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公開番号2025110856
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-07-29
出願番号2024019409
出願日2024-02-13
発明の名称ニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法、及びニッケルリッチ酸化物正極材料の製造方法
出願人明志科技大學
代理人弁理士法人武和国際特許事務所
主分類C01G 53/00 20060101AFI20250722BHJP(無機化学)
要約【課題】本発明は、連続式テイラー渦流反応器を用いた、元素濃度勾配分布を持つ均質構造を有するニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法は、(1)金属イオン原料が溶解された水溶液Aを調製し、マンガン源が溶解された水溶液Bを調製し、沈殿剤が溶解された水溶液Cを調製し、キレート剤が溶解された水溶液Dを調製し、前記水溶液A、前記水溶液C、及び前記水溶液Dを、連続式テイラー渦流反応器に注ぎ、第1共沈反応を行う工程と、(2)前記水溶液Bを前記連続式テイラー渦流反応器に注ぎ、第2共沈反応を行う工程と、(3)前記第2共沈反応を経た沈殿物を洗浄し、オーブンに入れて乾燥させ、前記ニッケルリッチ水酸化物前駆体材料を得る工程と、を含む。
【選択図】図2
特許請求の範囲【請求項1】
元素濃度勾配分布を持つ均質構造を有するニッケルコバルトマンガン水酸化物である、ニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法であって、
(1)金属イオン原料が溶解された水溶液Aを調製し、
マンガン源が溶解された水溶液Bを調製し、
沈殿剤が溶解された水溶液Cを調製し、
キレート剤が溶解された水溶液Dを調製し、
前記水溶液A、前記水溶液C、及び前記水溶液Dを、連続式テイラー渦流反応器に注ぎ、第1共沈反応を2~7時間行う工程であって、
前記金属イオン原料は、ニッケル源とコバルト源であり、
前記ニッケル源は、硫酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、酢酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、水酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記コバルト源は、硫酸コバルト、シュウ酸コバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、水酸化コバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記マンガン源は、硫酸マンガン、シュウ酸マンガン、炭酸マンガン、クエン酸マンガン、酢酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸マンガン、電解二酸化マンガン、酸化マンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種である工程と、
(2)前記水溶液Bを前記連続式テイラー渦流反応器に注ぎ、第2共沈反応を5~70時間行う工程であって、
前記第2共沈反応の反応温度は30℃~80℃で、反応環境のpH値は9.5~12.5であり、前記連続式テイラー渦流反応器の内筒回転数は200rpm~1500rpmである工程と、
(3)前記第2共沈反応を経た沈殿物を洗浄し、オーブンに入れて乾燥させ、前記ニッケルリッチ水酸化物前駆体材料を得る工程と、
を含む、ニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法。
続きを表示(約 1,300 文字)【請求項2】
前記水溶液Aの濃度は1.6M~1.92Mである、請求項1に記載のニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法。
【請求項3】
前記水溶液Bの濃度は0.08M~0.4Mである、請求項1に記載のニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法。
【請求項4】
前記水溶液Cの濃度は2.0M~6.0Mであり、前記水溶液Aと前記水溶液Cの重量モル濃度比は1:1~1:5である、請求項1に記載のニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法。
【請求項5】
前記水溶液Dの濃度は2.5M~9.0Mであり、前記水溶液Aと前記水溶液Dの重量モル濃度比は1:1~1:5である、請求項1に記載のニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法。
【請求項6】
前記オーブンの乾燥温度は60℃~120℃であり、乾燥時間は6~24時間である、請求項1に記載のニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法。
【請求項7】
前記水溶液A及び前記水溶液Bの供給速度は1.0~3.0ml/minである、請求項1に記載のニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載のニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法を用いたニッケルリッチ酸化物正極材料の製造方法であって、
(a)アルミニウム源をエタノールに分散させ、前記ニッケルリッチ水酸化物前駆体材料を加えて混合し、混合物を得て、温度80℃で前記混合物を完全乾燥まで加熱し、混合物aを得る工程であって、
前記アルミニウム源は、水酸化アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、リン酸アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である工程と、
(b)リチウム源と(a)工程における前記混合物aをモル比1:1.01~1:1.25で粉砕・混合し、混合物bを得る工程であって、
前記リチウム源は、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、リン酸水素リチウム、リン酸リチウム、炭酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である工程と、
(c)(b)工程における前記混合物bに対し、三段階のか焼熱処理を行い、前記ニッケルリッチ酸化物正極材料を得る工程と、
を含む、ニッケルリッチ酸化物正極材料の製造方法。
【請求項9】
前記粉砕の条件は、ボールミルの回転数が50~200rpmであり、粉砕時間が2~10時間である、請求項8に記載のニッケルリッチ酸化物正極材料の製造方法。
【請求項10】
前記三段階のか焼熱処理の温度及び時間は、それぞれ、第1段階の温度が100℃~200℃、時間が1~3時間であり、第2段階の温度が500℃~600℃、時間が4~8時間であり、第3段階の温度が700℃~800℃、時間が10~40時間であり、前記三段階のか焼熱処理の昇温速度は、いずれも0.1~20℃/minである、請求項8に記載のニッケルリッチ酸化物正極材料の製造方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルリッチ水酸化物前駆体材料及びニッケルリッチ酸化物正極材料の製造方法を提供する。特に、連続式テイラー渦流反応器を用いて共沈反応を行いボールミルにより混合することで製造された、元素濃度勾配分布を持つニッケルリッチ水酸化物前駆体材料及びニッケルリッチ酸化物正極材料の製造方法に関する。
続きを表示(約 3,200 文字)【背景技術】
【0002】
消費者の、例えば、ハイブリッド車や、スマートグリッド、発電所等に対するエネルギーの需要が迅速に増加しているに伴い、リチウムイオン電池(Lithium-ion battery, LIB)が将来性のあるエネルギー貯蔵技術として、更に言うと、エネルギー課題を解決する最適なエネルギー貯蔵技術の一つとして幅広く研究されている。リチウムイオン電池は、多数の消費性電子機器にとって最適な電池であるが、それに適用できる酸化物正極は、材料の機械的性質が良からぬ可能性があることや、高い放電容量と長期サイクル寿命が求められていること等の課題があるため、次世代の酸化物正極材料に関する研究は継続的に行われている。研究は主に、リチウムイオン電池の充放電プロセスにおける材料の機械的強度と、電池のサイクル寿命、放電容量、及び安全性の向上に注目している。
【0003】
275mAh/gに達する理論放電容量と、2.8~4.3Vの高作動電圧を有するニッケルリッチの層状酸化物正極は、テクノロジーの発展から生まれた需要を満たすための将来性がある正極材料として期待されている。現在幅広く使われているコバルト酸リチウム正極材料(LiCoO

