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公開番号
2024163826
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2024-11-22
出願番号
2023091968
出願日
2023-05-12
発明の名称
弾塑性有限要素法におけるデータ同化の演算方法
出願人
個人
代理人
主分類
G16Z
99/00 20190101AFI20241115BHJP(特定の用途分野に特に適合した情報通信技術)
要約
【課題】観測データに適合する物性等の未知変数をデータ同化により推定する演算方法を提供する。
【解決手段】弾塑性解析で使用する解析変数の内、観測データに適合させる解析パラメータを未知変数として探索するデータ同化の演算方法であって、弾塑性解析で得られる応力やひずみ、節点変位、損傷の進行具合等の状態変数に対する未知変数の感度を算定することで、観測データの値と解析により推定される値との差、すなわち観測誤差に対する感度を算定する感度算定部と、感度を用いて、観測データに適合するような未知変数の更新量を決定する最適解探索部を有する。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
弾塑性解析で使用する解析変数を設定し、
前記解析変数の内、観測データに適合させる変数を未知変数と定義し、
前記弾塑性解析で得られる応力やひずみ、節点変位、損傷の進行具合等の変数値を状態変数と定義する時、
前記未知変数を仮定して、各時刻の前記状態量を推定することで、前記観測データを解析により推定し、
実際の前記観測データの値と解析により推定される値との差、すなわち観測誤差を最小化することを目標として、前記未知変数を更新するデータ同化の演算方法であって、
前記未知変数が変動したことにより他の変数が変動した大きさを前記未知変数が変動した大きさで割った値を感度と定義する時、
前記未知変数の前記状態変数に対する前記感度を求めることで、前記観測誤差に対する前記感度を求める感度算定部と、
前記感度算定部から引き継がれる前記感度を用いて、前記観測データに適合するような前記未知変数の更新量を決定する最適解探索部を有することを特徴とする
データ同化の演算方法。
続きを表示(約 1,600 文字)
【請求項2】
前記感度算定部で実施される前記未知変数の前記観測誤差に対する感度算定方法であって、
前記未知変数の変動により、隣接する位置の前記状態変数が変動する大きさを算定し、
隣接する位置の前記状態変数の変動量が時間の経過と共にどのように変化していくかを算定しつつ、
他地点の前記状態変数が前記未知変数の変動量と隣接する位置の前記状態変数の変動量の影響を受けてどのように変化していくかを算定することで、
前記未知変数の前記観測誤差に対する前記感度を算定することを特徴とする
感度算定方法。
【請求項3】
前記最適解探索部で実施される前記未知変数の更新幅決定方法であって、
前記感度算定部から引き継がれる前記観測誤差に対する前記感度を並べたnp次元勾配ベクトルg(τ)を前記未知変数の更新回数τを用いて定義し、
現在の前記勾配ベクトルと過去の前記勾配ベクトルとの二乗平均G(τ)
TIFF
2024163826000102.tif
11
55
を定数γにより値調整しながら更新することで、
前記未知変数の更新量を調整することを特徴とする
前記未知変数の更新幅決定方法。
【請求項4】
前記最適解探索部で実施される前記未知変数の尺度統一方法であって、
前記未知変数ω
p
ごとに値の上限ω
pmax
及び下限ω
pmin
を想定し、定数s
f
を用いて、
TIFF
2024163826000103.tif
12
39
と前記未知変数の大きさを揃えることを特徴とする
前記未知変数の尺度統一方法。
【請求項5】
前記感度算定部で算定される前記未知変数の前記状態変数に対する前記感度が一定の条件を満たしているかを判別する感度条件判別方法であって、
前記感度の値がN個の条件の内、n番目の条件に当てはまっている時に自然数nを返す定義関数を用い、
前記定義関数を前記状態変数の時空間発展と共に発展させながら、有限要素法等の数値解析における計算グラフ上を伝搬させることで、
各時間ステップにおける全ての位置での前記状態変数が何番目の条件に当てはまっているかを前記定義関数の値から自動的に判別する
前記感度条件判別方法
【請求項6】
前記未知変数ω
p
の前記観測誤差r
t
に対する感度算定方法であって、
質量Mj、減衰項C
ji
t
、剛性K
ji
t
の線形弾性体の振動データから物性を前記未知変数として求める際に、
陽解差分法による節点変位u
t
j
の時間更新式を制約項としてラグランジュ乗数λ
t
j
を乗じたラグランジュ関数
TIFF
2024163826000104.tif
31
93
を定義し、前記ラグランジュ関数を前記ラグランジュ乗数λ
t
j
で微分した随伴方程式
TIFF
2024163826000105.tif
12
99
に終末端条件(λ
nt+1
=0)を与えて、逆時間方向に解くことで、前記ラグランジュ乗数を求めた後、
前記未知変数ω
p
に対する感度を
TIFF
2024163826000106.tif
12
91
