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公開番号
2024167402
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-12-03
出願番号
2024153474,2023004529
出願日
2024-09-05,2023-01-16
発明の名称
衛生陶器
出願人
TOTO株式会社
代理人
個人
,
個人
,
個人
,
個人
主分類
C04B
41/89 20060101AFI20241126BHJP(セメント;コンクリート;人造石;セラミックス;耐火物)
要約
【課題】良好な防汚性と高い耐久性とを兼ね備えた衛生陶器の提供。
【解決手段】衛生陶器用の素地1と、素地の表面に設けられた釉薬層2とを備えてなる衛生陶器であって、釉薬層は、その表面の算術平均線粗さRaが0.03μm以上2.5μm以下であり、衛生陶器の表面は、パーフルオロポリエーテル鎖3を含み、衛生陶器の表面のX線光電子分光法(XPS)測定によるスペクトルのピーク分離によって得られる、パーフルオロポリエーテル鎖のC-F結合を有する全ての炭素原子の数に対する、パーフルオロポリエーテル鎖における酸素原子の数の割合が0.1以上1.0以下であり、パーフルオロポリエーテル鎖におけるC-F結合を有する全ての炭素原子の数に対する、パーフルオロポリエーテル鎖におけるCF
3
結合を有する炭素原子の数の割合が20at%以下であることを特徴とする衛生陶器。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
衛生陶器用の素地と、当該素地の表面に設けられた釉薬層とを備えてなる衛生陶器であって、
前記釉薬層は、その表面の算術平均線粗さRaが0.03μm以上2.5μm以下であり、
前記衛生陶器の表面は、パーフルオロポリエーテル鎖を含み、
前記衛生陶器の表面をX線光電子分光法(XPS)測定することによって得られるスペクトルのピーク分離によって得られる、前記パーフルオロポリエーテル鎖におけるC-F結合を有する全ての炭素原子の数に対する前記パーフルオロポリエーテル鎖における酸素原子の数の割合が0.1以上1.0以下であり、
前記ピーク分離によって得られる、前記パーフルオロポリエーテル鎖におけるC-F結合を有する全ての炭素原子の数に対する前記パーフルオロポリエーテル鎖におけるCF
3
結合を有する炭素原子の数の割合が20at%以下であることを特徴とする衛生陶器。
続きを表示(約 1,100 文字)
【請求項2】
前記釉薬層は、その表面の算術平均線粗さRaが0.03μm以上1.5μm以下である、請求項1に記載の衛生陶器。
【請求項3】
前記釉薬層は、その表面の算術平均線粗さRaが0.03μm以上1.0μm以下である、請求項2に記載の衛生陶器。
【請求項4】
前記ピーク分離によって得られる、前記パーフルオロポリエーテル鎖におけるC-F結合を有する全ての炭素原子の数に対する前記パーフルオロポリエーテル鎖における酸素原子の数の割合が0.2以上1.0以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の衛生陶器。
【請求項5】
前記ピーク分離によって得られる、前記パーフルオロポリエーテル鎖におけるC-F結合を有する全ての炭素原子の数に対する前記パーフルオロポリエーテル鎖における酸素原子の数の割合が0.4以上1.0以下である、請求項4に記載の衛生陶器。
【請求項6】
XPSの深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、前記衛生陶器の表面のXPS測定点を始点とし、この始点におけるフッ素原子のピーク面積(A
s
)に対する、ある測定点におけるフッ素原子のピーク面積(A
a
)とその1点前の測定点におけるフッ素原子のピーク面積(A
b
)との差の絶対値の割合が1.0at%以下となった終点までのスパッタ時間が60秒以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の衛生陶器。
【請求項7】
XPSの深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、前記衛生陶器の表面のXPS測定点を始点とし、この始点におけるフッ素原子のピーク面積(A
s
)に対する、ある測定点におけるフッ素原子のピーク面積(A
a
)とその1点前の測定点におけるフッ素原子のピーク面積(A
b
)との差の絶対値の割合が1.0at%以下となった終点までのスパッタ時間が60秒以下である、請求項4に記載の衛生陶器。
【請求項8】
XPSの深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、前記衛生陶器の表面のXPS測定点を始点とし、この始点におけるフッ素原子のピーク面積(A
s
)に対する、ある測定点におけるフッ素原子のピーク面積(A
a
)とその1点前の測定点におけるフッ素原子のピーク面積(A
b
)との差の絶対値の割合が1.0at%以下となった終点までのスパッタ時間が60秒以下である、請求項5に記載の衛生陶器。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、水がかかり得る環境で使用される、良好な防汚性と高い耐久性とを兼ね備えた衛生陶器に関する。
続きを表示(約 3,200 文字)
【背景技術】
【0002】
水まわりで用いられる部材(いわゆる、水まわり部材)は、水が存在する環境下で用いられる。よって、水まわり部材の表面には水が付着しやすい。この表面に付着した水が乾燥することで、水まわり部材の表面に、水道水に含まれる成分であるシリカやカルシウムを含んだ水垢が形成される。また、水まわり部材の表面には、タンパク質や皮脂、カビ等の微生物、金属石鹸などの汚れも付着しやすい。水まわり部材の表面への水垢等の汚れの付着を防止し、また汚れの除去性を高めるために、保護層で被覆するなどして部材表面を改質する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、水まわり部材に保護層を設けることで部材表面に着色したり、保護層の傷つき・剥離などにより部材の外観が損なわれたりすることが問題であった。この問題を解決するため、従来から、水まわり部材と化学結合する単分子膜が利用されている。単分子膜は視認できない薄い層であるため、単分子膜を設けることにより、部材の外観を損なうことなく単分子膜の機能を付与することができる。また、単分子膜は水まわり部材と化学結合するため、膜の耐久性も向上する。例えば、フルオロアルキルシラン化合物を含む単分子膜は、部材表面を保護すると共に、防汚効果も有することが知られている。例えば、特開2005-206455号公報(特許文献1)には、タイルの表面にフルオロアルキルシラン化合物を含む膜を形成することで、耐摩耗性を有する防汚性窯業製品が得られることが記載されている。
