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公開番号
2025086330
公報種別
公開特許公報(A)
公開日
2025-06-06
出願番号
2024184853
出願日
2024-10-21
発明の名称
脂質類の化学構造の同定方法及びイオンモビリティースペクトロメトリータンデム質量分析装置
出願人
株式会社島津製作所
代理人
弁理士法人京都国際特許事務所
主分類
G01N
27/623 20210101AFI20250530BHJP(測定;試験)
要約
【課題】質量分析分野に関し、具体的に、脂質類の化学構造の同定方法及びイオンモビリティースペクトロメトリータンデム質量分析装置を提供する。
【解決手段】脂質類の化学構造の同定方法は、サンプルをイオン化して、サンプルイオンを得るイオン化ステップと、イオン移動度に基づいて、サンプルイオンから標的脂質類イオンを分離するイオン移動度分離ステップと、標的脂質類イオンの第一化学結合を切断するのに適した解離エネルギーで、標的脂質類イオンを解離する第一解離ステップと、質量数に基づいて、第一化学結合が切断された標的脂質類イオンを選択して、フラグメントイオンを得る質量選択ステップと、フラグメントイオンを解離し、少なくともフラグメントイオンの結合エネルギーが第一化学結合よりも高い第二化学結合を切断して、診断イオンを得る第二解離ステップと、診断イオンに対して質量分析を行う質量分析ステップと、を含む。
【選択図】図1
特許請求の範囲
【請求項1】
脂質類の化学構造の同定方法であって、
サンプルをイオン化して、サンプルイオンを得る、イオン化ステップと、
イオン移動度に基づいて、前記サンプルイオンから標的脂質類イオンを分離する、イオン移動度分離ステップと、
前記標的脂質類イオンの第一化学結合を切断するのに適した解離エネルギーで、前記標的脂質類イオンを解離する、第一解離ステップと、
質量数に基づいて、前記第一化学結合が切断された前記標的脂質類イオンを選択して、フラグメントイオンを得る、質量選択ステップと、
前記フラグメントイオンを解離して、少なくとも前記フラグメントイオンの結合エネルギーが前記第一化学結合よりも高い第二化学結合を切断させ、診断イオンを得る、第二解離ステップと、
前記診断イオンに対して質量分析を行う、質量分析ステップと、を含む、ことを特徴とする脂質類の化学構造の同定方法。
続きを表示(約 1,400 文字)
【請求項2】
前記脂質類は、脂肪鎖における炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂質類であり、前記方法は、脂肪鎖における前記炭素-炭素二重結合の位置と前記脂肪鎖におけるsnの位置を同定するために用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の脂質類の化学構造の同定方法。
【請求項3】
前記イオン化ステップの前に、誘導体化反応により前記炭素-炭素二重結合を標識する誘導体化反応ステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項2に記載の脂質類の化学構造の同定方法。
【請求項4】
前記脂質類は、リン脂質又はスフィンゴ脂質であり、前記第一化学結合は、前記リン脂質の極性頭部基又は前記スフィンゴ脂質の極性頭部基との結合であり、前記第二化学結合は、前記炭素-炭素二重結合が誘導体化反応を経て得られた化学結合である、ことを特徴とする請求項3に記載の脂質類の化学構造の同定方法。
【請求項5】
前記誘導体化反応は、アジリジン化反応、エポキシ化反応、パターノ・ビューチ(Paterno-Buchi)反応、一重項酸素-エン反応又はディールス・アルダー(Diels-Alder)反応である、ことを特徴とする請求項3に記載の脂質類の化学構造の同定方法。
【請求項6】
前記脂質類は、脂肪アシル、グリセリド、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、ステロールエステル、プレグネノロン脂質、糖脂質又はポリケチドである、ことを特徴とする請求項1に記載の脂質類の化学構造の同定方法。
【請求項7】
前記第一解離ステップと前記第二解離ステップを経ていない前記サンプルイオンに対して質量分析を行う、第一プリスキャンステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の脂質類の化学構造の同定方法。
【請求項8】
解離を一回のみ受けた前記サンプルイオンに対して質量分析を行う、第二プリスキャンステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の脂質類の化学構造の同定方法。
【請求項9】
イオンモビリティースペクトロメトリータンデム質量分析装置であって、
サンプルをイオン化して、サンプルイオンを得る、イオン源と、
前記サンプルイオンから標的脂質類イオンを分離する、イオンモビリティースペクトロメーターと、
前記標的脂質類イオンを解離し、その解離エネルギーが前記標的脂質類イオンの第一化学結合を切断するのに適する、第一解離装置と、
前記第一化学結合が切断された前記標的脂質類イオンを選択して、フラグメントイオンを得る、質量フィルタと、
前記フラグメントイオンを解離して、少なくとも前記フラグメントイオンの結合エネルギーが前記第一化学結合よりも高い第二化学結合を切断させ、診断イオンを得る、第二解離装置と、
前記診断イオンに対して質量分析を行う、質量分析計と、を含む、ことを特徴とするイオンモビリティースペクトロメトリータンデム質量分析装置。
【請求項10】
