積%とを含む成形用組成物を用いた、セラミックス焼成体の製造方法であって、前記有機バインダは、
有機溶剤に対して溶融または膨潤しない熱可塑性樹脂(A)と;
極性基を保有する熱可塑性樹脂(B)と;
有機溶剤に溶解する融点70以下の有機化合物(C)と;を含む有機バインダと、
を含み、
前記熱可塑性樹脂(A)は、前記有機バインダ全体に占める割合が15~50体積%ととなる量で含有され、
前記熱可塑性樹脂(B)は、前記有機バインダ全体に占める割合が5~40体積%となる量で含有され、
前記有機化合物(C)は、前記有機バインダ全体に占める割合が30~65体積%となる量で含有されており、セラミックス焼成体の製造方法は、以下の工程:
前記成形用組成物から、射出成形機または押出成形機を用いて、成形体を得る工程と、
得られた成形体中の前記有機化合物(C)を溶出することができる溶剤を用いて、前記成形用組成物中の全有機バインダの30体積%以上に相当する量の前記有機化合物(C)を、温度40℃以上80℃以下で抽出脱脂する工程と、
抽出脱脂後の成形体を加熱して、成形体に残存する前記有機バインダを脱脂して、セラミックス成形体を得る工程と、
セラミックス成形体を焼成して、セラミックス焼成体を得る工程と、
を含む、セラミックス焼成体の製造方法である。
さらに本発明の二の実施形態は、焼成可能な平均粒径1.0μm以下のセラミックス粉末30-70体積%と、有機バインダ30-70体積%とを含む成形用組成物であって、前記有機バインダが、
有機溶剤に対して溶融または膨潤しない熱可塑性樹脂(A)と;
極性基を保有する熱可塑性樹脂(B)と;
有機溶剤に溶解する融点40℃~60℃の有機化合物(C)と;を含み、
前記熱可塑性樹脂(A)は、前記有機バインダ全体に占める割合が15~50体積%となる量で含有され、
前記熱可塑性樹脂(B)は、前記有機バインダ全体に占める割合が5~40体積%となる量で含有され、
前記有機化合物(C)は、前記有機バインダ全体に占める割合が30~70体積%となる量で含有されている、前記成形用組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる成形用組成物並びに脱脂方法を用いることにより、粒径1μm以下の小さいセラミックス粉末による射出成形及び押出成形において、複雑形状の成形体に対してアセトンもしくはアルコール等の溶剤を用いて、抽出脱脂工程と加熱脱脂工程を短時間に行うことにより、得られた脱脂体も膨れ・クラック等の欠陥の無い脱脂体であり、結果として健全な焼成体を短時間で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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