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公開番号2024092149
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-07-08
出願番号2022207878
出願日2022-12-26
発明の名称シラン処理ガラスクロス
出願人信越化学工業株式会社
代理人弁理士法人英明国際特許事務所
主分類D06M 13/513 20060101AFI20240701BHJP(繊維または類似のものの処理;洗濯;他に分類されない可とう性材料)
要約【課題】高温高湿下においても誘電特性が劣化せず、伝送損失の少ないガラスクロスを提供すること。
【解決手段】(i)式(1)で表され、エポキシ基等の官能基を含むオルガノオキシシランと、(ii)(i)成分の部分加水分解物とをそれぞれ所定量含有するオルガノオキシシラン水溶液、または
(i)式(1)で表され、エポキシ基等の官能基を含むオルガノオキシシランと、(iii)式(2)で表され、アルキル基等の一価炭化水素基を含むオルガノオキシシランと、(iv)所定量の(i)成分および所定量の(iii)成分の部分(共)加水分解物とをそれぞれ所定量含有するオルガノオキシシラン水溶液
で表面処理された、強熱減量が0.08質量%以下であるシラン処理ガラスクロス。
【選択図】なし
特許請求の範囲【請求項１】
（ｉ）下記一般式（１）で表される１種または２種以上のオルガノオキシシランと、
（ｉｉ）（ｉ）成分の部分加水分解物と
を含有し、
（ｉ）および（ｉｉ）成分の合計中、（ｉ）成分の含有量が３０～９５質量％であり、（ｉｉ）成分の含有量が５～７０質量％であるオルガノオキシシラン水溶液で表面処理された、強熱減量が０．０８質量％以下であるシラン処理ガラスクロス。
Ｒ
1
X
Ｒ
2
Y
Ｓｉ（ＯＲ
3
）
4-X-Y
（１）
（式中、Ｒ
1
は、エポキシ基、アミノ基、不飽和基、メルカプト基、イソシアネート基、酸無水物基または水酸基を含む炭素原子数１～２０の一価の有機基、Ｒ
2
は、炭素原子数１～１０のアルキル基またはアリール基、Ｒ
3
は、炭素原子数１～１０の一価炭化水素基、Ｘは、１または２であり、Ｙは、０または１であり、かつＸ＋Ｙは、１または２である。）
続きを表示（約 1,200 文字）【請求項２】
（ｉ）下記一般式（１）で表される１種または２種以上のオルガノオキシシランと、
（ｉｉｉ）下記一般式（２）で表される１種または２種以上のオルガノオキシシランと、
（ｉｖ）（ｉ）成分５０～９５質量％および（ｉｉｉ）成分５～５０質量％の部分（共）加水分解物と
を含有し、
（ｉ）、（ｉｉｉ）および（ｉｖ）成分の合計中、（ｉ）および（ｉｉｉ）成分の合計含有量が３０～９５質量％であり、（ｉｖ）成分の含有量が５～７０質量％であるオルガノオキシシラン水溶液で表面処理された、強熱減量が０．０８質量％以下であるシラン処理ガラスクロス。
Ｒ
1
X
Ｒ
2
Y
Ｓｉ（ＯＲ
3
）
4-X-Y
（１）
（式中、Ｒ
1
は、エポキシ基、アミノ基、不飽和基、メルカプト基、イソシアネート基、酸無水物基または水酸基を含む炭素原子数１～２０の一価の有機基、Ｒ
2
は、炭素原子数１～１０のアルキル基またはアリール基、Ｒ
3
は、炭素原子数１～１０の一価炭化水素基、Ｘは、１または２であり、Ｙは、０または１であり、かつＸ＋Ｙは、１または２である。）
Ｒ
4
Z
Ｓｉ（ＯＲ
5
）
4-Z
（２）
（式中、Ｒ
4
は、炭素原子数１～２０の一価炭化水素基であり、Ｒ
5
は、炭素原子数１～１０の一価炭化水素基である。Ｚは、１～３の整数である。）
【請求項３】
オルガノオキシシラン水溶液が、沸点１２０℃以下の加水分解・縮合触媒を含有する請求項１または２記載のシラン処理ガラスクロス。
【請求項４】
加水分解・縮合触媒が、アンモニアまたは酢酸である請求項３記載のシラン処理ガラスクロス。
【請求項５】
ガラスクロスが、ＳｉＯ
2
組成量が４５～１００質量％、フィラメント径が３～２０μｍであるガラスフィラメントを３０～２５０本束ねたガラスヤーンで製織されたものである請求項１または２記載のシラン処理ガラスクロス。
【請求項６】
ガラスフィラメントのＳｉＯ
2
組成量が、９９～１００質量％である請求項５記載のシラン処理ガラスクロス。
【請求項７】
請求項１または２記載のシラン処理ガラスクロスと、該シラン処理ガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂とを含むプリプレグ。