【0004】
一方、水まわり部材の表面に全く汚れを付着させないことは困難であり、汚れは清掃によって除去される。例えば、衛生陶器においては、その表面の平滑性を上げて汚れを除去し易くすることが試みられている。しかし、汚れが固着することによりその表面が粗化し、表面の親水性が低下してしまうことがある。このような固着した汚れを容易に除去できる衛生陶器が依然求められている。固着した汚れや水垢を除去する場合、強アルカリ性や強酸性の洗剤を使用したり、拭き取るのに必要な力が強くなったり、拭き取り回数が多くなったりする。つまり、水まわり部材は高負荷の使用環境におかれる。その為、上記したフルオロアルキルシラン化合物を含む単分子膜のような薄膜は早期に機能喪失してしまうことがある。そこで近年では、フルオロアルキルシラン化合物と比較して水まわり部材との密着性や耐久性に優れたパーフルオロポリエーテル鎖を含有する化合物を部材表面に適用する技術が提案されている。
【0005】
例えば、特開2011-021088号公報(特許文献2)には、釉薬層を有する衛生陶器の表面に、パーフルオロポリエーテルからなる主剤と、特定平均分子量のアルカンを含む溶媒とを含む防汚塗料を塗布して防汚層を形成することが記載されている。特許文献2によれば、パーフルオロポリエーテルにはCF
3
側鎖が含まれ(段落0013-0014)、このパーフルオロポリエーテルと特定平均分子量のアルカンを含む防汚塗料を塗布することで平滑性に優れた防汚層を形成する(段落0016)とされている。
【0006】
また、特開2021-113323号公報(特許文献3)には、化学強化ガラスの表面に、パーフルオロポリエーテル基含有化合物を含む表面処理剤を塗布することにより、良好な摩擦耐久性を有する硬化層が形成されることが記載されている。具体的には、パーフルオロポリエーテル基に含まれる-(OC
6
F
12
)
a
-(OC
5
F
10
)
b
-(OC
4
F
8
)
c
-(OC
3
F
6
)
d
-(OC
2
F
4
)
e
-(OCF
2
)
f
-において、e/f比は0.9以上であることが必須であり、これにより硬化層の撥水撥油性が高くなる。一方で、e/f比が低くなり過ぎると、硬化層の潤滑性(表面滑り性)が低減し、e/f比が高くなり過ぎると、硬化層の動摩擦係数が高くなり、十分な摩擦耐久性が得られないことが記載されている(段落0039)。より具体的には、e/f比は1.0以上であることが好ましく(段落0039)、[実施例]において、e/f比がそれぞれ1.08、1.03、1.08であるパーフルオロポリエーテル基含有化合物を含む実施例1、2、3の表面処理剤を塗布して形成された硬化層は、耐消しゴム摩擦性試験において良好な結果を示したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特開2005-206455号公報
特開2011-021088号公報
特開2021-113323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、一般に高い耐久性を有するとされているパーフルオロポリエーテル鎖を表面に含む衛生陶器の中にも、高負荷の環境下で使用した場合、機能喪失してしまうものがあることを確認した。そして、今般、良好な防汚性とより高い耐久性、とりわけ耐摺動性とを兼ね備えた衛生陶器の新規な構成を見出した。すなわち、衛生陶器固有の凹凸表面が特定のパーフルオロポリエーテル鎖を備えることで、汚れの付着を効果的に防止でき、また一般に高負荷の環境下での清掃が必要とされるような汚れであっても、容易に、すなわち小さい清掃負荷で除去できることを見出した。さらに、汚れを除去する際の清掃負荷に対して高い耐久性、とりわけ耐摺動性を有する衛生陶器が得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による衛生陶器は、
衛生陶器用の素地と、当該素地の表面に設けられた釉薬層とを備えてなり、
前記釉薬層は、その表面の算術平均線粗さRaが0.03μm以上2.5μm以下であり、
前記衛生陶器の表面は、パーフルオロポリエーテル鎖を含み、
前記衛生陶器の表面をX線光電子分光法(XPS)測定することによって得られるスペクトルのピーク分離によって得られる、前記パーフルオロポリエーテル鎖におけるC-F結合を有する全ての炭素原子の数に対する前記パーフルオロポリエーテル鎖における酸素原子の数の割合が0.1以上1.0以下であり、
前記ピーク分離によって得られる、前記パーフルオロポリエーテル鎖におけるC-F結合を有する全ての炭素原子の数に対する前記パーフルオロポリエーテル鎖におけるCF
3
結合を有する炭素原子の数の割合が20at%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の表面粗さを有する釉薬層表面に特定のパーフルオロポリエーテル鎖を備えることにより、高負荷の環境下(汚れを除去する際に、強アルカリ性や強酸性の洗剤を使用したり、強い力で拭き取ったり、拭き取り回数が多くなるなどの環境下)で使用されたとしても、摺動力に対する優れた耐久性を有するため、良好な防汚性を維持可能な衛生陶器が提供される。加えて、本発明によれば、衛生陶器固有の性質(例えば、質感、光沢性、硬度など)を活かした美しい外観を維持したまま、上述した良好な防汚性と高い耐久性とを兼ね備えた衛生陶器が提供される。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)
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