)と比べ、このようなニッケルリッチ酸化物正極は、毒性が少なく、かつコストが低いため、注目が集まっている。しかし、ニッケルの濃度が高すぎると、電池の放電容量の劣化を加速する可能性があり、特に高温及び高作動電圧では構造や化学的な不安定さが生じ、安全性に大きなリスクをもたらす可能性がある。ニッケルリッチ酸化物正極を高電圧に充電すると、その表面に不安定なNi
4+
イオンが生じるため、NiO含有不純物相が形成され、酸素含有物質が放出される。これら高活性Ni
4+
イオンは、電解液の分解を加速する可能性があるため、電解液を消費し尽くし、電池のサイクル性能を劣化させる可能性がある。また、電気化学不活性なNiO含有不純物相は、リチウムイオンの拡散抵抗を増加させ、充放電速度を低下させる。同時に、酸化物から放出されたO

と有機電解液の反応により、電池の熱暴走の問題が生じる。
【0004】
カチオンミキシング(Cation mixing)とは、Li

イオン(イオン半径は約0.76Å)とNi
2+
イオン(イオン半径は約0.69Å)がそれぞれの層における位置を交換するプロセスであり、ニッケルリッチ酸化物正極の放電容量の劣化及び構造に相転移が起こる主な原因である。このようなイオン交換は、類似するイオン半径を通じて実現する。また、ニッケルリッチ酸化物と空気又は湿気との接触により発生した副反応は、表面に不要な残留物(例えば、LiOHとLi

