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公開番号2024013109
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-01-31
出願番号2022115055
出願日2022-07-19
発明の名称不焼成型低炭素セメント及びその硬化体
出願人国立大学法人山口大学
代理人弁理士法人英和特許事務所
主分類C04B 28/26 20060101AFI20240124BHJP(セメント;コンクリート;人造石;セラミックス;耐火物)
要約【課題】従来のコンクリート生産・施工システムを大きく変えることなく、しかも焼成工程が不要で、出発原料として強アルカリ性の溶液を使用せずに硬化後にアルカリ性を示す不焼成型低炭素セメント及びその硬化体を提供する。
【解決手段】炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムから選択される少なくとも1種の炭酸水素塩の粉体である第1成分と、活性フィラーを含む粉体混合物である第2成分と、未炭酸化カルシウムを含む粉体である第3成分とを含む不焼成型低炭素セメントである。この不焼成型低炭素セメントは、水と混合したときに、又は、モル濃度が4mol/L以下のアルカリ金属の水酸化物水溶液、アルカリ金属の炭酸塩水溶液及びアルカリ金属のケイ酸塩水溶液から選択される少なくとも1種のアルカリ水溶液と混合したときに、pHが8.0以上、かつ圧縮強度が5MPa以上の硬化体を生成する。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムから選択される少なくとも1種の炭酸水素塩の粉体である第1成分と、
活性フィラーを含む粉体混合物である第2成分と、
未炭酸化カルシウムを含む粉体である第3成分と、
を含む不焼成型低炭素セメントであって、
水と混合したときに、又は、モル濃度が4mol/L以下のアルカリ金属の水酸化物水溶液、アルカリ金属の炭酸塩水溶液及びアルカリ金属のケイ酸塩水溶液から選択される少なくとも1種のアルカリ水溶液と混合したときに、pHが8.0以上、かつ圧縮強度が5MPa以上の硬化体を生成する、不焼成型低炭素セメント。
続きを表示(約 1,000 文字)【請求項2】
前記活性フィラーは、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、メタカオリン、下水汚泥溶融スラグ粉末及び都市ごみの焼却灰溶融スラグ粉末から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の不焼成型低炭素セメント。
【請求項3】
前記第2成分は不活性フィラーを更に含む、請求項1に記載の不焼成型低炭素セメント。
【請求項4】
前記未炭酸化カルシウムを含む粉体は、未炭酸化カルシウムとして遊離酸化カルシウム(CaO)及び水酸化カルシウム(Ca(OH)

)から選択される少なくとも1種を含むものである、請求項1に記載の不焼成型低炭素セメント。
【請求項5】
前記未炭酸化カルシウムを含む粉体は、製鋼スラグ、廃コンクリート、下水汚泥溶融スラグ、流動床石炭灰、都市ごみ焼却飛灰、フェロニッケルスラグ及び電気炉酸化スラグの粉末、細粒又は微粒から選択される少なくとも1種を含むものである、請求項1に記載の不焼成型低炭素セメント。
【請求項6】
アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩及びアルカリ金属のケイ酸塩から選択される少なくとも1種の粉体である第4成分を更に含み、水と混合したときに、pHが8.0以上、かつ圧縮強度が5MPa以上の硬化体を生成する、請求項1に記載の不焼成型低炭素セメント。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の不焼成型低炭素セメントに水、又は、モル濃度が4mol/L以下のアルカリ金属水酸化物水溶液、アルカリ金属の炭酸塩水溶液及びアルカリ金属のケイ酸塩水溶液から選択される少なくとも1種のアルカリ水溶液を添加して得られる硬化体であって、pHが8.0以上、かつ圧縮強度が5MPa以上である、硬化体。
【請求項8】
コンクリート用の細骨材及び粗骨材から選択される少なくとも1種の骨材を含む、又は前記細骨材の少なくとも一部が都市ごみ焼却主灰若しくは再生細骨材で代替されている、請求項7に記載の硬化体。
【請求項9】
請求項6に記載の不焼成型低炭素セメントに水を添加して得られる硬化体であって、pHが8.0以上、かつ圧縮強度が5MPa以上である、硬化体。
【請求項10】
コンクリート用の細骨材及び粗骨材から選択される少なくとも1種の骨材を含む、又は前記細骨材の少なくとも一部が都市ごみ焼却主灰若しくは再生細骨材で代替されている、請求項9に記載の硬化体。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、主として建設分野において使用されるセメントと、その硬化体に関する。
続きを表示(約 3,800 文字)【背景技術】
【0002】
建設分野において、モルタル、コンクリート、木質系セメント板、繊維強化セメント板などの建設材料の製造に使用される結合材や接着剤(バインダー)として、セメント、特にポルトランドセメントが多用されている。しかし、ポルトランドセメントの製造過程においてセメントクリンカーの高温焼成には燃料が大量に使用され、石灰石の熱分解が発生するため、ポルトランドセメントには二酸化炭素(CO

