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公開番号2024158942
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-11-08
出願番号2023074594
出願日2023-04-28
発明の名称皮膚表層の物性の評価方法
出願人花王株式会社
代理人弁理士法人翔和国際特許事務所
主分類G01N 3/00 20060101AFI20241031BHJP(測定;試験)
要約【課題】皮膚表層の物性を評価しやすく、皮膚表面の凹凸の影響を受けにくい皮膚表層の物性の評価方法を提供すること。
【解決手段】皮膚表面に、皮膚が接触子と共に動くように接触子を接触させる工程と;前記接触子を、前記皮膚に対して垂直方向の荷重が加わらないように、少なくとも該垂直方向の位置決めをする位置決め工程と;前記接触子の周囲の皮膚を拘束せずに、前記接触子を、前記皮膚表面に沿う方向に移動させるか又は皮膚表面に垂直な軸回りに回動させて、該皮膚に前記接触子の動きの応じた変化を与える変化付与工程を具備する。前記変化付与工程において生じる前記皮膚からの反力又は反トルクに基づき、該皮膚の表層の物性を評価する。
【選択図】図11
特許請求の範囲【請求項1】
皮膚表層の物性を評価する方法であって、
皮膚表面に、皮膚が接触子と共に動くように接触子を接触させる工程と、
前記接触子を、前記皮膚に対して垂直方向の荷重が加わらないように、少なくとも該垂直方向の位置決めをする位置決め工程と、
前記接触子の周囲の皮膚を拘束せずに、前記接触子を、前記皮膚表面に沿う方向に移動させるか又は皮膚表面に垂直な軸回りに回動させて、該皮膚に前記接触子の動きの応じた変化を与える変化付与工程を具備し、
前記変化付与工程において生じる前記皮膚からの反力又は反トルクに基づき、該皮膚の表層の物性を評価する、皮膚表層の物性の評価方法。
続きを表示(約 570 文字)【請求項2】
皮膚角層のヤング率を推定する、皮膚角層のヤング率の推定方法であって、
皮膚表面に、皮膚が接触子と共に動くように接触子を接触させる工程と、
前記接触子を、前記皮膚に対して接線方向及び垂直方向の荷重が加わらないように、位置決めする位置決め工程と、
前記接触子の周囲の皮膚を拘束せずに、前記接触子を、前記皮膚表面に沿う方向に移動させるか又は皮膚表面に垂直な軸回りに回動させ、前記皮膚からの反力又は反トルクを測定する、第1工程と、
第1工程の前又は後に、前記接触子を前記皮膚に垂直な方向に移動させ、該皮膚からの反力を測定する、第2工程を有し、
第1工程における前記皮膚からの反力又は反トルクと、第2工程における前記皮膚からの反力とに基づき、該皮膚角層のヤング率を推定する、皮膚角層のヤング率の推定方法。
【請求項3】
前記角層のヤング率及び前記角層よりも下に位置する組織のヤング率を同じ値の初期値に設定し、第2工程における前記皮膚からの反力に基づき、前記角層よりも下に位置する組織の前記ヤング率を算出し、
第1工程における前記皮膚からの反力又は反トルクと、前記角層よりも下に位置する組織の前記ヤング率とから、前記角層のヤング率を算出する、請求項2に記載の推定方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表層の物性の評価方法及び皮膚角層のヤング率の推定方法に関する。
続きを表示(約 3,500 文字)【背景技術】
【0002】
ヒトの肌に小じわ等の凹凸が生じることと、その肌の皮膚の物性との関連性が報告されている。
皮膚の物性の測定に使用可能な装置として、例えば、非特許文献1には、皮膚に当てる接触子の接触面の中心に吸引孔を有し、該吸引孔を介して、該接触子が接触する領域の中心に位置する皮膚の一部を吸引し、その皮膚の変化を計測することができる装置が記載されている。
非特許文献2には、肌に超音波振動を与え、反射する超音波を測定し、音響インピーダンスに変換して、肌の層構造を可視化する方法が記載されている。
非特許文献3には、皮膚に当てる接触子の接触面に、回転駆動される回動部と、該回動部の周囲を囲む周辺領域とを有し、周辺領域によって回動部の周囲の皮膚を拘束した状態下に回動部を回動することによって、回動部と周辺領域との間の隙間に位置する皮膚に生じる変位を計測する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
Courage+Khazaka electronic GmbH、"Cutometer(R) Dual MPA 580"、[online]、[令和5年4月28日検索]、インターネット<https://www.courage-khazaka.de/en/scientific-products/efficacy-tests/skin?view=article&id=266&catid=16>
応用物理、第87巻、第12号(2018)、p.932
Dia-Stron Limited.、"DTM310 Dermal Torque Meter"、[online]、[令和5年4月28日検索]、インターネット<https://www.diastron.com/app/uploads/2017/05/Dia-Stron-DTM310-Brochure.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒトの皮膚表層(角層を含む)は、乾燥、紫外線、及びPM2.5、黄砂等の大気中の粒子等の外的要因による影響を受けやすい一方、スキンケアによる効果も得られやすいため、皮膚表層の性状やそれを示す物性値を計測することは、スキンケアの効果検証やスキンケア剤の開発等にとって有益である。
