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公開番号2025066331
公報種別公開特許公報(A)
公開日2025-04-23
出願番号2023175851
出願日2023-10-11
発明の名称多柱コンプトンカメラおよびガンマ線イベントデータ解析装置、方法およびプログラム
出願人国立大学法人広島大学
代理人個人
主分類G01T 1/16 20060101AFI20250416BHJP(測定;試験)
要約【課題】高い角度分解能でガンマ線入射角を識別できるコンプトンカメラを提供する。
【解決手段】多柱コンプトンカメラ100は、入射したガンマ線のコンプトン散乱を検出する散乱検出ピクセル23が格子状に配列されたピクセルセンサ22が複数積層された柱状センサユニット21を複数有するガンマ線検出部20と、各柱状センサユニット21の各ピクセルセンサ22に動作電源を供給するとともに各ピクセルセンサ22から信号を読み出す制御回路11を備え、複数の柱状センサユニット21が長手方向の端を揃えて互いに隙間を空けて同じ向きに並び、複数の柱状センサユニット21が長手方向の端面が面一に揃えられて外部に開放されている。
【選択図】図1
特許請求の範囲【請求項1】
入射したガンマ線のコンプトン散乱を検出する散乱検出ピクセルが格子状に配列されたピクセルセンサが複数積層された柱状センサユニットを複数有するガンマ線検出部と、
前記各柱状センサユニットの前記各ピクセルセンサに動作電源を供給するとともに前記各ピクセルセンサから信号を読み出す制御回路を備え、
前記複数の柱状センサユニットが長手方向の端を揃えて互いに隙間を空けて同じ向きに並び、前記複数の柱状センサユニットが長手方向の端面が面一に揃えられて外部に開放されている
ことを特徴とする多柱コンプトンカメラ。
続きを表示(約 1,900 文字)【請求項2】
前記制御回路が前記ガンマ線検出部の外に設けられており、
前記各柱状センサユニットにおいて前記複数のピクセルセンサがシリーズ接続されて前記制御回路に接続されている、請求項1に記載の多柱コンプトンカメラ。
【請求項3】
前記ピクセルセンサが高耐圧シリコンCMOSピクセルセンサである、請求項2に記載の多柱コンプトンカメラ。
【請求項4】
前記ピクセルセンサが高耐圧シリコンCMOSピクセルセンサである、請求項1に記載の多柱コンプトンカメラ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の多柱コンプトンカメラにより所定のサンプリング周期で記録されたガンマ線イベントデータを解析して観測対象のガンマ線の入射角を特定するガンマ線イベントデータ解析装置であって、
各ガンマ線イベントについて最初のコンプトン散乱を検出した前記散乱検出ピクセルを特定する散乱検出ピクセル特定部と、
前記散乱検出ピクセル別に最初のコンプトン散乱の検出回数をカウントする散乱検出回数カウント部と、
前記柱状センサユニットにおける層ごとに、前記カウントされた最初のコンプトン散乱の検出回数を前記ピクセルセンサのXY各方向の一次元分布に集約する散乱検出回数集約部と、
前記ピクセルセンサのXY各方向について、あらかじめガンマ線入射角ごとに用意された層別一次元分布セットの中で前記集約により得られた層別一次元分布セットに尤も近いものを特定する検出パターン最尤判定部と、
前記ピクセルセンサのXY各方向について特定された層別一次元分布に係るガンマ線入射角から前記観測対象のガンマ線の入射角を特定するガンマ線入射角特定部とを備えた
ことを特徴とするガンマ線イベントデータ解析装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の多柱コンプトンカメラにより所定のサンプリング周期で記録されたガンマ線イベントデータを解析して観測対象のガンマ線の入射角を特定するガンマ線イベントデータ解析方法であって、
散乱検出ピクセル特定部が、各ガンマ線イベントについて最初のコンプトン散乱を検出した前記散乱検出ピクセルを特定するステップと、
散乱検出回数カウント部が、前記散乱検出ピクセル別に最初のコンプトン散乱の検出回数をカウントするステップと、
散乱検出回数集約部が、前記柱状センサユニットにおける層ごとに、前記カウントされた最初のコンプトン散乱の検出回数を前記ピクセルセンサのXY各方向の一次元分布に集約するステップと、