)排出原単位が大きいという問題がある。そのため、ポルトランドセメントを用いたコンクリートのCO

排出原単位も大きい。カーボンニュートラルの実現に向け、CO

排出原単位の大きいポルトランドセメントの代替物として、CO

排出原単位の小さいセメント、いわゆる低炭素セメントが求められている。一方、ポルトランドセメントの水和反応生成物には水酸化カルシウム(Ca(OH)

)があるため、ポルトランドセメントの硬化体はpHが11.5以上の強アルカリ性を有し、鉄筋コンクリート部材の鉄筋が腐食を生じにくいという利点がある。したがって、ポルトランドセメントの代替物には、CO

排出原単位が小さいことに加えて、硬化後に強アルカリ性を示すことが求められる。
【0003】
このような背景のなかで、近年、廃棄物や副産物を主原料としたジオポリマーが、低炭素セメントの一種として注目されている。ジオポリマーとは、セメントクリンカーを使用せず、非晶質のケイ酸アルミニウムを主成分とした原料(活性フィラーと略称)とアルカリ金属のケイ酸塩、炭酸塩、水酸化物の水溶液の少なくとも1種類(アルカリ溶液と略称)を用いて常温下又は40℃以上の加温環境では硬化させたものである(非特許文献1参照)。性能とエネルギ消費量を共に考慮して、加温養生の温度は一般的に60℃~80℃である。
活性フィラーとしては、メタカオリン、高炉水砕スラグ微粉末、フライアッシュ、下水汚泥や都市ごみの焼却灰溶融スラグ微粉末及びパーライト原石の微粉末などが挙げられる。また、これらの活性フィラーに加えて不活性フィラーと呼ばれる原料をジオポリマーに使用することもある。ここで不活性フィラーとは、前記のアルカリ溶液と混合しても硬化しないか、硬化しても硬化体の圧縮強度が10MPa以下である粉体のことをいい、例えば、流動床石炭灰、乾式・湿式砕石粉、高炉徐冷スラグ微粉末、都市ごみ焼却灰、木質バイオマス焼却灰などが該当する。これらの不活性フィラーに活性フィラーを添加すれば、ジオポリマーの硬化体を作製することができる。
このように、ジオポリマーの硬化体の作製には、ポルトランドセメントのような焼成工程が不要であり、石灰石も原料に使用しないため、そのCO

排出原単位はポルトランドセメントより小さくなる。
ジオポリマーに使われるアルカリ溶液としては、原料コストと硬化体の性能の観点から、8mol/L以上の苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)水溶液、ケイ酸ソーダ(水ガラス)(JIS1号ケイ酸ソーダを水で希釈した水溶液、JIS2号ケイ酸ソーダ原液)、又は苛性ソーダとケイ酸ソーダの混合水溶液が現在一般的に使用されている。これらのアルカリ溶液はアルカリ性を有し、ジオポリマーの硬化体の細孔中に残留することから、ジオポリマーの硬化体はアルカリ性を示すことになる。
その反面、ジオポリマーでは出発原料として強アルカリ性(例えば、アルカリ溶液に苛性ソーダを混合する場合)又は高粘性(例えば、アルカリ溶液にケイ酸ソーダ(水)溶液と苛性ソーダ溶液の体積比が1:1以上である場合)のアルカリ溶液を使用することから、高いコストのほか、作業者の安全性、練り混ぜ、運搬及び打込み等を含めた作業性の面で問題があった。
【0004】
セメント・コンクリート分野全体のCO

