発明の詳細な説明【技術分野】 【0001】 本発明は、生体試料の保存用組成物、生体試料保存用キット、生体試料の保存方法及び生体試料に含まれる生体物質の解析方法に関する。 続きを表示(約 2,500 文字)【背景技術】 【0002】 血液及び尿のような生体試料と比較して、唾液は、非侵襲的且つ容易に採取をすることができる。このため、唾液は、新たなバイオマーカー解析のターゲットとして注目されている。唾液中に含まれるタンパク質の中には、生体反応を反映しているものがあることが知られている。例えば、心理的ストレス負荷時には、唾液中のコルチゾール、免疫グロブリンA(IgA)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)及びα-アミラーゼの量が増加することが報告されている(非特許文献1)。2型糖尿病患者では、グルタチオン量が増加することが報告されている(非特許文献2)。歯周炎患者では、8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシン(8-OHdG)が増加することが報告されている(非特許文献3)。 【0003】 近年では、唾液中の特定のバイオマーカーから、癌を早期発見するための診断方法の開発も進められている。また、唾液中のタンパク質から、個体の老化レベルを診断する方法も報告されている(非特許文献4)。例えば、唾液中のGREM1タンパク質及びGREM2タンパク質の量から個体の老化度を評価する方法が報告されている(特許文献1)。また、フラクタルカイン、インターロイキン-1α(IL-1α)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)及びCD30Lを指標として、脳及び血液の老化状態を予測する方法も開発されている(特許文献2)。 【0004】 このように、老化を予防及び/又は改善するために、個人の老化レベルを生化学的に評価する手法は有益である。生体の老化状態は流動的に変化するため、唾液中のタンパク質は、正確にモニタリングされなければならない。しかしながら、唾液中のタンパク質は、常温下においてプロテアーゼ等の酵素によって急速に分解が進む。このため、唾液中のタンパク質の長期間の保存は困難であった。 【0005】 唾液中のタンパク質を保存する方法として、採取後直ちに-20℃で凍結保存する方法が知られている(非特許文献5)。また、常温下で唾液を保存する方法として、塩酸グアニジン又は尿素等の強力な変性剤を高濃度に添加する方法が知られている(非特許文献6)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 特開2019-007759号公報 特願2022-085555 【非特許文献】 【0007】 日本補完代替医療学会誌 第4巻 第3号 2007年 91-101頁 Evaluation of salivary and serum lipid peroxidation, and glutathione in oral leukoplakia and oral squamous cell carcinoma. Journal of Oral Science, 第56巻, 第2号, p. 135-142, 2014年 Oxidative DNA damage and repair in children exposed to low levels of arsenic in utero and during early childhood: application of salivary and urinary biomarkers. Toxicol Appl Pharmacol, 第273巻, 第3号, p. 569-79, 2013年 miR-1246 and miR-4644 in salivary exosome as potential biomarkers for pancreatobiliary tract cancer, Oncol Rep. 第36巻, 第4号, p. 2375-81, 2016年 生理心理学と精神生理学 第28巻 第3号 2010年 219-224頁 In vitro activity and stability of pure human salivary aldehyde dehydrogenase. Int J Biol Macromol, 第96巻, p. 798-806, 2017年 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 前記のように、個人の老化レベルを生化学的に評価するための生体試料として、唾液は有用である。唾液のような生体試料を長期に亘って保存するための技術が知られている。しかしながら、これらの技術には改善の余地が存在した。例えば、凍結保存方法(非特許文献5)の場合、保存のための設備環境を整える必要があり、簡便性の点で不利であるという課題があった。或いは、高濃度の変性剤を添加する方法(非特許文献6)の場合、人体に対する変性剤の安全性に懸念がある。また、高濃度の変性剤の使用により、その後の解析が困難になるため、解析手法が限定される課題があった。これらの課題は、唾液だけでなく、血液及び尿のような他の生体試料についても同様に存在する。 【0009】 それ故、本発明は、安全性が高く簡便であり、且つタンパク質等の生体物質の解析に適する、生体試料を長期に亘って保存する手段を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、吸水性ポリマーを唾液のような生体試料に添加することで、常温下であっても生体試料を長期に亘って容易に保存できることを見出した。また、本発明者らは、前記方法により、生体試料に含まれるタンパク質及び核酸のような生体物質も長期に亘って保存でき、且つ安定的に解析に使用できることを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき本発明を完成した。 (【0011】以降は省略されています) この特許をJ-PlatPat(特許庁公式サイト)で参照する