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公開番号2024110770
公報種別公開特許公報(A)
公開日2024-08-16
出願番号2023015558
出願日2023-02-03
発明の名称スポット溶接継手のナゲット径推定方法
出願人日本製鉄株式会社
代理人弁理士法人まこと国際特許事務所
主分類G01L 1/00 20060101AFI20240808BHJP(測定;試験)
要約【課題】スポット溶接継手の溶接部のナゲット径を推定可能な方法を提供する。
【解決手段】本発明は、スポット溶接継手10の数値解析モデルを対象として連成有限要素法解析を実行することで、繰り返し荷重の周波数Fを溶接部13の外面応力σfの線形関数で表した場合の当該線形関数の傾きuをナゲット径d毎に算出して、前記線形関数の傾きuとナゲット径dとの関係式を導出する関係式導出手順ST1と、熱弾性応力測定法を用いて、繰り返し荷重の周波数F’毎に評価対象であるスポット溶接継手の溶接部の外面応力σirを測定する外面応力測定手順ST2と、繰り返し荷重の周波数F’を溶接部の外面応力σirの線形関数で表した場合の当該線形関数の傾きu’を算出し、当該傾きu’を前記関係式に入力することで、評価対象の溶接部のナゲット径d’を算出するナゲット径算出手順ST3と、を有する。
【選択図】 図1
特許請求の範囲【請求項1】
重ね合わせられた板材をスポット溶接することにより形成されるスポット溶接継手の溶接部のナゲット径を推定する方法であって、
前記ナゲット径dを変更した前記スポット溶接継手の複数の数値解析モデルを対象として、それぞれ前記スポット溶接継手に付加されるせん断方向の繰り返し荷重の想定最大荷重及び想定最小荷重を用いた応力場及び温度場の連成有限要素法解析を、前記繰り返し荷重の周波数Fを変更して複数回実行することで、前記繰り返し荷重の周波数F毎に前記溶接部の外面応力σfを算出し、前記繰り返し荷重の周波数Fを前記溶接部の外面応力σfの線形関数で表した場合の当該線形関数の傾きuを前記ナゲット径d毎に算出して、前記線形関数の傾きuと前記ナゲット径dとの関係式を導出する関係式導出手順と、
評価対象である前記スポット溶接継手に、前記繰り返し荷重を付加し、熱弾性応力測定法を用いて、前記溶接部の外面応力σirを測定するステップを、前記繰り返し荷重の周波数F’を変更して複数回実行することで、前記繰り返し荷重の周波数F’毎に前記溶接部の外面応力σirを測定する外面応力測定手順と、
前記繰り返し荷重の周波数F’を前記溶接部の外面応力σirの線形関数で表した場合の当該線形関数の傾きu’を算出し、当該線形関数の傾きu’を前記導出した関係式に入力することで、前記評価対象である前記スポット溶接継手の前記溶接部のナゲット径d’を算出するナゲット径算出手順と、を有する、
スポット溶接継手のナゲット径推定方法。
続きを表示(約 600 文字)【請求項2】
前記関係式導出手順で実行する連成有限要素法解析は、
前記数値解析モデルを対象として、前記繰り返し荷重の想定最大荷重及び想定最小荷重を用いた応力解析を行い、前記数値解析モデルの応力分布を算出する応力解析ステップと、
前記応力解析ステップで算出した前記数値解析モデルの応力分布と、前記スポット溶接継手の材料特性と、前記繰り返し荷重の周波数Fとを用いて、熱流束を算出する熱流束算出ステップと、
前記熱流束算出ステップで算出した熱流束を用いた伝熱解析を行い、前記数値解析モデルの温度分布を算出する伝熱解析ステップと、を有し、
前記熱流束算出ステップ及び前記伝熱解析ステップを前記繰り返し荷重を付加する所定時間だけ繰り返し実行することで、前記所定時間経過後の前記数値解析モデルの温度分布を算出し、
前記所定時間経過後の前記数値解析モデルの温度分布に基づき、前記溶接部の外面温度を算出し、前記溶接部の外面温度を前記溶接部の外面応力σfに換算する換算ステップを更に有する、
請求項1に記載のスポット溶接継手のナゲット径推定方法。
【請求項3】
前記関係式導出手順で算出する前記関係式は、前記ナゲット径dを前記線形関数の傾きuの指数関数で表したものである、
請求項1又は2に記載のスポット溶接継手のナゲット径推定方法。

発明の詳細な説明【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる熱弾性応力測定法の測定結果を用いて、重ね合わせられた板材をスポット溶接することにより形成されるスポット溶接継手の溶接部のナゲット径を推定可能な方法に関する。
続きを表示(約 2,600 文字)【背景技術】
【0002】
重ね合わせられた鋼板等の板材をスポット溶接(抵抗スポット溶接)することにより形成されるスポット溶接継手は、スポット溶接の生産性が高く、低コストであるため、自動車や家電製品の部材として広く用いられている。
スポット溶接継手の溶接部のナゲット(溶融凝固した部分)は、重ね合わせられた板材の重ね合わせ面(内面)側に生成される。スポット溶接継手の溶接部の場合、応力集中が生じて破壊の危険性があるのは、ナゲットが生成される内面側の部位であり、ナゲット径が要求仕様通りに形成されているか否かが、溶接部の良否に影響を与える。しかしながら、溶接部のナゲットを直接目視することで溶接部の良否を検査することはできない。
【0003】