検出パターン最尤判定部が、前記ピクセルセンサのXY各方向について、あらかじめガンマ線入射角ごとに用意された層別一次元分布セットの中で前記集約により得られた層別一次元分布セットに尤も近いものを特定するステップと、
ガンマ線入射角特定部が、前記ピクセルセンサのXY各方向について特定された層別一次元分布に係るガンマ線入射角から前記観測対象のガンマ線の入射角を特定するステップを備えた
ことを特徴とするガンマ線イベントデータ解析方法。
【請求項7】
コンピューターに、請求項1ないし4のいずれかに記載の多柱コンプトンカメラにより所定のサンプリング周期で記録されたガンマ線イベントデータを解析させて観測対象のガンマ線の入射角を特定させるガンマ線イベントデータ解析プログラムであって、
各ガンマ線イベントについて最初のコンプトン散乱を検出した前記散乱検出ピクセルを特定する散乱検出ピクセル特定手段、
前記散乱検出ピクセル別に最初のコンプトン散乱の検出回数をカウントする散乱検出回数カウント手段、
前記柱状センサユニットにおける層ごとに、前記カウントされた最初のコンプトン散乱の検出回数を前記ピクセルセンサのXY各方向の一次元分布に集約する散乱検出回数集約手段、
前記ピクセルセンサのXY各方向について、あらかじめガンマ線入射角ごとに用意された層別一次元分布セットの中で前記集約により得られた層別一次元分布セットに尤も近いものを特定する検出パターン最尤判定手段、および
前記ピクセルセンサのXY各方向について特定された層別一次元分布に係るガンマ線入射角から前記観測対象のガンマ線の入射角を特定するガンマ線入射角特定手段として、コンピューターを機能させる
ことを特徴とするガンマ線イベントデータ解析プログラム。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマ線イメージング技術に関し、特に、コンプトン散乱を利用して500KeV前後のガンマ線のイベントを検出するのに好適なコンプトンカメラおよびそのようなコンプトンカメラにより記録されたガンマ線イベントデータを解析して観測対象のガンマ線の入射角を特定する技術に関する。
続きを表示(約 2,900 文字)【背景技術】
【0002】
放射線の一種であるガンマ線(以下、主に500keV前後のエネルギーを持つガンマ線のことを指す。)は他の放射線(X線、陽子線、電子線、重粒子線、ミューオンなど)とともに、医療現場、原子力発電所、加速器、宇宙観測などで広く使われている。ガンマ線を検出するだけでなく、ガンマ線で撮像(イメージング)する技術も着実に発展してきている。人体に特定の放射性同位体を注入して体内の治療部位を可視化するPET、福島原発事故で拡散した放射性同位体の分布を測定する環境放射線測定、放射性同位体を含むレア金属の探査、宇宙から飛来するガンマ線の観測による宇宙高エネルギー現象の解明、など多岐にわたってガンマ線イメージングの重要性が認識されている。
【0003】
ガンマ線はX線や可視光などとは異なり、鏡で集光結像できないこと、検出が難しいことから、イメージングは簡単ではなかった。これまでは、主に2種類の方法が主流であった。一つは、鉛などでピンホールあるいは符号付マスクを検出器と放射線源の間に置いて、その影のパターンを解析することでガンマ線イメージを再現する方法である。ガンマ線は物質に吸収されにくいため鉛などの重い元素がマスク材料として必要である。この場合検出器は二次元の位置感度があれば良い。マスクパターンの細かさ、マスクと検出器の距離、検出器のガンマ線検出の位置分解能により解像度が決まるが、鉛の加工性は1mm程度、検出器とマスクの距離は1m程度、検出器はガンマ線を吸収するために固体シンチレータが使われることが多く、その位置決定精度は1mm程度となるため、解像度は1/1000rad=0.06度が可能である。しかし、目的対象のガンマ線以外の放射線も検出されてノイズとなるため、微弱な対象ガンマ線はノイズに埋もれてしまい、PETやレア元素探査、宇宙観測では厳しい。
【0004】
もう一つは、三次元で放射線反応位置を記録できる検出器の中でガンマ線を複数回コンプトン散乱させて、その反応パターンからイメージングを行うコンプトンカメラである。シリコンなどの軽い元素ではガンマ線は吸収されずに主に散乱して、複数の散乱箇所に反応(エネルギーおよび位置)を記録する。それらの反応パターンとコンプトン力学の式を用いて、ガンマ線の到来方向をリング状に制限できる。もし散乱箇所で生じた電子の走る方向がわかれば、リングの一部(円弧)に制限できる。複数のガンマ線に対して、これらのリングや円弧を描いたとき、それらの交点がガンマ線発生源と特定できる。半導体センサ、固体シンチレータ、気体、液体などの検出器材料を用いたものが世界中で開発されて使われている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