前記イオンモビリティースペクトロメーターは、U型イオンモビリティースペクトロメーターである、ことを特徴とする請求項9に記載のイオンモビリティースペクトロメトリータンデム質量分析装置。
(【請求項11】以降は省略されています)
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析分野に関し、具体的には、脂質類の化学構造の同定方法及びイオンモビリティースペクトロメトリータンデム質量分析装置に関する。
続きを表示(約 4,700 文字)
【背景技術】
【0002】
脂質は重要な栄養素であり、生体細胞の重要な構成成分でもあり、一部の重要な免疫機能と代謝欠陥と密接に関連する。現在、脂質代謝経路研究計画(Lipid metabolites and pathways strategy、LIPID MAPS)が既に起動され、分類データベースを確立することで脂質オミックスの研究を推進している。
【0003】
完全な脂質標識と識別情報には、類別、元素構成、R-基の寸法と位置(sn-位置)、二重結合数と位置、及び二重結合のシス-トランス異性配向が含まれる。また、例えばグリセリド、グリセロリン脂質等のグリセリン骨格(backbone)の不飽和脂質類には、炭素-炭素二重結合を含む脂肪鎖におけるsn位置を、さらに同定する必要もある。
【0004】
多段階タンデム質量分析は、化合物の構造解析に重要な役割を果たしている。HsuとTurkは、グリセロリン脂質のsn-位置の同定を実現可能な疑似三級(pseudo MS3)タンデム質量分析方法を提出した。そのうち、まず源内のCIDを利用して高存在量の頭部基なしフラグメントイオン信号[M+Li-183]
+
を取得し、さらに、このフラグメントイオンに対して衝突誘起解離を行い、sn-診断イオンを生成する(非特許文献1)。グリセリン骨格の不飽和脂質類に対して、1回のサンプル導入で二重結合位置及びsn位置を併せて同定できるように、非特許文献2において、ハイブリッド衝突活性化と紫外可視分光光度法とを組み合わせた組合MS3法が提供されたが、診断イオンの存在量は向上の余地がある。これらのpseudo MS3とMS3による分析方法は、異性体の選択と分析に適した方法ではなく、また、四重極質量分析によって第一段階で多イオン選択を行うと、現在の標的イオンでない部分が失われるため、全体のデューティ比が低くなる。化合物を直接に多段階タンデム質量分析を行う以外に、化学的誘導体化によって被分析物を予め修飾することで、イオン化効率の向上、構造的差異の拡大、クロマトグラフィー挙動の改善などの目的を達成してから、誘導体に対して多段階タンデム質量分析を行ってもよい。Maらは、非特許文献3において、電荷ラベル誘導体化とMS3を用いて、誘導体化されたグリセロリン脂質におけるC=C位置とsn位置を精確に特定した。該論文によって提供される方法は、イオントラップ型質量分析計を用いて特定の親イオンを質量選択する必要があり、デューティ比と分解能は、イオントラップ型質量分析計によって制限される。
【0005】
イオンモビリティースペクトル法は、気相条件下で異性体のハイスループット分離分析を実現することができ、質量分析と併用することで高い分解能を有し、多段階タンデム質量分析に類似した効果もあり(非特許文献4;非特許文献5)、被分析物の詳細構造情報を得ることができ、代謝オミックス、糖オミックス及びプロテオミクスの構造同定に広く使用されている。例えば、大量の研究報告によれば、環状イオンモビリティー(cIM)と衝突誘起解離(CID)とを併用することで、例えばcIM-CID-cIM及びcIM-CID-cIM-CID-cIMモードなどにより、炭水化物異性体の分離と一からの測定(非特許文献6;非特許文献7)を実現することができる。Bleiholderのチームは、捕捉イオンモビリティー(TIMS)に基づいたタンデム移動度分析およびタンデム質量分析の併用案を提出し、移動度選択と衝突活性化などの機能(特許文献1、非特許文献8)を備え、ポリペプチドとタンパク質(非特許文献9;非特許文献10)、糖及びその異性体(非特許文献11)の構造同定を実現した。Nicholas B.Borottoらは、TIMSに基づいて、移動前の衝突誘起アンフォールディングを実現し、タンパク質のコンフォメーションを迅速に識別することができた(非特許文献12)。また、移動前の衝突誘起アンフォールディングは、さらにタンデム質量分析とを結合して、精確なタンパク質シークエンシングを実現することができる(非特許文献13)。
【0006】
近年、イオンモビリティー質量分析は、脂質構造の深層同定においても良好な結果が得られた(非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16)。Baker及びその同僚らは、逆相液体クロマトグラフィーとイオンモビリティー質量分析を組み合わせた脂質オミックスの分析方法を提出し、分析物の極性、構造及び質量電荷比の大きさの3つの次元で脂質及びその異性体を分離し、ピーク容量を増大させることができる。液体クロマトグラフィーは、脂質の異なる種類の分離を実現でき、異なる種類の脂質は、イオンモビリティー質量分析において異なるイオン傾向線を形成する。なお、イオンモビリティースペクトルには、脂質の異なるサブクラスの粗分離(非特許文献17)をさらに観察できる。機器の分解能の制限により、異なる脂質の異性体は、ショルダーピーク分離のみに達する。F.Fernandez-Limaらは、高分解能TIMSにより特定の機器パラメータで(平均分解能が320超え)、それぞれ、ホスファチジルコリンナトリウムイオン付加物の二重結合位置異性及びプロトン付加物の二重結合のシス-トランス異性の同定を実現した。