目視検査できない構造物等の被測定物の検査方法(具体的には、応力評価方法)として、有限要素法(以下、適宜「FEM」(Finite Element Method)という)解析が用いられる場合がある。
しかしながら、FEM解析の数値解析モデルは、計算機上で幾何情報を数値化して作成されるため、スポット溶接継手の溶接部のナゲットのような複雑な形状を正確にモデル化することは困難である。また、FEM解析の数値解析モデルは、六面体等の要素(メッシュ)に分割されるため、スポット溶接時に溶接部のナゲット以外の部位(本明細書において「熱影響部」と称する)に生じる圧痕など、微妙な変化を有する形状を反映できない場合がある。
したがって、FEM解析のみを用いて、スポット溶接継手の溶接部の内面応力(板材の重ね合わせ面側の応力)を精度良く評価することが困難な場合がある。また、FEM解析のみを用いても、変化し得る溶接部のナゲット径を推定することはできない。
【0004】
一方、被測定物に発生する応力を非接触で測定する方法として、赤外線撮像装置(サーモグラフィ)を用いた熱弾性応力測定法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
熱弾性応力測定法は、被測定物が断熱的に弾性変形する際に温度変化が生じるという熱弾性効果を利用し、繰り返し荷重が付加される被測定物を赤外線撮像装置を用いて連続的に撮像することで被測定物の温度の時間的変化(所定時間内における温度の変化)を測定し、この測定した温度の時間的変化を被測定物の応力の時間的変化(所定時間内における応力の変化)に換算する方法である。応力の初期値を把握していれば(実際に応力を測定して把握している場合のみならず、想定可能な場合も含む)、この初期値に応力の時間的変化を加算することで、所定時間経過後の応力を測定可能である。
【0005】
この熱弾性応力測定法を用いて被測定物の温度の時間的変化を測定する際、被測定物の周囲の熱(赤外線)が被測定物の表面で反射し、赤外線撮像装置で受光される場合がある。換言すれば、赤外線撮像装置を用いて測定した被測定物の温度の時間的変化に、熱弾性効果によって生じる温度変化(被測定物から放射される赤外線の強度変化)以外の要因で生じた温度変化が含まれる場合がある。熱弾性効果によって生じる温度変化は極微小であるため、被測定物表面における赤外線の反射率が大きければ、熱弾性効果によって生じる温度変化が被測定物表面における赤外線の反射強度の変化に埋もれてしまい、被測定物の応力の時間的変化を精度良く算出できないおそれがある。
【0006】
このため、非特許文献1に記載の技術では、赤外線撮像装置から出力された画像信号から、測定対象とする熱弾性効果によって生じる温度変化に応じた信号波形をロックイン処理している。すなわち、赤外線撮像装置から出力された画像信号から、所定の周波数成分のみを抽出している。
具体的には、例えば、被測定物に繰り返し荷重を付加する疲労試験機から出力され、付加する繰り返し荷重と同じ周波数の参照信号を利用する。この参照信号で画像信号を同期検波し、参照信号に応じた周波数帯域の画像信号成分のみ(参照信号と同じ周波数を有する画像信号成分のみ又は参照信号と同じ周波数を含む狭周波数帯域の画像信号のみ)を抽出することで、測定すべき熱弾性効果によって生じる温度変化のS/N比を向上させている。そして、抽出した画像信号成分の大きさと、予め記憶されている画像信号成分の大きさ及び温度の対応関係とに応じて、被測定物の温度の時間的変化(赤外線撮像装置で撮像した撮像画像を構成する画素毎の温度の時間的変化)を算出する。次いで、被測定物の温度の時間的変化と、温度の時間的変化及び応力の時間的変化の間の所定の関係式とに基づき、被測定物の応力の時間的変化を算出する。
【0007】
このように、ロックイン処理を用いれば、原理的には、被測定物の応力の時間的変化、ひいては被測定物の応力を精度良く算出することが可能であると考えられる。そして、赤外線撮像装置を用いて実際に被測定物を撮像した撮像画像に基づき、被測定物の応力を算出するため、溶接部のような複雑な形状にも適用可能である。
したがって、スポット溶接継手の溶接部を検査する際、具体的には、溶接部の内面応力を評価する際に、FEM解析ではなく、ロックイン処理を適用した熱弾性応力測定法を用いることが考えられる。
【0008】
しかしながら、スポット溶接継手の溶接部の内面応力を評価する際に熱弾性応力測定法を用いる場合、赤外線撮像装置は、溶接部の外面(板材の重ね合わせ面と反対側の面)を撮像することになる。このため、熱弾性応力測定法で直接測定できる応力は、溶接部の外面応力(外面側の応力)であって、溶接部の内面応力ではない。また、赤外線撮像装置が溶接部の外面を撮像するため、溶接部のナゲット径を直接推定することはできない。
【0009】
特許文献1~4には、熱弾性応力測定法の測定精度を高める方法について提案されているものの、上記の問題を解決できるものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
矢尾板達也、他2名、「赤外線カメラによる応力測定と疲労限界点の予測測定」、自動車技術会秋季学術講演会、No.98-03、(2003)
【特許文献】
(【0011】以降は省略されています)

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