しかしながら、非特許文献1に記載の装置は、皮膚の深さ方向の分解能が低い。そのため、皮膚深部の影響を受けやすく、皮膚表層の物性を評価する観点から好ましくない。また吸引孔を介して吸引する皮膚が、接触子が接触する皮膚の面積のうちの極一部であるため、皮膚に凹凸がある場合に、凸部を吸引したときの物性値と凹部を吸引したときの物性値とに差が生じる等、皮膚の凹凸が、測定する物性値に影響しやすい。
非特許文献2に記載の技術においては、皮膚にガラス板を当て、超音波付加装置とガラス板との間に水を配して、該皮膚に超音波を付加する。そのため、皮膚に、液状化粧料を塗布した場合には、皮膚物性の適切な評価が困難となる。
非特許文献3に記載の装置は、回動部と周辺領域との間に存する狭い環状の隙間に位置する皮膚の剪断応力に基づき該皮膚の物性を計測するものである。そのため、皮膚の深さ方向の分解能が低く、また皮膚に、液状化粧料を塗布した場合には、皮膚物性の適切な評価が困難となる。
【0005】
本発明は、上述した従来技術が有する解決課題を解消し得る、皮膚表層の物性の評価方法を提供することに関する。
本発明は、皮膚表層のヤング率を効率よく推定できるヤング率の推定方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(第1方法)は、皮膚表層の物性を評価する方法に関する。
前記方法は、皮膚表面に、皮膚が接触子と共に動くように接触子を接触させる工程を備えることが好ましい。前記方法は、前記接触子を、前記皮膚に対して垂直な方向の荷重が加わらないように、少なくとも該垂直方向の位置決めをする位置決め工程を備えることが好ましい。前記方法は、前記接触子の周囲の皮膚を拘束せずに、前記接触子を、前記皮膚表面に沿う方向に移動させるか又は皮膚表面に垂直な軸回りに回動させて、該皮膚に前記接触子の動きの応じた変化を与える変化付与工程を具備することが好ましい。前記方法は、前記変化付与工程において生じる前記皮膚からの反力又は反トルクに基づき、該皮膚の表層の物性を評価することが好ましい。
【0007】
本発明(第2方法)は、皮膚角層のヤング率を推定する、皮膚角層のヤング率の推定方法に関する。
前記方法は、皮膚表面に、皮膚が接触子と共に動くように接触子を接触させる工程を備えることが好ましい。前記方法は、前記接触子を、前記皮膚に対して接線方向及び垂直方向の荷重が加わらないように、位置決めする位置決め工程を備えることが好ましい。前記方法は、前記接触子の周囲の皮膚を拘束せずに、前記接触子を、前記皮膚表面に沿う方向に移動させるか又は皮膚表面に垂直な軸回りに回動させ、前記皮膚からの反力又は反トルクを測定する、第1工程を備えることが好ましい。前記方法は、第1工程の前又は後に、前記接触子を前記皮膚に垂直な方向に移動させ、該皮膚からの反力を測定する、第2工程を備えることが好ましい。前記方法は、第1工程における前記皮膚からの反力又は反トルクと、第2工程における前記皮膚からの反力とに基づき、該皮膚角層のヤング率を推定することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明(第1方法)の皮膚表層の物性の評価方法によれば、皮膚表層の物性を評価しやすく、皮膚表面の凹凸の影響も受けにくい。皮膚に液状化粧料等の塗布物を塗布した状態においても、皮膚物性の適切な評価が可能である。
本発明(第2方法)の皮膚角層のヤング率の推定方法によれば、皮膚表層のヤング率を効率よく推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1は、本発明の方法の実施に好ましく用いられる肌物性計測装置の一例を示す斜視図である。
図2は、図1に示す肌物性計測装置の反力等測定部を一部破断して示す側面図である。
図3は、肌物性計測装置の制御部の一例を示すブロック図である。
図4は、第1実施形態の説明図である。
図5は、第2実施形態の説明図である。
図6は、接触子を皮膚表面に接触させ、且つ該接触子の周囲に、化粧水を塗布した状態を示す模式断面図である。
図7は、ヒトの皮膚のモデルについて測定された圧縮による反力、剪断による反力、及び回転による反トルクの結果を示すグラフである。
図8は、接触子を皮膚に垂直な方向に移動させたときの皮膚の挙動を解析するためのモデル図である。
図9は、接触子を皮膚表面に垂直な軸回りに回動させたときの皮膚の挙動を解析するためのモデル図である。
図10は、接触子を皮膚表面に沿う方向に移動させたときの皮膚の挙動を解析するためのモデル図である。
図11(a)及び(b)は、被験者を対象とした角層のヤング率及び下層のヤング率の計算結果を示すグラフである。
図12(a)及び(b)は、被験者を対象とした角層のヤング率及び下層のヤング率の別の計算結果を示すグラフである。
図13(a)及び(b)は、被験者を対象とした角層のヤング率及び下層のヤング率の更に別の計算結果を示すグラフである。
図14(a)、図14(b)及び図14(c)は、接触子を往復直線運動させたときの反力値を測定した第1試験の結果を示すグラフである。
図15は、接触子を往復回動運動させたときの反トルク値を測定した第2試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態(態様)について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態(態様)に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
(【0011】以降は省略されています)

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