と前記随伴方程式を前記未知変数で微分して感度を算定することを特徴とする
前記未知変数の前記観測誤差に対する感度算定方法。
発明の詳細な説明
【発明の詳細な説明】
【】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に振動問題を対象とした非線形有限要素解析を対象としたデータ同化の演算方法に関する。
続きを表示(約 2,100 文字)
【背景技術】
【0002】
データ同化は、非特許文献1に示すように盛土の変形計測結果から盛土の現時点の内部剛性の推定や非特許文献2に示すように橋梁加速度応答から橋梁の内部状態の推定に用いられてきた。データ同化により物体の内部状態を推定する場合、適当な変数を仮定して、有限要素法を実行し、有限要素法による算定値と計測値との誤差が最小となるように、変数を繰り返し更新することで、最適な変数を探索する。
【0003】
データ同化の代表的な手法には、拡張カルマンフィルタ(非特許文献3)、アンサンブルカルマンフィルタ(非特許文献4)、粒子フィルタ(非特許文献5)がある。これらの手法では、予報誤差を見積もり、解析誤差(計測値と計算値との誤差)が最小となる未知数のペアを求める。
【0004】
カルマンフィルタやアンサンブルカルマンフィルタでは、未知数の解析誤差に対する感度(未知数が少し変化した時に解析誤差がどの程度変化するか)を求めることで、計測値と計算値との誤差が最小となるように、未知変数更新して、最適解を求める。
【0005】
粒子フィルタでは、未知変数をランダムに推定し、解析誤差が最も小さくなる未知変数の組み合わせを総当たりで探索する。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カルマンフィルタのように、解析誤差に対する未知数の感度を求めて、勾配法により最適解を求める手法では、未知数の数が増えても、同じ探索回数で最適解にたどり着ける。しかし、非線形性が高い構造物が対象となる場合は、カルマンフィルタでは最適解に辿りつけない場合がある。又、弾塑性有限要素法では、応力や変位、損傷変数等の状態変数の時間発展が複雑で、非線形性が高い物体を数値解析する場面では、状態発展の挙動のカオス性も高くなる。そのため、非線形な対象を有限要素解析する際に、解析誤差に対する未知数の感度を求めるのは容易ではなく、これまでは、透水係数の圧力水頭に対する感度や剛性行列の節点変位に対する感度のように、微分の計算が容易な場面でしか感度を算定する手法は用いられてこなかった。
【0007】
粒子フィルタのように総当たりで最適解を探索する方法では、解析で得られた実現値を解空間として最適解を探索するため、非線形性の高い物体を対象として、データ同化を行うことができ、実装も容易である。しかし、総当たり探索であることから演算量が増加し、同定する未知数の数が多い場合に、探索回数が増えてしまい、最適解にたどり着けない場合がある。そのため、有限要素法の要素ごとに未知変数求める問題、例えば透水係数の分布の推定問題などには適用が困難となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
鈴子誠、石井井清:拡張カルマンフィルターによる土質定数の空間分布推定、土木学会論文集、Vol.406、 3-11、 pp.71-78、 1989.
松岡弘大、貝戸清之、徳永宗正、渡辺勉、曽我部正道:逐次データ同化を利用した列車走行時の橋梁加速度応答に基づく変位応答推計、土木学会論文集A1(構造・地震工学)、Vol.69、No.3、2013.
片山徹:応用カルマンフィルタ、朝倉書店、pp.73-78、1983.
山口弘誠、中北英一:EnKFによるドップラーレーダー情報の同化手法の開発と概念モデルを用いた降雨予測、京都大学防災研究所、第50号B、pp. 569-577、2007.
Nasrellah、 H. A. and Manohar、 C. S.: Particle filter for structural system identification using multiple test and sensor data: A combined computational and experimental study、 Structural Control and Health Monitoring、 Vol.18、 PP.99-120、 2011.
【発明の概要】
【】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、振動する非線形構造物の振動を計測して内部状態を推定する演算方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、データ同化を実現するために、本発明では非線形性が高い構造物が振動している場面において、観測データから物体の内部状態を未知変数と設定し、探索することで、内部物性を推定する手法を提供する。本手法を用いることで、非線形な振動問題において、未知数の数が増えても、限られた未知数の更新回数で最適解にたどり着くことができるようになる。
(【0011】以降は省略されています)
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