また、機器パラメータが超高分解能(410超え)の条件を満たす場合、当該方法はsn-位置異性の同定に用いることができる(非特許文献18)。しかしながら、ほとんどの商品化されたイオンモビリティー装置の分解能は200未満であり、上記条件を満たすことは困難である。金属イオン付加物を形成することは、異性体分解能の向上に寄与する。M.Groesslらは、ドリフト時間イオンモビリティー質量分析を用いて、ホスファチジルコリン銀イオン付加物の二重結合の位置異性、二重結合のシス-トランス異性及びsn-異性の区別を実現した(非特許文献19)。同様に、Yanらは、ドリフト時間イオンモビリティー質量分析を用いて、ホスファチジルコリン一価の銅イオン付加物の炭素-炭素二重結合のシス-トランス異性体の分離分析を実現したが、その分離度が低い(非特許文献20)。
【0007】
イオンモビリティースペクトルに基づいた脂質異性体を同定する方法が多く開発されていたが、これらの方法は標準サンプルをリファレンスとする必要があるため、未知の化合物の構造を解析することが困難であり、且つイオンモビリティースペクトルの分解能はマススペクトルよりも劣り、複雑な基質サンプル分析において制限が存在する。イオンモビリティーの分離能力とタンデム質量分析装置の分解能力とを結合することで、生体サンプルにおける未知の脂質化合物の構造分析に大きな可能性をもたらした。Brodbeltのチームは、UVPDとドリフト時間イオンモビリティー質量分析を併用し、脂質異性体衝突断面積の測定、脂質二重結合及びシクロプロパン位置の同定を実現できた(非特許文献21)。しかし、この方法は、極性脂質分析に適合するが、中、低極性脂質の検出が困難である。Xiaらは、P-B反応と捕捉イオン移動度タンデム質量分析装置を結合することで、共役脂肪酸異性体の分離分析を実現できた。イオンモビリティースペクトルとタンデム質量分析スペクトルを組み合わせることで、標準サンプルのない条件であっても、移動度特徴ピークと二重結合を正確に帰属することができる。しかし、P-B反応と共役脂肪酸との反応生成物は多様であり、生成されるモビリティースペクトルは複雑度が高く、複雑な混合物において適用が制限されている(非特許文献22)。2023年に、Xiaのチームは、液体クロマトグラフィー、イオンモビリティースペクトル法とP-B反応タンデム質量分析を組み合わせて、一連の脂質構造の深層解析フローを確立し、段階的に二重結合位置及びsn-位置の同定を実現でき、ウシの肝臓、細胞等の生体サンプル内の脂質オミックスの分析の適用に成功し、より完全な脂質プロファイル情報を取得することに成功した(非特許文献23)。しかし、段階的な前処理と複数バッチの分析プロセスでは、分析スループットが低下するだけでなく、サンプルの損失も発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
US10794861 B2
中国特許CN113495112A
【非特許文献】
【0009】
J.Am.Soc.Mass Spectrom.2003、14、352
Brodbelt et al、「Pinpointing Double Bond and sn-Positions in Glycerophospholipids via Hybrid193nm Ultraviolet Photodessociation(UVPD)Mass Spectrometry」(J.Am.Chem.Soc.2017、139、15681-15690)
Ma et al、「Large-scale lipid analysis with C=C location and sn-position isomer resolving power」(Nat.Commun.、2020、11、375)
Biochem.Soc.T.2020、48、2457
Anal.Chem.2006、78、4161
Anal.Chem.2021、93、6254
Annual Rev.Anal.Chem.2023、16、27
Analyst2022、147、2317
Analyst2018、143、2249
J.Am.Soc.Mass Spectrom.2023、34、2247
Anal.Chem.2023、95、747
J.Am.Soc.Mass Spectrom.2022、33、83
J.Am.Soc.Mass Spectrom.2023、34、2232
J.Chromatogr.A、2017、1530、90
J.Sep.Sci.2018、41、20
Front.Mol.Biosci.2023、16、10、1112521
Analyst、2016、141、1649
Anal.Chem.2019、91、5021
Analyst、2015、140、6904
Int.J.Mass Spectrom.2022、479、116889
Anal.Chem.2022、94、4252
Anal.Chem.2019、91、7173
Nat.Commun.2023、14、4263
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の問題に対して、本発明は、診断イオンの存在量を増加させるとともに、良好なデューティ比と分解能を有する、脂質類の化学構造の同定方法及びイオンモビリティースペクトロメトリータンデム質量分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
(【0011】以降は省略されています)
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