排出量を削減するために、最近、ポルトランドセメントを用いたフレッシュコンクリートに、又は、廃コンクリートの粒子にCO

含有ガスの吹込や、炭酸イオン水の注入などを行い、炭酸塩の生成反応によってCO

吸収型や固定型コンクリートや硬化体を製造する技術が開発されている。しかし、従来のコンクリート生産・施工システムにはない新たな工程・装置が必要となる。そのため、従来のコンクリート生産・施工体系と品質管理体系を大きく変え、生産・施工効率が低下し、現場打設施工に適用し難い。また、このような技術では、炭酸塩の生成反応が多くなると、ポルトランドセメントの硬化体や廃コンクリートの粒子固化体にCa(OH)

が生じない又は少なくなるため、硬化体や固化体が中性になる、又は中性化抵抗性が低くなり、鉄筋コンクリート部材の製造に適用し難い。
一方、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩、あるいは炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩や、炭酸ガスの炭酸化反応を利用して、製鋼スラグの処理技術、製鋼スラグの固化技術がいくつか提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献2等)。これらの技術は基本的に、製鋼スラグ中の遊離CaOがCO

と反応して不溶性炭酸カルシウム(CaCO

)を生成する炭酸化反応を利用して製鋼スラグの性質安定化や固化を図るものである。炭酸塩や炭酸水素塩によって処理された製鋼スラグは、遊離CaOの水和とC

S(2CaO・SiO

)の変態膨張による粉化を生じにくくなり、路盤材、土木用材料として使用されやすい。しかし、これらの技術はセメント技術範疇外のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2020-132456号公報
特開2020-132457号公報
【非特許文献】
【0006】
公益財団法人日本コンクリート工学会:建設分野へのジオポリマー技術の適用に関する研究委員会報告書,p.1,2017.9
新材料としての製鋼スラグ炭酸固化体,コンクリート工学,Vol.38,No.2,p.3-9,2000.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、従来のコンクリート生産・施工システムを大きく変えることなく、しかも焼成工程が不要で、出発原料として強アルカリ性の溶液を使用せずに硬化後にアルカリ性を示す不焼成型低炭素セメント及びその硬化体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、次の不焼成型低炭素セメントが提供される。
炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムから選択される少なくとも1種の炭酸水素塩の粉体である第1成分と、
活性フィラーを含む粉体混合物である第2成分と、
未炭酸化カルシウムを含む粉体である第3成分と、
を含む不焼成型低炭素セメントであって、
水と混合したときに、又は、モル濃度が4mol/L以下のアルカリ金属の水酸化物水溶液、アルカリ金属の炭酸塩水溶液及びアルカリ金属のケイ酸塩水溶液から選択される少なくとも1種のアルカリ水溶液と混合したときに、pHが8.0以上、かつ圧縮強度が5MPa以上の硬化体を生成する、不焼成型低炭素セメント。
【0009】
また、本発明の他の観点によれば、上記本発明の不焼成型低炭素セメントに水又は前記のアルカリ水溶液を添加して得られる硬化体であって、pHが8.0以上、かつ圧縮強度が5MPa以上である硬化体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、不焼成型低炭素セメント(以下、単に「低炭素セメント」という。)は炭酸塩反応及び縮重合反応によって、pHが8.0以上、かつ圧縮強度が5MPa以上の硬化体を生成することができる。この低炭素セメントの製造には、焼成工程が不要で、石灰石を原料としない。更に、生産段階にはCO

を固定する炭酸水素塩を第1成分として使用する。したがって、低炭素セメントのCO

排出原単位は小さい。そして本発明によれば、従来のコンクリート生産・施工システムを大きく変えることなく、少なくとも第1成分、第2成分及び第3成分を含む低炭素セメントに水を加えることで低環境負荷型又はCO

吸収型の硬化体を製造することができる。また、強度向上のために、第1成分、第2成分及び第3成分から構成される低炭素セメントに、水の代わりに従来のジオポリマーの固化時に用いる場合よりも低いアルカリ性のアルカリ水溶液を添加して硬化体を作製する場合は、作業の安全性があり、添加したアルカリ物質が硬化反応に消費されても、硬化後にアルカリ性を示す低炭素セメント及びその硬化体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
(【0011】以降は省略されています)

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