CO

)を生じさせる可能性がある。これら残留物は、電解液との相互作用により、絶縁表面層を生じさせ、リチウムイオン電池の充電における過電圧現象を起こす。以上の原因により、従来のニッケルリッチ酸化物を電気自動車やスマートグリッド等の商用電池に応用することは、依然として困難である。
【0005】
ニッケルリッチ酸化物正極の構造安定性及び電池の長期サイクル寿命を向上させるための方法には、成分の変更、製造条件の調整、及び表面改質等がある。特に、コアシェル構造とも呼ばれる濃度勾配を持つ構造において、電気化学活性遷移金属(Transition metal, TM)が主にその活性物質粒子のコア部分に制限されており、且つシェルとして不活性遷移金属が用いられるため、ニッケルリッチ酸化物正極の構造安定性及びリチウムイオン電池のサイクル性能が向上する。先行技術では、外層として高マンガン含有量のLi[Ni
0.8
Co
0.2


[Ni
0.2
Mn
0.8

1-x
(1>x>0.5)酸化物を用いることにより、表面の副反応を最大限に低減させることができることを証明した。このような材料におけるマンガン元素は、平均酸化数が+4であるため、たとえ高い電圧下であっても、構造安定性に優れており、かつサイクルプロセスにおいてその六角形を維持できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
J. Y. Liao, A. Manthiram, Surface-modified concentration-gradient Ni-rich layered oxide cathodes for high-energy lithium-ion batteries, Journal of Power Sources 282 (2015) 429-436.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、長期サイクル安定性を有し、かつ副反応の発生を効果的に抑制できるニッケルリッチ酸化物正極材料について、未だに関連する発明が見当たらない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、ニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法を提供し、更に前記ニッケルリッチ水酸化物前駆体材料から合成された元素濃度勾配分布を持つ四元系酸化物正極材料の製造方法を提供する。本発明では、ニッケルリッチ(Ni-rich)の定義は、ニッケルの含有量としてモル比が化合物全体の50%以上を超えることである。本発明のニッケルリッチ水酸化物前駆体材料は、均質構造(Homogeneous structure)を有するニッケルコバルトマンガン水酸化物である。即ち、例えばコアが二元系材料であり、かつシェルが三元系材料であるコアシェル構造のように、コアとシェルの組成が異なるものを合成する先行技術とは異なり、本発明のニッケルリッチ水酸化物前駆体材料は、その内層と外層の元素組成が同一であり、いずれの層もニッケルと、コバルトと、マンガンとを有し、その相違点は、各層における濃度比のみである。
【0009】
本発明の製造方法で製造されたニッケルリッチ水酸化物前駆体は、ニッケルリッチの内層及びマンガンリッチの外層を有する均質な元素分布構造を有し、リチウムイオンが移動する際の界面抵抗を低減させ、その移動経路を増やし、ひいては製造された電極の電気化学性能及びサイクル安定性を向上させることができる。また、本発明の製造方法で製造されたニッケルリッチ酸化物正極材料も元素濃度勾配分布を持つ均質構造を有し、かつ構造を安定させる元素としてアルミニウム元素を有しているため、リチウムイオン電池の充放電速度等の電気化学性能及び前記正極材料の機械的強度を向上させることができる。
【0010】
本発明に係るニッケルリッチ水酸化物前駆体材料の製造方法は、ニッケルイオンとコバルトイオンを含有する水溶液A、沈殿剤(水溶液C)、及びキレート剤(水溶液D)を連続式テイラー渦流反応器(Taylor-Flow Reactor, TFR)に注ぎ、第1共沈反応を行う工程と、更にマンガンイオンを含有する水溶液Bを加え、第2共沈反応を行う工程と、その沈殿物を洗浄し乾燥させ、ニッケルコバルトマンガン水酸化物前駆体を得る工程と、を含む。
(【0011】以降は省略されています)

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