【請求項８】
前記マトリックス樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂およびポリテトラフルオロエチレン樹脂から選択される１種以上の樹脂である請求項７記載のプリプレグ。
【請求項９】
請求項７記載のプリプレグを備えるプリント配線基板。

発明の詳細な説明【技術分野】
【０００１】
本発明は、シラン処理ガラスクロスに関し、さらに詳述すると、ガラスクロスの低い誘電正接を保ったシラン処理ガラスクロス、このシラン処理ガラスクロスを含むプリプレグおよびプリント配線基板に関する。
続きを表示（約 3,700 文字）【背景技術】
【０００２】
現在、スマートフォン等の情報端末の高性能化、高速通信化に伴い、使用されるプリント配線板において、高密度化、極薄化とともに、低誘電化、低誘電正接化が著しく進行している。このプリント配線板の絶縁材料としては、ガラスクロスをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂（以下、「マトリックス樹脂」という。）に含浸させて得られるプリプレグを積層して加熱加圧硬化させた積層板が広く使用されている。
【０００３】
基板における信号の伝送ロスは、ＥｄｗａｒｄＡ．Ｗｏｌｆｆ式：伝送損失∝√ε×ｔａｎδが示すように、誘電率（ε）および誘電正接（ｔａｎδ）が小さい材料ほど改善されることが知られており、特に、上記の式より、伝送損失に対しては、誘電正接の寄与が大きいことが知られている。そのため、ガラスクロスにおいては、低い誘電正接が求められ、特許文献１～３では、誘電特性を向上させたガラスクロスが提案されている。
【０００４】
また、ガラスクロスの誘電正接を上昇させる原因が、ガラスヤーン表面に物理的に付着した状態で残存する有機物であることから、特許文献４では、ヒートクリーニングで低減しきれなかった、ごく微量のサイジング剤の熱酸化劣化物と、ガラス表面と化学結合を形成せずに物理付着している、水洗浄では低減あるいは除去できないシランカップリング剤に代表される表面処理剤の残留物および変性物を有機溶剤で洗浄除去する方法が提案されている。
しかし、この方式では、表面処理後、さらに溶剤で洗浄、乾燥することで処理工程が増えるほかに、溶剤の処理等もあり、コスト増となる。
【０００５】
特許文献５には、シランカップリング剤による表面処理の代わりに、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン組成物で表面処理することで、プリント配線基板に好適に用いられる低誘電材料用ガラスクロスが提案されている。
しかし、よりガラスクロスとの反応性に優れ、高温高湿下でも誘電特性の低下の少ない信頼性の高いプリント配線基板が求められている。特に、今後の５Ｇ通信用用途等において、十分な伝送速度性能を達成する観点から、これら低誘電率・低誘電正接に優れる低誘電特性のガラスクロスでもなお改善の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
特許第４２６９１９４号公報
特許第３８９６６３６号公報
特許第６８６６１７８号公報
特許第７０１５９７２号公報
特開２０２１－８８４８８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
上述したように、ガラスクロスに樹脂を含浸して加圧下で硬化させた有機基板が半導体の実装基板として多用されている。一方では、５G等のミリ波を使用する高速通信が実用化されつつある。このような背景で、実装基板も伝送損失を少なくするため、低誘電特性を持った有機樹脂やガラスクロスが望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、高温高湿下においても誘電特性が劣化せず、かつ高周波においても伝送損失の少ないガラスクロスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、オルガノオキシシランのオルガノオキシ基をあらかじめ水と反応させ、一部のオルガノオキシ基を水酸基に変換したものや、これを縮合してオリゴマー化したものでガラスクロスを処理することで、ガラスクロス表面での反応が速やかに進行し、未反応のオルガノオキシシランや副生成物が極めて少なくなり、伝送損失の極めて小さいシラン処理ガラスクロスが得られることを見出した。また、所定の官能基を有するオルガノオキシシランと、アルキル基等の炭化水素基を含有するオルガノオキシシランとを併用することで、反応性を向上させながらガラスクロスの表面を疎水化できるため、高湿下においても誘電特性の劣化を防止でき、ガラスクロスの伝送損失を低減できることを見出すとともに、得られたシラン処理ガラスクロスを用いることで伝送損失の極めて小さい有機基板が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【０００９】