T. Orita et al., "Double-Photon Emission Imaging With High-Resolution Si/CdTe Compton Cameras," in IEEE Transactions on Nuclear Science, vol. 68, no. 8, pp. 2279-2285, Aug. 2021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンプトン力学では、解像度は、原子内の電子の持つ運動量の不定性により原理的に数度という限界がある。ただしコンプトンカメラでは、対象物以外からのガンマ線は、検出器内での三次元信号パターンを用いて区別できるため、微弱なガンマ線源もイメージングできる利点があり、PETや宇宙観測で使われている。しかし、数度の解像度というのは目の解像度0.05度に比べて非常に低い。
【0007】
コンプトンカメラの角度分解能を上げる方法として、コンプトンカメラの前に符号化マスクを置くことが考えられる。コンプトンカメラでは一つのガンマ線に対して複数の反応位置が得られるが、マスクの影を反映するのは最初の散乱位置であり、コンプトン力学を用いれば最初の散乱位置がわかる。よって、符号化マスクの影のパターンが得られて0.1度以下の解像度が得られると同時に微弱なガンマ線イメージングもできる。しかし、この方法には、マスクである鉛の加工性から解像度が制限され、検出器も大きくなってしまうという欠点がある。また、宇宙観測では、衛星搭載した際に飛来する宇宙線と鉛が反応して放射線源となってしまい、ノイズ源になって暗い天体を検出しにくくなる。
【0008】
上記問題に鑑み、本発明は、高い角度分解能でガンマ線入射角を識別できるコンプトンカメラ、およびコンプトンカメラにより記録されたガンマ線イベントを解析して高い角度分解能で観測対象のガンマ線の入射角を特定するデータ解析技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に従うと、入射したガンマ線のコンプトン散乱を検出する散乱検出ピクセルが格子状に配列されたピクセルセンサが複数積層された柱状センサユニットを複数有するガンマ線検出部と、前記各柱状センサユニットの前記各ピクセルセンサに動作電源を供給するとともに前記各ピクセルセンサから信号を読み出す制御回路を備え、前記複数の柱状センサユニットが長手方向の端を揃えて互いに隙間を空けて同じ向きに並び、前記複数の柱状センサユニットが長手方向の端面が面一に揃えられて外部に開放されている多柱コンプトンカメラが提供される。
【0010】
また、本発明の別の局面に従うと、上記多柱コンプトンカメラにより所定のサンプリング周期で記録されたガンマ線イベントデータを解析して観測対象のガンマ線の入射角を特定するガンマ線イベントデータ解析装置であって、各ガンマ線イベントについて最初のコンプトン散乱を検出した前記散乱検出ピクセルを特定する散乱検出ピクセル特定部と、前記散乱検出ピクセル別に最初のコンプトン散乱の検出回数をカウントする散乱検出回数カウント部と、前記柱状センサユニットにおける層ごとに、前記カウントされた最初のコンプトン散乱の検出回数を前記ピクセルセンサのXY各方向の一次元分布に集約する散乱検出回数集約部と、前記ピクセルセンサのXY各方向について、あらかじめガンマ線入射角ごとに用意された層別一次元分布セットの中で前記集約により得られた層別一次元分布セットに尤も近いものを特定する検出パターン最尤判定部と、前記ピクセルセンサのXY各方向について特定された層別一次元分布に係るガンマ線入射角から前記観測対象のガンマ線の入射角を特定するガンマ線入射角特定部とを備えたガンマ線イベントデータ解析装置、およびそれに対応するガンマ線イベントデータ解析方法およびプログラムが提供される。
【発明の効果】
(【0011】以降は省略されています)

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