すなわち、本発明は、
１．（ｉ）下記一般式（１）で表される１種または２種以上のオルガノオキシシランと、
（ｉｉ）（ｉ）成分の部分加水分解物と
を含有し、
（ｉ）および（ｉｉ）成分の合計中、（ｉ）成分の含有量が３０～９５質量％であり、（ｉｉ）成分の含有量が５～７０質量％であるオルガノオキシシラン水溶液で表面処理された、強熱減量が０．０８質量％以下であるシラン処理ガラスクロス、
Ｒ
1
X
Ｒ
2
Y
Ｓｉ（ＯＲ
3
）
4-X-Y
（１）
（式中、Ｒ
1
は、エポキシ基、アミノ基、不飽和基、メルカプト基、イソシアネート基、酸無水物基または水酸基を含む炭素原子数１～２０の一価の有機基、Ｒ
2
は、炭素原子数１～１０のアルキル基またはアリール基、Ｒ
3
は、炭素原子数１～１０の一価炭化水素基、Ｘは、１または２であり、Ｙは、０または１であり、かつＸ＋Ｙは、１または２である。）
２．（ｉ）下記一般式（１）で表される１種または２種以上のオルガノオキシシランと、
（ｉｉｉ）下記一般式（２）で表される１種または２種以上のオルガノオキシシランと、
（ｉｖ）（ｉ）成分５０～９５質量％および（ｉｉｉ）成分５～５０質量％の部分（共）加水分解物と
を含有し、
（ｉ）、（ｉｉｉ）および（ｉｖ）成分の合計中、（ｉ）および（ｉｉｉ）成分の合計含有量が３０～９５質量％であり、（ｉｖ）成分の含有量が５～７０質量％であるオルガノオキシシラン水溶液で表面処理された、強熱減量が０．０８質量％以下であるシラン処理ガラスクロス、
Ｒ
1
X
Ｒ
2
Y
Ｓｉ（ＯＲ
3
）
4-X-Y
（１）
（式中、Ｒ
1
は、エポキシ基、アミノ基、不飽和基、メルカプト基、イソシアネート基、酸無水物基または水酸基を含む炭素原子数１～２０の一価の有機基、Ｒ
2
は、炭素原子数１～１０のアルキル基またはアリール基、Ｒ
3
は、炭素原子数１～１０の一価炭化水素基、Ｘは、１または２であり、Ｙは、０または１であり、かつＸ＋Ｙは、１または２である。）
Ｒ
4
Z
Ｓｉ（ＯＲ
5
）
4-Z
（２）
（式中、Ｒ
4
は、炭素原子数１～２０の一価炭化水素基であり、Ｒ
5
は、炭素原子数１～１０の一価炭化水素基である。Ｚは、１～３の整数である。）
３．オルガノオキシシラン水溶液が、沸点１２０℃以下の加水分解・縮合触媒を含有する１または２記載のシラン処理ガラスクロス、
４．加水分解・縮合触媒が、アンモニアまたは酢酸である３記載のシラン処理ガラスクロス、
５．ガラスクロスが、ＳｉＯ
2
組成量が４５～１００質量％、フィラメント径が３～２０μｍであるガラスフィラメントを３０～２５０本束ねたガラスヤーンで製織されたものである１または２記載のシラン処理ガラスクロス、
６．ガラスフィラメントのＳｉＯ
2
組成量が、９９～１００質量％である５記載のシラン処理ガラスクロス、
７．１または２記載のシラン処理ガラスクロスと、該シラン処理ガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂とを含むプリプレグ、
８．前記マトリックス樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂およびポリテトラフルオロエチレン樹脂から選択される１種以上の樹脂である７記載のプリプレグ、
９．７記載のプリプレグを備えるプリント配線基板
を提供する。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、反応性が高く、かつ低吸湿性を付与できるオルガノオキシシランやその部分（共）加水分解物でガラスクロスを処理することで、信頼性が高く、高湿下においても誘電特性の劣化が少ないシラン処理ガラスクロスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
（【００１１】以降は省略されています）

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